コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングスは東京証券取引所プライム市場に上場し、コカ・コーラなど各種飲料の製造や自動販売機・小売店・飲食店向けの販売を主力事業としています。直近の業績は、売上収益が前期比で微増となった一方で、ベンディング事業での減損損失計上などにより営業赤字へ転落しました。


※本記事は、コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス株式会社の有価証券報告書(第68期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングスってどんな会社?

同社は、コカ・コーラブランド飲料の製造から物流、自動販売機や小売・飲食店向け販売までを担う企業です。

(1) 会社概要

1960年に設立され、1962年にコカ・コーラ等の製造・販売権を取得しました。その後、各地のボトラーとの統合を重ねて事業規模を拡大し、2017年にコカ・コーライーストジャパンと経営統合を実施しました。そして2018年に現在のコカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングスへ商号を変更しました。

現在の連結従業員数は12,667名です。筆頭株主は事業会社の日本コカ・コーラで、第2位は同じく事業会社のTHE COCA-COLA EXPORT CORPORATION、第3位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行となっています。

氏名 持株比率
日本コカ・コーラ 16.60%
THE COCA-COLA EXPORT CORPORATION 10.04%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.65%

(2) 経営陣

同社の役員は男性5名、女性4名の計9名で構成され、女性役員比率は44.4%です。代表取締役社長はカリン・ドラガン氏が務めています。社外取締役は7名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
カリン・ドラガン 代表取締役社長 1993年にコカ・コーラレバンティスに入社し、欧州等のグループ会社で要職を歴任しました。2011年にコカ・コーラウエストに入社し、2019年に同社代表取締役社長に就任し、2022年より現職。
ビヨン・イヴァル・ウルゲネス 代表取締役副社長 兼 最高財務責任者 1997年にザコカ・コーラカンパニーに入社し、アフリカや欧州等で財務部門の要職を務めました。2018年に同社上席執行役員財務本部長に就任し、2019年に代表取締役副社長兼最高財務責任者となり現職。


社外取締役は、和田浩子(Office WaDa代表)、谷村広和(みちのくコカ・コーラボトリング社長)、行徳セルソ(JERA常務執行役員)、ステイシー・アプター(ザコカ・コーラカンパニー本部長)、濱田奈巳(マイル・ハイ・キャピタル代表)、サンケット・レイ(ザコカ・コーラカンパニープレジデント)、佐伯里歌(モリソン・フォースター事務所弁護士)です。

2. 事業内容

同社グループは、「ベンディング事業」「OTC事業」「フードサービス事業」および「その他」事業を展開しています。

ベンディング事業

自動販売機チャネルを通じて、一般消費者に対して各種飲料製品を提供しています。

製品の販売代金が主な収益源です。事業の運営は主にコカ・コーラ ボトラーズジャパン、コカ・コーラ ボトラーズジャパンベンディング、FVジャパンなどが行っています。

OTC事業

スーパーマーケット、ドラッグストア、量販店、コンビニエンスストア、オンラインなどの小売チャネルを通じて、各種飲料製品を提供しています。

小売店やオンラインストアを通じた製品の販売代金が主な収益源となります。事業の運営は主にコカ・コーラ ボトラーズジャパンなどが行っています。

フードサービス事業

レストランやファストフード店などの飲食店チャネルに向けて、各種飲料製品を提供しています。

飲食店への製品や原液の販売代金が主な収益源です。事業の運営は主にコカ・コーラ ボトラーズジャパンなどが行っています。

その他

報告セグメントに該当しない事業活動として、国内の他のコカ・コーラボトラーに対する製品の販売取引などを行っています。

他のボトラーへの製品卸売による販売代金が主な収益源です。事業の運営は同社グループ内の関連会社が行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

過去5年間の業績推移を見ると、売上収益は緩やかな増加傾向が続いています。一方、利益面では数年間にわたり赤字と黒字を繰り返しており、直近の事業年度ではベンディング事業における固定資産の減損損失など非経常的な費用の計上により、税引前利益および当期利益が大幅な赤字へと転落する結果となりました。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 7,858億円 8,074億円 8,686億円 8,927億円 8,938億円
税引前利益 -217億円 -125億円 32億円 13億円 -727億円
利益率(%) -2.8% -1.5% 0.4% 1.4% -8.1%
当期利益(親会社所有者帰属) -25億円 -81億円 19億円 73億円 -508億円

(2) 損益計算書

売上収益は前期と同水準を維持したものの、原材料価格や為替相場の変動によるコスト上昇圧力の影響などを受け、売上総利益はわずかに減少しました。さらに、多額の減損損失や事業構造改善費用が計上されたことにより、営業利益は前期の黒字から大幅な赤字へと落ち込んでいます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 8,927億円 8,938億円
売上総利益 4,025億円 3,993億円
売上総利益率(%) 45.1% 44.7%
営業利益 134億円 -724億円
営業利益率(%) 1.5% -8.1%


販売費及び一般管理費(3,735億円)のうち、販売手数料及び販売促進費が1,204億円(構成比32%)、従業員給付費用が976億円(同26%)、発送費及び手数料が783億円(同21%)を占めています。また、売上原価は4,945億円で、売上収益に対する構成比は55%となっています。

(3) セグメント収益

セグメント別の売上収益を見ると、ベンディング事業は自動販売機市場の縮小傾向や価格改定による数量減少が響き、減収となりました。一方、OTC事業はスーパーやオンライン等での効果的なマーケティングが奏功し増収となり、フードサービス事業も飲食店への価値提案や新規取引の獲得により増収を達成しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
ベンディング事業 4,110億円 3,999億円
OTC事業 4,109億円 4,179億円
フードサービス事業 419億円 453億円
その他 290億円 307億円
連結(合計) 8,927億円 8,938億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社のキャッシュ・フローは、営業活動で得た資金を元手に投資を行い、同時に借入金の返済等も進める「健全型」のパターンを示しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 489億円 611億円
投資CF -161億円 -257億円
財務CF -579億円 -475億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-12.0%でプライム市場の平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は70.5%でプライム市場の製造業平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、企業理念として「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を掲げています。ミッション(使命)は「すべての人にハッピーなひとときをお届けし、価値を創造します」とし、社会にポジティブな価値を提供することを目指しています。また、ビジョン(ありたい姿)として、すべてのお客さまから選ばれるパートナーであり続けることや、持続可能な成長を通じて市場で勝つことなどを定めています。

(2) 企業文化

同社は、ミッションやビジョンを実現するために日々意識する価値観として、「バリュー」を定めています。具体的には、「Learning(学ぶ向上心を忘れない)」「Agility(変化を恐れず機敏に行動する)」「Result-orientation(結果を見据え最後までやりきる)」「Integrity(誠実と信頼に基づいた気高い志で行動する)」の4つを掲げ、社員の行動規範としています。

(3) 経営計画・目標

同社は、株主価値のさらなる増大と持続的な利益成長に向けた新中期経営計画「Vision 2030」を策定し、2030年までの達成すべき事業目標を掲げています。
・事業利益:800億円以上
・ROIC:10%以上
・1株当たり配当金:140~150円
・自己株式取得:累計1,500億円
また、連結配当性向40%以上および連結株主資本配当率(DOE)2.5%以上の継続を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策

同社は、利益をともなうトップライン成長と事業基盤の強化を重点施策としています。ベンディング事業では自動販売機の設置加速やテクノロジーを活用したオペレーション効率化により利益基盤を再構築します。OTC事業やフードサービス事業では、消費者ニーズにあわせたコア製品の強化や意欲的な価値提案による売場拡大を進めます。また、機能統合型物流センター(IDC)の導入など、サプライチェーンの最適化にも注力します。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

同社は、中期経営計画において「人的資本の強化」を重要な基盤と位置づけ、「人材・組織の強化」と「ウェルビーイングを促進するカルチャーの醸成」を両輪で推進しています。デジタライゼーション等の変化に対応するため、社員の自律的なスキル習得を支援し、個人の成長と会社の目標達成の両立を目指します。また、多様な人材が属性によらず能力を最大限に発揮できるよう、ダイバーシティ&インクルージョンの推進にも注力しています。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.1%
男性育児休業取得率 102.2%
男女賃金差異(全従業員) 73.2%
男女賃金差異(正規雇用) 83.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 82.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.56%)、有給休暇取得率(78.6%)、研修および能力開発の平均金額(正社員1人あたり)(108,664円)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) コモディティコストの増加

為替レートの変動、原材料不足、商品価格の変動による調達コストの著しい増加が収益性に悪影響を及ぼすリスクです。これに対し、同社グループはデリバティブ取引やヘッジの利用による影響の軽減を図るほか、コカ・コーラシステム内での共同調達を通じて低コストでの原材料調達を進めています。

(2) 消費者マインドセットの変化

砂糖消費への懸念や健康意識の高まり、価格設定等によって消費者の嗜好が変化し、消費者基盤の喪失につながるリスクがあります。これに対応するため、製品イノベーションやポートフォリオの拡充に注力するとともに、低カロリー・ノンカロリー製品の強化やパッケージサイズの多様化を推進しています。

(3) 人材の確保と維持

人口の高齢化や競争の激しい雇用環境のなかで、十分な人材の確保・育成が困難となり、事業活動やサプライチェーンが停滞するリスクです。同社は戦略的な人材育成計画や給与体系の管理、無人オペレーションやアウトソーシングの活用、職場環境の改善を通じた社員満足度の向上などで対策を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。