※本記事は、コクヨ株式会社の有価証券報告書(第79期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. コクヨってどんな会社?
同社は、文具やオフィス家具の製造・販売から空間構築、オフィス用品通販までを幅広く手掛ける企業です。
■(1) 会社概要
1905年に黒田表紙店として開業し、和式帳簿用表紙の製造を開始しました。1961年に現在のコクヨに社名変更しています。1971年に証券取引所に上場を果たしました。2000年にカウネットを設立してオフィス用品の通信販売を開始し、その後事業再編を経て現在の総合的な事業体制へと拡大を続けています。
現在の従業員数は連結で8,079名、単体で2,346名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は取引会社で構成される持株会のコクヨ共栄会、第3位はKuroda&Sonsとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.70% |
| コクヨ共栄会 | 9.13% |
| Kuroda&Sons | 4.11% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表執行役社長は黒田英邦氏が務めています。社外取締役比率は62.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 黒田 英邦 | 取締役 代表執行役社長 | 2001年同社入社。コクヨオフィスシステム取締役兼執行役員、コクヨファニチャー代表取締役社長などを経て、2015年に同社代表取締役社長執行役員に就任。2024年より現職。 |
| 東條 克昭 | 取締役 | 2000年リコーリース入社。2006年同社入社。取締役室長、執行役員ドメイン戦略室長などを経て、2021年に同社常勤監査役。2024年より現職。 |
| 内藤 俊夫 | 取締役 執行役 | 1985年同社入社。コクヨファニチャー企画本部企画部長、同社ファニチャー事業本部企画統括部長、経営推進室長などを経て、2021年に取締役執行役員経営企画本部長CSO。2024年より現職。 |
社外取締役は、上釜健宏(元東京電気化学工業代表取締役社長)、大森紳一郎(元日立製作所執行役専務)、杉江陸(元新生フィナンシャル代表取締役社長)、東葭葉子(公認会計士東葭葉子事務所代表)、五味祐子(国広総合法律事務所パートナー弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ファニチャー事業」「ビジネスサプライ流通事業」「ステーショナリー事業」「インテリアリテール事業」および「その他」事業を展開しています。
■ファニチャー事業
空間デザイン・コンサルテーション、国内外でのオフィス家具や公共家具の製造・販売および施工等を行っています。働き方の変化に伴う旺盛なオフィス需要をターゲットとし、新築オフィス移転やリニューアルに関する顧客の戦略課題に対応したワークスタイル提案に強みを持っています。
オフィス家具の販売や空間構築サービスの提供に対する対価が主な収益源です。運営は同社のほか、コクヨロジテム、コクヨマーケティング、コクヨアンドパートナーズなどの国内子会社群や、中国・香港、マレーシア、タイ等の海外子会社群が各地域で担っています。
■ビジネスサプライ流通事業
オフィス関連用品の仕入、物流、販売を行っています。プラットフォーム型購買管理システムである「べんりねっと」を基盤として展開しており、テクノロジーを活用することで顧客にパーソナライズされ最適化された購買体験を提供することを目指しています。
企業等の顧客へ販売したオフィス用品等の商品代金が主な収益源です。運営は主にカウネットがオフィス用品等の通信販売を担うほか、コクヨマーケティングが販売を、コクヨサプライロジスティクスが紙製品等の運送および保管業務を行っています。
■ステーショナリー事業
国内外における文具や紙製品の製造、仕入、販売を行っています。提供価値の中心を「まなびかた」に据えたCampusブランドを展開し、国内だけでなく中国やインド、ベトナム、タイなどのグローバル市場に向けて、多様な学習商品を提供しています。
学生や一般消費者をはじめとする顧客へ販売した文具や事務用品の商品代金が主な収益源です。運営は同社のほか、コクヨ工業滋賀やコクヨMVPなどの国内子会社のほか、国誉商業(上海)やコクヨベトナム、コクヨカムリンリミテッドなどの海外子会社が担っています。
■インテリアリテール事業
インテリアおよび生活雑貨の仕入、小売、卸販売を展開しています。接客力と提案力を活用した店舗およびECでの販売を通じ、一般消費者に向けて豊かなライフスタイルを提案するほか、パートナーとの連携強化による法人事業の領域拡張も推進しています。
店舗およびECを通じたインテリア家具や生活雑貨の販売代金が主な収益源です。運営は主にアクタスが担っており、既存の店舗やオンラインショップにおける接客販売とともに、法人向けの事業活動を通じた収益基盤の多様化と持続的成長の実現を図っています。
■その他
報告セグメントに含まれない事業として、事務用機器のリースや損害保険代理業などの事業のほか、中国現地法人の統括管理業務、インテリア販売事業の持株会社としての運営管理業務などを展開しています。
事務用機器のリース料や保険代理店手数料などが主な収益源です。運営は同社が行うほか、コクヨファイナンスがリース業務などを、LmDインターナショナルや国誉(上海)企業管理が統括・管理業務をそれぞれ担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一時期の落ち込みを経て順調な拡大基調にあり、直近期では最高水準を記録しています。経常利益および利益率も総じて改善傾向を示しており、収益性の向上が伺えます。親会社株主に帰属する当期純利益についても、高水準で安定して推移しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,202億円 | 3,009億円 | 3,288億円 | 3,388億円 | 3,599億円 |
| 経常利益 | 164億円 | 212億円 | 260億円 | 244億円 | 272億円 |
| 利益率(%) | 5.1% | 7.0% | 7.9% | 7.2% | 7.6% |
| 当期純利益 | 122億円 | 152億円 | 166億円 | 208億円 | 186億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の拡大に伴い、売上総利益も順調に増加しており、売上総利益率は40%台へと改善しています。営業利益についても売上の伸びを上回るペースで増加し、営業利益率も向上するなど、本業における稼ぐ力が着実に高まっていることが確認できます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3,388億円 | 3,599億円 |
| 売上総利益 | 1,334億円 | 1,445億円 |
| 売上総利益率(%) | 39.4% | 40.1% |
| 営業利益 | 225億円 | 262億円 |
| 営業利益率(%) | 6.6% | 7.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が365億円(構成比30.9%)、荷造運搬費が281億円(同23.8%)を占めています。
■(3) セグメント収益
直近の2025年12月期は、主力事業が力強い牽引役となり、全セグメントで営業増益を達成する極めて好調な決算となりました。国内で続く旺盛なオフィス移転やリニューアル需要を的確に捉え、顧客の課題に対応したワークスタイル提案を強化したことが、全体の業績拡大に大きく貢献しています。
さらに、購買管理システム「べんりねっと」を基盤とした強固な流通網の活用や、ノートブランド「Campus」のリブランディングおよびBtoC向けECの順調な拡大など、各事業がそれぞれの市場で高い競争力を発揮し、グループ全体の収益力を大きく底上げする結果につながりました。
| セグメント | 項目(億円) | 2024年12月期 | 2025年12月期 | 前期比増減 |
|---|---|---|---|---|
| ファニチャー事業 | 売上高 | 1,605 | 1,706 | +101 |
| セグメント利益 | 234 | 261 | +27 | |
| ビジネスサプライ流通事業 | 売上高 | 931 | 1,026 | +95 |
| セグメント利益 | 44 | 54 | +10 | |
| ステーショナリー事業 | 売上高 | 637 | 627 | △10 |
| セグメント利益 | 59 | 70 | +11 | |
| インテリアリテール事業 | 売上高 | 211 | 236 | +25 |
| セグメント利益 | 5 | 7 | +2 | |
| 合計(連結) | 売上高 | 3,388 | 3,598 | +210 |
| 営業利益 | 225 | 262 | +37 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローは、主力のファニチャー事業等の好調を背景に約143億円の安定したキャッシュ(プラス)を確保しています。
投資活動によるキャッシュ・フローは前年度のプラスから一転し、△46億円の支出となりました。これは、持ち合い株式などの有価証券売却による収入(約57億円)を継続的に得つつも、それを上回る規模で無形固定資産(システム等)や有形固定資産への積極的な成長投資を実行したことによる、前向きなマイナス(支出)です。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前年度比でほぼ倍増となる△316億円の大幅な支出となっています。これは約200億円に上る「自己株式の取得」と、約95億円の「配当金の支払」という極めて強力な株主還元によるものです。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 164億円 | 144億円 |
| 投資CF | 123億円 | -46億円 |
| 財務CF | -156億円 | -316億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は70.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、新しい時代に対応した理念として企業理念「be Unique.」を定めています。商品やサービスを通じた「体験」という価値の提供により、顧客の創造性を刺激して個性を輝かせることを目指しています。また、「自律協働社会」の実現に向けた自らの役割を「WORK & LIFE STYLE Company」と位置づけ、持続可能な社会の発展への貢献を追求しています。
■(2) 企業文化
同社は、圧倒的な顧客起点で少し先のワクワクする未来を提案し、社員と顧客が共感して新たな体験価値を生み出す「ワクワク価値創出サイクル」を強みとしています。また、従業員一人ひとりがよりよい未来をつくるための意志や挑戦を「ヨコク」として発信し、それに共感する仲間が集まって実現に向けて協働や応援をする組織文化を大切にして事業を展開しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2030年に向けた「長期ビジョンCCC2030」の達成に向け、2027年度を最終年度とする第4次中期経営計画「Unite for Growth 2027」を推進しています。既存事業の成長と領域拡張を進めることで、以下の数値目標の達成を目指しています。
・売上高:4,300億円
・海外売上高比率:20%
・EBITDA:430億円
・ROE(自己資本当期純利益率):9%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、各事業のナレッジを掛け合わせて事業間シナジーを生み出すことで、既存事業の成長と領域拡張を進めています。キャッシュ・フローを重視したフレームワークを設定して企業価値の最大化を図るほか、「ワクワク価値創出サイクル」の強みを活かした体験価値拡張戦略を実行し、日本・海外における既存事業の強化やM&Aを通じた成長を追求しています。また、人材の充実等により経営基盤を強化し、持続的成長を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人材マネジメントポリシー」を策定し、「人材を社会の財産と捉え、一人ひとりの可能性に伴走しながら、事業成長と社会に貢献できる人材を輩出する」ことを共通認識としています。多様な人材による創造性豊かな挑戦を後押しするため、業務時間の20%程度を活用して他組織の業務に参画できる「20%チャレンジ」などの機会を提供するほか、人材育成機関「コクヨアカデミア」を通じた次世代リーダーの育成を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 41.5歳 | 15.4年 | 7,864,322円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 14.5% |
| 男性育児休業取得率 | 81.1% |
| 男女賃金差異(全従業員) | 76.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 76.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 79.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(76.8%)、「挑戦する風土」スコア(72)、eNPS(-58.2)などです。
6. 事業等のリスク
■(1) 国内外の経済動向および市場の変動リスク
同社の売上は概ね国内向けであり、国内景気の変動に伴う企業収益や設備投資、人口動態の変化が業績に影響を及ぼす可能性があります。また、中国をはじめとする海外市場での景気停滞や政治経済・社会情勢の変化、インフレ圧力や原油価格上昇による原材料・物流コストの高騰なども、事業運営に影響を与えるリスクとなります。
■(2) 市場環境の変化および競争激化リスク
市場は顧客の購買チャネルの変化やデジタル化の進展などの影響を受けており、競争が激しさを増しています。優位性の維持や獲得が滞った場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、他社での不正アクセス事案の反動による一時的な競争激化や、物流・建設業界での人手不足などの社会課題への対応も継続的な課題となります。
■(3) 法規制の遵守およびコンプライアンスに関するリスク
同社グループは商品の品質、環境、労務、安全衛生など様々な法規制の適用を受けており、これらに違反した場合には業績や社会的評価に悪影響を及ぼす可能性があります。意図的な売上計上の前倒しや不正取引の発生リスクが存在するため、同社はコンプライアンスの推進や内部統制の強化により、法令等の遵守とリスク低減を図っています。



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