マブチモーター 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

マブチモーター 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するマブチモーターは、自動車電装機器やライフ・インダストリー機器に使用される小型モーターの製造・販売を主力事業として展開しています。直近の業績トレンドを見ると、新規用途への販売拡大やM&Aの効果などにより、売上高と利益がともに増加する増収増益を達成しています。


※本記事は、マブチモーター株式会社の有価証券報告書(第85期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. マブチモーターってどんな会社?


自動車や家電など幅広い用途で使われる小型モーターの製造・販売で世界的なシェアを持つメーカーです。

(1) 会社概要


1958年に小型モーターの生産販売を目的に設立され、1964年の香港進出を皮切りにグローバル展開を推進しました。1986年に株式を上場しています。直近の2025年にはマブチオービーギアシステムやマブチモーターマイクロテックなどを子会社化し、事業領域の拡大とソリューション提案力を強化しています。

従業員数は連結で17,408名、単体で760名となっています。大株主の状況を見ると、筆頭株主は資産管理業務等を行う信託銀行であり、第2位には創業家出身の馬渕隆一氏、第3位にも信託銀行が名を連ねており、機関投資家と創業家が主要な株主となっていることが特徴です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.20%
馬渕 隆一 8.10%
日本カストディ銀行(信託口) 5.96%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.3%です。代表取締役社長は高橋徹氏です。社外取締役比率は54.5%です。

氏名 役職 主な経歴
大越 博雄 代表取締役会長 1984年同社入社。香港子会社総経理室長、経営企画室長、執行役員管理本部長などを経て、2013年代表取締役社長に就任。2019年より代表取締役社長CEOを務め、2024年より現職。
高橋 徹 代表取締役社長社長執行役員 1988年同社入社。大連子会社や東莞子会社の総経理を歴任し、製造本部生産管理部長、購買・生産管理本部長などを経て、2022年取締役執行役員に就任。2024年より現職。
伊豫田 忠人 取締役専務執行役員管理統括内部統制担当経営企画本部長スマートトランスフォーメーション本部長 1999年同社入社。経営企画部長、執行役員管理本部長、メキシコ子会社社長などを経て、2022年取締役常務執行役員に就任。2024年より取締役専務執行役員として内部統制や事業開発等を担当し、2025年より現職。
中村 剛 取締役常務執行役員事業統括 1988年同社入社。香港子会社営業二課長、ヨーロッパ子会社社長、執行役員営業本部長などを経て、2021年常務執行役員欧州総代表に就任。2024年常務執行役員営業担当を経て、2025年より現職。
小林 克己 取締役(常勤監査等委員) 1984年同社入社。管理本部技術センター長、総務部長、台湾子会社総経理などを経て、2022年執行役員人事・総務本部長に就任。2023年より現職。


社外取締役は、岡田晃氏(元ANA Cargo社長)、坂田誠二氏(元リコーCTO)、萩原貴子氏(元ソニー希望・光社長)、東葭葉子氏(元監査法人トーマツパートナー)、福山靖子氏(スプリング法律事務所パートナー弁護士)、金子敦氏(元セイコーウオッチ取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「アジア」「アメリカ」「ヨーロッパ」の報告セグメントを展開しています。

日本


小型モーターの部品や生産設備の製造、および関係会社や国内外市場への製品販売を行っています。また、新規にグループ入りした企業による精密ギアやステッピングモーターなどのソリューション提案も行っています。

自動車電装機器やライフ・インダストリー機器メーカーなどから製品の販売代金を受け取る収益モデルです。運営は主にマブチモーターやマブチオービーギアシステム、マブチモーターマイクロテックなどが担っています。

アジア


小型モーターおよびその部品、生産設備の製造と販売を行っています。中国、台湾、ベトナムなどの生産拠点を中心に、周辺市場やグループ内の他地域へ製品を供給する重要なサプライチェーンの役割を担っています。

顧客企業へのモーター販売代金やグループ内企業への製品・部品供給による収益が主な柱となっています。運営は主に万宝至馬達大連、万宝至馬達(東莞)、マブチモーターベトナムなどが担当しています。

アメリカ


北米および中南米市場に向けた小型モーターの製造と販売を展開しています。主にメキシコに生産拠点を置き、現地の自動車電装機器メーカーなどを対象に製品を供給しています。

現地の完成車メーカーや部品メーカーなどに対する製品の販売代金によって収益を得るビジネスモデルです。運営は主にマブチモーターアメリカコーポレーションやマブチモーターメキシコが担っています。

ヨーロッパ


欧州市場に向けた小型モーターの製造および販売を行っています。ポーランドの生産拠点やスイスの医療機器向けモーターメーカーなどを通じて、自動車や健康・医療分野の顧客に製品を提供しています。

欧州域内のメーカーに対する製品販売により対価を獲得するモデルです。運営は主にマブチモーターヨーロッパ、マブチモーターポーランド、マブチモーターエレクトロマグなどが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近5期間で継続して増加しており、着実なトップラインの成長が見られます。経常利益も売上高の拡大に伴って順調に増加しており、利益率も10%台半ばから後半へと改善傾向にあるなど、堅調な業績推移を示しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 1,346億円 1,567億円 1,787億円 1,962億円 2,004億円
経常利益 196億円 215億円 270億円 324億円 351億円
利益率(%) 14.5% 13.7% 15.1% 16.5% 17.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 206億円 130億円 168億円 115億円 390億円

(2) 損益計算書


売上高が増加したことに加え、売価やプロダクトミックスの改善などが寄与し、売上総利益および営業利益ともに前期を上回る結果となりました。利益率の各指標も改善しており、本業における収益力の向上が確認できます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 1,962億円 2,004億円
売上総利益 529億円 598億円
売上総利益率(%) 27.0% 29.8%
営業利益 216億円 255億円
営業利益率(%) 11.0% 12.7%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が133億円(構成比39%)、法定福利費・福利厚生費が28億円(同8%)、研究費が26億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のアジアが売上高の大部分を占めていますが、日本やヨーロッパなどでM&Aによるグループ会社の追加等の効果により売上が増加しています。全体として各地域で安定した収益基盤を構築しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
日本 201億円 243億円
アジア 956億円 940億円
アメリカ 354億円 359億円
ヨーロッパ 450億円 462億円
連結(合計) 1,962億円 2,004億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループの運転資金及び設備投資資金は主に自己資金から賄っており、外部調達は僅少です。

営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払額の増加や売上債権の減少等により、前期に対し減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得による支出の減少や定期預金の払戻による収入の増加等により、支出が減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出の増加等により、支出が増加しました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 401億円 354億円
投資CF -158億円 -105億円
財務CF -162億円 -174億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「国際社会への貢献とその継続的拡大」を経営理念に掲げています。これは創業当時から受け継がれる当社の遺伝子であり、未来永劫の企業活動の根幹となる考え方です。より良い製品をより安く供給することで人々の快適な生活に寄与するとともに、地球環境や人々の健康を犠牲にしない企業活動を行うことを経営の基軸としています。

(2) 企業文化


「適材適所による人材の活用と業務を通じた人材育成を行う」という経営指針のもと、人を最も重要な経営資源と位置付けています。また、海外拠点経営指針において「長期的な視点に立ち、進出国との共存共栄を図る」「多様な価値観を活用するダイバーシティ」を重視し、グローバルレベルでの相互理解や社会貢献を重んじる文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


2030年を最終年度とする「経営計画2030」を策定しており、財務指標と未財務指標の双方を高めて「マブチモーター・バリュー・ポイント(MVP)」の向上を目指しています。

* 売上高:3,000億円
* 売上高営業利益率:15%以上
* ROIC:12%以上
* ROE:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「動き」のソリューション提供を目的とする事業コンセプト「e-MOTO」を掲げ、モーター単体からユニット提供へと事業領域を拡大しています。特に「モビリティ」「マシーナリー」「メディカル」の3つのM領域に注力し、M&Aや外部提携を積極的に活用しながら、事業ポートフォリオの進化と成長を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業戦略と有機的に連動する人材投資を重視し、年齢、性別、国籍、障がいの有無などに関わらず人物本位で採用・登用を行っています。また、年齢や勤続年数に依存しない真の実力主義による評価・処遇制度やJOB型人事制度を導入し、多様な社員一人ひとりが個性を活かして活躍できる環境整備とキャリア形成の支援に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 43.3歳 15.9年 7,641,630円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.3%
男性育児休業取得率 73.7%
男女賃金差異(全) 64.7%
男女賃金差異(正規) 71.3%
男女賃金差異(非正規) 58.3%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、海外拠点出向等経験者数(485名)、グローバルベースの女性管理職比率(19.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国際的経済取引及び海外進出に潜在するリスク


事業活動の大部分をアジアや欧米などの海外で展開しているため、各国の政治・経済情勢の変化、インフラの未整備、法制度や税制の変更による影響を受ける可能性があります。地政学上のリスクによるサプライチェーンの混乱などが生じた場合、事業に影響を及ぼすおそれがあります。

(2) 為替レートの変動による影響


海外での売上比率が高く、現地通貨建ての項目は連結財務諸表作成時に円換算されるため、為替レートの変動が業績に影響を与えます。特に米ドルに対する円高は収益の圧迫要因となるほか、生産拠点における現地通貨の価値上昇は製造・調達コストを押し上げるリスクがあります。

(3) 情報セキュリティによるリスク


事業を通じて顧客や取引先の機密情報、従業員の個人情報を取り扱っており、人的・技術的な過失やサイバー攻撃等による不正アクセスによって情報が漏洩するリスクが存在します。万が一これらが発生した場合、損害賠償や社会的信用の失墜により、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。