※本記事は、株式会社不二家の有価証券報告書(第131期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 不二家ってどんな会社?
洋菓子および製菓の製造販売を中心とし、複数のロングセラーブランドを展開する老舗の菓子メーカーです。
■(1) 会社概要
1910年に横浜元町で開店した洋菓子店を前身とし、1938年に不二家へと商号変更しました。1965年に東京・大阪・名古屋の各証券取引所市場第一部へ上場を果たしています。その後、アイスクリームチェーンや郊外型レストランへ進出し、2008年には第三者割当増資を実施して山崎製パンの連結子会社となりました。直近ではベトナムに現地法人を設立し、海外展開も強化しています。
現在の連結従業員数は2,457名、単体では1,432名です。大株主については、筆頭株主が事業会社である山崎製パンで、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は従業員持株会である不二家不二栄会持株会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 山崎製パン | 54.39% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 4.35% |
| 不二家不二栄会持株会 | 3.58% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性2名の計15名で構成され、女性役員比率は13.3%です。代表取締役社長は河村宣行氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 飯島幹雄 | 代表取締役会長 | 1997年山崎製パン入社。東ハト代表取締役社長等を経て、2026年2月より現職。 |
| 河村宣行 | 代表取締役社長 | 1977年不二家入社。専務取締役菓子事業本部長などを経て、2019年3月より現職。 |
| 瓜生徹 | 取締役副社長 | 1987年山崎製パン入社。不二家常務取締役洋菓子事業本部長等を経て、2025年3月より現職。 |
| 富永寿哉 | 専務取締役 | 1986年不二家入社。取締役菓子事業本部長兼営業本部長などを経て、2025年5月より現職。 |
| 古田健 | 常務取締役 | 1990年不二家入社。取締役海外事業担当兼菓子事業本部生産本部長等を経て、2025年3月より現職。 |
| 荒畑克也 | 取締役 | 1986年山崎製パン入社。不二家執行役員経理本部経理部長などを経て、2025年3月より現職。 |
社外取締役は、高橋俊裕(元東京トヨペット代表取締役社長)、中野武夫(元みずほ信託銀行取締役社長)、村岡香奈子(呉服橋法律事務所代表弁護士)、酒井美紀(特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン親善大使)、神長善次(元外務省特命全権大使)です。
2. 事業内容
同社グループは、「洋菓子事業」「製菓事業」および「その他」事業を展開しています。
■洋菓子事業
洋菓子事業では、ケーキ、ベーカリー、デザート等の洋菓子類やアイスクリームの製造・販売に加えて、喫茶および飲食店の経営を行っています。全国の洋菓子チェーン店での店頭販売のほか、コンビニエンスストアや外食チェーン等への卸売も手掛けています。
収益源は、直営店やレストランにおける一般顧客からの商品代金や飲食代金、ならびにフランチャイズ加盟店や量販店等に対する卸売代金やロイヤリティです。運営は不二家のほか、ダロワイヨジャポンやビー・アールサーティワンアイスクリームなどが担っています。
■製菓事業
製菓事業では、チョコレート、キャンディ、ビスケット、飲料、乳製品といった菓子食品の製造および販売を行っています。「カントリーマアム」「ホームパイ」「ルック」「ミルキー」などのロングセラーブランドを多数展開し、国内だけでなく中国やベトナムなどの海外市場へも製品を供給しています。
収益源は、量販店や小売店などを通じた菓子食品の卸売による製品代金です。運営は不二家を中心に、不二家神戸、不二家乳業、日本食材などの国内子会社のほか、不二家(杭州)食品有限公司や不二家ベトナムといった海外子会社が行っています。
■その他事業
その他事業では、キャラクターグッズ等の通信販売やライセンス事業、不動産の賃貸および管理、ならびに事務受託業務やアウトソーシング受託などを手掛けています。運営は不二家システムセンターなどが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、売上高は1000億円規模で安定的に推移し、直近では1196億円に拡大しています。経常利益は原材料価格の高騰等の影響で一時落ち込みましたが、価格改定や生産性向上の取り組みが奏功し、回復傾向にあります。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1048億円 | 1006億円 | 1055億円 | 1100億円 | 1196億円 |
| 経常利益 | 52億円 | 55億円 | 21億円 | 31億円 | 36億円 |
| 利益率(%) | 5.0% | 5.5% | 2.0% | 2.8% | 3.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 21億円 | 26億円 | 4億円 | 9億円 | 13億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加傾向にあり、売上総利益も着実に拡大しています。原材料費の高騰等のコスト増要因を売上の増加と生産効率の向上によって吸収し、営業利益率の改善につなげています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1100億円 | 1196億円 |
| 売上総利益 | 365億円 | 388億円 |
| 売上総利益率(%) | 33.1% | 32.4% |
| 営業利益 | 23億円 | 28億円 |
| 営業利益率(%) | 2.1% | 2.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が108億円(構成比30%)、運賃及び倉庫料が75億円(同21%)、広告宣伝費が31億円(同9%)を占めています。また、売上原価は808億円で、売上高に対する構成比は68%となっています。
■(3) セグメント収益
両事業ともに売上高を順調に伸ばしています。製菓事業は主力製品の増産や販売拡大によりコスト増を吸収し、洋菓子事業も生産ラインの能力増強や省人化による労務費削減の取り組みにより底堅い事業運営を行っています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 洋菓子事業 | 309億円 | 318億円 |
| 製菓事業 | 757億円 | 841億円 |
| その他 | 34億円 | 37億円 |
| 連結(合計) | 1100億円 | 1196億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業で利益を出しつつ借入によって積極投資を行う積極型の状況です。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 43億円 | 38億円 |
| 投資CF | -69億円 | -109億円 |
| 財務CF | 17億円 | 109億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「愛と誠心(まごころ)と感謝をこめて お客様に愛される不二家になります」という社是を掲げています。創業以来、お客様の人生に寄り添い、お菓子が作り出す人と人との「絆」や生活への「彩り」を創造することを使命として、事業活動全体でサステナビリティを推進し、「こころあたたまる世界」の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
企業理念のもと、「Smile makes the heartful world ~笑顔がつくる こころあたたまる世界~」という価値観を重視しています。常により良い商品と最善のサービスを開発・提供することで、お客様の安全・安心・満足を考え、社会全体にワクワクを届ける姿勢が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
中長期ビジョン(グランドデザイン)として「Sweets to next stage! 安心からwakuwakuへ」を掲げています。お菓子を通じてお客様に「幸せな記憶」と「愛されている実感」、そして「人と人との繋がり」を提供し、お客様、従業員、社会全体にワクワクを届けることで、持続的な企業価値の向上を図ります。
■(4) 成長戦略と重点施策
洋菓子および製菓の両事業を持つ強みを活かし、グループシナジーの創出による売上と利益の確保を進めます。洋菓子事業ではミルクレープ生産ラインの刷新等による生産性向上と省人化を図り、新業態店舗の出店や催事への展開を推進します。製菓事業では主力製品の価格見直しや生産設備投資による稼働率最大化を図り、グミ製品や海外事業への注力で収益基盤を拡充します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「不二家 人事方針」に基づき、従業員の成長を支援するとともに、各々の持つ強みや能力を最大限発揮できる環境と場を提供します。「個の成長」と「個々が強い結びつきを持つ組織」の両立を図り、安全・安心な職場環境の整備や多様性の尊重を通じて、自律的かつ主体的にチャレンジできる人材の育成を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 36.1歳 | 12.2年 | 5,715,874円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 13.4% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 42.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 68.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 64.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、労働災害率(度数率)(0.13)、研修受講者数(676人)、食品リサイクル率(94.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 「食」の安全性に関するリスク
原材料や製造工程のトラブルによる製品の安全性の低下や食品事故が発生した場合、製品の回収や販売停止につながる可能性があります。同社は「食品安全の日」を設け、FSSC22000などの国際規格に基づく食品安全衛生管理を徹底しています。
■(2) 原材料・エネルギー価格の変動リスク
異常気象や自然災害、世界的な需給状況の変化、為替変動などにより、原材料やエネルギーの価格上昇、調達不全が発生し、コストが増加するリスクがあります。調達先の分散化や代替原材料の検討、適正在庫水準の維持によって対策を進めています。
■(3) 海外事業展開におけるカントリーリスク
海外進出先において政治・社会情勢の変化、テロ活動、自然災害等が発生した場合、事業展開に支障をきたす可能性があります。同社からの基幹人材の派遣や、現地子会社と連携した情報収集体制、安否確認システムの導入によってリスク軽減を図っています。
■(4) 企業情報・個人情報の漏洩リスク
不正アクセスやコンピュータウイルス感染、ランサムウェア等のサイバー攻撃により、個人情報や機密情報の漏洩、システム障害による業務停止が発生する可能性があります。情報セキュリティ規程の整備やバックアップ方針の策定により、監視・検知・復旧体制を強化しています。



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