タツモ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

タツモ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

タツモは東京証券取引所プライム市場に上場し、半導体や液晶製造プロセス機器、樹脂成形用精密金型、プリント基板製造装置の開発から販売までを手掛けるメーカーです。当期は半導体向けアドバンスドパッケージ用装置の需要が牽引したものの、搬送装置や洗浄装置等の需要減退が響き、減収減益となりました。


※本記事は、タツモ株式会社の有価証券報告書(第54期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. タツモってどんな会社?


同社グループは、半導体関連機器や液晶製造装置などの開発・製造・販売をグローバルに展開する企業です。

(1) 会社概要


タツモは1972年に設立され、1981年に半導体製造用全自動レジスト塗布装置の開発・販売を開始しました。その後も液晶用カラーフィルター製造装置などを手掛け、2004年にジャスダック証券取引所へ上場、2018年には東京証券取引所市場第一部へ市場変更を果たし、継続的に事業領域を拡大しています。

同社の従業員数は連結で1,150名、単体で449名体制となっています。筆頭株主は大江屋で、第2位および第3位には資産管理業務などを行う信託銀行が名を連ねており、安定した経営基盤を構築しています。

氏名 持株比率
大江屋 15.20%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.60%
日本カストディ銀行(信託口) 3.40%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は13.0%です。代表取締役社長は佐藤泰之氏が務めています。社外取締役は4名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
佐藤泰之 代表取締役社長 1988年同社入社。事業本部プロセス1事業統括、取締役事業本部副本部長、常務取締役事業本部長などを経て、2023年3月より現職。
曽根康博 常務取締役事業本部長 瀧澤鐵工所を経て2002年同社入社。事業本部プロセス2事業統括、取締役、事業本部副本部長などを経て、2021年3月より現職。
吉國久雄 常務取締役管理本部長兼 経営戦略部長 中国銀行を経て2020年同社入社。管理本部総務部長、取締役管理本部長兼総務部長などを経て、2026年1月より現職。
池田俊夫 取締役会長 1986年同社入社。取締役、常務取締役、代表取締役専務、代表取締役社長などを歴任し、2025年3月より現職。


社外取締役は、岡友和(公認会計士・税理士)、藤原準三(税理士)、石井克典(弁護士)、勇木伸子(中島硝子工業取締役会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「プロセス機器事業」「金型・樹脂成形事業」「表面処理用機器事業」を展開しています。

プロセス機器事業


半導体や液晶ディスプレイなどの電子デバイス製造プロセス機器及びその周辺機器類の開発、製造、販売、メンテナンスを行っています。主力はウェーハ・サポート・システム等の半導体製造装置や搬送装置、洗浄装置、コーターなどで、国内外のメーカーや研究機関等に提供しています。

国内外の半導体メーカーや液晶デバイスメーカー等への受注生産による機器の販売やメンテナンス等により収益を得ています。事業の運営は主に同社や、海外子会社のTAZMO INC.、TAZMO VIETNAM CO.,LTD.などが担当しています。

金型・樹脂成形事業


電子機器向けコネクター類やエンボスキャリアテープなどの樹脂成形用精密金型及び樹脂成形品の製造、販売を行っています。

樹脂成形用精密金型及び樹脂成形品の販売により収益を得ています。製造はプレテックや上海龍雲精密機械有限公司が行い、販売は主に同社が国内で担当し、海外では上海龍雲精密機械有限公司が製造・販売を行っています。

表面処理用機器事業


プリント基板製造用のメッキ処理装置や回路形成装置などの表面処理用機器の開発、製造、販売を行っています。

プリント基板製造装置の販売により収益を得ています。製造はファシリティの子会社である富萊得科技(東莞)有限公司などが担い、日本国内はファシリティ、海外は富萊得(香港)有限公司を通じて中国国内およびその他の国へ納入しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は安定した成長を続けており、利益面も堅調に推移しています。当期は一部装置の需要減退により前年比で減収減益となったものの、引き続き高い利益水準を維持しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 220億円 244億円 282億円 359億円 354億円
経常利益 22億円 31億円 39億円 60億円 50億円
利益率(%) 10.1% 12.9% 13.8% 16.7% 14.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 14億円 17億円 23億円 34億円 25億円

(2) 損益計算書


収益構造を見ると、売上総利益率は安定した水準を保っていますが、当期は減収の影響や販売費及び一般管理費の増加により、営業利益率がやや低下する結果となりました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 359億円 354億円
売上総利益 119億円 108億円
売上総利益率(%) 33.1% 30.4%
営業利益 59億円 48億円
営業利益率(%) 16.5% 13.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が13億円(構成比22%)、研究開発費が7億円(同12%)を占めています。売上原価は247億円で、売上高に対する構成比は70%となっています。

(3) セグメント収益


プロセス機器事業は半導体向けアドバンスドパッケージ用装置が好調だったものの、搬送装置や洗浄装置などの需要減により減収減益となりました。一方、金型・樹脂成形事業や表面処理用機器事業は増収増益を達成しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
プロセス機器事業 287億円 275億円 55億円 41億円 14.9%
金型・樹脂成形事業 8億円 12億円 -1億円 0.6億円 4.7%
表面処理用機器事業 64億円 68億円 6億円 6億円 8.9%
連結(合計) 359億円 354億円 59億円 48億円 13.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

タツモは、営業活動で得た資金を増加させ、事業基盤を強化しています。営業活動によるキャッシュ・フローは大幅に増加し、これは主に利益の増加や在庫・売掛金の減少によるものです。一方で、投資活動では定期預金の増加や設備投資に資金を使用しました。財務活動では、借入と返済が行われました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 75億円 94億円
投資CF -17億円 -32億円
財務CF -32億円 -20億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


ユーザーの要求する性能の製品を、タイミング良く、適切な価格で提供することを目指しています。顧客のニーズに迅速に応える製品づくりを通じて、最終的に社会へ貢献していくことを経営の基本方針として掲げています。

(2) 企業文化


全社員が先端の技術や情報を得るために、常に社是である「挑戦」の気持ちを持って行動することを重視しています。多角的かつグローバルな事業展開を積極的に推進し、常に新しい価値の創造に向けて挑み続ける行動様式を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画(TAZMO Vision 2025)などに基づき、継続的な売上および利益の拡大に努めています。また、株主への利益還元を重要課題と位置づけ、安定的な配当を継続しつつ配当性向20%の実現を目指しています。

* 2026年12月期目標 売上高:355億円
* 2026年12月期目標 経常利益:35億円

(4) 成長戦略と重点施策


半導体製造装置や搬送機器を主力としつつ、グループ会社の技術を活用した半導体製造装置の共同開発など、シナジー効果による成長を目指しています。また、顧客の要望を待つのではなく、ニーズを早期に捉えて提案するビジネスの比率を高めるため、研究開発に注力し、高付加価値製品の提供を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上を目指しています。社是の「挑戦」をキーワードに、好奇心やチャレンジ精神が旺盛な人材の育成を推進し、性別や国籍に関わらず実績や能力を総合的に判断した登用を行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 43.8歳 15.3年 6,949,297円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.1%
男性労働者の育児休業取得率 66.7%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 82.6%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 85.5%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 68.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社員一人当たりの教育研修時間数(24.7時間)、採用した労働者に占める女性労働者の割合(14.3%)、有給休暇取得率(72.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 半導体・液晶業界の景気変動リスク

主力事業である半導体や液晶製造装置は、技術革新のスピードが速くユーザーニーズが多様なため、循環的な市況変動の影響を強く受けます。設備投資動向や価格変動、競合状況の激化が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 技術革新を伴う研究開発リスク

競争力を維持するため、ニーズを的確に捉えた新製品の研究開発に努めていますが、技術革新や需要の変化を完全に予測することは困難です。経営資源を投入しても予期せぬ理由で十分な成果が得られない場合、業績に影響する可能性があります。

(3) アジア・北米地域での為替変動リスク

アジア地域に生産・販売拠点、北米に販売拠点を有しグローバルに事業を展開しています。主に円建て取引で為替変動の影響回避に努めていますが、予想を超えた為替相場の変動が海外顧客の設備予算に影響を与えた場合、受注価格などに変動が生じるリスクがあります。

(4) 大型案件の検収売上時期の変動リスク

半導体製造装置や表面処理用機器は受注生産であり、受注から納品・検収までに1年を超えるなど長期間を要する場合があります。顧客の事情等により検収期間が当初予定より長引いた場合、とくに大型案件では業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。