トーア紡コーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トーア紡コーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トーア紡コーポレーションは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、衣料、インテリア産業資材、エレクトロニクス、ファインケミカル、不動産など多角的な事業を展開しています。直近の業績は、主力事業における市場環境変化などの影響を受けて減収減益となりましたが、高付加価値商品の提供などにより収益性向上に取り組んでいます。


※本記事は、株式会社トーア紡コーポレーションの有価証券報告書(第24期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. トーア紡コーポレーションってどんな会社?


衣料やインテリア産業資材を中心に、ファインケミカルなど幅広い領域で事業を展開する老舗企業です。

(1) 会社概要


2003年に東亜紡織の株式移転により持株会社として設立され、東京証券取引所等に上場しました。同年、会社分割により各事業会社へ事業を承継し、現在のグループ体制の基礎を構築しています。2022年には創立100周年を迎えました。近年は2023年にムサシノ製薬を子会社化するなど事業領域の拡大を進めています。

同社の従業員数は連結で414名、単体で74名です。筆頭株主は事業会社のソトーで、第2位は個人の株主、第3位は従業員持株会となっています。

氏名 持株比率
ソトー 6.21%
中間信幸 3.80%
トーア紡グループ従業員持株会 3.15%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長は長井渡氏が務めています。社外取締役の比率は約36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
長井渡 代表取締役社長社長執行役員不動産事業担当 1980年東亜紡織入社。トーア紡コーポレーション執行役員財務部長、取締役等を経て、2014年代表取締役社長社長執行役員に就任。2024年より現職。
久保徹 取締役常務執行役員インテリア・産業資材事業担当 1983年東亜紡織入社。トーア紡マテリアル執行役員営業第3部長等を経て同社代表取締役社長に就任。2024年より現職。
戸口雄吾 取締役常務執行役員衣料事業担当 1986年東亜紡織入社。トーア紡コーポレーション上席執行役員等を経て東亜紡織代表取締役社長に就任。2024年より現職。
戸川崇光 取締役上席執行役員ファインケミカル事業担当 1985年山口県信用組合入組。1993年大阪新薬入社。同社取締役等を経て、トーア紡コーポレーション上席執行役員等を歴任。2021年より現職。
堀口泰夫 取締役上席執行役員事業部門担当 1984年三社電機製作所入社。1989年東亜紡織入社。トーア紡コーポレーション上席執行役員等を経てムサシノ製薬代表取締役会長に就任。2025年より現職。
玉田暢生 取締役上席執行役員内部統制・総務・人事・財務・経理・IT推進担当兼経営企画部長 1989年東亜紡織入社。同社取締役等を経てトーア紡コーポレーション上席執行役員経営企画部長に就任。2025年より現職。
近江学 取締役(監査等委員) 1988年東亜紡織入社。トーア紡コーポレーション執行役員管理本部副本部長、上席執行役員等を経て2023年より現職。


社外取締役は、坂下清信(日本橋梁会長)、高島志郎(弁護士・平和堂取締役)、辻村美樹(公認会計士・税理士)、師井勝也(日本トランスシティ常勤監査役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「衣料事業」「インテリア産業資材事業」「エレクトロニクス事業」「ファインケミカル事業」「不動産事業」および「その他」事業を展開しています。

衣料事業


毛糸や毛織物などの各種繊維を原料とする衣料用素材の製造・販売、および制服の縫製加工やニット製品の製造・販売を行っています。学生服や官公庁、企業向け制服などを幅広く提供しています。

商品や製品の販売による代金を顧客から受け取ることで収益を上げています。事業の運営は主に東亜紡織、トーアアパレル、トーアニットなどが担当しています。

インテリア産業資材事業


自動車用内装材、住宅建材、排水処理資材、土木資材、緑化資材などの産業用資材をはじめ、インテリア関連製品やオレフィン系短繊維の製造および販売を行っています。

製品の販売による代金を顧客から受け取ることを収益源としています。事業の運営は主にトーア紡マテリアルが担当しています。

エレクトロニクス事業


電動工具向けコントローラーなどの半導体や電子機器の製造、および電子デバイスの販売などを行っています。国内外のOA機器、家電、医療機器メーカー向けなどにも展開しています。

製品や商品の販売による代金を顧客から受け取ることで収益を上げています。事業の運営は主にトーア紡コーポレーションが担当しています。

ファインケミカル事業


ヘルスケア関連薬品や電子材料用および工業用薬品の製造・販売を行っています。半導体向け材料やジェネリック向け医薬品などを提供しています。

商品や製品の販売による代金を顧客から受け取ることを収益源としています。事業の運営は主に大阪新薬およびトーア紡コーポレーションが担当しています。

不動産事業


保有する資産の有効活用として、郊外型ショッピングセンター、ロードサイド店舗、オフィスビルなどの賃貸や、ゴルフ練習場の運営などを行っています。

テナント等から受け取る賃貸料などを収益源としています。事業の運営は主にトーア紡コーポレーションおよびトーア興発が担当しています。

その他


自動車教習所の運営、ヘルスケア商品の販売、洋菓子店の運営、魚粉・魚油の取り扱い、魚の養殖の事業支援など、多岐にわたる事業を展開しています。

サービス提供や商品販売による代金を受け取ることで収益を上げています。事業の運営はトーア自動車学校、ナールスコーポレーション、ムサシノ製薬、たがやすなどが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2023年12月期に190億円を超える水準に達しましたが、その後は減少傾向にあります。経常利益率も3%から4%台で推移しており、当期は主力事業の市場環境変化などの影響を受け、減収減益となりました。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 155億円 170億円 190億円 184億円 175億円
経常利益 4億円 5億円 8億円 9億円 7億円
利益率(%) 2.7% 3.1% 4.3% 4.7% 4.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 3億円 2億円 5億円 5億円

(2) 損益計算書


売上高の減少に伴い、売上総利益も微減となりましたが、売上総利益率は約20%を維持しています。一方で、運送コストや人件費の増加により販売費及び一般管理費が増加したため、営業利益は減少しました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 184億円 175億円
売上総利益 36億円 36億円
売上総利益率(%) 19.6% 20.5%
営業利益 7億円 6億円
営業利益率(%) 3.7% 3.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料賃金が9億円(構成比31%)、運賃・保管料が5億円(同17%)を占めています。売上原価は139億円で、売上高に対する構成比は79%となっています。

(3) セグメント収益


各事業で売上が変動しています。衣料事業は学生服業界の在庫調整などの影響で減収となり、エレクトロニクス事業も米国関税政策の影響で大幅な減収となりました。一方、ファインケミカル事業は電子材料分野の需要増により増収を記録しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
衣料事業 65億円 59億円
インテリア産業資材事業 74億円 72億円
エレクトロニクス事業 16億円 11億円
ファインケミカル事業 12億円 15億円
不動産事業 9億円 9億円
その他 7億円 8億円
連結(合計) 184億円 175億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動と投資活動で得た資金を借入金の返済などの財務活動に充てる「改善型」の傾向を示しています。
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.8%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は40.7%であり、いずれも市場平均を下回っています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 6億円 10億円
投資CF -2億円 1億円
財務CF -2億円 -13億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「暮らしと社会の明日を紡ぐトーア紡」を経営理念に掲げています。品質の追求と新しい価値の創造、環境負荷の低減に積極的に取り組むことで、モノづくりの伝統を未来へつなげることを基本方針としています。社会に貢献し、常に成長・発展し続ける企業として、事業の永続性を確かなものとすることを目指しています。

(2) 企業文化


創業者の訓示である「顧客満足」「重点主義」「公平性」を脈々と受け継いでいます。人々や暮らしの「アメニティ(快適・ここちよさ)」を追求する企業グループであり続けるという価値観を重視しています。また、従業員の多様性や人格を尊重し、安全で働きやすい環境を確保する「企業行動憲章」を定めています。

(3) 経営計画・目標


「中期経営計画 TOA FG2027」を策定し、「収益力向上への継続的挑戦」と「挑戦し続ける組織風土の醸成」を成長テーマとしています。環境変化への対応力強化と成長事業の基盤確立により事業基盤の強化を目指しています。

* 2027年12月期売上高:200億円
* 2027年12月期営業利益:10億円
* 2027年12月期経常利益:8.7億円
* 2027年12月期親会社株主に帰属する当期純利益:7.3億円

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画の達成に向け、各事業での新販路や新商材でのシェア拡大、積極的な設備投資の継続を基本戦略としています。また、多様な人材が活躍できる仕組みづくりや、環境・社会へのサステナビリティへの取り組みも推進します。衣料事業でのDX推進や、ファインケミカル事業での成長分野の強化などに注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「従業員の多様性、人格、個性を尊重するとともに、安全で働きやすい環境を確保し、ゆとりと豊かさを実現する」という理念のもと、安定的な新卒採用や高度専門技能を有する人材の積極採用を行っています。また、女性の基幹職・管理職への登用を推進し、社員一人ひとりの能力向上を育む研修制度と職場教育を提供しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 48.0歳 18.1年 6,803,247円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、基幹職に占める女性の割合(16.1%)、管理職に占める女性の割合(6.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 有利子負債への依存度


同社グループは有利子負債の圧縮を進めていますが、純資産に対する有利子負債残高の比率が比較的高い状態にあります。そのため、現在の金利水準が大きく変動した場合には、支払利息の増加などを通じて経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) カントリーリスク


海外企業との輸出入取引や、中国・ベトナムにおける生産拠点での事業展開を行っています。これらの国や地域において、法令・規制の変更や政治・経済・社会情勢に起因する予期せぬ事態が発生した場合、債権回収や事業継続が困難になるリスクがあります。

(3) 購入原料の変動リスク


主力である衣料事業およびインテリア産業資材事業で使用する原料は、原油相場や羊毛相場などの国際商品市況の影響を受けやすい特徴があります。これらの原料の供給量や価格が大幅に変動した場合には、製品コストの上昇などにより業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。