ビーピー・カストロール 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ビーピー・カストロール 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ビーピー・カストロールは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、高性能な自動車用潤滑油の販売を主力とする企業です。業績トレンドは、主力のコンシューマー向けやBtoB向け製品の拡販と販売価格の転嫁により、直近の第49期は増収増益を達成しました。ブランド力を活かした高付加価値製品の展開が特徴です。


※本記事は、ビーピー・カストロール株式会社の有価証券報告書(第49期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ビーピー・カストロールってどんな会社?


世界的なブランド力を誇る自動車用潤滑油の販売を中心に展開する専門商社です。

(1) 会社概要


1978年に日本英潤として設立され、ビーピー・ピーエルシーの潤滑油輸入販売を開始しました。1984年に同社が資本参加し、2000年に東京証券取引所市場第二部へ上場しました。2003年の市場第一部指定を経て、2005年にビーピー・ジャパン・ルブリカンツと合併し、現在のビーピー・カストロールに商号変更しました。

現在、従業員数は単体で79名を擁しています。筆頭株主は親会社グループのカストロール・リミテッド(常任代理人 ビーピー・ジャパン)で、第2位も同グループのティー・ジェイ、第3位は日本自動車整備商工組合連合会です。ビーピー・ピーエルシー傘下の日本法人として、独立した上場企業でありながら強固な連携を持っています。

氏名 持株比率
カストロール・リミテッド(常任代理人 ビーピー・ジャパン) 53.29%
ティー・ジェイ 11.59%
日本自動車整備商工組合連合会 4.99%

(2) 経営陣


同社の役員は男性3名、女性3名の計6名で構成され、女性役員比率は50.0%です。代表取締役社長は平川雅規氏が務めており、社外取締役比率は50%となっています。

氏名 役職 主な経歴
平川雅規 代表取締役社長 1994年エッソ石油入社。米国やシンガポール等で要職を歴任。2017年同社に入社し、サプライチェーン部長や取締役副社長を経て、2022年3月より現職。
阿部宏憲 取締役副社長営業本部長兼事業開発本部長 2003年同社入社。日本ロレアル事業本部長や海外企業の役員等を経て、2023年に同社へ再入社し事業開発本部長に就任。2025年3月より現職。
田中正子 取締役財務経理部長 プライスウォーターハウスクーパース等を経て2002年ビー・ピー・ジャパン入社。2007年同社に入社し、財務経理部マネジャーや部長代理を歴任。2024年3月より現職。


社外取締役は、粟井佐知子(元ラ・プレリージャパン代表取締役社長)、望月文夫(元東京国税局・税理士)、福山靖子(スプリング法律事務所パートナー弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「自動車用潤滑油事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

自動車用潤滑油事業


高性能かつ高品質なカストロールブランドおよびbpブランドの自動車用潤滑油の販売を行っています。ガソリンエンジン油、ディーゼルエンジン油、自動車ギア油、ブレーキフルードなどの製品を、エンドユーザーの嗜好やこだわりに合わせて幅広く提供しています。事業は主にコンシューマー向け市場とBtoB向け市場の2つに分類して展開しています。

収益源は販売先からの製品販売代金です。コンシューマー向けはカーショップやホームセンター等の量販店へ、BtoB向けは国内カーディーラーや自動車整備工場へ直接または代理店を通じて販売し対価を得ています。製造は国内の協力工場に委託し、事業運営は主にビーピー・カストロールが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績推移を見ると、第46期に市場環境の変化や原材料価格の変動等の影響で一時減益となったものの、その後は着実な回復を見せています。高付加価値製品の拡販や価格改定、デジタル化による業務効率化等の施策が奏功し、売上高・経常利益ともに3期連続で増収増益基調を維持し、成長を続けています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 111億円 112億円 120億円 137億円 147億円
経常利益 23億円 9億円 12億円 14億円 16億円
利益率(%) 20.5% 8.4% 9.7% 10.3% 11.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 15億円 6億円 8億円 9億円 11億円

(2) 損益計算書


直近の損益状況を見ると、新製品の投入や旗艦製品の拡販、販売価格への転嫁が進んだことで、売上高および売上総利益が順調に拡大しています。売上総利益率および営業利益率もともに改善しており、コスト上昇圧力を吸収しながら収益性を高める取り組みが成果に結びついていることが伺えます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 137億円 147億円
売上総利益 51億円 56億円
売上総利益率(%) 37.2% 38.3%
営業利益 14億円 16億円
営業利益率(%) 9.9% 10.6%


販売費及び一般管理費のうち、ロイヤリティが7億円(構成比18%)、業務委託料が6億円(同16%)、運賃・保管料が6億円(同15%)を占めています。売上原価は91億円で、その大部分は潤滑油などの商品仕入高で構成されています。

(3) セグメント収益


同社の事業は自動車用潤滑油の販売およびそれに付帯する事業の単一セグメントです。コンシューマーチャネルでのプレミアムブランドの訴求強化や、ディーラーチャネルでの環境配慮型製品の提案、eコマースでの販路拡大が奏功し、販売数量と単価の両面で成長を実現して売上を伸ばしました。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
潤滑油の販売並びにこれらに付帯する事業 137億円 147億円
連結(合計) 137億円 147億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、運転資金需要を営業活動で生み出した自己資金で賄うことを基本方針としております。

営業活動によるキャッシュ・フローは、仕入や販売費及び一般管理費等の営業費用を賄うための資金源泉となります。投資活動によるキャッシュ・フローは、事業運営に必要な設備投資等に活用されます。財務活動によるキャッシュ・フローは、必要に応じた資金調達や返済等により、資金の安定確保に寄与します。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 5億円 9億円
投資CF -1億円 4億円
財務CF -9億円 -10億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社はミッションとして「消費者・カスタマーのニーズを第一に考慮し、差別化された潤滑油製品及び関連製品・サービスを提供する、長期的な信頼と価値を築き継続的に業績を上げていけるベストブランド・マーケターを目指す」ことを掲げています。また、社員に安全で活気ある職場環境を提供し、持続可能なビジネスを展開することで、業界をリードする利益を株主に提供することを使命としています。

(2) 企業文化


ビーピー・グループの一員として「HSSE基準」と「bp行動規範」を順守することを重視しています。高い倫理基準を設定して日々の業務全般で実践し、信頼される企業としての地位を築くことを目指しています。特に、健康、安全、セキュリティ、環境の各分野において無事故・無災害・環境負荷の最小化に取り組むなど、独自の価値観や倫理原則を内部統制の基盤として位置づけ、社会的信頼のさらなる強化を図っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、エネルギー需要の回復や自動車業界の構造転換など、急速な事業環境の変化に対応するため、2022年から2026年を対象とする中期経営計画を策定しています。資本効率の持続的な改善に取り組み、株主価値の向上と次期中期経営計画への着実な橋渡しを実現することを目指しており、最終年度の目標として以下の数値を掲げています。

* 売上高:120億円
* 経常利益:24.5億円
* ROE:15%以上

(4) 成長戦略と重点施策


成熟した市場においてコアビジネスを強化し、持続的成長を実現するため、5つの経営・事業戦略を注力領域として定めています。プレミアム製品の拡販やeコマースの拡大、新規チャネルの開拓を進めるとともに、近隣製品分野の開発やIoT・AIを活用した新サービスの開発にも取り組んでいます。また、電気自動車向け製品の導入やデジタル化による業務改革を推進し、効率的な業務運営を追求しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


全ての社員が活躍できるよう、多様な視点や価値観などの違いを認める多様性、個々のニーズに合わせたサポートを提供する公平性、そして能力や経験を認め活かす包括性を重視した企業文化の醸成に取り組んでいます。また、業績報酬制度の導入や、ハイブリッド型勤務、最適な場所を自由に選択できるABW(Activity Based Working)制、フレックスタイム制度などを整備し、働きがいと業務効率の向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 48.9歳 15.0年 9,939,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(29.6%)、女性管理職比率(20.8%)、有給取得率(63.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 親会社等とのライセンス契約等の関係


同社の実質的な親会社であるビーピー・ピーエルシーおよび関連グループ会社との間には、ブランド製品の商標や製造・販売に関するライセンス契約が締結されています。これらの契約には、グループの名誉を傷つける行為や契約違反による解除条項が定められており、万一契約が解除されたり条件が変更されたりした場合、同社の事業展開や業績に重大な支障をきたす可能性があります。

(2) 自動車業界を取り巻く環境変化


主力商品である自動車用潤滑油は、エンジンのメンテナンス等に使用されるため、自動車業界の動向に大きく影響を受けます。燃料価格の変動や新車販売動向、地球温暖化ガス削減に伴う規制強化などの急激な環境変化が起きた場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。将来的には電気自動車(EV)や燃料電池車などの普及が進むことで、市場の構造変化に伴う需要減少リスクが存在しています。

(3) 原油価格および為替レート等の変動リスク


自動車用潤滑油の主な原材料であるベースオイルや添加剤のコストは、原油価格および為替レートの変動に大きく左右されます。世界的なエネルギー需要の変化や産油国を巡る地政学的リスク、生産調整等の要因によって原油価格が高騰した場合や、急激な円安が進行した場合には、製品の仕入原価が上昇し、利益率を圧迫するなど同社の経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

(4) 外部工場への製造委託に係るリスク


同社は国内における製品の製造を、特性や品質管理体制を評価した外部の委託先工場で行っており、一部製品は海外グループから輸入しています。委託先に対しては品質検査や安全・環境監査を継続的に実施していますが、万一委託先で経営悪化や品質事故等の問題が発生した場合、代替の委託先への切り替えに伴う一時的な製造体制の混乱が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。