※本記事は、TOYO TIRE株式会社の有価証券報告書(第110期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. TOYO TIREってどんな会社?
各種タイヤおよび自動車部品の製造販売をグローバルに展開するメーカーです。
■(1) 会社概要
1945年8月に東洋ゴム工業として設立され、1955年5月に東京証券取引所へ上場しました。1966年7月の米国販売会社設立を皮切りに積極的な海外展開を進め、現在はグローバルに事業を拡大しています。2019年1月に現在のTOYO TIREへ社名を変更し、モビリティ社会の発展に貢献する事業活動を続けています。
現在の従業員数は連結で9,941名、単体で3,766名です。筆頭株主は業務および資本提携を結ぶ三菱商事で、第2位と第3位はそれぞれ信託業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三菱商事 | 20.01% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.12% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.40% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役社長&CEOは清水隆史氏が務めており、社外取締役の比率は50.0%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 清水隆史 | 代表取締役社長&CEO | 1985年4月入社。Toyo Tire Holdings of Americas Inc. 社長などを経て、2015年11月より代表取締役社長。2022年3月より現職。 |
| 山田保裕 | 取締役会長 | 1983年4月三菱商事入社。同社理事生活商品本部長などを経て、2018年4月同社常勤顧問。2019年3月より現職。 |
| 守屋学 | 取締役執行役員技術統括部門管掌 | 1989年4月入社。OEタイヤ開発部長などを経て、2018年2月執行役員。2021年3月より現職。 |
| 蓮見清仁 | 取締役執行役員事業統括部門管掌 | 1996年4月入社。Toyo Tire Canada Inc. 社長などを経て、2021年10月執行役員。2025年3月より現職。 |
社外取締役は、森田研(元松下プラズマディスプレイ代表取締役社長)、武田厚(元日鉄鋼板代表取締役社長)、米田道生(元日本取引所グループ取締役)、荒木由季子(元山形県副知事)です。
2. 事業内容
同社グループは、「タイヤ事業」および「自動車部品事業」を展開しています。
■タイヤ事業
乗用車用、ライトトラック用、トラック・バス用などの各種タイヤ、およびその他関連製品の製造・販売を行っています。
収益は、国内外の販売代理店や自動車メーカー等からの製品販売代金から得ています。運営は同社のほか、国内ではトーヨータイヤジャパン、海外ではToyo Tire U.S.A. Corp.やToyo Tire North America Manufacturing Inc.などの子会社が行っています。
■自動車部品事業
自動車用防振ゴムなどの自動車用部品の製造・販売を行っています。
収益は、自動車メーカー等への部品販売代金によって構成されています。運営は同社をはじめ、国内では東洋ゴム化工品や綾部トーヨーゴム、海外では東洋橡塑(広州)有限公司などの子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は一貫して増加傾向にあり、順調なトップラインの成長が伺えます。経常利益は一時的な減少を挟みつつも高水準を維持しており、利益率も10%台後半で推移するなど安定した収益性を確保しています。一方で、当期純利益は特別損失の計上等により直近で減少しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,936億円 | 4,972億円 | 5,528億円 | 5,654億円 | 5,949億円 |
| 経常利益 | 559億円 | 510億円 | 860億円 | 1,021億円 | 1,013億円 |
| 利益率(%) | 14.2% | 10.3% | 15.6% | 18.1% | 17.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 228億円 | 393億円 | 819億円 | 653億円 | 416億円 |
■(2) 損益計算書
売上高と営業利益はともに前年を上回っています。売上総利益率は約40%と高水準を維持しつつ、営業利益率も16%台で安定推移しており、堅調な本業の収益力が確認できます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 5,654億円 | 5,949億円 |
| 売上総利益 | 2,308億円 | 2,348億円 |
| 売上総利益率(%) | 40.8% | 39.5% |
| 営業利益 | 940億円 | 974億円 |
| 営業利益率(%) | 16.6% | 16.4% |
販売費及び一般管理費(当期1,375億円)のうち、運賃及び荷造費が402億円(構成比29%)、給料及び手当が304億円(同22%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のタイヤ事業は、北米市場での重点商品の堅調な需要や価格改定の浸透により増収となりました。自動車部品事業も、自動車メーカーの需要安定を背景に前年を上回る売上を計上しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| タイヤ事業 | 5,198億円 | 5,477億円 |
| 自動車部品事業 | 455億円 | 472億円 |
| 連結(合計) | 5,654億円 | 5,949億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 671億円 | 931億円 |
| 投資CF | -152億円 | -231億円 |
| 財務CF | -231億円 | -438億円 |
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.8%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も69.4%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「昨日より今日はより良くより安く、需要者の為に各自の職場で最善を」を社是とし、「お客さまの期待や満足を超える感動や驚きを生み出し、豊かな社会づくりに貢献」することを使命(ミッション)に掲げています。企業活動を通じた社会課題の解決によって、自らの存在意義を追求しています。
■(2) 企業文化
行動様式として「TOYO WAY」を定めており、「公正さ」「誇り」「主体性」「感謝」「結束力」という5つの価値観を重視しています。挑戦心と独創的な発想にあふれた闊達な風土を持ち、社会に役立つ公明正大な行動や、仲間とともに創意工夫と改良改善を続ける組織文化を築いています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「中計’26」を策定し、事業環境の変化に迅速かつ柔軟に適応しながら、高利益体質の堅持を目指しています。また、資本効率の向上と株主還元の充実を重視し、安定かつ累進配当を継続する方針です。
- 株主資本配当率 4.5%
- 配当性向 30%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
地政学リスクや環境変化に対応するため、DXやAIを駆使した革新的な業務改革および生産性向上を推進します。また、業界屈指の経営スピードと独自性の追求を推し進めるとともに、パリ協定の長期目標達成に向けた温室効果ガスの排出削減やクリーンエネルギーの利活用拡大にも取り組む方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「個性と質と能力を極める育成システム」の構築を掲げ、多様な人材が有機的に協働し活躍できる基盤整備を進めています。国籍や性別、年齢にかかわらず、能力や適性に基づいた評価と最適配置を促進し、事業経営者やプロフェッショナル人材の計画的な育成を支えるシステムや働きやすい職場環境への投資を行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 40.8歳 | 15.0年 | 6,880,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.3% |
| 男性育児休業取得率 | 72.6% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 68.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 76.2% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 69.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(71.4%)、係長級層の女性比率(9.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自動車市場の動向と天候依存の需要
世界的な景気減速による自動車販売の落ち込みや、主要市場である北米・欧州・アジアの経済状況が悪化した場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、国内市場においては、暖冬による冬用タイヤの需要減少が収益に悪影響を与えるリスクをはらんでいます。
■(2) 原材料価格の高騰と為替の変動
天然ゴムや合成ゴム等の原材料価格は、原油やナフサの国際市況の影響を受けます。また、海外売上高比率が8割を超えているため、為替レートの急激な変動や米国の関税政策の動向が、調達コストの上昇や利益の圧迫を通じて連結業績に直接的な影響を与える可能性があります。
■(3) 脱炭素規制と気候変動による調達リスク
気候パターンの変化により天然ゴムの生育地域が変動し、品質低下や調達コストが増加するリスクがあります。さらに、各国の環境規制強化に伴うカーボンプライシング(炭素税等)の導入により、CO2排出に対するコストが上昇し、中長期的な財務状況に影響を及ぼす懸念があります。



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