片倉工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

片倉工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

片倉工業は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、ショッピングセンター運営などの不動産事業を基盤に、医薬品、消防自動車等の機械関連、機能性繊維などの事業を多角的に展開しています。直近の業績は、売上高が前期比で増加し、営業利益も大幅な増益を達成するなど、増収増益のトレンドを維持しています。


※本記事は、片倉工業株式会社の有価証券報告書(第117期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 片倉工業ってどんな会社?


不動産事業を中核とし、医薬品や機械関連、繊維分野まで幅広く事業を展開する老舗企業です。

(1) 会社概要


1920年に片倉製糸紡績として設立され、1943年に現在の片倉工業へ社名変更し、同時に東亜栄養化学工業(現トーアエイヨー)を設立しました。1949年に株式上場を果たし、1983年に大宮カタクラパーク(現コクーンシティ)を新設して不動産事業を本格化させました。2023年には創業150周年を機に企業理念を刷新しています。

従業員数は連結で900名、単体で104名です。筆頭株主はTHE HONGKONG AND SHANGHAI BANKING CORPORATION LTD - SINGAPORE BRANCH PRIVATE BANKING DIVISION A/C CLIENTSで、第2位は事業会社の三井物産、第3位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)です。

氏名 持株比率
THE HONGKONG AND SHANGHAI BANKING CORPORATION LTD - SINGAPORE BRANCH PRIVATE BANKING DIVISION A/C CLIENTS(常任代理人 香港上海銀行東京支店) 11.19%
三井物産 6.92%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.14%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は上甲亮祐氏が務めています。取締役7名のうち4名が社外取締役であり、過半数を占めています。

氏名 役職 主な経歴
上甲亮祐 取締役社長(代表取締役) 1985年富士銀行入行。みずほ銀行常務執行役員等を経て、2017年同社顧問に就任。2019年より現職。
柿本勝博 取締役常務執行役員 1984年富士銀行入行。同社企画部長やニチビ代表取締役社長等を経て、2025年より現職。
水澤健一 取締役執行役員経理部長 1994年同社入社。企画部長や経営企画部長等を歴任し、2025年より現職。


社外取締役は、大室康一(元三井不動産副社長執行役員)、桑原道夫(元ダイエー代表取締役社長・指名・報酬諮問委員会委員長)、金丸哲也(元農林中央金庫代表理事専務)、真下陽子(特定社会保険労務士人事マネジメント代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「不動産事業」、「医薬品事業」、「機械関連事業」、「繊維事業」および「その他」事業を展開しています。

不動産事業


ショッピングセンター「コクーンシティ」の運営や、各種不動産の開発および賃貸を行っています。地域社会と共生し、エリア価値の向上を目指した施設環境の整備やテナントリニューアルを継続的に推進しています。
収益は、テナントからの賃料収入などが主な柱です。事業の運営は、同社および子会社の三全が行っています。

医薬品事業


虚血性心疾患や高血圧、不整脈等の循環器領域を中心とした医療用医薬品の開発、製造、販売を行っています。後発薬の上市や既存薬の適応拡大を進め、幅広い医療ニーズに対応しています。
収益は、医療機関等への医薬品の販売代金から得ています。事業の運営は、子会社のトーアエイヨーが行っています。

機械関連事業


消防自動車や防災機器の製造および販売のほか、マギルス社製の高所作業車両等の一部製品の国内販売代理店として、販売活動やメンテナンス等のサービスを提供しています。
収益は、官公庁や企業等への特殊車両および防災機器の販売代金から得ています。事業の運営は、同社および子会社の日本機械工業が行っています。

繊維事業


水溶性繊維や耐熱性繊維等の機能性繊維の製造・販売のほか、肌着や靴下等の実用衣料品の企画・販売、ブランドライセンス業などを行っています。
収益は、企業向けの高付加価値繊維の販売代金や、消費者向けの衣料品販売代金などから得ています。事業の運営は、子会社のニチビおよびオグランジャパンが行っています。

その他


ビル管理サービス、ITサービス、印刷紙器の製造・販売、および訪花昆虫(交配用ミツバチ)の販売などを行っています。
収益は、各サービスの提供や製品の販売代金から得ています。事業の運営は、同社および子会社の片倉キャロンサービス、カタクラ・クロステクノロジー、東近紙工が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、一時期減収減益が見られたものの、その後は回復傾向にあります。特に直近では売上高が堅調に推移し、経常利益も大幅に増加するなど、収益性が高まっています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 376億円 343億円 400億円 394億円 407億円
経常利益 39億円 26億円 51億円 55億円 72億円
利益率(%) 10.2% 7.5% 12.7% 13.9% 17.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 43億円 28億円 27億円 14億円 30億円

(2) 損益計算書


売上高は増加していますが、売上総利益はほぼ横ばいで推移しており、売上総利益率はわずかに低下しています。一方で、販売費及び一般管理費が減少したことなどにより、営業利益および営業利益率は大きく改善しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 394億円 407億円
売上総利益 147億円 146億円
売上総利益率(%) 37.4% 35.9%
営業利益 41億円 59億円
営業利益率(%) 10.5% 14.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が5億円、広告宣伝費が5億円を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高は、機械関連事業が大幅に伸長し全体を牽引しました。また不動産事業も着実に成長しています。一方で、医薬品事業や繊維事業、その他事業は減収となりました。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
不動産事業 111億円 117億円
医薬品事業 124億円 117億円
機械関連事業 61億円 78億円
繊維事業 70億円 68億円
その他 28億円 26億円
連結(合計) 394億円 407億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスのため、営業利益と資産売却等によって生み出した資金で借入金の返済等を進める「改善型」のキャッシュ・フロー状況となっています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 56億円 82億円
投資CF -12億円 6億円
財務CF -63億円 -57億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.3%でスタンダード市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.8%で同市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「昨日よりもっと、なくてはならない存在へ。」をミッションとして掲げています。お客様、地域、社会から愛され、信頼される企業であり続けることを目指し、長い歴史の中で培われた有形無形の財産を有効活用して、社会に広く貢献することを方針としています。

(2) 企業文化


「わたしたちの価値観」や「行動指針」を役員および全従業員の羅針盤として定めています。年齢や性別にとらわれず多様性を重視し、「規律を重んじつつも多様性を認め合う組織」の実現を目指すとともに、従業員一人ひとりの主体的な成長と働きがいの向上を促す文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


株主への利益還元を経営上重要な政策の一つとして位置づけており、総還元性向については特殊要因を除き、親会社株主に帰属する当期純利益の60%程度を目安としています。また、人的資本の目標として、2030年までに管理職に占める女性比率を30%以上に引き上げることを目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


不動産事業を基盤としつつ、成長が期待される機能性繊維分野等において積極的な投資を行います。既存事業については環境の変化を踏まえた構造改革や事業運営の見直しを継続し、安定的な収益基盤の確立に努めます。同時に、M&A等を活用して新たな収益機会の創出を推進し、企業価値の向上を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を競争力の源泉と捉え、年齢・性別・経歴を問わず、能力・専門性・人格を重視した採用と育成を進めています。2025年から導入した新しい人事制度のもと、企業理念に基づく行動指針を個人の目標設定や人事評価に反映し、働きがいの向上と組織の競争力強化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 40.6歳 11.8年 6,887,873円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 17.5%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 68.8%
男女賃金差異(正規雇用) 72.3%
男女賃金差異(パート・有期) 48.2%


また、同社は「人的資本」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒・中途採用を含む女性社員採用割合(47%)、育児休業後の職場復帰率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 不動産事業におけるテナント退店リスク


景気動向などにより大型テナントが退店し、その後の建物利用が困難となる場合、多額の解体費用が生じる可能性があります。また、ショッピングセンター事業において特定の核テナントが退店する事態に至った場合、同社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 医薬品事業の規制および開発リスク


医薬品の開発には多額の研究開発費用と長い期間を要し、効果が証明されない場合や副作用により開発が中止される不確実性が伴います。また、医療費の抑制策や医薬品の規制強化、製造・供給体制の制約などにより安定供給に支障をきたす場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 金融市況と保有株式の変動リスク


同社グループは市場性の高い株式を保有しており、株式市場の下落によって保有株式の価値が大幅に減少した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、為替レートの変動や、不動産開発等に係る資金調達時の金利の大幅な上昇も、財務状態に影響を及ぼすリスクとなります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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