オエノンホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オエノンホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オエノンホールディングスは東証プライム市場に上場し、酒類事業、酵素医薬品事業、不動産事業などを多角的に展開しています。主力は焼酎やチューハイなどの酒類製造・販売です。直近の業績では、売上高が前期比で増加し、経常利益や当期純利益も増益となるなど、非常に堅調な成長推移を示しています。


※本記事は、オエノンホールディングスの有価証券報告書(第119期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月19日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. オエノンホールディングスってどんな会社?


酒類や酵素医薬品を中心に、発酵技術を核としたバイオテクノロジーベースの事業を展開しています。

(1) 会社概要


1880年に神谷傳兵衛が浅草で創業した「みかはや銘酒店」にルーツを持ちます。1924年に北海道内の焼酎製造会社4社が合併して合同酒精が設立されました。1949年に東京証券取引所へ上場を果たし、2003年に持株会社体制へ移行してオエノンホールディングスに商号を変更しています。

同社グループは連結従業員数811名、単体従業員数23名の体制で事業を運営しています。筆頭株主は香港上海銀行東京支店を常任代理人とする外国法人等で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は第一生命保険となっています。

氏名 持株比率
THE HONGKONG AND SHANGHAI BANKING CORPORATION LTD - SINGAPORE BRANCH PRIVATE BANKING DIVISION CLIENTS A/C 8221-623793(常任代理人 香港上海銀行東京支店) 23.54%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.06%
第一生命保険(常任代理人 日本カストディ銀行) 5.43%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性4名の計9名で構成され、女性役員比率は44.0%です。代表取締役社長は西永裕司氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
西永裕司 代表取締役社長グループ経営全般、中期経営戦略策定委員会委員長、CSR・コンプライアンス委員会委員長 1988年同社入社。合同酒精執行役員、同社経営戦略企画室長、グループ管理部門担当などを経て、2015年3月より現職。
岡田英明 取締役 1997年同社入社。合同酒精生産本部副本部長、同社執行役員などを経て、2025年3月より現職。
田中直子 取締役 1995年同社入社。合同酒精営業本部副本部長を経て、2020年2月に同社コーポレートコミュニケーション室長。2025年3月より現職。


社外取締役は、尾崎行正(尾崎法律事務所弁護士・指名・報酬委員会委員長)、齋藤忠夫(東北大学名誉教授)、大鹿麗子(元QUICK常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「酒類」「酵素医薬品」「不動産」および「その他」事業を展開しています。

酒類


焼酎、チューハイ、清酒、合成清酒、梅酒、洋酒、加工用洋酒、アルコール等の製造および販売を行っています。また、関連する運送・荷役業務も手がけており、多様な顧客ニーズに対応しています。

収益は顧客への酒類等の販売から得ています。製品の製造は主に合同酒精、福徳長酒類、秋田県醗酵工業、オエノンプロダクトサポートが行い、販売もこれらの各社およびワコーが担っています。運送・荷役はゴーテックが行っています。

酵素医薬品


食品用や乳製品用の酵素、診断薬の製造および販売を行っています。また、乳酸菌などの発酵受託ビジネスも展開しており、健康志向の高まりに応える製品やサービスを提供しています。

収益は酵素や診断薬の販売代金、および発酵受託にかかる手数料などから得ています。これらの製造および販売の運営は、すべて合同酒精が行っています。

不動産


保有する不動産の有効活用を目的として、不動産の売買および賃貸事業を展開しています。賃貸物件の賃料改定などによる収益基盤の強化にも取り組んでいます。

収益は賃貸物件からの賃料収入や不動産の売却代金から得ています。運営は同社のほか、合同酒精、オエノンプロダクトサポート、オエノンアセットコーポレーションが行っています。

その他


報告セグメントに含まれない事業として、倉庫業や荷役業などを展開しています。

収益は倉庫の利用料や荷役手数料から得ており、運営は主にゴーテックが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は安定して成長を続けており、経常利益も一時的な落ち込みを経て近年は回復・拡大傾向にあります。利益率も改善が進んでおり、収益性の向上が確認できます。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 786億円 811億円 849億円 841億円 876億円
経常利益 13億円 -6億円 37億円 36億円 43億円
利益率(%) 1.6% -0.8% 4.4% 4.3% 4.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 8億円 14億円 15億円 16億円

(2) 損益計算書


売上高の増加にともない、売上総利益および営業利益も順調に拡大しています。コストコントロールが適切に行われており、営業利益率も改善傾向にあります。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 841億円 876億円
売上総利益 140億円 155億円
売上総利益率(%) 16.6% 17.6%
営業利益 34億円 41億円
営業利益率(%) 4.1% 4.7%


販売費及び一般管理費のうち、製品運賃保管料が43億円(構成比38%)、給与・手当が20億円(同18%)を占めています。売上原価は722億円で、売上高に対する構成比は82%となっています。

(3) セグメント収益


主力である酒類事業が増収を牽引しています。また、酵素医薬品事業や不動産事業も堅調に推移しており、各セグメントにおいて着実な成長が見られます。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
酒類 787億円 816億円
酵素医薬品 42億円 46億円
不動産 11億円 13億円
その他 1億円 1億円
連結(合計) 841億円 876億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、必要資金を銀行等金融機関からの借入により調達し、一時的な余資は預金等で運用しております。

営業活動によるキャッシュ・フローは、事業活動から生み出される資金であり、同社の収益力を示します。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資や有価証券の取得・売却など、将来の事業成長に向けた投資活動を表します。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入や返済、配当金の支払いなど、資金調達と返済に関する動きを示します。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 43億円 36億円
投資CF -13億円 -19億円
財務CF -29億円 -16億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「自然の恵みを活かし、バイオ技術をベースに、人々に食の楽しさと健やかなくらしを提供します。」というグループ企業理念を掲げています。酒類や酵素医薬品等の分野において発酵技術を核とするバイオテクノロジーをベースとした事業を展開し、お客様に「安心」「安全」をお届けすることを第一に考えています。

(2) 企業文化


グループの普遍概念である「顧客志向」「収益志向」を判断の基礎として、「よき企業市民として誰のためにどう役立つのか」を考え行動する文化を重視しています。これらの価値観に則り事業活動を行い、「将来価値の共創」に資する取り組みを進めることで、経営品質の向上と社会との信頼関係の構築に努めています。

(3) 経営計画・目標


長期ビジョン「NEXT100」の実現に向けて、2024年から2028年までの5年間を対象とする「中期経営計画2028」を策定しています。2028年12月期の定量目標として以下の数値を掲げています。

* 連結売上高:930億円
* 連結経常利益:45億円
* 売上高経常利益率:4.8%
* ROE:10.0%

(4) 成長戦略と重点施策


中核事業の競争力・収益力の強化と新領域への挑戦を戦略の軸としています。酒類事業では付加価値の高い商品の開発や輸出のスケールアップを図り、酵素医薬品事業ではラクターゼの増産に向けた設備投資や発酵受託ビジネスの拡大を進めます。また、適正価格の維持やDXの推進によるコスト低減を徹底します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


多様な働き方の実現が生産性や創造性の向上、多様な人材の確保につながると認識し、柔軟な働き方を可能とする社内環境の整備を進めています。また、中核人材層において属性の多様性を確保し、ダイバーシティの意義を理解し多様性を活かせるマネジメントスキルを学ぶ研修を通じて、自律的な成長を促す人材育成を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 46.8歳 20.3年 7,568,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.7%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 70.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 79.2%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 66.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の平均継続勤務年数(11.4年)、障がい者雇用率(2.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内の酒類市場の変化


人口減少や少子高齢化によって総需要が減少し、販売競争が激化することが見込まれています。低価格帯の節約志向商品と高価格帯の付加価値商品への二極化が進む中、これらの嗜好の多様化への対応が遅れた場合、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 乳製品用酵素市場の変化


主力のラクターゼが属する乳製品用酵素市場において、国内外の企業との競争が激しく、技術革新が急速に進んでいます。新技術や新商品の開発の遅れ、他社による技術革新によって想定を超えた市場環境の変化が生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 原材料の調達と価格高騰


酒類の主要な原材料である粗留アルコールや穀物などは、調達先の天候や経済状況、世界情勢の影響を受けやすく価格が変動します。原材料価格の高騰による製造コストの上昇や、調達自体の難化が生じた場合、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。