※本記事は、岡部株式会社の有価証券報告書(第82期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 岡部ってどんな会社?
同社は、建設工事の安全と省力化を支える建設資機材の製造販売を主力事業としてグローバルに展開しています。
■(1) 会社概要
1917年に建築用金物の製造販売を個人で創業し、1944年に岡部鉄工として設立されました。1951年にコンクリート型枠締付ボルトの製品化に成功し、1972年に東京証券取引所市場第二部へ上場しました。1991年の市場第一部指定替えを経て、近年は米国やインドネシアなど海外展開も積極的に進めています。
現在の従業員数は連結で966名、単体で618名体制です。大株主の状況としては、筆頭株主が事業提携関係等をもつ事業会社のトルクで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は生命保険会社となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| トルク | 11.67% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.98% |
| 日本生命保険相互会社 | 3.02% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長執行役員は河瀬博英が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 河瀬博英 | 代表取締役社長執行役員 | 1988年に同社へ入社し、沖縄支店長、九州支店長、マーケティング室長などの要職を歴任しました。2019年に取締役に就任し、2021年より現職。 |
| 三上俊彦 | 取締役常務執行役員国際部門管掌 | 1984年に同社へ入社後、東北支店長、関西支店長、土木事業部長などを経て、2019年に取締役に就任しました。2024年より現職。 |
| 甲斐寿徳 | 取締役常務執行役員営業部門管掌 | 1989年に同社へ入社し、九州支店長、東京支店長などを歴任しました。2021年に取締役上席執行役員に就任し、2024年より現職。 |
| 江川寿紀 | 取締役執行役員管理部統括部長 | 2018年に同社へ入社し、管理部経理財務グループ部長を務めました。2021年に執行役員に就任し、2025年より現職。 |
| 遠藤年誠 | 取締役(監査等委員) | 1992年に同社へ入社後、久喜工場長、茨城工場長などの生産部門の要職を歴任しました。2018年に取締役に就任し、2025年より現職。 |
社外取締役は、長谷川直哉(法政大学教授)、西海和久(元ブリヂストン社長)、山口畝誉(U・アカデミー代表)、野田弘子(プロビティコンサルティング社長)、高橋均(獨協大学教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建設関連製品事業」および「その他の事業」を展開しています。
■(1) 建設関連製品事業(国内)
同社グループの中核事業として、国内の建設現場向けに仮設・型枠製品、土木製商品、構造機材製商品などの関連工法の開発および製品の開発・製造・販売を展開しています。建設会社や土木業者などが主な顧客となります。
収益は顧客への製品販売や他社建材商品の仕入れ販売による代金から得ています。製品の開発・製造・販売は主に岡部が担い、製造をOMMへ委託しているほか、富士ボルト製作所が構造機材製品の開発から販売までを行っています。
■(2) 建設関連製品事業(海外)
米国およびインドネシアにおいて、現地の工法に適合した建材製商品の製造・仕入れ・販売を行っています。現地の建築現場や建設業者が主な顧客となり、インフラ関連の建設需要などを取り込んでいます。
収益は建材製品の販売代金から得ています。米国ではOCM, Inc.が販売を、OCM Manufacturing LLCが製造を担い、インドネシアではPT. フジボルトインドネシア等が製造や販売を行っています。
■(3) その他の事業
建設領域以外の分野として、産業機械製品や海洋資材製品の開発・製造・販売、自動車向けボルト・ナット類の企画・販売を行っています。製造業者や水産・海洋関連事業者、自動車部品メーカーなどが顧客です。
収益は各製品の販売代金から得ています。産業機械製品は河原が製造販売を行い、海洋事業は岡部が直接手掛けています。また、米国ではオカベCO., INC.が自動車向け製品の事業を担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、売上高は一時的な増減を伴いながらも約600億円から700億円台の規模を維持しています。利益面では原材料価格の高騰や訴訟関連の特別損失等の影響により一時的に最終赤字を計上した時期もありましたが、直近では米国での販売好調や構造機材製商品の底堅い需要に支えられ、増収増益の回復基調を示しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 648億円 | 769億円 | 782億円 | 678億円 | 698億円 |
| 経常利益 | 47億円 | 55億円 | 43億円 | 44億円 | 51億円 |
| 利益率(%) | 7.3% | 7.1% | 5.5% | 6.5% | 7.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 29億円 | 39億円 | -10億円 | -16億円 | 22億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、それに伴い売上総利益も拡大しています。売上総利益率は概ね同水準を維持しており、安定した原価コントロールが行われていることが伺えます。また、営業利益および営業利益率も改善しており、本業における収益力が着実に向上している傾向が確認できます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 678億円 | 698億円 |
| 売上総利益 | 212億円 | 217億円 |
| 売上総利益率(%) | 31.2% | 31.1% |
| 営業利益 | 42億円 | 48億円 |
| 営業利益率(%) | 6.2% | 6.8% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与及び手当が48億円(構成比28%)、運賃荷造費が33億円(同19%)を占めています。また、当期製造費用のうち、材料費が80億円(構成比67%)、経費が29億円(同24%)を占めています。
■(3) セグメント収益
建設関連製品事業は、国内では着工床面積の減少や工事遅延の影響を受け一部製品が苦戦したものの、米国でのインフラ関連需要の取り込みと即納体制の強化が寄与し、全体として増収となりました。その他の事業も、産業機械製品の高付加価値品の拡販などにより増収を達成しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 建設関連製品事業 | 615億円 | 631億円 |
| その他の事業 | 63億円 | 67億円 |
| 連結(合計) | 678億円 | 698億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態です。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 37億円 | 24億円 |
| 投資CF | -24億円 | -26億円 |
| 財務CF | -24億円 | -28億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「安全・安心の提供を通じて社会に貢献する」を経営理念として掲げています。また、「あらゆる職場が開拓精神を旨とし、創意工夫革新に努力すること」や「人材の育成に努力し、企業の永遠の発展を期すること」などを社是とし、役員・社員だけでなく広く社会を取り巻くすべてのステークホルダーに満足を提供することが企業の存在意義であるとしています。
■(2) 企業文化
100年以上の歴史のなかで培った技術力や、すべての取引先との強固な信頼関係をベースとした「okabe」ブランドを価値観の源泉としています。メーカーの原点である製品開発技術や品質管理技術を維持向上させ、様々な外部環境を想定しながら、持続可能な社会に貢献する文化を重視し、地球環境と人類が良い方向に変化するよう事業活動に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
2040年の将来像として「okabe コーポレートビジョン 2040」を掲げ、その実現に向けた中期経営計画「OX-2026(okabe Transformation 2026)」を推進しています。最終年度である2026年度の定量目標として以下の数値を設定しています。
* 売上高 725億円
* 営業利益 51.5億円
* 経常利益 53億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益 37億円
* 自己資本利益率(ROE) 6%
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画「OX-2026」において、国内外のマテリアリティにソリューションを提供し、持続的な成長を図るため、サステナビリティ経営を推進しています。具体的には、以下の3つを事業戦略の骨子として掲げています。
* カスタマー・セントリック(顧客課題解決のための新製品開発やグローバル展開の加速)
* 人的資本経営の実践と経営基盤の強化
* DXのさらなる推進(基幹システムの刷新やIT戦略室の新設)
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人材の育成に努力し、企業の永遠の発展を期すること」という社是に基づき、国籍や性別等を問わず社員がチャレンジ精神を持ち活躍できる能力開発の機会を提供しています。また、従業員が心身ともに健康で働ける職場環境や風土の整備に取り組んでおり、女性活躍の推進、シニア人材の活躍支援、リファラル・アルムナイ採用の導入など、多様な人材の確保と育成を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 40.5歳 | 14.7年 | 6,920,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.5% |
| 男性育児休業取得率 | 76.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 72.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 65.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途採用者比率(49.5%)、従業員離職率(4.2%)、1人当たりの月平均残業時間(13.2時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済危機および鋼材価格上昇のリスク
同社の主力である国内建設市場における景気後退や建設需要の減少、通商政策の動向による景気の下振れが懸念されます。また、原材料である鋼材価格の上昇に対して、コスト低減や顧客への適正な価格転嫁が十分に図れない場合、利益率が圧迫され業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 海外事業展開と海外子会社の管理リスク
海外市場への展開やM&Aを通じてグローバル展開を推進するなかで、海外子会社の管理が行き届かず財務内容が悪化するリスクがあります。また、当該国の法律や環境規制等に対する理解不足からコンプライアンス違反が発生した場合、社会的な信用の失墜や業績への悪影響が生じるおそれがあります。
■(3) 情報セキュリティおよびシステム障害のリスク
システム障害やコンピューターウイルス、サイバー攻撃などにより社内システムが停止した場合、生産や営業などの基幹業務が中断し、製品の安定供給に支障をきたすリスクがあります。また、機密情報や顧客情報の漏洩が発生した際には、企業としてのブランド価値の低下や損害賠償責任につながるおそれがあります。



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