※本記事は、カナレ電気株式会社の有価証券報告書(第53期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. カナレ電気ってどんな会社?
放送・通信用ケーブルやコネクタ等の製造販売を手掛け、海外展開も積極的に進めるメーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1970年に個人経営として創業し、1974年に設立されました。同年から放送用マルチマイクケーブルシステムの販売を開始し、1983年の米国子会社設立を皮切りにグローバル展開を加速させています。2004年にジャスダック上場を果たし、現在は海外に多数の販売拠点を持つ体制を築いています。
現在の従業員数は連結で258名、単体で129名です。筆頭株主は香流および新高輪であり、それぞれ11.69%の株式を保有しています。第3位株主にはセンリキが名を連ねており、上位株主は同社に関連する法人等で構成されています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 香流 | 11.69% |
| 新高輪 | 11.69% |
| センリキ | 5.12% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性0名の計13名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は野田爾氏が務めています。取締役10名のうち社外取締役は2名で、比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 野田爾 | 代表取締役社長執行役員 | 1991年同社入社。国内営業部長、カナレテック代表取締役社長等を経て、2026年1月より現職。 |
| 中島正敬 | 取締役 | 1986年同社入社。執行役員国内営業部長等を歴任し、2020年2月に代表取締役社長執行役員に就任。2026年1月より現職。 |
| 千種佳樹 | 取締役 | 住友電気工業を経て2017年同社入社。執行役員電子機器開発担当、取締役執行役員技術本部長などを経て2026年1月より現職。 |
| 山本英夫 | 取締役 | 東京ナショナル通信特機等を経て2011年同社入社。取締役執行役員ソリューション事業本部長などを経て2026年1月より現職。 |
| 吉野精一 | 取締役 | 1988年同社入社。海外営業部長、営業担当執行役員、取締役執行役員海外営業担当などを経て2026年1月より現職。 |
| 深津正敏 | 取締役執行役員製品・物流担当 | 岡崎市民信用組合を経て1990年同社入社。情報システム部長、製品部長を経て2024年3月より現職。 |
| 近藤道直 | 取締役執行役員ものづくり推進本部長 | 1991年同社入社。品質・環境管理部長、品質・環境管理担当執行役員を経て2024年3月より現職。 |
| 石井秀明 | 取締役 | 富士ゼロックスなどを経て2020年3月に同社取締役就任。取締役執行役員経営推進担当を経て2026年1月より現職。 |
社外取締役は、宮本透(元韓国富士ゼロックス会長兼CEO)、小野地佳文(元パナソニックカーエレクトロニクス経理担当取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「米国」「韓国」「中国」「台湾」「シンガポール」および「その他」事業を展開しています。
■日本
同社グループは、放送局や通信会社、設備工事会社などに向けて、放送・通信用ケーブル、ハーネス、コネクタ、パッシブ・電子機器の製造および販売を行っています。また、室間配線の敷設を請け負う工事なども手掛けています。
収益は、製品の販売代金や工事の請負代金から得ています。製品の製造はカナレハーネスやカナレコネクティッドプロダクツなどが担い、販売はカナレ電気が主体となって行っています。
■米国
米国市場において、主に放送機器業界や電設業界に向けて、同社グループの放送・通信用ケーブルやコネクタ、ハーネスなどの製品を販売しています。4K映像制作設備の更新物件などに強みを持ちます。
収益は、米国、カナダおよび中南米諸国の顧客に対する製品の販売代金から得ています。同セグメントにおける販売事業の運営は、Canare Corporation of Americaが行っています。
■韓国
韓国市場において、放送市場の4K放送設備更新物件や、電設市場・流通市場の顧客に向けて、同社グループのケーブル、コネクタ、機器製品などを提供しています。
収益は、韓国国内の顧客に対する製品の販売代金から得ています。同セグメントにおける販売事業の運営は、Canare Corporation of Koreaが行っています。
■中国
中国市場において、政府主導の放送設備更新物件やスタジアムなどの電設市場の顧客向けに、同社グループの製品を提供しています。また、同地域においてコネクタなどの製造も行っています。
収益は、中国および香港の顧客に対する製品の販売代金から得ています。製造はCanare Electric (Shanghai)が、販売はCanare Electric Corporation of Tianjinが行っています。
■台湾
台湾市場において、放送市場や電設市場等の顧客に向けて、同社グループが製造する放送・通信用のケーブル、コネクタ、ハーネス、機器類を提供しています。
収益は、台湾国内の顧客に対する製品の販売代金から得ています。同セグメントにおける販売事業の運営は、Canare Corporation of Taiwanが行っています。
■シンガポール
東南アジア市場において、放送市場の設備更新物件や通信・電設関連の顧客向けに、同社グループのケーブルやコネクタ製品などを展開しています。
収益は、アジア地域(中国・韓国・台湾等を除く)の顧客に対する製品の販売代金から得ています。同セグメントにおける販売事業の運営は、Canare Singapore Private Ltd.が行っています。
■その他
報告セグメントに含まれないインド、欧州、中東の各地域において、スポーツの国際大会や開発プロジェクトなどの需要に応じ、同社製品を提供しています。
収益は、各地域の顧客に対する製品の販売代金から得ています。販売はCanare Electric India Private Ltd.、Canare Europe GmbH、Canare Middle East FZCOの各社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、売上高は堅調な拡大傾向にあり、直近の2025年12月期には過去最高となる131億円を記録しています。経常利益率も継続して10%以上を維持しており、安定した高収益体質を保ちながら成長を遂げていることが伺えます。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 100億円 | 112億円 | 129億円 | 124億円 | 131億円 |
| 経常利益 | 11億円 | 13億円 | 17億円 | 14億円 | 17億円 |
| 利益率(%) | 10.7% | 11.3% | 13.5% | 11.7% | 12.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4億円 | 8億円 | 9億円 | 12億円 | 11億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も順調に拡大しています。円安効果による増収要因もあり、売上総利益率および営業利益率ともに前期から改善を見せており、収益性の向上が確認できます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 124億円 | 131億円 |
| 売上総利益 | 52億円 | 56億円 |
| 売上総利益率(%) | 42.0% | 42.4% |
| 営業利益 | 14億円 | 16億円 |
| 営業利益率(%) | 11.2% | 12.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が15億円(構成比37.3%)、研究開発費が5億円(同13.7%)を占めています。売上原価は76億円であり、売上原価合計に対する構成比については詳細な内訳の記載がありません。
■(3) セグメント収益
主力である日本市場は、放送関連や電設関連の大型物件が寄与し、大幅な増益を達成しました。一方、米国やシンガポールなどは関税影響やプロジェクトの遅延により減益となりましたが、全体としては日本市場の伸びが牽引し、増収増益となっています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益(2025年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 62億円 | 65億円 | 7億円 | 13億円 | 19.5% |
| 米国 | 16億円 | 17億円 | 2億円 | 0.2億円 | 1.4% |
| 韓国 | 11億円 | 11億円 | 2億円 | 1億円 | 11.1% |
| 中国 | 13億円 | 15億円 | 1億円 | 1億円 | 7.4% |
| 台湾 | 1億円 | 1億円 | 0.4億円 | 0.1億円 | 6.2% |
| シンガポール | 6億円 | 6億円 | 1億円 | 0.4億円 | 7.1% |
| その他 | 15億円 | 18億円 | 2億円 | 2億円 | 10.5% |
| 連結(合計) | 124億円 | 131億円 | 14億円 | 16億円 | 12.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動によるキャッシュ・フローでは、税金等調整前利益の計上や売上債権の減少、仕入債務の増加などにより収入超過となりました。一方、投資活動によるキャッシュ・フローでは、長期預金の預入や投資有価証券の取得により支出超過となりました。財務活動によるキャッシュ・フローでは、配当金の支払いなどにより支出超過となりました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 15億円 | 18億円 |
| 投資CF | 3億円 | -36億円 |
| 財務CF | -5億円 | -5億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「いつの時代でも存在価値ある企業づくり」を経営基本理念として掲げています。時代とともに変化する価値観に対応し、顧客から「善い会社」として支持され、信頼される企業を目指すことを目標としています。社会にとって存在価値があり、世界に普及できる製品を持続的に提供することを使命としています。
■(2) 企業文化
同社は、「企業は公器」であるという認識をグループの全従業員と共有しています。法令や企業倫理規程などの遵守を徹底し、適正で確実な業務遂行を目指す文化が根付いています。また、パートナーである従業員や仕入先、株主などのステークホルダーから信頼され、期待に応えられる「善い会社」であり続ける姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、企業価値の向上を図るため、企業業績の客観的な指標として「連結業績で1株当たり当期純利益200円超え」を目指すことを経営目標として掲げています。持続的な事業成長と内部留保の確保を進めつつ、高い利益水準を達成するための経営体質強化に取り組んでいます。
* 1株当たり当期純利益:200円超
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、海外ビジネスの積極展開や優位性のある技術転用による新市場の開拓を進めることで、中長期の成長を図る戦略を掲げています。また、グローバルな需要変動に柔軟に対応するため、製品ごとに最適な生産地を選定し、物流や在庫マネジメントを効率化するサプライチェーンの再構築に注力し、コスト競争力の確保に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、企業活動の中心に人的資源があると考え、多様性の推進を人的資本に関する重要戦略の一つと位置付けています。中途採用や外国人社員の採用を積極的に行い、多様な価値観の醸成に努めています。また、個人の尊厳を尊重し、個々の能力を活かせる自由闊達な職場の形成と公正な人事処遇を通じて、働きがいのある職場づくりを目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 48.8歳 | 17.8年 | 8,083,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 14.2% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 79.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 87.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、健康診断受診率(94.0%)、ストレスチェック受診率(94.7%)、女性労働者の育児休業取得率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 設備投資動向への依存
同社の製品は主に電設業界や放送機器業界向けに販売されており、国内売上の大部分を占めています。そのため、これら業界の設備投資動向が変動した場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 海外事業の展開に伴うリスク
同社は海外売上比率が53%に達しており、中国に生産拠点を、米国や欧州、アジアなどに販売拠点を置いています。進出国における法的規制、税制、経済政策の変更や地政学リスクにより、事業遂行にコスト増加等の支障が生じる可能性があります。
■(3) 原材料価格の上昇
同社製品の主要な原材料である銅や黄銅の価格上昇は、ケーブル製品やコネクタ製品の仕入価格上昇に直結します。コスト削減努力で吸収しきれず、製品価格への転嫁が遅れたり難航したりした場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 為替レートの変動
同社は海外売上比率が高く、外貨建での取引を多く行っています。為替予約の活用などでリスクヘッジを行っていますが、為替レートの急激な変動を完全に回避することは難しく、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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