シークス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

シークス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

シークスは東京証券取引所プライム市場に上場し、電子部品等の部材調達、EMS(電子機器受託製造サービス)、物流などのサービスをグローバルに提供しています。直近の業績トレンドは、車載関連機器等の出荷減少による減収の一方、製造経費の削減等により営業利益と経常利益は増益、当期純利益は減益となっています。


**※本記事は、シークス株式会社の有価証券報告書(第34期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。**

1. シークスってどんな会社?


シークスは電子部品の調達からEMS、物流までをグローバルで提供するビジネスオーガナイザーです。

(1) 会社概要


1992年にサカタインクスの海外事業部が分離・独立して設立されました。1998年にシークスへ社名を変更し、1999年に株式を上場しています。2005年には東京証券取引所および大阪証券取引所の市場第一部に指定されました。2024年にはバイオ抗体医薬品の受託開発製造事業を行うRenzoku Biologicsを子会社化しています。

現在の従業員数は連結で8,712名、単体で241名です。筆頭株主は同社の設立母体であり現在も関係会社である事業会社のサカタインクスで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は有限会社フォーティ・シックスとなっています。

氏名 持株比率
サカタインクス 22.94%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.72%
有限会社フォーティ・シックス 5.09%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表者はCEO兼COO代表取締役社長執行役員の平岡和也氏が務めています。取締役9名のうち5名が社外取締役です。

氏名 役職 主な経歴
平岡 和也 CEO兼COO代表取締役社長執行役員 1996年入社。シンガポール、バンコク等の海外駐在を経て、2016年執行役員に就任。中華圏等の海外拠点トップを歴任し、2026年3月より現職。
丸山 徹 COS 代表取締役専務執行役員 1986年太陽神戸銀行入行。法人営業部長等を歴任後、2015年同社入社。経営企画部長、総務部長等を務め、2026年3月より現職。
高木 浩昭 CTO 取締役常務執行役員技術統括部長 1980年ソニー入社。フォックスコン・ジャパン副社長等を経て2017年同社入社。タイや上海の拠点トップを歴任し、2026年3月より現職。
蒲田 顕久 CFO 取締役常務執行役員財務経理部長兼 IR・広報部長 1985年富士通入社。海外子会社駐在やPFU取締役等を経て2021年同社入社。シンガポール等の拠点トップを歴任し、2026年3月より現職。


社外取締役は、髙谷晋介(元仰星監査法人理事長)、大森進(元UBS証券代表取締役会長)、二子石謙輔(元セブン銀行代表取締役会長)、半田清(元PFU代表取締役社長)、尾﨑哲(元野村ホールディングス執行役副会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」、「中華圏」、「東南アジア」、「欧州」、「米州」の5つの報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

日本


日本国内の顧客に向けて、車載関連機器、産業機器、家電機器、情報機器などの電子部品や完成品、基板実装品などの輸出入販売を行っています。

顧客に対する電子部品等の部材調達や商品の販売による代金が主な収益源です。事業の運営は主にシークスが担っています。

中華圏


中国や香港、台湾において、日系および非日系のグローバル企業に向けて電子部品等の販売や電子回路・機器の製造(EMS)サービスを提供しています。

部材調達および電子機器受託製造サービスの提供に伴う代金を顧客から受け取ります。運営はSIIX (Shanghai) Co., Ltd.やSIIX EMS (DONG GUAN) Co., Ltd.などの現地子会社が行っています。

東南アジア


シンガポール、タイ、フィリピン、インドネシア、マレーシア等の東南アジア地域において、電子部品等の販売や電子機器の受託製造サービスを展開しています。

部材調達や製造受託による対価が主な収益源です。Thai SIIX Co., Ltd.やSIIX Singapore Pte. Ltd.などの現地子会社が事業を運営しています。

欧州


欧州地域の顧客に対して、車載関連機器や産業機器向け等の電子部品の販売ならびに電子回路・機器の製造サービスを提供しています。

顧客からの部材調達や受託製造の代金が主な収益源となります。ドイツのSIIX Europe GmbHやスロバキアのSIIX EMS Slovakia s.r.o.などが運営を行っています。

米州


米国やメキシコなど米州地域の顧客に向けて、車載関連機器や産業機器分野での電子部品販売および電子機器受託製造サービスを展開しています。

電子部品の販売代金やEMSの受託製造費用が収益源です。事業運営は米国のSIIX U.S.A. Corp.やメキシコのSIIX EMS MEXICO S de RL de C.Vなどが担っています。

その他


報告セグメントに属さない全社共通の事業として、電子回路・機器の技術開発や技術支援、ならびにバイオ抗体医薬品の受託開発製造(CDMO)サービスを提供しています。

技術支援や医薬品の受託開発製造等に伴う対価が収益源です。シークスエレクトロニクスやRenzoku Biologicsが事業を運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は需要の拡大に伴い一時3,000億円を超える水準まで成長しましたが、足元では一部市場の需要減速等により減収となっています。利益面では、市況変動や製造経費の増減により経常利益率が2%台から3%台で推移しており、安定した収益基盤を維持しながらも環境変化の影響を受けています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 2,268億円 2,770億円 3,098億円 3,023億円 2,895億円
経常利益 59億円 83億円 118億円 83億円 92億円
利益率(%) 2.6% 3.0% 3.8% 2.7% 3.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 91億円 -7億円 19億円 16億円 10億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少したものの、売上原価の低減が進んだことで売上総利益率は上昇しました。これに伴い、営業利益および営業利益率も前期を上回る水準で推移しており、収益性の改善傾向が確認できます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 3,023億円 2,895億円
売上総利益 286億円 282億円
売上総利益率(%) 9.5% 9.7%
営業利益 86億円 89億円
営業利益率(%) 2.8% 3.1%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が60億円(構成比31%)、運賃荷造費が25億円(同13%)を占めています。また、売上原価は2,613億円であり、売上高に対する構成比は90%となっています。

(3) セグメント収益


各地域セグメントにおいて、車載関連機器や産業機器向け部材の出荷減少などが影響し、全般的に売上高は前期を下回りました。特に欧州や中華圏での減少幅が大きく、グループ全体の減収要因となっています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
日本 580億円 566億円
中華圏 611億円 575億円
東南アジア 941億円 931億円
欧州 253億円 214億円
米州 631億円 601億円
調整額 7億円 8億円
連結(合計) 3,023億円 2,895億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFおよび財務CFはマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況を示しています。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は49.7%で市場平均を上回っています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 231億円 265億円
投資CF -91億円 -23億円
財務CF -123億円 -164億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「シークス・プリンシプルズ」を企業理念として掲げています。「世界の重要なリソースに光をあて、その有効活用の追求により、社会システムの活性化と人類の進歩に貢献する」ことを使命としています。また、多様な顧客ニーズを調整してビジネスを創造する「グローバル・ビジネス・オーガナイザー」として、全てのステークホルダーに魅力をもたらす企業を目指しています。

(2) 企業文化


企業活動の基本精神として、「Challenging(挑戦的・意欲的に取り組み革新を生む)」「Speedy(意思決定や情報伝達の迅速化)」「Fair(コンプライアンスを重んじた公平性)」の3つの価値観を重視しています。また、「シークスグループ行動規範」を制定し、企業の社会的責任や法令・社会的規範の遵守を組織全体で実践する文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、SIIX VISION 2026「清く、正しく、正確に」をスローガンに掲げ、2026年を最終年度とする3か年の中期経営計画を推進しています。本計画では、「新規ビジネスへの挑戦と最高品質の提供」「脱炭素社会への貢献」「経営管理・財務の強化」「人的資本経営」の4つを重点テーマに設定し、持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


中長期的な成長に向けて、主力の車載関連ビジネスの深耕と製造DXによる高品質なモノづくりの確立を推進しています。同時に、プリンテッドエレクトロニクスやロボティクスなどの新規ビジネス領域の開拓にも注力し、収益性の向上を図っています。さらに、在庫削減や支払サイトの見直しによる資金効率の改善や、サプライチェーン全体での温室効果ガス削減にも取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、「多様な人材の活躍推進」「人材育成」「働き方改革」を重点方針とし、エンゲージメント向上を通じた人的資本経営を推進しています。グローバルに活躍できる人材を育成するため、総合的な教育基盤「SIIX Academy」を立ち上げるとともに、若手向けの海外研修プログラムを導入しています。また、リモートワークや時間単位年休の制度化など、多様な働き方を支える環境整備にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与は東京証券取引所プライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 37.6歳 8.2年 7,364,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 21.8%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 75.4%
男女賃金差異(正規労働者) 75.7%
男女賃金差異(非正規労働者) 92.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ローカル幹部比率(80.8%)、エンゲージメントスコア(50.8)、有給取得率(82.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 車載・産業機器市場の市況変動


同社の売上の約8割を占める車載関連機器や産業機器分野における顧客企業の動向が、業績に直結する構造となっています。技術革新による市場成長が見込める一方で、競争激化や商品の陳腐化による価格低下、急激な需給バランスの変化が生じた場合、生産調整や在庫増加、利益率の低下につながるリスクがあります。

(2) グローバル取引に伴う為替変動


多様な通貨や条件で海外との取引を行っているため、急激な為替変動の影響を受けやすい事業構造です。同社では同一通貨での仕入・販売や為替予約取引を活用し、顧客との間で為替リスク負担に関する取り決めを行うなどのヘッジ対策を講じていますが、想定を超える為替の変動が業績に影響を与える可能性があります。

(3) 海外事業展開に伴うカントリーリスク


同社は国内外に多数の子会社を持ち、生産拠点を世界各国に分散させることで国際情勢の変化に対応する体制を構築しています。しかし、事業を展開する各国の政治経済情勢の悪化や、法規制・税制・通貨政策の変更、社会的混乱、自然災害などの予期せぬ事象が発生した場合、事業活動に直接的または間接的な影響が及ぶリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。