※本記事は、ウルトラファブリックス・ホールディングス株式会社の有価証券報告書(第61期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. ウルトラファブリックス・ホールディングスってどんな会社?
同社はポリウレタンレザーの製造・販売を主力事業とし、グローバル市場で事業を展開する素材メーカーです。
■(1) 会社概要
1966年に第一化成として設立され、合成皮革の生産を開始しました。1999年に米国企業より合成皮革部門の営業譲渡を受けてウルトラファブリックスを設立し、経営に参加しました。2017年には完全子会社化し、会社分割により現在のウルトラファブリックス・ホールディングスへ商号変更し、持株会社体制へ移行しました。
連結従業員数は334名、単体では13名です。筆頭株主は東京中小企業投資育成で、第2位はクレイ・アンドリュー・ローゼンバーグ氏、第3位はバーバラ・ダニエル・ベッカー・プリマック氏となっており、経営陣が上位株主として名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 東京中小企業投資育成 | 12.83% |
| Clay Andrew Rosenberg | 7.97% |
| Barbara Danielle Boecker-Primack | 5.30% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.0%です。代表取締役社長は吉村昇氏が務めています。社外取締役は3名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 吉村 昇 | 取締役社長(代表取締役) | 1999年にメリルリンチ日本証券へ入社。レコフ等を経て2016年に同社へ入社し、社長室長などを歴任。2017年に取締役へ就任し、2018年より現職。 |
| 中川 豊彦 | 取締役 | 1983年に同社へ入社し、埼玉事業所の要職を歴任。2014年に取締役へ就任し、第一化成の代表取締役社長などを経て2025年より現職。 |
| クレイアンドリューローゼンバーグ | 取締役 | 1980年にGallo Winesへ入社。1999年にウルトラファブリックスを設立してCEOに就任。2017年より現職。 |
| バーバラダニエルベッカー-プリマック | 取締役 | 1989年にSaks Fifth Avenueへ入社。1999年にウルトラファブリックスを設立してPresidentに就任。2017年より現職。 |
| 尾城 紳治 | 取締役 | 1984年に同社へ入社し、品質保証部長などを歴任。2017年に取締役へ就任し、第一化成の代表取締役社長を兼務して2025年より現職。 |
| 髙野 美香 | 取締役 | 1993年に日本生命保険相互会社へ入社。大和投資顧問等を経て2020年に同社へ入社。Chief Sustainability Officerを務め、2023年より現職。 |
社外取締役は、伊丹庸之(元冨士写真フィルム)、横尾彰(元シティバンク)、伊勢谷英樹(元トヨタ自動車工業)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ポリウレタンレザー」事業を展開しています。
■ポリウレタンレザー
同社グループは、主にポリウレタンレザーの製造および販売を行っています。家具用ではホテルやレストランなどのコントラクト家具向けに提供し、自動車用ではギアシフトブーツやシート内装材、航空機用ではプライベートジェットや民間航空機の内装材として販売しています。そのほか、ゴルフ手袋やアパレル用素材も展開しています。
製品の製造は国内子会社である第一化成が行い、主要な販売は米国子会社であるウルトラファブリックスが行っています。日本を中心とした製造と、米国の販売子会社およびその英国子会社による販売というグローバルな事業構造を確立し、東京、ニューヨーク、ロンドンの3拠点からブランドを展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、売上収益は堅調に推移しており、一定の規模を維持しています。一方で、利益面については過去に高い利益水準を記録した時期もありましたが、直近では製造原価の上昇や人件費の増加などの影響を受け、減少傾向にあります。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 141億円 | 196億円 | 210億円 | 203億円 | 206億円 |
| 税引前利益 | 13億円 | 29億円 | 29億円 | 23億円 | 12億円 |
| 利益率(%) | 9.5% | 14.6% | 13.7% | 11.2% | 5.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 10億円 | 21億円 | 24億円 | 16億円 | 8億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益は前期からわずかに増加しましたが、営業利益は減少しています。これはアウトソーシング生産の増加や新工場の稼働に伴う製造単価の上昇などが影響した結果です。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 203億円 | 206億円 |
| 売上総利益 | 14億円 | 13億円 |
| 売上総利益率(%) | 6.8% | 6.5% |
| 営業利益 | 28億円 | 16億円 |
| 営業利益率(%) | 13.8% | 7.9% |
■(3) セグメント収益
同社グループは単一の報告セグメントで事業を展開しています。当期は顧客層の拡大により民間航空機向けの販売が好調に推移し、売上収益は増加しましたが、原材料費やエネルギー費用の高騰などにより利益は減少しました。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益(2025年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 連結(合計) | 203億円 | 206億円 | 28億円 | 16億円 | 7.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業活動で得た資金を元に借入金の返済を進めつつ、投資も手元資金で賄う健全型となっています。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.5%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も35.2%で市場平均を下回っています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 36億円 | 30億円 |
| 投資CF | -29億円 | -20億円 |
| 財務CF | -15億円 | -14億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「顧客を満足させる品質と価値の創造開発に全力を尽くすとともに、環境保全と省資源へも積極的な取組みを続け、消費者・取引先・株主等を始めとするステークホルダーに信頼される企業を目指すこと」を経営の基本理念として掲げています。この理念の実現を通して、株主の利益向上、会社の発展、社会への奉仕、社員生活の充実の推進が一致する経営の確立を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、「サステナビリティの重視」を経営理念の一つとして掲げています。自社だけでなく、取り巻く社会全体が豊かで持続的であることを目指し、重要な社会の構成員として社会課題を解決するための取り組みを推進しています。また、常に新しい市場の創造と開拓に努め、顧客ニーズを的確に把握し、魅力ある製品を開発しながら生産性および顧客サービスの向上を図る姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中長期的な業績見込みにおける売上収益、EBITDA、自己資本利益率を重要な経営指標として位置付けています。中期経営計画のローリングにおいて、2028年の目標数値を以下のように定めています。
・売上収益:274億円
・営業利益:35億円
・当期利益:23億円
・EBITDA:53億円
■(4) 成長戦略と重点施策
製品開発の拡充による用途拡大、グローバル市場への展開、グローバルブランドの確立を中長期的な経営戦略として掲げています。北米以外の地域や未開拓分野への進出による売上基盤の分散・拡大を図るとともに、研究開発拠点の再編を通じた新製品開発のスピードアップを進めています。また、製品や製造プロセスのサステナブル化を推進し、ブランド価値として収益力の強化に結び付けています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、事業戦略を支えるための重要な資産として、優秀な人材の獲得と継続的な能力発揮を実現し、社員にとって安全で働き甲斐のある職場を提供することを方針としています。また、日本を中心とした製造と米国や英国による販売というグローバルな事業構造を支えるため、多様な人材による事業運営を目指し、人材の確保や環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 54.3歳 | 4.6年 | 14,933,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.7% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 106.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 106.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※育児休業取得の対象となる男性労働者がいなかったため、男性育児休業取得率は「-」となっています。また、パート・有期労働者がいないため、該当区分の男女賃金差異は「-」となっています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員中の女性比率(提出会社8%)、退職率(提出会社0%)、労働災害発生件数(提出会社0件)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 為替変動と国際税務リスク
同社グループは海外売上比率が98%を超えており、業績は為替相場の変動による影響を大きく受けます。デリバティブを活用したヘッジ取引によってリスクの軽減を図っていますが、急激な為替変動が発生した場合には財務状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、移転価格税制などの国際税務リスクも存在しています。
■(2) 特定の仕入先への依存リスク
同社グループは、原材料である基布や樹脂などを特定の仕入先に依存している場合があります。特定仕入先との関係を密接に保ち、安定的な調達に努めていますが、需要の急増や自然災害、仕入先の経営破綻などにより調達に重大な支障をきたした場合や仕入価格が高騰した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) アジア圏メーカーとの競争や製品開発リスク
同社グループは顧客の要求に応えるため、新製品の開発や既存品の改良に向けた研究開発投資を継続する必要があります。一方で、アジア圏の各メーカーが同社グループの製品と同等の品質で、より安価な製品を市場へ安定供給するようになった場合には、競争環境が激化し、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。



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