ネクセラファーマ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ネクセラファーマ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ネクセラファーマは東京証券取引所プライム市場に上場する、テクノロジーに立脚したバイオ医薬品企業です。医薬品の研究から開発、販売までを中核事業としてグローバルに展開しています。直近の業績は売上収益が296億円と増収となったものの、一時的な費用の計上等により税引前損失は150億円と赤字幅が拡大しました。


※本記事は、ネクセラファーマ株式会社の有価証券報告書(第36期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はIFRSです。

1. ネクセラファーマってどんな会社?


医薬品の研究から開発、販売までをグローバルに手掛けるバイオ医薬品企業です。

(1) 会社概要


1990年にバイオ医薬品の研究開発等を目的に設立され、1999年に医薬品開発事業を本格化しました。2004年に東証マザーズへ上場し、2015年の英国企業買収で創薬基盤を強化しました。2023年には日本や韓国での開発・販売体制を取得し、2024年4月にネクセラファーマへ社名を変更しています。

同社グループは連結で382名、単体で50名の従業員を擁しています。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は個人投資家の五味大輔氏、第3位は投資ファンドのJICVGIオポチュニティファンド1号投資事業有限責任組合となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.43%
五味 大輔 8.03%
JICVGIオポチュニティファンド1号投資事業有限責任組合 6.2%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表執行役社長CEOはクリストファー・カーギル氏が務めており、取締役7名中6名を社外取締役が占めています。

氏名 役職 主な経歴
クリストファー・カーギル 取締役取締役会会長
代表執行役社長CEO
2009年KPMG入社。JPMorgan Chase等を経て2017年同社入社。CFOやCOOを歴任し、2022年3月より代表執行役社長CEO。2025年3月より現職。


社外取締役は、デビッド・ロブリン(英国Relation Therapeutics社CEO)、ロルフ・ソダストロム(英国Syncona社エグゼクティヴ・パートナー・監査委員長)、富田英子(元ブリストル・マイヤーズスクイブ ヴァイスプレジデント)、志村直子(西村あさひ法律事務所パートナー弁護士)、ニコラ・ラブソン(英国Linklaters社パートナー弁護士・報酬委員長)、諸岡健雄(PHコンサルティング代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医薬品事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) 創薬・初期開発


GPCR(Gタンパク質共役受容体)を標的とする新規の低分子、ペプチドならびに抗体医薬品など、アンメットメディカルニーズに応える革新的な新薬の創製を行っています。独自の構造ベース創薬プラットフォーム技術により、神経疾患や免疫疾患などの治療領域をターゲットとした候補品の探索や初期臨床開発を進めています。

収益源は、大手製薬企業などとの共同研究やライセンス契約に基づく契約一時金、開発の進捗に応じたマイルストン収入などです。研究開発活動は主に英国に拠点を置く100%子会社のNxera Pharma UKが担当しており、将来的に開発品を他社へ導出することで収益を獲得するモデルを構築しています。

(2) 後期開発・販売


外部から開発リスクの低い承認済または後期臨床開発段階にある医薬品を導入し、日本およびアジア太平洋地域(中国を除く)の患者に革新的な治療オプションを提供しています。脳血管攣縮治療薬「ピヴラッツ」や不眠症治療薬「クービビック」などのスペシャリティ医薬品を取り扱っています。

収益源は、医療機関や提携先等に対する製品供給収入や、販売額に応じたロイヤリティ収入などです。日本市場における臨床開発や販売はネクセラファーマジャパンが、韓国市場ではNxera Pharma Koreaが中心となって事業を運営しており、安定的な収益基盤の確立を目指しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上収益はM&Aの実施や新規提携、製品販売の拡大などにより増加傾向にあり、当期は過去最高を記録しています。一方で、積極的な研究開発投資の継続や、企業買収に伴う条件付対価の評価損、社債の条件変更損などの一時的な費用の計上が重なり、直近3期は税引前赤字が続いています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 177億円 156億円 128億円 288億円 296億円
税引前利益 4億円 11億円 -107億円 -47億円 -150億円
利益率(%) 2.4% 6.9% -83.7% -16.2% -50.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 4億円 -72億円 -48億円 -125億円

(2) 損益計算書


売上収益は自社販売製品の好調により微増となりました。売上総利益率は製品原価の減少等により大きく改善しましたが、研究開発への積極的な投資や販売体制の構築に伴う経費の増加などにより、営業赤字幅は拡大しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 288億円 296億円
売上総利益 43億円 122億円
売上総利益率(%) 14.9% 41.3%
営業利益 -54億円 -85億円
営業利益率(%) -18.8% -28.6%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が62億円(構成比41%)、減価償却費等が35億円(同23%)を占めています。売上原価については、製品製造原価や商品仕入実績などが計上されています。

(3) セグメント収益


同社は医薬品事業の単一セグメントです。国内での主力製品「ピヴラッツ」の販売好調や、新規不眠症治療薬「クービビック」の販売開始などにより売上は増加しました。一方で、研究開発への継続的な投資増加や円安の影響などにより、営業損失は拡大しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
医薬品事業 288億円 296億円 -54億円 -85億円 -28.6%
連結(合計) 288億円 296億円 -54億円 -85億円 -28.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは「事業検討型」です。本業が低迷し、事業の見直しが迫られる状況を示しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF -77億円 -27億円
投資CF -48億円 54億円
財務CF -69億円 -160億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-19.3%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は42.6%で、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「日本から世界にイノベーションを届け、日本発の国際的なリーディングバイオ医薬品企業となること」を目指しています。テクノロジーに立脚したバイオ医薬品企業として、日本のみならず世界中のアンメットニーズ(いまだ満たされていない医療ニーズ)に応え、患者の生活の質(QOL)を向上させる新しいスペシャリティ医薬品を届けることを経営方針として掲げています。

(2) 企業文化


同社は「世界をリードするサイエンスで、人生を変える医薬品を届ける」というビジョンのもと、ダイバーシティ&インクルージョンの推進とコラボレーション型の職場環境を重視しています。また、最高水準の透明性、完全性、説明責任にコミットする企業文化の強化に継続して取り組んでおり、多様なバックグラウンドを持つ人材が互いに協力し合いながら、革新的な医薬品の創出に挑戦する風土が根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社は中長期的な成長に向けた目標として、「2030年ビジョン」を掲げて事業を展開しています。自社開発および外部から導入した医薬品パイプラインの価値を最大化し、国際的なリーディングバイオ医薬品企業としての基盤を強固なものにすることを目指しています。

* 売上高:500億円以上
* 営業利益率:30%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は事業拡大と価値創造の機会を持続的に創出するため、資本効率の良いビジネスモデルを追求しています。具体的には、日本およびアジア太平洋地域の患者に自社開発や他社から導入した革新的な新薬を提供する体制を強化しています。同時に、独自の構造ベース創薬「NxWave™」プラットフォーム技術を活用し、ニーズが高く急成長している治療領域をターゲットとした研究開発を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、事業活動を牽引する優秀な人材を適材適所に確保し、将来を見据えた育成を行うことを重要な戦略と位置づけています。社員が会社の理念や目標を深く理解し、進むべき方向性を共有して一体感を高めることを重視しています。さらに、快適なオフィス環境の維持や柔軟な働き方の導入、専門家との交流や研修の実施などを通じて、社員が会社に愛着を持ち、安心して長く働ける環境の整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 46.8歳 3.7年 12,565,052円


※平均年間給与は賞与、株式報酬及び時間外手当を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国籍従業員比率(59%)、女性従業員比率(44%)、女性管理職比率(30%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 創薬・研究開発の不確実性


医薬品の研究開発は、基礎研究段階から承認取得に至るまで長期間を要し、多額の先行投資が必要となる一方で、その成功確率は極めて低いという不確実性を伴います。開発が成功しない新薬候補品や機能しないテクノロジーに対して投資が行われた場合、同社の財政状態および経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。同社はパートナー企業との共同研究や開発品の導入により、資金負担やリスクの分散を図っています。

(2) 提携先の事業戦略見直しによる影響


医薬品業界は競争が激しく、技術革新が急速に進むため、大手製薬企業は競争力維持のために事業戦略を定期的に見直します。その結果として、同社が構築している提携関係の解消や開発計画の変更等が生じた場合、収益の減少など業績に悪影響を及ぼすおそれがあります。同社は提携先との良好な関係維持に努めるとともに、収益性のある複数品目を研究開発することで、単一の提携への依存リスクを低減させています。

(3) 開発・販売における副作用や製造物責任


医薬品は臨床試験から市販後に至るまで、予期せぬ副作用等が発現するリスクがあります。副作用による製品の回収、製造販売の中止、薬害訴訟の提起等に発展した場合、同社の業績や社会的信用に深刻な影響を与える可能性があります。また、製品が安全性や品質の基準を満たさず製造物責任を負うリスクにも直面しています。同社は提携会社や委託先と連携した安全管理体制の構築や、適切な保険加入によって対応しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。