※本記事は、太洋テクノレックス株式会社の有価証券報告書(第65期、自 2024年12月21日 至 2025年12月20日、2026年3月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 太洋テクノレックスってどんな会社?
電子基板や各種産業向け機械システムの製造・販売を中心に事業を展開するメーカーです。
■(1) 会社概要
1960年に和歌山市で捺染用ロール彫刻等を目的として設立されました。1981年にリジッド板製造および基板検査機事業を開始し、1989年にFPC設計へ参入しています。2004年にジャスダックに上場し、2022年の市場再編でスタンダード市場へ移行、2023年に現在の太洋テクノレックスへ商号変更しました。
従業員数は連結192名、単体165名です。筆頭株主は同社代表取締役会長が代表を務める細江ホールディングスで、第2位は代表取締役社長の細江正大氏、第3位はSBI証券となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 細江ホールディングス | 26.73% |
| 細江正大 | 5.82% |
| SBI証券 | 3.89% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は細江正大氏が務めています。取締役5名のうち1名が社外取締役です(社外取締役比率20.0%)。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 細江美則 | 代表取締役会長 | 沖電気工業やオリックスを経て1980年同社入社。1987年代表取締役専務取締役、2001年代表取締役社長などを歴任し、2024年12月より現職。 |
| 細江正大 | 代表取締役社長 | 2022年同社入社。営業本部営業部次長、執行役員営業本部長兼産業機器部長、取締役執行役員営業本部長兼産業機器部長などを歴任し、2024年12月より現職。 |
| 田中清孝 | 取締役電子部品事業部管掌 | 2010年同社入社。執行役員電子部品部長、執行役員営業本部長、取締役執行役員製造本部長などを歴任し、2025年12月より現職。 |
| 水谷浩 | 取締役経営管理部管掌 | 2010年同社入社。経理部長、取締役執行役員管理本部長兼経理部長などを歴任し、2025年12月より現職。 |
社外取締役は、上西令子(元和歌山県男女共同参画センター所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「電子基板事業」、「テストシステム事業」、「鏡面研磨機事業」、「産機システム事業」を展開しています。
■電子基板事業
スマートフォンや医療機器等に用いられるFPC(フレキシブルプリント配線板)の試作・量産および販売を行っています。配線パターン設計から最終検査まで部品実装以外を社内一貫体制で対応し、顧客の短納期・高難度ニーズに応える技術力が特徴です。
主な収益源はFPCやエレクトロフォーミング加工品の販売代金です。運営は主に太洋テクノレックスが行うほか、海外子会社のTAIYO TECHNOLEX(THAILAND)や太友(上海)貿易が販売およびサービスサポートを担っています。
■テストシステム事業
部品が実装されていない電子基板の導通・絶縁抵抗を調べる通電検査機や、外観からパターンの欠損・傷等を把握する外観検査機の製造および販売を行っています。AI技術を活用した欠陥検出力の向上など次世代技術の開発にも注力しています。
主な収益源は基板検査機などの販売代金です。運営は太洋テクノレックスが行い、海外子会社のTAIYO TECHNOLEX(THAILAND)や太友(上海)貿易が現地での販売およびサービスサポートを担当しています。
■鏡面研磨機事業
グラビア製版用の製版ロールやアルミニウム圧延ロールなどの表面を超鏡面に仕上げる円筒鏡面研磨機の製造および販売を行っています。対象となる市場はニッチながら独自の研磨技術によって顧客の需要に応えています。
主な収益源は円筒鏡面研磨機本体やメンテナンス、消耗品の販売代金です。製造は連結子会社のミラックが担当し、太洋テクノレックスが販売を行う体制で事業を運営しています。
■産機システム事業
ロボットシステムの構想・設計から導入までのシステムインテグレーションサービスや、各種産業機械・視覚検査装置の製造販売、メーカー各社の産業機械の仕入販売を行っています。顧客仕様にカスタマイズした製品提案による差別化を図っています。
主な収益源は各種産業機械や画像処理装置などの販売代金です。運営は太洋テクノレックスが主体となり、海外子会社のTAIYO TECHNOLEX(THAILAND)や太友(上海)貿易も仕入・販売およびサポートを行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績を見ると、売上高は一時的な減少傾向が見られたものの、直近2期間は回復基調にあり増加に転じています。利益面では一時期赤字を計上していましたが、当期は売上高の増加や事業構造の見直し効果などが寄与し、経常利益および当期利益ともに黒字転換を達成しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 39.2億円 | 36.3億円 | 34.1億円 | 35.2億円 | 37.5億円 |
| 経常利益 | 2.5億円 | 0.5億円 | -1.1億円 | -0.5億円 | 1.6億円 |
| 利益率(%) | 6.5% | 1.3% | -3.2% | -1.3% | 4.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2.4億円 | 0.4億円 | -1.3億円 | -0.8億円 | 1.4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しており、売上総利益率は改善しています。また、労務費の減少や社内製造品の売上増加による利益率上昇効果もあり、営業利益は黒字へ転換し、本業の収益性が大きく回復していることが確認できます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 35.2億円 | 37.5億円 |
| 売上総利益 | 10.1億円 | 11.2億円 |
| 売上総利益率(%) | 28.7% | 30.0% |
| 営業利益 | -0.5億円 | 1.4億円 |
| 営業利益率(%) | -1.5% | 3.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給与及び諸手当が3.6億円(構成比36.2%)、支払手数料が1.0億円(同10.3%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の電子基板事業は医療機器や産業機器向けFPCの販売が堅調に推移し増収となりました。産機システム事業も大型設備等の販売増で大幅な増収を達成しています。一方、テストシステム事業は検査機の販売減により減収となりました。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 電子基板事業 | 22.7億円 | 24.1億円 |
| テストシステム事業 | 7.0億円 | 4.5億円 |
| 鏡面研磨機事業 | 4.2億円 | 4.5億円 |
| 産機システム事業 | 1.3億円 | 4.5億円 |
| 連結(合計) | 35.2億円 | 37.5億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
太洋テクノレックスは、自動シュリンク包装機等の販売好調により、売上高が増加し黒字転換を果たしました。
営業活動では、売上債権の増加等により資金が使用されました。投資活動では、有価証券の償還や売却による収入が主な要因となり、資金を獲得しました。財務活動では、長期借入れによる収入があったものの、長期借入金の返済等により資金が使用されました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 2.5億円 | -0.6億円 |
| 投資CF | -0.1億円 | 1.6億円 |
| 財務CF | -1.6億円 | -2.0億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「先端技術に常にチャレンジ」「技術を通じて社会に貢献」「全社員に生涯教育の場を提供、仕事を通じて自己向上を図る」という企業理念を掲げています。企業としての社会的存在意義を意識し、探求心を持って確固たる技術力と品質により顧客の信頼を得ることを基本に、持続的な成長と企業価値の増大を目指しています。
■(2) 企業文化
サステナビリティ経営を経営戦略の根幹に位置づけ、社会的課題の解決と経済的価値の創出を両立させるCSV(共通価値の創造)経営の観点を重視しています。全社員一丸となって顧客の期待以上のサービスを提供することを重要視し、健全性を維持しながら社会的責任を果たすことを行動様式の基本としています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画(2026年12月期~2028年12月期)を策定し、従業員一人ひとりが常に利益を意識した活動を実践することで、収益性および効率性を重視した事業運営に注力しています。
* ROE 8.0%以上
* EPS 30.00円以上
* 自己資本比率 50.0%以上
* 連結配当性向 20.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
医療機器・ヘルスケア分野を重点領域と位置づけ、微細配線技術の高度化に経営資源を投じて高付加価値製品の優位性を強化します。また、AI技術を活用した欠陥検出能力の向上や検査パラメータ自動設定システムの開発を進めるほか、EMS(電子機器受託製造サービス)の提供による付加価値向上と商社等との連携強化による販路拡大を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材が企業戦略の実践を支える重要な資源であると捉え、経営理念に合致した人材の確保と育成を推進しています。全社横断型の短期異動研修制度(トレーニー制度)や人事異動希望アンケートを通じて成長機会を提供するほか、資格手当制度やリスキリング支援によりIT・DX人材の強化を図り、女性活躍推進やワークライフバランスの向上にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 45.7歳 | 20.0年 | 5,157,664円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.7% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 75.3% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 39.3% |
※男性労働者の育児休業取得率については、有報に実績値の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 電子基板事業における競争激化と市場縮小リスク
同事業はFPC等の製造技術に依存しており、新規参入企業や画期的な新工法発明による競争激化のリスクがあります。また、主要顧客であるセットメーカーの研究・商品開発部門が海外へ移転した場合、同社の短納期対応の優位性が失われる可能性や、電子部品業界の動向による需要変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) テストシステム事業における技術標準の変動リスク
基板検査には標準的な検査方法がなく、各社の手法が異なります。同社が志向する検査方法と異なる手法が市場の主流となった場合や、電子基板メーカーが内製化を推進し検査機市場が縮小に向かった場合、同社の競争力が低下し、経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 優秀な人材の確保と育成リスク
製品の技術改良や研究開発を継続するためには、専門知識に精通した優秀な人材の確保が不可欠です。必要な人材の獲得・育成が計画通りに進まない場合や、育成した人材が社外に流出するような事態が生じた場合、事業運営に支障をきたし、同社グループの成長戦略に影響を及ぼす可能性があります。



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