小野測器 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

小野測器 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

小野測器はスタンダード市場に上場し、計測機器や特注試験装置等の製造販売を主力事業としています。直近の2025年12月期は、自動車業界等の設備更新需要を取り込み、売上高136億円と増収となり、営業利益も大幅な増益を達成しました。今後も計測・制御技術の高度化と海外展開により持続的な成長を目指しています。


※本記事は、株式会社小野測器の有価証券報告書(第72期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 小野測器ってどんな会社?


計測技術に強みを持ち、自動車・電機業界向けに計測機器や特注試験装置を提供する企業です。

(1) 会社概要


同社は1954年に設立され、各種ディジタル計測器の製造販売を開始しました。1983年に東京証券取引所市場第二部に上場し、1986年には市場第一部へ指定替えとなるとともに、米国に販売子会社を設立しました。以降もアジア各所に拠点を設け、海外展開と特注試験装置などの事業拡大を進めています。

現在の体制として、連結従業員数は653名、単体従業員数は606名となっています。大株主の構成は、筆頭株主が個人の桂武氏であり、第2位は小野測器代理店・特約店持株会、第3位は小野測器取引先持株会となっています。

氏名 持株比率
桂武 6.29%
小野測器代理店・特約店持株会 5.93%
小野測器取引先持株会 5.72%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役取締役社長は大越祐史氏です。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
大越祐史 代表取締役取締役社長 1985年4月同社入社。管理本部副本部長、小野測器宇都宮代表取締役社長、電子計測事業本部長等を経て、2021年3月より現職。
濵田仁 取締役上席執行役員 1986年4月同社入社。財務経理部長、総務人事部長等を経て2013年3月より取締役。その後製造本部長等を歴任し、2025年1月より総務・財務・内部統制担当。
小池秀昭 取締役上席執行役員 1991年4月同社入社。営業統括ブロック埼玉営業所営業課長、商品統括ブロック長等を経て、2024年3月より取締役。2025年1月より営業・マーケティング領域担当。
安地隆浩 取締役上席執行役員 2001年4月同社入社。開発室長、ソリューションブロック長、試験機技術ラボ長、横浜テクニカルセンター長等を経て、2025年3月より取締役。
塚越照 取締役上席執行役員 1999年4月同社入社。システム事業本部システムSEグループマネージャー、特注設計ブロック長等を経て、2025年3月より取締役。


社外取締役は、飯田訓正(元慶應義塾大学大学院理工学研究科特任教授)、木村岩雄(元東京海上日動火災保険顧問)です。

2. 事業内容


同社グループは、「計測機器」、「特注試験装置及びサービス」および「その他」事業を展開しています。

(1) 計測機器


各種センサ類や回転・速度計測機器、寸法・変位計測機器、音響・振動計測機器などのデータ解析機器を見込生産により提供しています。主に自動車業界や電機・電子業界の顧客に向けた製品開発・販売を行っています。

収益源はこれらハードウェアおよびソフトウェア製品の販売代金です。運営は同社が行うほか、米国、タイ王国、インド共和国、中華人民共和国の現地販売子会社を通じてグローバルに展開しています。

(2) 特注試験装置及びサービス


研究開発用途や品質管理用途の特注試験装置の個別受注生産による提供や、音響・振動に関するコンサルティング、アフターサービス、エンジニアリングサービスを提供しています。自動車メーカー等における設備更新や、自動運転向けのシミュレーション需要に対応しています。

収益源は個別受注による装置の販売代金や保守サービス、受託試験の対価です。運営は同社と海外子会社各社が担い、音の感性評価に関するクラウドサービスはSound Oneが展開しています。

(3) その他


損害保険代理業務や、同社が所有する土地・建物・設備の管理業務、その他同社からの委託業務等を行っています。

収益源はグループ内外に対する保険代理店手数料や管理受託手数料です。運営は主として子会社のオノエンタープライズが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の売上高は99億円から136億円へと拡大傾向にあります。特に直近は自動車業界の設備更新需要等を取り込み、大幅な増収となりました。経常利益も当期は6.8億円まで回復し、収益性の改善が進んでいます。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 99億円 109億円 115億円 118億円 136億円
経常利益 -6.9億円 2.1億円 2.0億円 2.1億円 6.8億円
利益率(%) -7.0% 1.9% 1.8% 1.8% 5.0%
当期利益(親会社所有者帰属) -14億円 2.9億円 2.9億円 13億円 3.2億円

(2) 損益計算書


売上高は118億円から136億円へ伸長し、それに伴い売上総利益も増加しました。売上原価率の上昇圧力があるものの、増収効果によって営業利益は1.4億円から5.9億円へと大きく拡大し、営業利益率も改善しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 118億円 136億円
売上総利益 54億円 61億円
売上総利益率(%) 46.0% 45.0%
営業利益 1.4億円 5.9億円
営業利益率(%) 1.2% 4.3%


販売費及び一般管理費(当期55億円)のうち、給料及び手当が20億円(構成比35%)、研究開発費が10億円(同18%)を占めています。研究開発や人材への投資に重点を置くコスト構造となっています。

(3) セグメント収益


主力の特注試験装置及びサービス事業は、自動運転等に向けたシミュレーション設備需要等を取り込み、売上・利益ともに大きく成長しました。一方、計測機器事業は海外市場での拡販に向けた販促費用の増加などが重しとなり、当期は営業損失となっています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
計測機器 45億円 47億円 1.0億円 -0.5億円 -1.1%
特注試験装置及びサービス 72億円 90億円 0.5億円 6.4億円 7.2%
その他 0.1億円 0.1億円 0.3億円 0.2億円 200.0%
連結(合計) 118億円 136億円 1.4億円 5.9億円 4.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)のキャッシュ・フロー状況です。

企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.5%で市場平均を上回っています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 3.3億円 5.9億円
投資CF 39億円 -5.8億円
財務CF -23億円 -5.3億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「未知を拓き、未来を創る」をMISSION(使命)に掲げ、「人とテクノロジーのより良い関係を支え、サステナブルな社会の実現を加速させる」ことをVISIONとしています。創業の精神である「誰もやらないから、挑戦する価値がある」を受け継ぎ、計測・解析・制御ツールを通して社会課題の解決に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「はかる・わかる・つながる」という価値の提供をVALUEとし、社員の行動様式としてSPIRITを定めています。「自分の言葉で語り、意志を持ち、挑戦を楽しむ」「対話を大切に、仲間を尊重し、最善を追求する」「誠実に・前向きに、明日への一歩を積み重ねる」など、自由闊達でイノベーティブな組織文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は2030年のビジョン達成に向けた中期経営計画「Challenge Stage」を推進しており、2027年度を最終年度とする「Stage Ⅳ」において以下の数値目標を掲げています。

* 連結売上高 145億円
* 連結営業利益 10億円
* ROE 6.0%以上
* 海外売上高 35億円(売上高比率 24.1%)

(4) 成長戦略と重点施策


持続的な成長に向けて「はかるを極め、わかるに挑み、世界につなげる」を基本方針とし、4つの戦略を柱としています。顧客のデジタル開発への対応を通じた成長戦略、グローバルでの計測機器拡販、DXやオープンイノベーションによる構造改革、そして次世代モビリティ技術の研究開発拠点等の建設に向けた成長投資を実行しています。

* 開発投資35億円~40億円、設備投資40億円(3年累計)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人を企業価値向上の源泉と捉え、事業戦略と連動した人的資本への投資を行っています。「挑戦する組織を実現する、成長への一歩をおそれない“変化を生み出すことができる”人財」の育成を掲げています。また、個々人の人格や価値観を尊重し、働きがいと働きやすさのバランスが取れた職場環境の構築を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 43.4歳 18.5年 6,685,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.5%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 66.7%
男女賃金差異(正規雇用) 83.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 62.1%


また、同社は人的資本に関するセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用女性比率(43.5%)、従業員女性比率(20.5%)、障がい者雇用率(2.72%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 設備投資動向によるリスク


同社の主要な顧客は自動車業界や電機・電子業界であり、これらの業界の研究開発投資や生産動向に業績が依存しています。特定業界からの需要落ち込みが発生した場合、同社の経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 情報セキュリティ上のリスク


事業活動に関連して、技術情報や顧客情報などの重要な情報を保有しています。ISMS認証を取得するなどセキュリティ強化に努めていますが、サイバー攻撃や不正アクセスにより情報漏洩が生じた場合、社会的信用の低下や業績悪化に繋がるリスクがあります。

(3) 人財確保に関するリスク


同社の事業は専門性を有する社員に支えられており、多様な人材の確保と育成が不可欠です。継続的に教育や研修を行い人材育成の強化を進めていますが、優秀な人材の確保が想定通り進まない場合や社外流出が発生した場合、事業成長に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 製品品質および法規制遵守に関するリスク


同社の製品は、顧客の開発や認証、生産などの重要な工程で使用されます。製品の品質不具合や国内外の法規制への対応に不適合が生じた場合、多額の対策費用や損害賠償の発生を招き、業績や財政状態に重大な影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。