※本記事は、荏原実業株式会社 の有価証券報告書(2025年12月期、2025年1月1日 ~ 2025年12月31日、2026年3月9日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
同社グループは、環境関連機器・装置の製造・販売、水処理施設などの各種プラントの設計・施工、風水力冷熱機器などの仕入れ・販売を主な事業としています。荏原グループとの販売代理店契約に基づき、製品の仕入れ・販売やプラント施工における機器材料の調達も行っています。
単体従業員数は458名、連結従業員数は548名です。セグメントはメーカー事業、エンジニアリング事業、商社事業の3つです。
主な国内グループ会社は、役員等の、兼務等、荏原製作所、(東京都大田区)などです。
2025年4月1日付で荏原実業テクノロジーズを設立し連結子会社化、同年7月1日付でオゾン関連機器および医療機器事業を同社に承継する吸収分割を実施しました。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
荏原実業は、社会のインフラストラクチャー整備に貢献する事業を長年にわたり展開しており、安定した環境で働くことが期待できます。同社グループは人材を事業活動の礎と捉え、多様な人材が最大限の力を発揮できる環境整備に注力しています。健康経営やワークライフバランスの推進にも積極的な姿勢を示しています。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社では、平均勤続年数が長く、平均年齢も比較的高い傾向が見られます。このことから、従業員の定着性が高く、経験豊富な人材が長期にわたって活躍している環境であると考えられます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 8,110,000円 |
| 平均勤続年数 | 14.3年 |
| 平均年齢 | 42.3歳 |
| 単体従業員数 | 458人 |
| 連結従業員数 | 548人 |
| 単体のグループ内比率 | 83.6% |
同社グループは、確定給付型(給与や勤続年数に応じて給付額が決まる)と確定拠出型(会社が拠出した資金を従業員が運用する)の両方の退職給付制度を採用しています。これらの制度は同社および連結子会社に適用されています。
なお、退職一時金の有無や支給条件、従業員ごとの会社拠出額などは、有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。
退職給付債務は26.9億円、年金資産は25.9億円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
同社グループは、持続可能な社会の実現に向けた「新たな価値」創造の礎を「人材」と位置付けています。多様な人材を適切に採用・配置し、従業員一人ひとりが最大限の力を発揮できる環境整備に注力しています。
ダイバーシティ、健康・ワークライフバランス、労働安全衛生、人権、責任ある調達を重点テーマとしています。
具体的には、女性活躍推進や仕事と育児・介護・生活の両立支援に力を入れており、厚生労働省が認定する「えるぼし認定」の最高位(3つ星)を取得しています。健康・ワークライフバランスでは「荏原実業 健康宣言」を策定し、経済産業省および日本健康会議が主催する「健康経営優良法人」に3期連続で認定されています。
また、時間外労働削減目標やノー残業デーの設定、子育て世代サポート制度の導入も行い、子育てサポート企業として「くるみん認定」も取得しています。労働安全衛生を最優先事項とし、安全衛生委員会を毎月開催し、協力会社との連携も強化しています。人権尊重を基本とし、全役職員向けの人権研修やハラスメント相談窓口を設置しています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
連結子会社は法定開示の公表義務対象外のため、提出会社単体のデータを示します。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 8.3% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 100.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 68.4% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 69.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 37.6% |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
荏原実業は、環境関連機器・装置の製造・販売、水処理施設などの各種プラントの設計・施工、風水力冷熱機器などの仕入・販売を主な事業内容としています。同社グループは、メーカー事業、エンジニアリング事業、商社事業の3つのセグメントで事業を展開しています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
荏原実業は、環境関連分野において多岐にわたるソリューションを提供しています。主に、自社開発製品の製造・販売、水処理施設などのプラント設計・施工、そして風水力冷熱機器などの仕入・販売を通じて収益を上げています。同社グループは、中期経営計画「EJ2027」において「防災・減災」、「蓄電池」、「水産」の3つを注力領域として企業価値の向上を目指しています。
メーカー事業
このセグメントでは、オゾン濃度計、オゾン応用機器、脱臭装置、感染症対策製品、栽培漁業関連装置、廃棄物処理装置、水処理プラント、家庭用蓄電システムなどの自社開発製品の製造・販売を手掛けています。収益は、これらの製品の販売から得ています。運営は、荏原実業テクノロジーズなどの子会社が行っています。
エンジニアリング事業
上下水道処理施設(浄水場、下水処理場、各種ポンプ場など)の設計・施工、および関連する機械・電気設備等の設計・施工・メンテナンスを行っています。収益は、官公庁などからの直接受注による各種プラント類の設計・施工から得ています。
商社事業
ポンプ、ボイラ、省エネ型空調機器などの風水力機器や冷熱機器の仕入・販売、および関連する設備工事を手掛けています。収益は、荏原グループから調達した機器材料などを使用した設計・施工や商品販売から得ています。運営は、㈱エバジツなどの子会社が行っています。
同社グループの売上高は、本邦以外の地域が連結損益計算書の10%未満であるため、国内市場が中心となっています。また、特定の顧客への売上高が連結損益計算書の10%以上を占める相手先はありません。
| セグメント | 売上高(2024年12月期) | 売上高(2025年12月期) |
|---|---|---|
| エンジニアリング事業 | 189億円 | 224億円 |
| 商社事業 | 115億円 | 113億円 |
| メーカー事業 | 71.1億円 | 75.1億円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの直近5期間の業績は、売上高、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益のいずれも増加傾向を示しています。特に当連結会計年度においては、売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益が前期から大きく増加しました。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 325億円 | 302億円 | 363億円 | 375億円 | 412億円 |
| 経常利益 | 41.1億円 | 29.3億円 | 41.6億円 | 44.4億円 | 63.2億円 |
| 経常利益率 | 12.7% | 9.7% | 11.5% | 11.8% | 15.3% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 31.6億円 | 21.7億円 | 31.4億円 | 31.6億円 | 43.8億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 126.52 | 88.57 | 131.56 | 132.11 | 184.24 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたりの売上高は、当期において前期から増加しました。また、従業員1人あたりの営業利益も前期から大きく増加しており、生産性の向上が見られます。これらの指標は、同社グループの収益体質の強化と組織効率の改善を示しています。
| 指標 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 69.1百万円 | 75.2百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 7.8百万円 | 11.2百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
荏原実業グループの財務状況は、安定した基盤を築いていることを示しています。本業で得た資金を適切に活用し、健全な経営が維持されている状況です。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの財務基盤は、自己資本比率とROE(自己資本利益率)のいずれもプライム市場平均を上回る水準で推移しています。自己資本比率はプライム市場の製造業平均と比較して高い水準を示しています。また、ROE(自己資本利益率)もプライム市場平均を上回っています。手元資金である現金及び預金も潤沢に確保されており、安定した経営状況がうかがえます。これらの状況は、事業の継続性や将来的な成長投資の余力につながる要素です。
| 指標 | 2024年12月期(前期) | 2025年12月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 235億円 | 279億円 |
| 自己資本比率 | 54.6% | 57.7% |
| ROE(自己資本利益率) | 14.2% | 17.1% |
| 現金及び預金 | 149億円 | 152億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループのキャッシュフローは、本業で安定的に資金を生み出し、投資活動も行いつつ、最終的に自由に使える資金を確保している状況です。当期の営業活動によるキャッシュフローは資金を獲得しましたが、売上債権及び契約資産の増加や仕入債務の減少により、前期から減少しています。投資活動によるキャッシュフローは、有形固定資産の取得による支出などにより、資金の支出となりました。財務活動によるキャッシュフローは、配当金の支払額があったものの、長期借入れによる収入もあり、資金の支出は減少しています。これらの結果、フリーキャッシュフローはプラスを維持しており、本業で得た資金が投資を上回る優良な状態を示しています。この資金の流れは、同社グループが事業の継続性を保ちながら、将来に向けた投資余力も有していることを示しており、雇用や給与の安定性につながる要素と言えます。
| 項目 | 2024年12月期(前期) | 2025年12月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 19.7億円 | 14.1億円 |
| 投資CF | △1.9億円 | △2.1億円 |
| 財務CF | △15.7億円 | △7.5億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | 17.8億円 | 12.1億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、受注高及び売上高の官公庁依存度が高い水準にあり、公共投資予算の抑制や公共工事コストの縮減策が業績に影響を与える可能性があります。また、民間設備投資の動向や新規参入業者の増加による価格競争の激化、原材料価格の変動など、急激な市場環境の変化も業績に影響を与える可能性があります。
③ 人材・組織に関するリスク
人材・組織に関するリスクの記載はありません。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
荏原実業は、「豊かな人間環境の創造を目指して社会に貢献する」という経営理念と、パーパス「心地よい環境を、未来へつなぐ。」を掲げています。長年にわたり環境問題に取り組み、環境保全のエキスパートとして社会に貢献することを目指している会社です。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
荏原実業グループは、「豊かな人間環境の創造を目指して社会に貢献する」という経営理念と、パーパス(存在意義)「心地よい環境を、未来へつなぐ。」を掲げています。同社グループは、環境に対する社会的な関心が高まる以前から、環境保全のエキスパートとしてノウハウを蓄積してきました。
2030年には、人々の健康、快適かつ安心安全な暮らし、自然との共存を実現する「トータル環境ソリューションカンパニー」への進化を目指しています。中期経営計画「EJ2027」では、「既存事業の強化」「新領域の探索」「経営基盤の充実」を基本方針としています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
荏原実業グループは、「豊かな人間環境の創造を目指して社会に貢献する」という経営理念のもと、人と社会、地球全体を持続可能な状態にしていく取り組みを推進しています。同社グループは、全ての事業活動の礎を「人材」と捉え、多様な人材が最大限の力を発揮できる環境整備を重視しています。
具体的には、女性活躍推進や仕事と育児・介護・生活の両立支援、障がい者やシニア従業員の活躍推進など、ダイバーシティを推進しています。また、「荏原実業グループ行動規範」において人権尊重や職場の安全衛生に関する項目を定め、従業員一人ひとりが心身ともに健康で、安心して働ける環境づくりを大切にしています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
荏原実業グループは、国内の水インフラ・環境設備市場における中長期トレンドの変化に対応し、持続的な成長を維持するため、中期経営計画「EJ2027」において「サステナビリティ戦略」を重点方針の一つとしています。同社グループは、収益の源泉を「人材」と認識し、「人的資本の最大化」を最も重要な課題としています。
具体的には、「経営戦略の実現を支える人材ポートフォリオの形成」と「変化を成長に変える組織づくり」に取り組んでいます。また、ガバナンス体制の継続的な改善、温室効果ガス排出量削減による環境負荷低減、SDGsの取り組みを通じた社会課題の解決も推進しています。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
荏原実業は、監査等委員会設置会社として、取締役会の監督機能強化と経営の透明性向上を図っています。社外取締役が多数を占める委員会が経営の公正性を確保する体制です。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
荏原実業の株主構成を見ると、筆頭株主は信託銀行の信託口であり、複数の機関投資家が上位に名を連ねています。事業会社や海外の投資ファンドも主要な株主として同社を支えている状況です。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.90% |
| 光通信 | 7.90% |
| NIPPON ACTIVE VALUE FUND PLC | 7.58% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 3.18% |
| NORTHERN TRUST CO.(AVFC)RE IEDP AIF CLIENTS NON TREATY ACCOUNT | 2.99% |
なお、上記所有株式数のほか、役員持株会を通じて鈴木久司氏が183株を所有しています。
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は9名(男性7名・女性2名)で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役会長兼CEOは鈴木久司氏、代表取締役社長執行役員兼COOは石井孝氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 鈴木 久司 | 取締役(代表取締役) 会長兼CEO | 1961年9月同社入社後、取締役、代表取締役・管理統括、代表取締役社長を歴任。2020年4月より代表取締役会長兼CEOを務めています。 |
| 石井 孝 | 取締役(代表取締役) 社長執行役員兼COO 営業統括 | 1996年3月同社入社。環境設備第2営業部長、執行役員、取締役常務執行役員・営業副統括などを経て、2024年3月より代表取締役社長執行役員兼COOを務めています。 |
| 大野 周司 | 取締役 専務執行役員 自社製品統括 総合企画室長 | 1996年10月同社入社。経理部長、執行役員、取締役常務執行役員などを歴任。2024年3月より取締役専務執行役員・自社製品統括を務めています。 |
| 下條 潤史 | 取締役 執行役員 管理本部長 法務部長 | 2002年2月同社入社。経理部長、管理本部長、執行役員・法務部長などを経て、2024年3月より取締役を務めています。 |
社外取締役は、石橋和男氏(公認会計士石橋和男事務所代表・取締役会議長・指名委員会委員長)、清水亜希氏(明哲綜合法律事務所パートナー弁護士・監査等委員会委員長・報酬委員会委員長)、北川智紀氏(安藤・間顧問)、坂本敦子氏(プライム代表取締役)です。
同社は監査等委員会設置会社制度を採用しています。監査等委員である取締役5名中4名が社外取締役であり、専門的な知見と豊富な経験に基づき、経営の監督と業務執行の役割分担を明確化し、実効性の高いコーポレート・ガバナンスを実現しています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
荏原実業の役員報酬は、役位や職責に応じた基本報酬に加えて、業績連動報酬と株式報酬を組み合わせた体系となっています。監査等委員である取締役と社外取締役は基本報酬のみで構成され、業務執行を担う取締役は固定報酬と変動報酬のバランスが考慮されています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(監査等委員及び社外除く) | 4名 | 1.7億円 | 41.8百万円 |
| 監査等委員(社外除く) | 1名 | 23百万円 | 23.0百万円 |
| 社外取締役 | 4名 | 36百万円 | 9.0百万円 |
なお、取締役(監査等委員を除く)の報酬額には、使用人兼務取締役の使用人分給与は含まれていません。非金銭報酬である譲渡制限付株式報酬は、企業価値向上と株主との価値共有を目的とした制度であり、当事業年度の交付対象者数は4名、割当株式数は7,748株となっています。
報酬等の総額が1億円以上の役員は存在しないため、個人別の報酬開示はありません。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。