四国化成ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

四国化成ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場上場の同社は、化学品と建材を2本柱とするメーカーです。2025年12月期はファインケミカルが好調に推移し、売上高707億円、経常利益119億円と増収増益で過去最高を記録しました。一方、法人税等の増加などにより、親会社株主帰属の当期純利益は減少しています。


※本記事は、四国化成ホールディングス株式会社の有価証券報告書(第106期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 四国化成ホールディングスってどんな会社?


化学品と建材の2つの事業領域を持ち、独自の技術力と提案力で社会課題の解決を目指す研究開発型企業です。

(1) 会社概要


同社は1947年に香川県で二硫化炭素の製造を目的に発足しました。1970年に建材部門に進出し、1975年には東証・大証市場第一部に指定されています。2023年1月には持株会社体制へ移行し、現在の社名に変更しました。直近ではインドやタイに現地法人を設立し、グローバル展開を加速させています。

現在の従業員数はグループ全体で1,331名、単体で26名です。筆頭株主はシコク共栄会で、第2位は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は日清紡ホールディングスです。

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役社長は渡邊充範氏が務めています。

氏名 役職 主な経歴
渡邊 充範 代表取締役社長 1980年同社入社。経営企画室長、企画・管理担当補佐、企画本部長などを経て、2023年1月より現職。
濱﨑 誠 専務取締役 1980年同社入社。技術部長、丸亀工場長、生産・技術本部長などを経て、2025年3月より現職。
眞鍋 宣訓 常務取締役 1988年同社入社。建材事業営業統括、事業推進本部長などを経て、2023年1月より現職。
池田 雄一 取締役 1992年同社入社。徳島工場長、R&Dセンター所長などを経て、2023年3月より現職。
安藤 慶明 取締役 1990年野村證券入社。2021年同社入社。財務部長、企画財務統括などを経て、2023年3月より現職。


社外取締役は、森清(元三井物産メタルズ代表取締役社長)、外村正一郎(元旭化成執行役員研究開発センター長)、太田穰(長島・大野・常松法律事務所シニアカウンセル)、石川幸子(立命館大学国際関係学部特別任用教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「化学品事業」および「建材事業」と「その他」を展開しています。

(1) 化学品事業


無機化成品(タイヤ向け不溶性硫黄など)、有機化成品(塩素化イソシアヌル酸を中心とした殺菌消毒剤など)、ファインケミカル(プリント配線板向け防錆剤や半導体プロセス材料など)を提供しています。タイヤメーカーやIT関連企業をはじめとした法人が主な顧客です。

顧客からの製品販売代金として収益を獲得しています。四国化成工業を中心に、シコク硫炭、増田化学工業などが生産を担当し、国内外の子会社を通じて販売を行っています。

(2) 建材事業


内装・外装用壁材や、門扉、フェンス、カーポートといった住宅・景観エクステリア製品を提供しています。住宅設備市場や公共投資、民間の設備投資に関連する建築業者などが主な顧客です。

顧客からの製品販売代金が主な収益源です。四国化成建材が中心となり、シコク景材やシコク工機などの子会社が生産を担当し、販売や空間提案を行っています。

(3) その他


情報システム事業やファーストフード販売、損害保険代理業などを展開しています。同社のコンピュータの運営管理業務の受託や一般消費者へのサービス提供を行っています。

各種サービスの提供対価として収益を獲得しています。運営はシコク・システム工房やシコク・フーズ商事などの子会社が担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2022年の決算期変更を経つつ、売上高は順調に拡大傾向にあります。直近の2025年12月期はファインケミカルの好調が牽引し、売上高および経常利益ともに過去最高を記録しました。

項目 2022年3月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 541億円 466億円 631億円 695億円 707億円
経常利益 93億円 73億円 93億円 108億円 119億円
利益率(%) 17.2% 15.6% 14.7% 15.5% 16.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 69億円 50億円 79億円 88億円 85億円

(2) 損益計算書


売上総利益率は前期から3.5ポイント改善し、収益性の向上が見られます。増収効果に加えて、高付加価値製品の販売増や価格改定の進展が利益水準の押し上げに寄与しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 695億円 707億円
売上総利益 277億円 307億円
売上総利益率(%) 39.8% 43.3%
営業利益 97億円 109億円
営業利益率(%) 14.0% 15.4%


販売費及び一般管理費のうち、運送費及び保管費が67億円(構成比33.6%)、給料が29億円(同14.6%)、研究開発費が21億円(同10.7%)を占めています。

(3) セグメント収益


化学品事業はファインケミカル分野の需要拡大により増収増益を達成しました。一方、建材事業は新設住宅着工戸数の減少や原材料・物流コスト高騰の影響を受け、減収減益となっています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
化学品事業 499億円 516億円 86億円 101億円 19.6%
建材事業 185億円 180億円 10億円 5億円 3.0%
その他 11億円 12億円 - - -
調整額 3億円 3億円 1億円 1億円 -
連結(合計) 695億円 707億円 97億円 109億円 15.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当期は営業CFでしっかりと資金を創出し、保有する投資有価証券の売却等で投資CFもプラスとなる一方、借入金の返済や自己株式の取得により財務CFがマイナスとなる「改善型」の傾向を示しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 90億円 110億円
投資CF -156億円 22億円
財務CF -37億円 -115億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.0%で市場平均を上回っています。いずれも市場平均を上回る健全な水準です。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


至上の価値観である「独創力」を企業理念に掲げています。2030年にありたい姿として、「独創力で、“一歩先行く提案”型企業へ」を定め、独創的なアイデアで社会課題を解決し、世界をリードする企業となることを使命としています。

(2) 企業文化


良き企業市民として顧客、従業員、株主、社会に貢献する「四方よし」を活動方針にしています。顧客に「一歩先の価値」を、従業員に「挑戦と成長」を、株主に「利益還元」を、社会に「より良い明日」を届けることで、ステークホルダーへの貢献を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2030年を見据えた長期ビジョン「Challenge 1000」に基づき、以下の財務目標の達成に向けて取り組んでいます。
・売上高1,000億円
・営業利益150億円
・ROE10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「お客様のご要望起点」から「四国化成からの提案起点」へのスタイル変革を推進しています。各事業の強みを高め、世界中のお客様に先回りした提案を行うほか、オープンイノベーション推進のためCVCファンドを設立し、新規事業創出と世界展開を加速させます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「使命感にあふれ、自ら考え挑戦する人財」を求める人財像とし、性別や国籍にかかわらない多様な人財の確保・育成に注力しています。ワークライフバランスの推進や健康増進、主体的な学びを支援する制度の整備を進め、エンゲージメントの高い組織づくりを目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 50.0歳 22.6年 8,802,203円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.7%
男性育児休業取得率 62.5%
男女賃金差異(全労働者) 81.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 89.5%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 88.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(77.7%)、ストレスチェックによる高ストレス者比率(21.7%)、障がい者雇用率(1.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場と経済状況の変動

化学品の需要は日本や海外の経済状況の影響を受けやすく、建材事業も日本の景気に依存しています。主要市場における景気後退やインフレ、物流費の高騰は業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 為替相場の変動

製品の輸出や原材料の輸入に伴い、円高・円安などの為替変動リスクに晒されています。為替予約によるリスクヘッジを行っていますが、中長期的な変動は利益率や競争力の低下をもたらす可能性があります。

(3) 新製品開発の不確実性

収益の多くは独自の製品技術に依存していますが、新技術の開発には不確実性が伴います。市場のニーズを正確に予測できず、魅力ある新製品を適時に開発できない場合、将来の成長や収益性が低下する恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

四国化成ホールディングスの転職研究 2025年12月期決算に見るキャリア機会

四国化成ホールディングスの2025年12月期決算は、化学品事業の躍進により主要3利益で過去最高を更新。インドネシア企業の買収決定や、4年間で最大660億円を投じる積極投資など、グローバル成長への転換点を迎えています。「なぜ今四国化成なのか?」「転職希望者がどの事業で、どんな役割を担えるのか」を整理します。