※本記事は、DMG森精機株式会社の有価証券報告書(第78期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. DMG森精機ってどんな会社?
工作機械や周辺機器の製造・販売および関連サービスをグローバルに提供する企業です。
■(1) 会社概要
1948年に設立され、1958年に工作機械の製造販売を開始しました。1979年に大阪証券取引所、1981年に東京証券取引所に上場し、現在はプライム市場に区分されています。2015年に独DMG MORI AGを連結子会社化して事業基盤を拡大し、グローバルな工作機械メーカーへと成長しました。
従業員数は連結で14,026名、単体で451名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に資産管理業務を行う日本カストディ銀行です。第3位には従業員持株会が名を連ねており、安定した資本基盤のもとで事業運営を行っています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.06% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 10.87% |
| DMG森精機従業員持株会 | 3.67% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性3名の計15名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は森雅彦が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 森 雅彦 | 代表取締役社長 | 京都大学工学部卒業後、伊藤忠商事を経て同社に入社し、1999年より現職。東京大学工学博士号を取得し、独DMG MORI AG監査役会議長も務める。 |
| 玉井 宏明 | 代表取締役副社長管理・製造管掌 | 同志社大学商学部卒業後、同社に入社。取締役、常務、専務を経て2014年に代表取締役副社長に就任し、現在は管理および製造を管掌。 |
| 藤嶋 誠 | 代表取締役副社長開発・品質管掌 | 同志社大学工学部卒業後、同社に入社。京都大学工学博士号を取得。R&Dカンパニープレジデント等を経て、2026年より現職。 |
| アルフレッドガイスラー | 取締役副社長DMG MORI AG管掌 | 独DMG MORI Pfronten社等で製造やR&Dを統括し、DMG MORI AGのチェアマンを経て、2026年より現職。 |
| イレーネバーダー | 取締役グローバルコーポレートコミュニケーション・グローバルHR管掌 | 独企業でマーケティング等を担当後、執行役員等を経て2023年に取締役に就任。経営学博士号を有し、2026年より現職。 |
| 太田 圭一 | 取締役CFO・CIO・営業管掌 | 東京大学大学院修了後、同社に入社。京都大学工学博士号を取得し、米州担当やICT本部長等の要職を経て、2026年より現職。 |
社外取締役は、御立尚資(元ボストン・コンサルティング・グループ日本代表)、中嶋誠(元特許庁長官)、渡邊弘子(富士電子工業代表取締役社長)、光石衛(東京大学名誉教授)、河合江理子(京都大学名誉教授)、柿沼康弘(慶應義塾大学教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「マシンツール」および「インダストリアル・サービス」の事業を展開しています。
■(1) マシンツール
5軸加工機、複合加工機、マシニングセンタ、ターニングセンタなど、多様な工作機械の開発、製造および販売を行っています。航空宇宙、医療、半導体など高度な加工精度が求められる幅広い産業分野の顧客に対して、最先端の製品を提供しています。
顧客に対する工作機械本体の販売を主な収益源としています。事業の運営は、DMG森精機、太陽工機、DMG森精機伊賀などの国内グループ会社に加え、ドイツのDMG MORI Pfronten GmbHや米国の製造子会社など、グローバルな体制で行っています。
■(2) インダストリアル・サービス
工作機械に関連する補修部品の販売や修理復旧サービス、計測装置などの周辺装置、ソフトウェアの開発および提供を行っています。顧客工場の生産性向上や自動化、デジタル化を支援するトータルソリューションを展開しています。
顧客からのMRO(メンテナンス・リペア・オーバーホール)費用やスペアパーツ代金、周辺機器およびソフトウェアの販売代金が主な収益源です。運営は、DMG森精機セールスアンドサービス、マグネスケール、DMG MORI Digitalなどの子会社が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の売上収益は増加傾向から直近で微減となりましたが、概ね安定した成長を描いています。税引前利益や当期利益は一時的な変動を経ながらも、直近では非継続事業の影響や採算改善により大幅な増益を達成し、強固な収益基盤を示しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 3960億円 | 4748億円 | 5395億円 | 5409億円 | 5150億円 |
| 税引前利益 | 196億円 | 365億円 | 479億円 | 221億円 | 282億円 |
| 利益率(%) | 5.0% | 7.7% | 8.9% | 4.1% | 5.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 135億円 | 254億円 | 339億円 | 77億円 | 240億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は減少したものの、コスト管理の徹底により売上総利益率は安定した水準を維持しています。営業利益および営業利益率は低下していますが、これは将来の成長を見据えた投資や経営環境の変化に伴う一時的な影響が含まれています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 5409億円 | 5150億円 |
| 売上総利益 | 380億円 | 319億円 |
| 売上総利益率(%) | 7.0% | 6.2% |
| 営業利益 | 437億円 | 190億円 |
| 営業利益率(%) | 8.1% | 3.7% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が142億円(構成比35%)、支払手数料が46億円(同11%)、給料・賞与金が45億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントともに売上は堅調ですが、前期比では微減となりました。利益面では両セグメントにおいて減少が見られ、全体の営業利益を押し下げる要因となっていますが、各事業とも一定の利益率を確保しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益(2025年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| マシンツール | 6365億円 | 6157億円 | 188億円 | 86億円 | 1.4% |
| インダストリアル・サービス | 2306億円 | 2356億円 | 428億円 | 233億円 | 9.9% |
| その他・調整額 | -3262億円 | -3363億円 | -176億円 | -132億円 | - |
| 連結(合計) | 5409億円 | 5150億円 | 440億円 | 187億円 | 3.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.3%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は33.1%であり、いずれも市場平均を下回っています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 446億円 | 260億円 |
| 投資CF | -382億円 | -112億円 |
| 財務CF | -57億円 | -204億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、工作機械メーカーとして「独創的で、精度良く、頑丈で、故障しない機械、自動化システム、デジタル技術を、最善のサービスとコストでお客様に供給すること」を経営理念に掲げています。高度なテクノロジーとソリューションを通じて、全世界の顧客にとってなくてはならない企業を目指し、社会的課題の解決と持続可能な社会の実現に貢献しています。
■(2) 企業文化
「責任ある企業市民として地域、社会に貢献する」「環境資源を大切にし地球環境を守る」「高い倫理観を持って、社会良識に準拠した企業活動を行う」ことを重視しています。多様な言語や国籍、専門分野を持つ人材が互いに尊重し協力し合うことで、技術的なイノベーションを生み出すオープンで多様性を重んじる組織風土が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
需要変化の激しい工作機械業界においてグローバルワンの地位を維持・継続するため、利益率の向上、財務体質の強化、資本収益性の向上を最重要課題としています。中長期的な目標として、2030年度をめどにROEの向上を目指すとともに、来期に向けた具体的な連結業績目標を設定し、継続的な企業価値の向上に努めています。
* ROE 15%以上(2030年度目標)
* 連結受注高 5,400億円(来期計画)
* 売上収益 5,350億円(来期計画)
* 営業利益 225億円、営業利益率4.2%(来期計画)
■(4) 成長戦略と重点施策
工程集約と自動化、DXを推進するMX(マシニング・トランスフォーメーション)戦略を中核に据え、高付加価値なソリューションを提供しています。航空・宇宙・防衛や環境関連などの成長分野の開拓、基幹ユニットの内製化と共通化、グローバルなネットワーク接続による予防保全とソフトウェアの遠隔アップデートなどを重点施策として展開しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
多様なバックグラウンドを持つ人材が最大限能力を発揮できるよう、グローバル規模での人材登用や職位・職種の標準化を進めています。また、出産や育児、介護をサポートする柔軟な休暇制度や企業内保育園の運営などを通じて、性別に関係なく自己実現できる働きやすい環境の整備とワークライフバランスの向上に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 43.3歳 | 17.2年 | 9,050,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.9% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 78.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 87.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 94.0% |
また、同社は「人的資本」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、1人当たり年平均有給休暇取得日数(18.5日)、1人当たり平均総労働時間(1,994時間)、女性管理職比率目標(2027年12月までに12.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場競合による価格競争とシェア維持の懸念
工作機械業界は参入企業が多く、海外企業を含めた厳しい競争環境にあります。技術力強化やコスト削減等の施策を推進していますが、有利な価格決定が困難になり、市場シェアの維持や収益性の確保が難しくなった場合、同社の業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 取引先の信用状況悪化に伴うリスク
同社グループは取引先の信用リスクに対して細心の注意を払い、与信管理などを徹底しています。しかし、景気後退や経営環境の変化などにより、取引額の大きい主要な取引先の業績が悪化して信用リスクが顕在化した場合、債権回収が困難となり、同社の業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 製品不具合や訴訟に関連する事業リスク
グローバルベースで品質管理の徹底を図り、安全で高品質な製品の提供に努めています。しかし、万が一製品に重大な不具合が発生し、大規模なリコールや製品補償費用が発生した場合、あるいは国内外の業務遂行において重大な損害賠償請求訴訟を提起された場合、同社の財政状態に悪影響を及ぼす恐れがあります。



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