大和冷機工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大和冷機工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大和冷機工業は、東京証券取引所プライム市場に上場する業務用冷熱機器の総合メーカーです。業務用冷凍冷蔵庫、ショーケース、製氷機の製造販売や店舗厨房用機器の仕入販売、点検修理を展開しています。直近の業績は、原材料価格の高騰や競争激化等の影響を受け、前年対比で減収減益の傾向となっています。


※本記事は、大和冷機工業株式会社の有価証券報告書(第65期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 大和冷機工業ってどんな会社?


業務用冷熱機器の総合メーカーとして、冷凍冷蔵庫やショーケースの製造販売を手掛けています。

(1) 会社概要


同社は1958年に業務用冷蔵庫の製造販売を目的として個人経営で創業し、1962年に大和冷機工業を設立しました。1969年にコールドテーブル、1973年に全自動製氷機と製品ラインナップを拡大し、1997年に東京証券取引所および大阪証券取引所の市場第一部へ上場を果たしています。近年では福岡工場や大阪配送センターを稼働させるなど、製造・物流体制の強化を図っています。

現在の従業員数は単体で2,355名です。大株主の構成をみると、筆頭株主は日本冷機で、第2位はディ・アール・ケイ、第3位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)となっています。

氏名 持株比率
日本冷機 14.01%
ディ・アール・ケイ 12.94%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.42%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長社長執行役員は尾﨑敦史氏が務めています。社外取締役比率は41.7%です。

氏名 役職 主な経歴
尾﨑敦史 代表取締役社長社長執行役員 1994年同社入社。社長室長、取締役、取締役副社長を経て2002年より現職。
尾﨑雅広 取締役副社長副社長執行役員 1999年同社入社。直販営業戦略統括本部長、執行役員等を経て2025年より現職。
杉田壽宏 専務取締役専務執行役員 1981年同社入社。取締役、常務取締役、営業企画担当等を経て2014年より現職。
小原真一 取締役執行役員(管理担当) 2004年同社入社。総務人事部人事課長、業務本部長等を経て2025年より現職。


社外取締役は、出納美宏氏(オールワンエージェント入社)、添田千夏氏(SSG取締役)、峠田晃宏氏(たおだ法律事務所所長)、中西美里氏(Blake取締役)、古谷英司氏(元三井住友銀行職域取引事業部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「冷凍冷蔵冷熱機器」事業を展開しています。

(1) 業務用冷凍冷蔵庫・ショーケース等製品の製造販売


店舗や厨房で使用される業務用縦型冷凍冷蔵庫、横型冷凍冷蔵庫、ショーケース、製氷機などの自社製品を開発・製造・販売しています。飲食店をはじめとする外食産業や小売店、スーパーマーケットなどが主な顧客であり、環境に配慮した自然冷媒製品の開発にも注力しています。

製品の販売による代金が主な収益源です。設置工事を伴う場合は引渡完了時に、伴わない場合は製品引渡時に収益を認識します。同社が単独で製造から販売まで一貫して運営を行っています。

(2) 店舗厨房設備機器等の商品仕入・販売および点検修理


自社製造以外の店舗設備機器や厨房設備機器の仕入販売、店舗設備工事の提供を行っています。また、納入した機器の性能維持と顧客の円滑な業務をサポートするため、全国の拠点網を活かした機器の点検・修理といったアフターメンテナンスサービスも展開しています。

商品の販売代金や、一定期間にわたるメンテナンスサービスの利用料、都度発生する修理などの役務作業に対する対価が収益源となります。こちらも同社が単独で運営を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は439億円から479億円の間で推移し、2024年12月期までは増収増益基調が続いていました。2025年12月期は競争環境の激化や原材料価格高騰の影響により減収減益となっていますが、経常利益率は15.9%と高水準を安定して維持しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 440億円 439億円 460億円 479億円 469億円
経常利益 61億円 69億円 80億円 80億円 74億円
利益率(%) 13.9% 15.6% 17.4% 16.6% 15.9%
当期利益 36億円 44億円 55億円 54億円 51億円

(2) 損益計算書


売上高は前年対比で約10億円の減少となり、それに伴い売上総利益および営業利益も減少しています。利益率はわずかに低下したものの、売上総利益率56%台、営業利益率15%台と安定した収益構造を保っています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 479億円 469億円
売上総利益 270億円 263億円
売上総利益率(%) 56.4% 56.1%
営業利益 81億円 75億円
営業利益率(%) 16.8% 15.9%


販売費及び一般管理費のうち、報酬及び給料手当が87億円(構成比46%)、運送費及び保管費が23億円(同12%)を占めています。売上原価の内訳としては、製品売上原価が115億円(構成比56%)、商品売上原価が61億円(同30%)となっています。

(3) セグメント収益


同社は冷凍冷蔵冷熱機器に係る事業の単一セグメントであるため、ここでは品目別の売上高の推移を確認します。主力の製品売上高が減少したほか、商品売上高も微減となりました。点検・修理の売上は横ばいを維持しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
製品 270億円 262億円
商品 113億円 111億円
点検・修理 95億円 95億円
連結(合計) 479億円 469億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型に該当します。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 34億円 43億円
投資CF -24億円 -15億円
財務CF -15億円 -30億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は創業以来、「顧客のニーズに応える」、「社員の生活向上に努める」、「企業の安定成長をはかる」を掲げ、企業の発展生成により「社会の繁栄に貢献する」ことを経営理念としています。市場の開拓・人材の確保・資本の蓄積に努め、快適で安全な食文化に貢献することを基本方針としています。

(2) 企業文化


経営理念を通じ、自社の成長とともに社会・環境・経済への貢献活動に取り組む文化があります。社会や環境、社員や取引先、地域といったステークホルダーを意識し、未来への発展を継続的に続けながら、誰もが幸せに暮らし続けることのできる社会の実現に向けて取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社は持続可能な社会の実現に向け、環境負荷の低減と働きやすい環境づくりのために以下の数値目標を掲げています。

* 2030年に自社の温室効果ガス排出量(Scope1+2)を2021年度比で30%削減
* 男性の育児休業等取得率30.0%以上(2030年目標)
* 一般社員の法定時間外及び法定休日労働時間の月平均時間数を2024年実績比で10%削減(2030年目標)

(4) 成長戦略と重点施策


外食産業における「省力化、省人化」「食品ロス対策」「物流のコスト高」等の店舗の負担軽減ニーズに応えるため、総合サポート力を高める戦略を掲げています。具体的には、環境に配慮した自然冷媒の採用や、IoTによる運転・温度データの見える化、プラズマクラスター技術搭載イオン発生装置を活用した衛生管理機能の充実など、付加価値の高い製品開発を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「社会の繁栄に貢献する」という理念の実現には社員の能力向上が不可欠であると考え、研修体制や教育コンテンツの整備、大阪トレーニングセンターの設備拡充を行っています。新入社員向け育成から階層別研修まで一貫した体制を構築し、自己啓発のための学習支援や資格取得の支援も実施することで、個々の能力開発と組織の強化を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 37.6歳 10.5年 4,903,465円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 23.8%
男女賃金差異(全労働者) 63.2%
男女賃金差異(正規雇用) 63.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 52.0%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競合や原材料価格の高騰

急激な為替の変動などによる鉄鋼材をはじめとする原材料価格の高騰に伴う原価の悪化や、他社との熾烈な競合により販売価格が変動を受けやすい構造となっており、同社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 製品の品質トラブル

製品製造事業を担う工場内に品質保証部を設置し品質確保の体制を敷いていますが、同社が予見できない製品の不具合や欠陥等が発生した場合、保証や代替等のコストを要する可能性があり、社会的評価等に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 自然災害による事業停止

同社の工場や本社・支店・営業所等の所在地において、大規模な地震や台風等の自然災害が発生した場合、被災状況によっては事業活動が困難となり、同社の経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 情報管理とセキュリティ

特許権等の知的財産権に関する情報や、取引先情報、個人情報等の機密情報を扱っています。管理体制を整備していますが、同社の管理外等で発生した問題により情報漏洩や権利侵害の提訴を受けた場合、社会的な制裁により事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。