日本電気硝子 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本電気硝子 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本電気硝子は、東京証券取引所プライム市場に上場し、電子・情報分野や機能材料分野における特殊ガラス製品の製造・販売を主力とする世界的なガラスメーカーです。ディスプレイ事業の堅調な需要や電子デバイス事業の好調により、直近の業績は売上高が前期を上回り、各利益項目も大きく伸長する増収増益を達成しています。


※本記事は、日本電気硝子株式会社の有価証券報告書(第107期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本電気硝子ってどんな会社?

電子・情報分野や機能材料分野における特殊ガラス製品の製造・販売を主力とする世界的なガラスメーカーです。

(1) 会社概要

日本電気硝子は1949年に会社を創立し、業務を再開しました。1962年に超耐熱結晶化ガラスの生産を開始し、1973年には東京証券取引所などに上場を果たしました。1987年に液晶ディスプレイ用基板ガラスの生産を始め、近年では次世代半導体向けガラス基板の開発やガラスエンジニアリング事業も開始しています。

現在の同社グループは、連結で5,218名、単体で1,778名の従業員を擁する体制で事業を展開しています。大株主の状況を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行であり、第2位および第3位にも同様に信託銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 19.96%
日本カストディ銀行(信託口) 8.07%
野村信託銀行(投信口) 2.46%

(2) 経営陣

同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長である岸本暁氏が経営を牽引しており、取締役7名のうち4名を社外取締役が占めています。

氏名 役職 主な経歴
岸本暁 代表取締役社長社長執行役員 1985年同社入社。電子部品事業本部長やコンシューマーガラス事業本部長を歴任。2019年より常務執行役員を務め、2023年より現職。
松本元春 代表取締役取締役会長 1982年同社入社。米国子会社CEOや経理部長を経て、2015年に代表取締役社長に就任。2023年より現職。
森井守 取締役常務執行役員 1985年同社入社。経理部長を経て2017年に執行役員に就任。2021年に常務執行役員となり、2022年より現職。


社外取締役は、裏出令子(京都大学名誉教授)、伊藤博之(滋賀大学名誉教授)、伊藤好生(元パナソニックホールディングス代表取締役副社長)、青砥なほみ(元マイクロンメモリジャパン部門長)です。

2. 事業内容

同社グループは、「ガラス事業」の単一セグメントで事業を展開していますが、製品分野によって大きく「電子・情報分野」と「機能材料分野」に分かれています。

(1) 電子・情報分野

ディスプレイ用および電子デバイス用の特殊ガラス製品を製造・販売しています。液晶や有機ELディスプレイ用ガラス、超薄板ガラスなどのほか、半導体プロセス用ガラスや光エレクトロニクス用ガラスなど、高度な情報社会を支える幅広い製品を顧客である各種メーカーに提供しています。

収益源はこれらの特殊ガラス製品の販売対価です。運営は主に日本電気硝子が担うほか、ニッポン・エレクトリック・グラス・マレーシアや電気硝子(上海)有限公司などの国内外の子会社が製造および販売を分担して行っています。

(2) 機能材料分野

複合材、医療、耐熱、建築用などの特殊ガラス製品やガラス製造機械類の製造・販売を行っています。自動車・建築材料向けのガラスファイバ、医薬用管ガラス、調理器トッププレート用超耐熱結晶化ガラス、防火設備用ガラスなどを幅広い産業の顧客に提供しています。

収益源は、各種機能性ガラス製品および関連機械類の販売対価です。運営は主に日本電気硝子が担うほか、ニッポン・エレクトリック・グラス・マレーシアやエレクトリック・グラス・ファイバ・アメリカなどの子会社が製品を分担して製造・販売しています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5年間の業績を見ると、売上高は概ね2,800億円から3,200億円の範囲で推移しています。一時的に減益や経常赤字を計上した期もありましたが、生産性の改善や高付加価値製品の拡販効果などにより、直近では売上高・利益ともに力強い回復を見せ、経常利益率は2桁台に改善しています。

項目 103期 104期 105期 106期 107期
売上高 2920億円 3246億円 2800億円 2992億円 3114億円
経常利益 450億円 341億円 -95億円 124億円 377億円
利益率(%) 15.4% 10.5% -3.4% 4.1% 12.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 204億円 168億円 25億円 178億円 315億円

(2) 損益計算書

売上高の増加に伴い売上総利益が大きく拡大し、売上総利益率は大幅に改善しています。これに加えて生産性の改善や販売価格の引き上げなどが寄与し、営業利益も急拡大を見せています。

項目 106期 107期
売上高 2992億円 3114億円
売上総利益 543億円 800億円
売上総利益率(%) 18.2% 25.7%
営業利益 61億円 341億円
営業利益率(%) 2.0% 11.0%


販売費及び一般管理費のうち、運賃及び荷造費が145億円(構成比32%)、給与手当及び賞与が78億円(同17%)を占めています。また、製造原価においては、経費が626億円(構成比53%)、材料費が425億円(同36%)となっています。

(3) セグメント収益

電子・情報分野はディスプレイ事業の堅調な需要継続と電子デバイス事業の好調により増収となりました。一方、機能材料分野は複合材事業の厳しい競争環境や事業構造改革の影響により減収となっています。

区分 売上(106期) 売上(107期)
電子・情報 1576億円 1738億円
機能材料 1417億円 1377億円
連結(合計) 2992億円 3114億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、キャッシュ・フロー重視、資産効率重視、財務の健全性を財務方針に掲げています。

当連結会計年度は、営業活動により多くの資金を得ましたが、中期経営計画に沿った固定資産や投資有価証券の売却と、土地やディスプレイ事業の設備取得があったため、投資活動では資金を使用しました。また、借入金の返済、自己株式の取得、株主への配当金の支払いなどにより、財務活動でも資金を使用しました。

項目 106期 107期
営業CF 522億円 520億円
投資CF 426億円 -104億円
財務CF -488億円 -453億円

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

「ガラスの持つ無限の可能性を引き出し、モノづくりを通して、豊かな未来を切り拓きます。」という企業理念を掲げています。また、「世界一の特殊ガラスメーカー」を目指すべき企業像とし、「GLASS FOR FUTURE」をスローガンとして、材料設計から溶融、成形、加工に至る技術により、社会のニーズに応えるガラス製品を潤沢に供給することを使命としています。

(2) 企業文化

同社は、企業理念の底流として「“文明の産物”の創造を通して社会に貢献する」という創業の精神を重視しています。また、大切にしている価値観として、お得意先のご要望にどこまでもお応えする「お得意先第一」、課題を為し遂げる「達成への執念」、前例にとらわれない発想や発言を尊重する「自由闊達」、常に誠実に行動する「高い倫理観」、環境負荷低減に努める「自然との共生」の5つを定めています。

(3) 経営計画・目標

2024年度から2028年度までの5か年を対象とする中期経営計画「EGP2028」を策定し、「STRONG GROWTH」をスローガンに掲げています。持続的成長と企業価値向上を実現するため、以下の目標達成を目指しています。

・売上高 4,000億円
・営業利益 500億円
・営業利益率 12.5%
・ROE 8%

(4) 成長戦略と重点施策

既存事業の収益基盤強化と成長分野への積極的なリソース投入を基本方針としています。既存事業では高付加価値製品の開発や全電気溶融技術の活用による生産性向上を進めます。戦略事業としては、ガラスの付加価値を高めるデバイス事業の拡大や、エネルギー・医療・環境分野などへのリソース拡充を図り、M&Aや戦略的提携を含む5年間で500億円の戦略的投資枠を設定して成長を加速させます。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「あらゆるステージで世界一のパフォーマンスを発揮できる人」を目指す人材像とし、多様な人材の採用と育成に努めています。OJTを基本に各種研修を設け、長期的な成長を支援するとともに、多様な働き方の拡大や次世代育成支援を進めています。また、「健康経営」を推進し、全従業員が健康でいきいきと安全に働ける職場環境の整備を図り、企業の持続的成長の原動力としています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
107期 43.3歳 20.0年 7,380,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.3%
男性育児休業取得率 107.5%
男女賃金差異(全労働者) 67.8%
男女賃金差異(正規雇用) 68.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 39.9%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取り組み」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(新卒総合職)(25.8%)、障害者雇用率(4.0%)、プレゼンティーイズム損失割合(24.9%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 資材調達と価格高騰リスク

ガラス製造に不可欠な原燃料や資材の調達において、供給の逼迫や遅延、価格の高騰、物流費の高騰等が生じた場合、同社グループの事業や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。調達先の複数化や汎用品への転換などでリスク軽減に努めています。

(2) デバイス・技術転換に伴う市場急変

同社の事業分野は技術革新によるデバイスや部品、材料の転換が急速に進む特性があります。新規技術の台頭によって既存製品の需要が急激に縮小した場合や、需給バランスの悪化による製品価格の大幅な変動が生じた際、業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 大規模設備投資に関するリスク

特殊ガラス製品の生産設備の新設には多額の資金と相当の期間を要し、定期的な大規模修繕も必要です。需要予測の大きな変化や、所期の設備能力が得られなかった場合、主要設備部材の価格高騰などが生じると、財務状況や事業計画に影響を与える可能性があります。

(4) 環境規制とカーボンニュートラル対応

ガラス製造は大量の資源とエネルギーを使用するため、環境負荷低減が大きな課題です。炭素税の導入やエネルギーコストの増加、各国での環境規制の厳格化が進む中、全電気溶融設備への転換等を急いでいますが、社会的な環境責任の要求が高まることで業績に影響するリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。