旭松食品 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

旭松食品 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する、凍豆腐や加工食品の製造販売を行う食品メーカーです。当連結会計年度の業績は、価格改定による販売数量減少などで売上高は80億円(前期比1.0%減)となりましたが、合理化等の効果で経常利益は3億円(同6.9%増)と減収増益で着地しました。


※本記事は、旭松食品株式会社の有価証券報告書(第75期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 旭松食品ってどんな会社?


凍豆腐(高野豆腐)や即席みそ汁等の大豆関連食品を主力とする食品メーカーです。

(1) 会社概要


1950年に長野県飯田市で旭松凍豆腐として設立され、1981年に即席みそ汁「生みそずい」、1984年に納豆「なっとういち」を発売し事業を拡大しました。1992年に大阪証券取引所市場第二部に上場し、2011年に納豆事業から撤退しました。2022年には東証の市場区分見直しによりスタンダード市場へ移行しています。

連結従業員数は310名、単体では227名体制です。筆頭株主は主要取引銀行である地方銀行で、第2位は社長の木下博隆氏、第3位は創業家出身の個人株主となっています。その他、主要な販売先である食品卸売会社などが大株主として名を連ねており、取引関係に基づく安定的な株主構成となっています。

氏名 持株比率
八十二銀行 4.84%
木 下 博 隆 3.02%
赤 羽 源一郎 3.02%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は木下博隆氏が務めています。社外取締役比率は約18.2%です。

氏名 役職 主な経歴
木 下 博 隆 代表取締役社長 日本電気を経て同社入社。管理本部長、旭松フレッシュシステム代表取締役、営業本部長などを歴任し、2015年より現職。
蒲 田 充 浩 常務取締役経営企画部長 同社入社後、グループ戦略本部長、新鮮納豆共同代表などを経て、2021年より現職。青島旭松康大食品有限公司董事長を兼任。
村 澤 久 司 常務取締役研究開発本部長兼研究所長 同社入社後、研究所長、品質保証部長、研究開発統括部長などを歴任し、2022年より現職。
足 立   恵 取締役経営管理部長 同社入社後、経理部長などを経て2021年より現職。青島旭松康大食品有限公司などの監事を兼任。
平 澤 公 夫 取締役生産本部長 同社入社後、飯田工場長、生産本部副本部長などを経て2022年より現職。旭松フレッシュシステム代表取締役社長を兼任。
牧 野 太 郎 取締役営業本部長兼西日本支店長 同社入社後、業務用・医療用食材部長、大阪支店長などを経て2023年より現職。


社外取締役は、浜村九二雄(元八十二リース代表取締役社長)、小濱賢二(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「食料品事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 凍豆腐事業


主力製品である「新あさひ豆腐」をはじめとする凍豆腐(高野豆腐)の製造販売を行っています。健康機能性に着目したPR活動や、利便性の高いカット済み商品などの開発を進めており、家庭用から業務用、学校給食用まで幅広い顧客に提供しています。

この事業の収益は、スーパーマーケットや食品商社等の顧客への製品販売代金です。運営は主に旭松食品が行っており、製造面では中国子会社の青島旭松康大食品有限公司などが一部関与しています。

(2) 加工食品事業(即席みそ汁等)


即席みそ汁「生みそずい」やカップスープ、オートミール関連商品などの加工食品を製造販売しています。具材のバリエーション強化やプラスチック削減を目指した環境配慮型商品の展開などに注力しており、一般消費者向けの商品が中心です。

収益は、小売店や卸売業者への製品販売によるものです。運営は旭松食品が主体となって行っていますが、一部の具材製造などは海外子会社と連携して行われています。

(3) その他食料品事業


介護食市場向けの「医療用食材」や、フリーズドライ納豆などの菓子加工品を取り扱っています。特に医療用食材は、えん下困難者用食品として調理済み・形態調整済みの商品を提供し、病院や介護施設の人手不足解消に貢献しています。

顧客である医療機関、介護施設、食品メーカー等からの商品販売代金が収益源です。運営は旭松食品が担っており、医療用食材は成長が見込める新たな柱として育成が進められています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は約80億円前後で横ばいに推移しています。利益面では、2023年3月期に原材料価格高騰等の影響で利益率が低下しましたが、その後は価格改定やコスト削減効果により回復傾向にあります。当期は経常利益率3.8%と収益性が改善しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 82億円 80億円 79億円 81億円 80億円
経常利益 4億円 3億円 0.3億円 3億円 3億円
利益率(%) 4.7% 3.3% 0.4% 3.6% 3.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 2億円 -0.8億円 2億円 2億円

(2) 損益計算書


売上高は微減となりましたが、売上原価の抑制により売上総利益は増加し、利益率は改善しました。販売費及び一般管理費は微増しましたが、営業利益率は上昇しています。コストコントロールが奏功し、収益性が向上している様子がうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 81億円 80億円
売上総利益 23億円 23億円
売上総利益率(%) 27.8% 28.5%
営業利益 2億円 2億円
営業利益率(%) 2.5% 2.8%


販売費及び一般管理費のうち、運送費及び保管費が7億円(構成比34%)、従業員給料及び賞与が3億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力事業の凍豆腐は価格改定の影響で販売数量が減少し減収となりました。一方、加工食品はカップスープ商品等が好調で増収、その他食料品も医療用食材が安定的に推移し増収となりました。全体としては凍豆腐の落ち込みを他部門が補いきれず微減収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
凍豆腐 37億円 35億円
加工食品(即席みそ汁等) 24億円 24億円
その他食料品 21億円 21億円
連結(合計) 81億円 80億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローはプラスを維持し、その範囲内で設備投資を行い、借入金の返済も進めている「健全型」です。安定した本業の収益を基盤に、財務体質の改善と必要な投資をバランスよく実施しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 7億円 5億円
投資CF -5億円 -5億円
財務CF -0.6億円 -0.3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.0%で市場平均(スタンダード7.2%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は80.0%で市場平均(スタンダード製造業57.5%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「お客様の生活文化の向上とともに歩み より快適で健康な食生活を追求し 日々に新たに前進します。」という企業理念を掲げています。また、「品質第一」「参画経営」「自主挑戦」を経営理念とし、法令遵守と顧客の声への傾聴を通じて、安全で満足できる商品を提供することを基本方針としています。

(2) 企業文化


品質と食品安全を最優先とする文化があり、「品質・食品安全方針」に基づき全従業員が活動しています。また、SDGs(持続可能な開発目標)を経営の基本に据え、「Soybeans for the Future(大豆で創造する持続可能な社会)」を存在意義として掲げ、社会課題の解決と企業利益の両立を目指す姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


本業の収益力を表す営業利益の向上を最重要指標としています。売上高の増加は不可欠としつつも、利益を伴わない売上増加には歯止めをかけ、単品収益管理の徹底と原価低減により、売上高営業利益率を向上させ、高収益体制への転換を図ることを目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


中長期的な戦略として「安心・安全を第一とした供給体制の確立」「強靭な経営体力の形成」「将来に向けての人材確保」に重点を置いています。具体的には、主力事業である凍豆腐の健康機能性の発信強化や用途別商品開発、加工食品における価値訴求型商品の開発、成長が見込める医療用食材などの新規事業育成を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


従業員を最大のステークホルダーと位置づけ、階層別研修や専門スキル習得支援などの教育制度を整備しています。全社員を対象としたFSSC22000内部監査員資格認定を行い、品質意識の向上を図るとともに、目標管理制度による評価や、働き方改革、健康経営の推進、多様な人材の確保を通じて、将来に向けた組織力の強化に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.5歳 17.9年 4,401,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 8.7%
男性労働者の育児休業取得率 -%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 56.0%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 67.4%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 75.2%


※男性労働者の育児休業取得率については、当事業年度において育児休業取得事由に該当する男性労働者がいなかったため「-」となっています。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 食の安全性に関するリスク


食品業界では安全性への関心が高く、予期せぬ問題が発生した場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。同社はFSSC22000の認証取得や、主原料である大豆のグローバルGAP認証への切り替えなどにより、品質管理の強化と安全性の向上に努めています。

(2) 主要原材料の調達リスク


主要原材料である農産物は米国や中国等からの輸入に大きく依存しており、輸入制限や相場変動、為替変動が経営に影響を与える可能性があります。これに対し、長期契約や適正在庫の確保、価格変動への対策としてコストダウンや価格改定等の対応を行っています。

(3) 競争激化と市場縮小のリスク


国内人口の減少による需要縮小や安価販売競争などにより、減益となるリスクがあります。同社は主力事業である凍豆腐に加え、事業の多角化や新規販売チャネルの開拓、海外展開などを進めることで、リスクの分散と安定的な利益確保を目指しています。

(4) 人材不足のリスク


雇用の流動化や人件費上昇により、必要な人材を確保できない場合、経営に影響を及ぼす可能性があります。働き方改革や女性活躍推進、多様な雇用形態の活用などにより人材確保に努めるとともに、IT活用による省力化・自動化を推進しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。