ホープ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ホープ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場の自治体特化型サービス企業です。自治体の遊休スペースを広告枠として販売する広告事業や、行政マガジンを発行するジチタイワークス事業を展開しています。当期の連結売上高は31億円、経常利益は3.0億円で、主力事業の好調により増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社ホープ の有価証券報告書(第32期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ホープってどんな会社?


自治体に特化したサービスを展開する企業です。広告事業による財源確保支援や、官民連携を促進するメディア事業などを手掛けています。

(1) 会社概要


同社は2005年に創業し、2006年に自治体広告事業を開始しました。2016年に東証マザーズ(現グロース)へ上場し、2021年には持株会社体制へ移行しました。2022年に子会社のホープエナジーが破産手続きを開始するという大きな経営課題に直面しましたが、同年にはチェンジ(現チェンジホールディングス)と資本業務提携を行い、再成長に向けた体制を構築しています。

現在の従業員数は連結204名、単体194名です。筆頭株主は資本業務提携先のチェンジホールディングスで、第2位は福岡市の法人である株式会社E.T.、第3位は社長の時津孝康氏です。事業会社との連携を深めつつ、創業者が引き続き経営をリードする体制となっています。

氏名 持株比率
チェンジホールディングス 16.69%
E.T. 8.65%
時津 孝康 8.57%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長CEOは時津孝康氏、社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
時津 孝康 代表取締役社長CEO 2005年同社代表取締役社長就任。2017年より現職。グループ各社の代表取締役や一般財団法人ジチタイ未来研究財団の代表理事も務める。
森 新平 取締役COO 2008年入社。セールスプロモーション部長、人事部長兼経営企画部長などを経て2017年より現職。ジチタイワークス代表取締役社長も兼任。
大島 研介 取締役CFO 2011年入社。経営管理部長などを経て2017年より現職。グループ子会社の取締役も兼任。


社外取締役は、平田えり(弁護士法人西村あさひ法律事務所福岡事務所弁護士)、櫻井慎也(チェンジホールディングスCFO室長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「広告事業」、「ジチタイワークス事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 広告事業


自治体が保有するホームページや広報紙などの広告枠を仕入れて企業に販売する「SRサービス」と、住民向け情報冊子(マチレット)を制作して広告主を募集し自治体に寄贈する「SCサービス」を提供しています。自治体にとっては事務負担の軽減や財源確保、経費削減といったメリットがあります。

収益は、民間企業などの広告主から受け取る広告掲載料等が主な源泉です。SRサービスでは入札により広告枠を一括で仕入れ、付加価値をつけて販売します。SCサービスでは冊子制作費を広告収入で賄います。運営は主に株式会社ジチタイアドが行っています。

(2) ジチタイワークス事業


全国の自治体職員や地方議会議員へ無償提供する行政マガジン『ジチタイワークス』の発行や、官民連携を促進する「BtoGソリューション」などを展開しています。また、自治体と民間企業をつなぐプラットフォーム「ジチタイワークス民間サービス比較」の運営も行っています。

収益は、自治体向けにビジネス展開したい民間企業からの広告掲載料やマーケティング支援料などが主な源泉です。行政マガジンのブランド力を活かし、民間企業の自治体市場への参入を支援することで収益を得ています。運営は主に株式会社ジチタイワークスが行っています。

(3) その他


上記セグメントに含まれない事業として、企業版ふるさと納税支援事業、空き家対策関連事業「akisol(アキソル)」、自治体広報紙閲覧アプリ「マチイロ」の運営などを行っています。企業版ふるさと納税の制度啓発やマッチング支援、空き家相談窓口の運営などを手掛けています。

収益は、企業版ふるさと納税支援における手数料や、空き家対策事業におけるソリューション提供対価などが源泉となります。運営は同社および株式会社マチイロ、株式会社地方創生テクノロジーラボなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、第30期以降、売上高は回復基調にあり、第31期からは黒字化しています。特に当期は売上高が30億円を超え、経常利益も3億円規模に拡大するなど、収益性が向上しています。利益率も9%台で安定的に推移しており、再成長フェーズに入っていることがうかがえます。

項目 2021年6月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 346億円 356億円 22億円 26億円 31億円
経常利益 -69億円 -167億円 1.6億円 2.3億円 3.0億円
利益率(%) -20.0% -47.0% 7.4% 8.9% 9.4%
当期利益(親会社所有者帰属) -70億円 -197億円 50億円 2.4億円 3.6億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も拡大しています。売上総利益率は50%台後半から60%へと向上しており、収益性の高い事業構造への転換が進んでいます。営業利益率も改善傾向にあり、増収効果が利益面にしっかりと反映されていることが分かります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 26億円 31億円
売上総利益 14億円 19億円
売上総利益率(%) 56.3% 60.0%
営業利益 2.3億円 2.9億円
営業利益率(%) 8.9% 9.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が5.7億円(構成比36%)、外注費が2.1億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントで増収となりました。主力の広告事業は12%増収と堅調に推移し、利益も拡大しています。ジチタイワークス事業は43%増収と大幅な成長を遂げ、利益率も高い水準を維持しています。その他事業も増収となりましたが、先行投資の影響等により損失を計上しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
広告 17億円 19億円 3.5億円 4.2億円 22.6%
ジチタイワークス 7.6億円 11億円 2.4億円 3.1億円 28.8%
その他 1.4億円 2.0億円 0.1億円 -0.1億円 -2.7%
調整額 -0.1億円 -0.1億円 -3.7億円 -4.3億円 -
連結(合計) 26億円 31億円 2.3億円 2.9億円 9.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、運転資金及び設備資金の調達を主に内部資金または借入により行っております。

営業活動では、税金等調整前当期純利益の計上や棚卸資産の減少等により、資金を得ることができました。投資活動では、投資有価証券の売却による収入があったものの、有形固定資産の取得や子会社株式の取得等により、資金を使用しました。財務活動では、社債の償還や自己株式の取得等により、資金を使用しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 1.4億円 2.3億円
投資CF -0.3億円 0.3億円
財務CF -6.0億円 -3.1億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「自治体を通じて人々に新たな価値を提供し、会社及び従業員の成長を追求する」を企業理念に掲げています。創業以来、自治体の自主財源確保支援を主軸とし、財源確保と経費削減の両面から自治体に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、企業理念や行動指針の共有を重視し、独自のコミュニケーション施策を展開しています。経営陣と従業員の対話の場である「ななかい」や、全従業員が業務報告を行い相互にフィードバックする「週報(月次アワード)」などを通じて、組織風土の醸成と相互信頼の構築を図っています。

(3) 経営計画・目標


同社は2025年3月期を初年度とする3か年の中期経営計画を策定しています。重要な経営指標として営業利益成長率および従業員一人当たりの売上総利益を定めています。

* 営業利益年平均25%成長

(4) 成長戦略と重点施策


広告事業の収益性改善と事業規模の適正化を進めつつ、再拡大を目指しています。ジチタイワークス事業を成長の「花形事業」と位置づけ、ブランド価値向上やBtoGソリューションの拡大を図ります。また、企業版ふるさと納税支援や空き家対策(akisol)等の新規事業育成、DX推進による生産性向上にも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的成長のため、中核となる人材の確保と育成を課題としています。特にミドル層や経営者候補の育成(ミドツク、NEXT GENERATION)に注力するとともに、DX推進による全社的な生産性向上に取り組んでいます。また、多様性の確保や柔軟な働き方の実現に向けた制度整備も進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 33.9歳 4.8年 4,840,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 37.0%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※同社は公表義務の対象ではないため、有報には男性育児休業取得率および労働者の男女の賃金の差異の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用した労働者に占める女性労働者の割合(74%)、労働者に占める女性労働者の割合(58.7%)、有給休暇取得率(74.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 広告事業に関するリスク


主力であるSRサービスやSCサービスにおいて、競合他社との競争激化や、入札による仕入価格の高騰、自治体の最低落札価格引き上げなどが生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、広告枠の在庫リスクや、マチレット発行時期の偏りによる業績の季節変動リスクも存在します。

(2) 特定経営者への依存


代表取締役社長である時津孝康氏は、経営方針や事業戦略の決定において重要な役割を果たしています。組織体制の強化を進めていますが、現時点では同氏への依存度が高く、何らかの理由で同氏の業務遂行が困難になった場合、経営成績等に影響が生じる可能性があります。

(3) 国内人口動態と自治体環境の変化


日本の人口減少に伴う自治体の税収減や行政需要の変化は、同社サービスの需要に影響を与える可能性があります。また、デジタル田園都市国家構想など自治体DXが加速する中で、環境変化への対応が遅れた場合、競争力を失うリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。