※本記事は、伊勢化学工業株式会社 の有価証券報告書(2025年12月期、2025年1月1日 ~ 2025年12月31日、2026年3月27日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
伊勢化学工業は、地下かん水を主原料とするヨウ素及び天然ガス事業を主力とし、金属化合物事業も展開する化学メーカーです。国内外で製品を販売し、高品位な金属化合物の製造にも強みを持っています。
単体従業員数は299名、連結従業員数は327名です。セグメントはヨウ素及び天然ガス事業、金属化合物事業の2つです。
国内においては伊勢化学工業が生産・販売を一手に担い、海外1社の連結子会社を通じてグローバルに事業を展開しています。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
伊勢化学工業は、化学製品の製造を主軸とする企業であり、その事業特性から安定した環境で働くことが期待されます。従業員の平均勤続年数や平均年齢からは、長期的なキャリア形成が可能な職場であることがうかがえます。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社では、従業員が比較的長く勤める傾向にあり、年齢構成も安定していることが特徴です。これは、長期的な視点でキャリアを築きたいと考える方にとって、魅力的な環境であると言えるでしょう。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 8,219,537円 |
| 平均勤続年数 | 15.9年 |
| 平均年齢 | 41.2歳 |
| 単体従業員数 | 299人 |
| 連結従業員数 | 327人 |
| 単体のグループ内比率 | 91.4% |
退職給付制度として、同社グループは確定給付型(給与や勤続年数に応じて給付額が決まる)と確定拠出型(会社が拠出した資金を従業員が運用する)の制度を併用しています。この制度は国内および海外のグループ会社に適用されています。
退職一時金制度は存在しますが、支給条件や金額の算定方法は有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。なお、確定給付型の退職給付債務は14.3億円、年金資産は2.2億円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
伊勢化学工業は、「持続可能な開発」、「技術フロンティアへの挑戦」、「安全と信頼」を次の100年に向けた「ありたい姿」として掲げています。その実現に向け、人財を重要な経営基盤と位置付け、人的資本経営を推進しています。
事業の持続的成長を支える適切な人財の獲得と育成、安全でやりがいを持って働ける環境づくりによる個の力を活かす組織力の向上に取り組んでいます。具体的には、社内外研修の開催・参加、教育計画の策定・実行、労使一体となった職場環境の改善を進めています。
また、労働災害防止を目的とした安全・保安・防災教育訓練の実施や、育児介護休業をはじめとする福利厚生制度の充実も推進しています。次世代法および女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、社員が能力を発揮し、仕事と生活の調和を図り働きやすい雇用環境の整備に努めています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
連結子会社は法定開示の公表義務対象外のため、提出会社単体のデータを示します。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 4.7% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 25.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 76.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 77.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 132.8% |
人材育成・エンゲージメント
有給休暇取得率は2025年1月21日から2026年1月20日までの期間のデータです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 有給休暇取得率 | 89.5% |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
伊勢化学工業は、ヨウ素や天然ガス、金属化合物の製造販売をグローバルに展開する化学メーカーです。独自の技術と資源を活かし、幅広い産業に貢献しています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、ヨウ素及び天然ガス事業と金属化合物事業の2つのセグメントで事業を展開しています。主力はヨウ素及び天然ガス事業で、地下かん水を主原料とするヨウ素は日本国内だけでなく、北米、欧州、アジアといった世界各地に販売されています。天然ガスも地下かん水から採取され、採取地に近い千葉県外房地区や宮崎県佐土原地区、米国内のガス販売会社等へ供給されています。
金属化合物事業では、塩化ニッケルなどの金属化合物を製造販売しており、抽出剤を用いることで高品位な製品を生産していることが特徴です。同社グループは、親会社であるAGC株式会社や三菱商事株式会社、丸善薬品産業株式会社、JFEミネラル株式会社といった主要顧客との取引を通じて収益を上げています。特にヨウ素及び天然ガス事業が同社グループの収益の大部分を占めています。
| セグメント | 売上高(2024年12月期) | 売上高(2025年12月期) |
|---|---|---|
| ヨウ素及び天然ガス事業 | 281億円 | 347億円 |
| 金属化合物事業 | 52.0億円 | 46.0億円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの業績は、過去5年間で売上高、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益ともに一貫して増加傾向にあります。特に直近の連結会計年度では、売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益のいずれも前期を大きく上回る結果となりました。これは、国内外での積極的な販売活動と、生産性向上への取り組みが寄与したものです。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 204億円 | 256億円 | 264億円 | 333億円 | 393億円 |
| 経常利益 | 26.9億円 | 36.6億円 | 51.2億円 | 74.4億円 | 92.5億円 |
| 経常利益率 | 13.2% | 14.3% | 19.4% | 22.3% | 23.6% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 17.7億円 | 25.6億円 | 36.7億円 | 50.7億円 | 65.0億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 347.94 | 502.73 | 720.48 | 99.52 | 127.52 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたりの売上高は前期から増加しており、生産性が向上していることがうかがえます。また、従業員1人あたりの営業利益も前期から増加しており、収益性の改善が見られます。これらの指標の向上は、同社グループが効率的な事業運営を通じて、従業員一人ひとりの貢献度を高めている状況を示しています。
| 指標 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 103.1百万円 | 120.1百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 23.7百万円 | 29.0百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
伊勢化学工業グループは、安定した財務基盤を構築しており、事業活動を通じて着実に資金を生み出しています。これにより、将来に向けた投資余力も確保している状況です。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの財務基盤は、高い自己資本比率と潤沢な手元資金によって強固な状態を示しています。自己資本比率はプライム市場の製造業平均を大きく上回っており、財務の健全性がうかがえます。ROE(自己資本利益率)もプライム市場平均を上回る水準で推移しており、効率的な経営が行われていることを示しています。手元資金も十分に確保されており、事業環境の変化に対する耐性も高いと考えられます。これらの要素は、長期的な雇用や給与の安定性につながる基盤となっています。
| 指標 | 2024年12月期(前期) | 2025年12月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 356億円 | 401億円 |
| 自己資本比率 | 78.6% | 78.5% |
| ROE(自己資本利益率) | 15.0% | 17.2% |
| 現金及び預金 | 56.9億円 | 45.0億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
伊勢化学工業グループのキャッシュフローは、本業の稼ぎを示す営業キャッシュフローが前期から増加し、75.3億円のプラスとなっています。これは、事業活動が順調に資金を生み出していることを示しています。投資キャッシュフローは66.9億円のマイナスとなっており、前期よりも投資支出が増加している状況です。これは、将来の成長に向けた設備投資や事業拡大に資金を投じていることを示唆しています。その結果、フリーキャッシュフローは8.4億円のプラスを維持しており、本業で得た資金で投資を賄い、なお余剰資金を生み出している状態です。このキャッシュフローの状況は、同社グループが安定した事業運営を継続しつつ、成長への投資も行っていることを示しており、長期的な雇用や給与の安定性につながるものと考えられます。
| 項目 | 2024年12月期(前期) | 2025年12月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 34.6億円 | 75.3億円 |
| 投資CF | △17.8億円 | △66.9億円 |
| 財務CF | △17.7億円 | △20.2億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | 16.8億円 | 8.4億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、景気変動による需要環境の変化に伴う販売数量や販売価格の変動リスクを認識しています。また、金融・為替情勢の変化による為替相場や金利の大幅な変動もリスクとして挙げています。これらのリスクは、同社グループの収益性に影響を与える可能性があります。
③ 人材・組織に関するリスク
人材・組織に関するリスクの記載はありません。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
伊勢化学工業は、化学技術を通じて社会と地球の持続可能性に貢献することを目指す企業です。同社グループは、創業100周年を目前に控え、次の100年を見据えた「ありたい姿」を掲げ、その実現に向けて事業を推進しています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
同社グループは、「技術革新と創意・工夫に努め、科学・経済の発展に貢献するとともに、社会的責任を果たし、信頼され、価値ある企業として成長します。」という経営理念を掲げています。
2027年に創立100周年を迎えるにあたり、次の100年を見据えた「ありたい姿」を策定しました。これは「かがくでつなぐ、地球の資源。」というメッセージに集約されています。
具体的には、「持続可能な開発」として100年先も世の中にヨウ素を供給し続けること、「技術フロンティアへの挑戦」としてヨウ素技術のパイオニアであり続けることを目指しています。また、「安全と信頼」を重視し、やりがいを持って安全に働ける職場を作り、すべての人から信頼され、「あって良かった」と言われる企業を目指すとしています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社グループは、「持続可能な開発」、「技術フロンティアへの挑戦」、「安全と信頼」を「ありたい姿」として掲げ、その実現に向けて人財を重要な経営基盤と位置付けています。人的資本経営を推進し、事業の持続的成長を支える適切な人財の獲得と育成、安全でやりがいを持って働ける環境づくりによる個の力を活かす組織力の向上に取り組んでいます。
サステナビリティに関連する課題、特に環境への取組、人財育成、社内環境整備については、取締役会が監督責任を持ち、CSR本部を中心に全社で積極的に取り組む方針です。
環境への取組においては、環境省が策定した環境マネジメントシステム「エコアクション21」を導入し、継続的な改善と環境負荷低減、企業価値向上を推進しています。環境経営行動指針として、脱炭素化社会に向けた二酸化炭素排出量の削減、循環型社会に向けた廃棄物の発生抑制や再資源化、水資源の有効利用のための水道水削減、化学物質の適正管理などを掲げています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社グループは、ヨウ素及び天然ガス事業において、安全安定操業を最優先とし、設備の維持・更新を計画的に実施し防災体制を強化しています。お客様に安心してもらえる供給体制を盤石にするとともに、新規坑井の開発を継続し、国内外の新規ヨウ素資源開発に積極的に関与することで、供給能力の長期的かつ着実な拡大を目指しています。
限られた天然資源の有効活用を図るため、常に最善の製造プロセスを目指して高効率化を図り、リサイクルの向上に努め、サステナビリティを意識した事業運営を進めています。
金属化合物事業では、主力製品の需要拡大に沿って生産体制を確保し、お客様と連携して一層のコストダウンを図る方針です。
また、特定用途への販売依存度が高いことから、新用途・新商品開発及び新規事業の創出を急務と捉えています。社内資源の活用だけでなく、大学の研究機関との産学連携や外部研究機関・企業との積極的な提携を通じて、開発と創出のスピードを上げていくとしています。これらの戦略課題遂行のため、適切な人財の獲得と育成、個の力を活かす組織力の向上を目指しています。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
伊勢化学工業グループは、経営理念に基づき、コーポレートガバナンスの強化と充実に取り組んでいます。取締役会は経営の意思決定と監督を担い、監査役会が監視機能を高める体制です。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
伊勢化学工業の株主構成を見ると、筆頭株主は事業会社であるAGCです。複数の事業会社が大株主として名を連ねており、安定した資本基盤を形成していることがうかがえます。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| AGC | 52.83% |
| 三菱商事 | 7.31% |
| 萬富 | 2.77% |
なお、前事業年度末に主要株主であった三菱商事は、当事業年度末現在、主要株主ではなくなりました。
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
伊勢化学工業の役員は10名(男性9名・女性1名)で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役兼社長執行役員は粕谷俊郎氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 粕 谷 俊 郎 | 代表取締役 兼社長執行役員 | 1985年4月旭硝子(現AGC)入社、2017年1月同社執行役員経理・財務部長、2021年1月AGC常務執行役員経理・財務部長、2025年3月同社代表取締役兼社長執行役員より現職。 |
| 八 巻 竜太郎 | 代表取締役 兼常務執行役員管理本部長 | 1990年4月旭硝子(現AGC)入社、2010年3月同社取締役、2022年8月AGC化学品カンパニー戦略本部長、2026年3月同社代表取締役兼常務執行役員管理本部長より現職。 |
| 山 口 泰 二 | 取締役 | 1991年4月旭硝子(現AGC)入社、2019年1月AGC化学品カンパニー企画管理室統括グループリーダー、2026年1月同社化学品カンパニー事業基盤本部企画管理室統括グループリーダー、2026年3月同社取締役より現職。 |
社外取締役は、柴田堅太郎氏(柴田・鈴木・中田法律事務所パートナー・支配株主等との重要な取引等に関する委員会委員長・指名・報酬委員会委員)、救仁郷豊氏(元東京ガス代表取締役副社長執行役員・指名・報酬委員会委員長・支配株主等との重要な取引等に関する委員会委員)、副島大資氏(元北米三菱商事会社本店 Chemicals Group Vice President)です。
同社は監査役会設置会社です。独立社外取締役が過半数を占める指名・報酬委員会と、独立社外取締役を含む独立役員で構成される支配株主等との重要な取引等に関する委員会を設置し、ガバナンスの独立性と客観性を強化しています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
伊勢化学工業の役員報酬は、月例の固定金銭報酬である基本報酬と、業績連動報酬で構成されています。業績連動報酬は、EBITDA額、総資産EBITDA率、ROEの過去3年平均に対する改善度合いの3指標を基に算定され、指名・報酬委員会の諮問を経て取締役会で決定されます。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役 | 8名 | 68百万円 | 8.5百万円 |
| うち社外取締役 | 4名 | 20百万円 | 5.0百万円 |
| 監査役 | 5名 | 28百万円 | 5.6百万円 |
| うち社外監査役 | 4名 | 15百万円 | 3.8百万円 |
取締役の報酬等の額には、使用人兼務取締役の使用人分給与等は含まれておりません。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



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