※本記事は、コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第67期、自 2024年1月1日 至 2024年12月31日、2025年3月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングスってどんな会社?
コカ・コーラ製品の製造・販売を行う国内最大のボトラーです。地域ボトラーの統合を経て、現在は全国規模で事業を展開しています。
■(1) 会社概要
同社の源流は1960年に設立された日米飲料に始まります。1999年に北九州コカ・コーラボトリングと山陽コカ・コーラボトリングが合併し、コカ・コーラウエストジャパンが発足しました。その後、近畿、南九州、四国の各ボトラーを統合し、2017年にはコカ・コーライーストジャパンとの経営統合により現在の事業体制が確立されました。2018年に現商号へ変更し、2021年には子会社であったキューサイを譲渡しています。
2024年12月31日現在の連結従業員数は14,084人ですが、コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス株式会社自体は純粋持株会社であり、従業員数は0人です。
筆頭株主はザ コカ・コーラ カンパニーの日本法人である日本コカ・コーラで、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)です。ザ コカ・コーラ カンパニーとは「その他の関係会社」の関係にあり、製品の製造・販売等に関する契約を締結しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本コカ・コーラ | 15.48% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.48% |
| GOLDMAN SACHS INTERNATIONAL(常任代理人 ゴールドマン・サックス証券) | 4.73% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性4名の計9名で構成され、女性役員比率は44.4%です。代表取締役社長はカリン・ドラガン氏が務めています。取締役9名のうち7名が社外取締役であり、社外取締役比率は77.8%と非常に高い水準にあります。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| カリン・ドラガン | 代表取締役社長 | コカ・コーラ レバンティスを経て、コカ・コーライーストジャパン代表取締役社長等を歴任。2019年3月より現職。 |
| ビヨン・イヴァル・ウルゲネス | 代表取締役副社長 兼 最高財務責任者(財務本部長) | ザ コカ・コーラ カンパニー財務ディレクター等を経て、2019年3月より現職。コカ・コーラ ボトラーズジャパンビジネスサービス代表取締役会長兼社長を兼務。 |
社外取締役は、和田 浩子(元日本トイザらス社長)、谷村 広和(みちのくコカ・コーラボトリング社長)、行徳 セルソ(元日産自動車常務執行役員)、ステイシー・アプター(ザ コカ・コーラ カンパニーSVP)、濱田 奈巳(マイル・ハイ・キャピタル共同創業者)、サンケット・レイ(ザ コカ・コーラ カンパニー ユニットプレジデント)、佐伯 里歌(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「飲料事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■(1) 飲料事業
日本国内において、「コカ・コーラ」「ジョージア」「綾鷹」「いろはす」等の清涼飲料水やアルコール製品の製造・販売を行っています。スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストア、自動販売機、オンラインなどの多様なチャネルを通じて、一般消費者へ製品を提供しています。
収益は主に、小売店や自動販売機等を通じた飲料製品の販売から得ています。コカ・コーラ ボトラーズジャパンが製造・販売の中核を担い、コカ・コーラ ボトラーズジャパンベンディングが自動販売機のオペレーションを、FVジャパンが飲料・食品の販売を担当しています。また、ザ コカ・コーラ カンパニーおよび日本コカ・コーラとはボトラー契約を締結しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2020年12月期から2022年12月期にかけては、税引前損失および当期損失を計上していましたが、2023年12月期に黒字転換を果たしました。2024年12月期は売上収益が増加し、税引前利益、当期利益ともに大幅な増益を達成しており、業績の回復傾向が鮮明になっています。利益率も改善傾向にあります。
| 項目 | 2020年12月期 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 7,920億円 | 7,858億円 | 8,074億円 | 8,686億円 | 8,927億円 |
| 税引前利益 | -121億円 | -217億円 | -125億円 | 32億円 | 129億円 |
| 利益率(%) | -1.5% | -2.8% | -1.5% | 0.4% | 1.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -47億円 | -25億円 | -81億円 | 19億円 | 73億円 |
■(2) 損益計算書
前期と比較すると、売上収益の増加に伴い売上総利益が増加しました。販売費及び一般管理費も増加しましたが、売上総利益の伸びがそれを上回ったことやその他の収益の増加等により、営業利益は大きく伸長しています。営業利益率は前期の0.4%から1.5%へと大幅に改善しました。
| 項目 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 8,686億円 | 8,927億円 |
| 売上総利益 | 3,842億円 | 4,025億円 |
| 売上総利益率(%) | 44.2% | 45.1% |
| 営業利益 | 34億円 | 134億円 |
| 営業利益率(%) | 0.4% | 1.5% |
販売費及び一般管理費のうち、販売手数料及び販売促進費が1,205億円(構成比31%)、従業員給付費用が1,059億円(同27%)、発送費及び手数料が800億円(同21%)を占めています。売上原価の内訳については、有報内に詳細な構成比の記載はありませんが、原材料費や製造経費等が含まれています。
■(3) セグメント収益
同社は「飲料事業」の単一セグメントであるため、セグメントごとの比較情報は省略します。全社的な増収要因としては、価格改定効果によるケース当たり納価の改善や、新製品の展開、猛暑による需要増などが挙げられます。利益面では、トップラインの成長に加え、変革によるコスト削減効果が寄与しました。
| 区分 | 売上(2023年12月期) | 売上(2024年12月期) | 利益(2023年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 飲料事業 | 8,686億円 | 8,927億円 | 34億円 | 134億円 | 1.5% |
| 連結(合計) | 8,686億円 | 8,927億円 | 34億円 | 134億円 | 1.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業の営業活動で得たキャッシュを、借入金の返済や配当金の支払いに充てつつ、将来への投資は抑制気味に進めている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 591億円 | 489億円 |
| 投資CF | -143億円 | -161億円 |
| 財務CF | -152億円 | -579億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.6%で市場平均(プライム市場9.4%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.0%で市場平均(プライム市場・製造業46.8%)を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「すべての人にハッピーなひとときをお届けし、価値を創造します」というミッションを掲げています。ビジョンとして「すべてのお客さまから選ばれるパートナーであり続けます」「持続可能な成長により、市場で勝ちます」「常に学びながら成長します」等を掲げ、社会との共創価値(CSV)を経営の根幹としています。
■(2) 企業文化
ミッション・ビジョンを実現するために日々意識し大切にしているバリューとして、「Learning(学ぶ向上心を忘れません)」「Agility(変化を恐れず機敏に行動します)」「Result-orientation(結果を見据え最後までやりきります)」「Integrity(誠実と信頼に基づいた気高い志で行動します)」の4つを定めています。
■(3) 経営計画・目標
2028年までの中期経営計画「Vision 2028」において、持続的な利益成長に向けた目標を掲げています。2025年は「利益成長と基盤強化を両立させる年」と位置づけ、トップライン成長戦略や変革施策を実行し、将来にわたって安定的に利益を創出できる成長基盤の構築を目指しています。
* 売上収益成長:年率+2~3%
* 事業利益率:5%以上(450~500億円)
* ROIC:5%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「Vision 2028」の達成に向け、営業分野ではコアカテゴリーの強化や適正な価格戦略、ベンディングチャネルの変革を推進し、利益最大化を目指します。製造・物流分野では、テクノロジー活用やDXを通じたサプライチェーンの高度化、「地産地消モデル」による効率化を進め、コスト競争力を強化します。
* 2025年12月期連結売上収益:9,061億円(前期比1.5%増)
* 2025年12月期連結事業利益:200億円(前期比66.0%増)
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
中期経営計画「Vision 2028」において「人的資本の強化」を重要な基盤と位置づけています。「人材と組織の強化」と「社員のウェルビーイングを促進するカルチャーの醸成」を両輪で進め、現場労働力不足の解消、パフォーマンスドリブンの浸透、次期経営幹部候補や変革リーダーの育成、DE&Iの推進などに注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス株式会社自体は純粋持株会社であり、従業員数は0人です。このため給与等のデータはありません。
■(3) 人的資本開示
同社は主な連結子会社について、以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.6% |
| 男性育児休業取得率 | 101.1% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 72.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 82.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 84.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(2030年までに)(20%)、障がい者雇用率(2.59%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) サイバーセキュリティとシステム
システム障害やサイバーインシデントによる業務停止、情報漏洩が発生した場合、消費者や顧客からの信頼失墜、財務状況の悪化を招く可能性があります。対策として、システム障害軽減策、サイバー攻撃のシミュレーションテスト、情報セキュリティ管理に関する法令遵守、社員トレーニングプログラムによる社内規程の確立などを行っています。
■(2) 人材(確保と維持)
業績不振や人口の高齢化、競争の激しい雇用環境により、十分な人材の確保・維持・育成が困難になるリスクがあります。事業活動やサプライチェーン業務の停滞、成長計画未達につながる可能性があります。これに対し、戦略的な人材育成、多様な人材の採用、業務のアウトソーシング化、職場環境改善による満足度向上などに取り組んでいます。
■(3) 健康と安全
安全システムへの意識欠如やメンタルヘルス問題、老朽化した機器の使用などにより、深刻な労働災害が発生するリスクがあります。死亡事故や重傷事故は評判の低下や法的処罰につながります。ISO45001認証の維持、メンタルヘルス調査、安全教育と研修、コカ・コーラシステムのベストプラクティス活用などを通じてリスク低減を図っています。
■(4) 成長戦略
事業統合、合弁事業、資本投資、プロジェクト管理などの成長施策が、人材能力の問題等により失敗した場合、減損損失による財務状況の悪化や株主からの信頼喪失を招く恐れがあります。柔軟かつ機動的な体制構築、複数シナリオを考慮した戦略策定、必要なスキルセットを確保する人材開発、取締役会および執行役員による監督を行っています。



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