※本記事は、第一屋製パン株式会社の有価証券報告書(第84期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. 第一屋製パンってどんな会社?
第一屋製パンは、パン類を中心とする食品事業と不動産事業を展開する老舗食品メーカーです。
■(1) 会社概要
1947年に個人経営の製パン業として創設され、1955年に第一屋製パンが設立されました。1962年に東京証券取引所市場第二部に上場し、1970年に第一部へ指定替えとなりました。1974年にクッキー専門のスリースター製菓を設立したほか、2009年には豊田通商と資本業務提携契約を締結しています。
従業員数は連結876名、単体698名です。筆頭株主は事業会社である豊田通商で、第2位は資産管理業務を行うMF資産管理合同会社、第3位は創業家関係者とみられる細貝理栄氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 豊田通商 | 33.43% |
| MF資産管理合同会社 | 4.33% |
| 細貝理栄 | 4.26% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は細貝正統氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 細貝正統 | 代表取締役社長 | 1998年第一勧業銀行入行。2003年第一屋製パン入社。経営企画室室長、経理部部長などを経て2019年より現職。 |
| 黒土尚紀 | 取締役副社長 | 1992年野崎産業入社。2009年豊田通商入社。食品原料グループリーダー等を経て2025年より現職。 |
| 佐藤康一 | 取締役 | 1997年第一屋製パン入社。商品開発部部長などを経て2026年より現職。 |
社外取締役は、南浩二(豊田通商ライフスタイル本部COO)、長谷川千鶴(弁護士法人御堂筋法律事務所パートナー弁護士)、貝沼利晃(豊田通商フードマテリアル部部付)です。
2. 事業内容
同社グループは、「食品事業」および「不動産事業」を展開しています。
■食品事業
パン類を中心とする食品の製造販売を行っています。豊田通商から一部原材料等を購入し、自社工場でパン部門や和洋菓子部門の製品を製造・販売しています。また、子会社のスリースター製菓ではクッキー等の製造販売を行っています。
顧客への製品販売から収益を得ています。運営は主に第一屋製パンが行っており、クッキー等の製造販売はスリースター製菓が、製品等の配送はファースト・ロジスティックスが担当しています。
■不動産事業
第一屋製パンが所有する土地を外部へ賃貸する事業を展開しています。主に横浜工場跡地の有効活用などを行い、企業の安定性の確保に向けた収益基盤の構築を目指しています。
所有する不動産の賃貸収入から収益を得ています。運営は第一屋製パンが単独で行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は2021年12月期以降、継続して増加傾向にあります。経常利益は2022年12月期までマイナスでしたが、2023年12月期以降は黒字転換を果たしています。直近の2025年12月期は、売上高が290億円に拡大したものの、コスト上昇等の影響により経常利益および当期利益は前期比で減少しました。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 239億円 | 246億円 | 264億円 | 272億円 | 290億円 |
| 経常利益 | -5億円 | -6億円 | 6億円 | 6億円 | 4億円 |
| 利益率(%) | -2.2% | -2.3% | 2.3% | 2.2% | 1.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -7億円 | -11億円 | 5億円 | 21億円 | 3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加しましたが、売上総利益はほぼ横ばいにとどまり、売上総利益率は低下しています。これに伴い、営業利益および営業利益率も前期と比較して減少する結果となりました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 272億円 | 290億円 |
| 売上総利益 | 75億円 | 75億円 |
| 売上総利益率(%) | 27.4% | 25.9% |
| 営業利益 | 6億円 | 5億円 |
| 営業利益率(%) | 2.2% | 1.6% |
販売費及び一般管理費のうち、配送費が35億円(構成比50%)、給料及び手当が18億円(同26%)を占めています。
■(3) セグメント収益
食品事業はロングセラー商品のリニューアル等により売上が増加したものの、コスト高騰により利益は減少しました。不動産事業は横浜工場跡地の賃料収入が全額計上されたことにより、大幅な増収増益となりました。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益(2025年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 食品事業 | 271億円 | 287億円 | 18億円 | 14億円 | 5.0% |
| 不動産事業 | 1億円 | 3億円 | 0.8億円 | 3億円 | 90.8% |
| 調整額 | - | - | -13億円 | -12億円 | - |
| 連結(合計) | 272億円 | 290億円 | 6億円 | 5億円 | 1.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
第一屋製パンは、生産設備の合理化・更新など継続的な設備投資を計画しており、自己資金、金融機関からの借入及び社債発行等で資金調達を行う方針です。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や仕入債務の増加等があったものの、法人税等の支払額が増加したことなどから、前期と比較して収入が減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、将来の収益基盤強化を目的とした有形固定資産の取得による支出が大幅に増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、預り保証金の受入れや短期借入金の返済負担の減少などにより、収入に転じました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 10億円 | 0.5億円 |
| 投資CF | 39億円 | -19億円 |
| 財務CF | -38億円 | 4億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「おいしさに まごころこめて」をモットーとし、お客様の期待を超える感動をお届けすることを目指しています。創業から培われたパンおよび菓子分野における技術力と商品力をベースに、安全で高品質な商品作りに努め、食を通じた社会の発展に貢献することを経営方針として掲げています。
■(2) 企業文化
一人ひとりが誇りを持ち、おいしさを通じて日々の生活に寄り添うことで顧客、社会の課題解決に貢献し続けることを理念として掲げています。また、現状に満足せず新しいことへのチャレンジや改善を図り、周囲を巻き込んで高めあう姿勢を重視する文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
2026年度の基本方針として「成長を創る」を掲げています。厳しい外部環境が見込まれる中、安定生産体制の維持および省力化運営の実現に向けた積極的な設備投資を加速させ、時代に即した事業運営体制を構築することを目指しています。
* 売上高:329億円
* 営業利益:3.7億円
■(4) 成長戦略と重点施策
食品事業では多様化するニーズに即した高付加価値商品の開発や、ロングセラーシリーズのブランド再構築、キャラクター商品の販路拡大を推進します。また、パンと親和性の高い非日配品のロングライフ商品や冷凍品などの新領域開発にも注力します。不動産事業では横浜工場跡地の賃料収入を活かした収益基盤の強化を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
企業価値を最大化させる人材の育成と、自己啓発やチャレンジが尊重される社風を目指しています。全部門が人材育成を目標として掲げ、チャレンジ精神やリーダーシップに基づいた能力開発を実施しています。また、女性が活躍しやすい環境整備や、中途採用と管理職への登用を積極的に推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 40.0歳 | 15.7年 | 4,818,818円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.7% |
| 男性育児休業取得率 | 80.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 77.6% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 80.5% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 食の安全性と品質管理の徹底
食品の安全性担保のため、全工場でJFS-B規格や国際規格FSSC22000の認証を取得し管理体制を強化しています。しかし、これらの取り組みの範疇を超える重大な事象や問題が発生した場合、同社グループの業績や社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料・エネルギー・運送コストの高騰
売上原価に占める原材料の割合が高く、小麦粉などの安定調達や価格維持に努めています。しかし、異常気象等による価格高騰、電力・ガス料金の上昇、ならびにドライバー不足等による運送コストの増大が、同社グループの収益を圧迫するリスクがあります。
■(3) パン市場における競争激化
パン市場は全体的な需要減や消費者の低価格志向を背景に、同業他社との価格競争やシェア獲得競争が激化しています。業務用商品やコンビニエンスストア向けの販路開拓等で競争力強化を図っていますが、厳しい競合環境により業績に影響が及ぶ可能性があります。



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