※本記事は、東洋炭素株式会社 の有価証券報告書(2025年12月期、2025年1月1日 ~ 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
東洋炭素は、等方性黒鉛材料を主素材とする高機能カーボン製品の製造、加工、販売を主たる事業としています。1974年に等方性黒鉛材料の量産化と大型化を実現し、その用途は産業機械、自動車、家電から原子力、宇宙航空、医療、エネルギー等の最先端分野まで多岐にわたります。
単体従業員数は976名、連結従業員数は1,678名です。同社グループのセグメントは日本、米国、欧州、アジアの4つです。
主な国内グループ会社は、東炭化工(炭素製品の製造)、大和田カーボン工業(同)などです。
直近では、同社グループは事業体質の強化のため、中国連結子会社のカーボンブラシ事業において生産体制最適化に向けた人員整理を実施しました。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
東洋炭素は、グローバルに事業を展開する素材メーカーとして、技術革新と社会貢献を重視する企業文化を持っています。従業員の成長を会社の発展の原動力と捉え、働きがいのある環境づくりに注力しています。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社では、従業員が長期的にキャリアを築ける環境が整っていることがうかがえます。平均勤続年数や平均年齢から、安定した人材構成の傾向が見られます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 7,249,765円 |
| 平均勤続年数 | 15.2年 |
| 平均年齢 | 40.9歳 |
| 単体従業員数 | 976人 |
| 連結従業員数 | 1,678人 |
| 単体のグループ内比率 | 58.2% |
同社および連結子会社は、確定給付型(給与や勤続年数に応じて給付額が決まる)と確定拠出型(会社が拠出した資金を従業員が運用する)の退職給付制度を設けています。退職一時金制度もあり、給与と勤務期間に基づいた一時金が支給されます。
なお、退職給付債務は20.8億円、年金資産は28.2億円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
東洋炭素は、人材を最も大切な資産と位置づけ、その成長が会社発展の原動力であると考えています。グローバル化やDX活用による働き方改革、価値観・ビジネスモデルの変容といった経営環境の変化に対応し、サステナブルな社会の実現に貢献する人事環境の構築を推進しています。
社員にとって働きがいのある会社を目指し、多様性の尊重、適所適材による人材配置、中長期的な人材育成、健康経営の推進を重視しています。また、公正な評価と総合的な報酬政策を通じて、従業員のエンゲージメント向上を図っています。こうした人事施策により、「人と組織」のパフォーマンスを最大化し、一人ひとりが情熱と誇りを持って挑戦できる活躍の舞台を提供し続けています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。管理職に占める女性労働者の割合は2026年1月1日時点の従業員数に基づき、部下を持つ職務の者を管理職として算出しています。男性労働者の育児休業取得率は、育児休業等の取得割合を算出したものです。労働者の男女の賃金の差異は、2025年1月1日から2025年12月31日までの期間を対象とし、基本給、超過労働に対する報酬、賞与等を含んで算出されています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 9.8% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 74.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 92.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 92.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パートタイマー・有期労働者) | 69.3% |
人材開発・育成
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 資格・講習等の受講延べ人数 | 583人 |
働きやすい環境風土の構築
当事業年度に誕生した子供を有する従業員のうち、育児休業を取得した従業員の割合を記載しております。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 男性育児休業取得率 | 74.2% |
流動性
当事業年度に採用した採用数に対する定着率を記載しております。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 採用者に対する定着率 | 97.5% |
健康管理
従業員全体に対するストレスチェック受診率を記載しております。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| ストレスチェック受診率 | 96.8% |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
東洋炭素は、等方性黒鉛材料を中心とした高機能カーボン製品の製造、加工、販売をグローバルに展開しています。最先端分野から一般産業まで幅広い用途で、素材から製品まで一貫した体制で事業を推進しています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、等方性黒鉛材料を主軸としたカーボン製品の製造、加工、販売を主要な事業としています。高機能分野の製品を多品種少量生産で提供し、顧客の多様なニーズに対応しています。国内で素材を生産し、米国、欧州、アジアの海外拠点を通じて直接販売する体制を構築しています。収益は、主に特殊黒鉛製品、一般カーボン製品、複合材その他製品の販売から得ています。特定の顧客への収益集中は見られません。
同社グループの事業セグメントは「日本」「米国」「欧州」「アジア」の4地域で構成されています。海外売上高の割合は過半数を占めており、前期から増加傾向にあります。
日本
半導体用が減少したものの、工業炉用等の冶金用や軸受等の機械用カーボン分野は底堅く推移しました。収益は、主に特殊黒鉛製品、一般カーボン製品、複合材その他製品の販売から得ています。
米国
半導体用等は堅調に推移しましたが、連続鋳造用や工業炉用等の冶金用が減少しました。収益は、主に特殊黒鉛製品、一般カーボン製品、複合材その他製品の販売から得ています。
欧州
半導体用や冶金用が減少しました。収益は、主に特殊黒鉛製品、一般カーボン製品、複合材その他製品の販売から得ています。
アジア
工業炉等の冶金用は堅調に推移しましたが、カーボンブラシ製品が減少しました。収益は、主に特殊黒鉛製品、一般カーボン製品、複合材その他製品の販売から得ています。
| セグメント | 売上高(2024年12月期) | 売上高(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 295億円 | 242億円 |
| アジア | 133億円 | 125億円 |
| 欧州 | 52.8億円 | 49.1億円 |
| 米国 | 49.7億円 | 46.2億円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの直近5期間の業績は、売上高と利益において変動が見られます。前期は売上高、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益ともに増加傾向にありましたが、当期は減少に転じました。特に当期は、売上高の減少幅に対し、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益の減少幅が大きくなっています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 377億円 | 438億円 | 493億円 | 531億円 | 462億円 |
| 経常利益 | 62.6億円 | 73.7億円 | 102億円 | 135億円 | 80.9億円 |
| 経常利益率 | 16.6% | 16.8% | 20.7% | 25.4% | 17.5% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 44.6億円 | 51.8億円 | 75.1億円 | 99.6億円 | 54.6億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 212.94 | 247.08 | 357.91 | 474.95 | 260.58 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたりの売上高は、前期から当期にかけて減少しています。従業員1人あたりの営業利益も同様に減少しており、直近の事業環境の変化が生産性指標に影響を与えていることがうかがえます。これは、半導体市場の調整や一部製品の需要低迷が影響していると考えられます。
| 指標 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 29.7百万円 | 27.5百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 6.9百万円 | 4.0百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
東洋炭素グループは、強固な財務基盤を維持しながら、将来に向けた積極的な投資を進めている状況です。本業で安定した資金を生み出しつつ、事業拡大のための投資を継続していることがうかがえます。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
東洋炭素は、高い自己資本比率と潤沢な手元資金を保持しており、安定した財務基盤を築いています。これは、事業環境の変化や予期せぬ事態にも対応できる強みを示しています。
| 指標 | 2024年12月期(前期) | 2025年12月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 942億円 | 976億円 |
| 自己資本比率 | 83.2% | 82.7% |
| ROE(自己資本利益率) | 11.2% | 5.7% |
| 現金及び預金 | 160億円 | 153億円 |
同社の自己資本比率は当期で82.7%となっており、プライム市場の製造業平均(46.8%)と比較して高い水準を維持しています。ROE(自己資本利益率)は当期で5.7%となり、前期の11.2%から減少しています。プライム市場平均(9.4%)を下回る水準となっています。
手元資金を示す現金及び預金は、当期末で153億円となっています。前期の160億円から減少していますが、引き続き一定の資金を確保している状況です。
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
東洋炭素グループのキャッシュフローは、本業で安定した資金を生み出しつつ、将来に向けた投資を積極的に行っている状況を示しています。営業活動によるキャッシュフローはプラスを維持していますが、投資活動によるキャッシュフローがそれを上回る規模となっています。
営業活動によるキャッシュフローは、当期に60.7億円の資金を獲得しました。これは主に税金等調整前当期純利益や減価償却費の増加、売上債権の減少によるものです。一方で、棚卸資産の増加や仕入債務の減少、法人税等の支払額が資金を減少させています。
投資活動によるキャッシュフローは、当期に△113.1億円の資金を使用しました。これは主に有形固定資産の取得による支出が大きく影響しています。財務活動によるキャッシュフローは、当期に24.0億円の資金を獲得しました。これは長期借入れによる収入が、配当金の支払額や長期借入金の返済による支出を上回ったことによるものです。
これらの結果、フリーキャッシュフローは当期に△52.5億円となりました。本業で得た資金を上回る投資を行っており、成長に向けた積極的な姿勢がうかがえます。
| 項目 | 2024年12月期(前期) | 2025年12月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 94.9億円 | 60.7億円 |
| 投資CF | △63.1億円 | △113.1億円 |
| 財務CF | △25.6億円 | 24.0億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | 31.8億円 | △52.5億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、海外売上高比率が当連結会計年度で57.2%と高く、為替レートの変動、政治情勢の変化、法規制の変化などが経営成績に影響を及ぼす可能性があります。特に中国における政治および政策の変化が、経営成績に影響を及ぼす可能性も指摘されています。
また、主要製品である特殊黒鉛製品はエレクトロニクス分野での利用が多く、同分野の市場変動が経営成績に影響を及ぼす可能性があります。競合他社の動向や価格競争の結果も、経営成績に影響を及ぼすリスクとして挙げられています。
③ 人材・組織に関するリスク
人材・組織に関するリスクの記載はありません。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
東洋炭素は、「C(カーボン)の可能性を追求し世界に貢献すること」を経営理念に掲げ、創業以来のパイオニア精神を大切にしている会社です。最高の品質と技術を通じて、人々の暮らしを豊かにし、社会に貢献することを目指しています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
同社グループは、「C(カーボン)の可能性を追求し世界に貢献すること」を経営理念としています。創業以来の「どこにもないモノをつくる」というパイオニア精神を忘れず、最高の品質と技術を誰よりも先に提供することで、広く社会に貢献できる企業を目指しています。
中長期的な経営戦略として、2030年経営Vision『「どこにもないものを、あるに」地球に優しい製品と技術で世界No.1』を掲げています。このビジョンのもと、「グローバル企業になる」「世のため、社会のためになる」「強い会社になる」ことを会社方針としています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社グループは、従業員一人ひとりの自主性と責任感を重視し、全てのステークホルダーへの価値提供とサステナビリティ向上に貢献することを方針としています。技術革新による社会的価値創出、地球環境への配慮、コンプライアンス、人権尊重などを意識した事業活動を推進しています。
人材は最も大切な資産であり、人の成長が会社発展の原動力であると考えています。多様性の尊重、適所適材の人材配置、中長期的な人材育成、健康経営の推進、公正な評価と総合的な報酬政策によるエンゲージメントの向上を重視しています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社グループは、事業環境や市況の変化に左右されない事業ポートフォリオの構築を課題としています。また、グループ全体におけるガバナンス体制と経営基盤の強化にも取り組んでいます。
中長期的な経営戦略を支えるため、グローバル人材の育成強化を推進しています。さらに、事業を通じた温室効果ガス排出量削減への貢献をはじめとするサステナビリティの取り組みを加速させています。マテリアリティ(重要課題)への取り組みを加速し、気候変動への対応も重点テーマとしています。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
東洋炭素は、取締役会と監査役会を設置し、複数の諮問委員会を通じてガバナンス体制を構築しています。業務執行と監査・監督の分離を図り、経営判断の透明性・合理性・適法性を確保しています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)です。上位株主には近藤朋子氏、近藤尚孝氏、近藤ホールディングスなど、近藤家およびその関連会社が複数名を連ねています。特定の株主グループが同社の経営に一定の影響力を持つ資本構成となっています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.58% |
| 近藤朋子 | 7.44% |
| 近藤尚孝 | 5.82% |
| 近藤ホールディングス | 5.55% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.92% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は8名(男性6名・女性2名)で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役会長兼社長兼CEOは近藤尚孝氏が務めています。社外取締役比率は60.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 近藤 尚孝 | 取締役会長兼社長 (代表取締役) 会長執行役員 社長執行役員 最高経営責任者(CEO) 管理本部担当 兼 グローバル営業本部担当 | 1980年三井物産入社、1985年同社入社、取締役、常務執行役員、専務取締役、2007年NTコーポレーション代表取締役、2009年同社取締役社長、2018年同社取締役会長、代表取締役、会長執行役員、最高経営責任者(CEO)、取締役社長、社長執行役員より現職。 |
| 濱田 達郎 | 取締役 専務執行役員 経営企画本部長 技術本部担当 兼 生産本部担当 | 1983年ブリヂストン入社、タイヤ材料開発本部長、執行役員、2017年同社入社、執行役員開発本部担当、2019年経営企画本部長、取締役、2024年専務執行役員、2025年技術本部担当兼生産本部担当より現職。 |
社外取締役は、松尾修介氏(元クレハ特別顧問)、高坂佳郁子氏(弁護士法人色川法律事務所社員弁護士)、内藤牧男氏(国立大学法人大阪大学名誉教授)です。
東洋炭素は監査役会設置会社であり、取締役会、監査役会、会計監査人、内部監査部門がそれぞれの機能を果たしています。社外取締役は業務執行から独立した客観的な視点から助言を行い、経営監視機能の強化に貢献しています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
同社の役員報酬は、企業価値の持続的な向上と社会貢献を目的とした報酬体系を基本方針としています。業務執行取締役の報酬は、月例の基本報酬、短期インセンティブ報酬、中長期インセンティブ報酬で構成されています。監督機能を担う非業務執行取締役の報酬は、基本報酬のみとなっています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役 | 5名 | 1.3億円 | 25.2百万円 |
| うち社外取締役 | 3名 | 25百万円 | 8.3百万円 |
| 監査役 | 3名 | 30百万円 | 10.0百万円 |
| うち社外監査役 | 2名 | 13百万円 | 6.5百万円 |
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



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