※本記事は、YKT株式会社の有価証券報告書(第49期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. YKTってどんな会社?
電子部品実装機や工作機械などの生産設備を提供する機械専門商社です。
■(1) 会社概要
1924年に山本商会を創業し、工作機械の輸入販売を開始しました。1977年に山本機械通商(現YKT)を設立し、1984年には松下電器産業(現パナソニックホールディングス)と代理店契約を締結し、電子部品実装機の販売を始めました。2004年にジャスダックに上場し、2024年に創業100周年を迎えています。
従業員数は連結で135名、単体で90名です。筆頭株主は創業家の山本久子氏で、第2位は取締役経営本部長の山本庸一氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 山本久子 | 20.88% |
| 山本庸一 | 16.70% |
| 内藤征吾 | 3.06% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は柳崇博氏が務めています。社外取締役比率は14.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 柳崇博 | 代表取締役社長 | 1982年入社。第一営業本部長代理、取締役第一営業本部長などを経て、2018年より常務取締役営業本部長。2023年より現職。 |
| 古閑丸文明 | 取締役電子営業本部長 | 2004年入社。微科帝(上海)国際貿易有限公司総経理や電子営業本部長などを経て、2024年より現職。 |
| 山本庸一 | 取締役経営本部長 | 2005年入社。業務課長、経営本部長補佐室長兼総務部長などを経て、2018年より現職。 |
社外取締役は、尾野恭史氏(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「電子機器及び工作機械等」および「光電子装置」事業を展開しています。
■電子機器及び工作機械等
国内メーカーの電子部品実装機などの電子機器や、海外メーカーの工作機械、測定機器、産業機械などの生産設備の販売を展開しています。主な販売先はいずれも製造業です。
収益は、主にこれらの機器の販売を通じて顧客から得ています。事業の運営はYKTのほか、連結子会社である微科帝(上海)国際貿易有限公司や微科帝貿易股份有限公司などが担っています。
■光電子装置
光通信関連の光アンプやその他部品、研究用レーザー機器、レーザー加工装置などの光電子装置の販売を行っています。
国内外のユーザーへの販売を通じて収益を得ています。当事業の運営は、連結子会社であるサンインスツルメントが単独で行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績をみると、売上高は110億円台から220億円台の間で変動しています。特に当期は電子機器の輸出販売が伸びて増収となりましたが、利益率の低下に伴い、経常利益や当期利益はマイナスに転じる厳しい結果となっています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 157億円 | 221億円 | 129億円 | 119億円 | 134億円 |
| 経常利益 | 6億円 | 12億円 | 5億円 | 1億円 | -0.5億円 |
| 利益率(%) | 4.0% | 5.6% | 3.5% | 1.2% | -0.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2億円 | 5億円 | 3億円 | -2億円 | -0.4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加したものの、輸出販売比率の高まりなどにより売上総利益率は17.6%から13.8%へと低下しました。その結果、営業利益はマイナス幅が拡大しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 119億円 | 134億円 |
| 売上総利益 | 21億円 | 18億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.6% | 13.8% |
| 営業利益 | -0.1億円 | -2億円 |
| 営業利益率(%) | -0.1% | -1.5% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が7.2億円(構成比35%)、従業員賞与が1.6億円(同8%)、旅費交通費が1.5億円(同7%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の電子機器及び工作機械等は、中国市場での電子機器需要の高まりを受けて増収となりました。一方、光電子装置は産業用レーザー装置の販売減少が響き、減収となっています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 電子機器及び工作機械等 | 110億円 | 128億円 |
| 光電子装置 | 10億円 | 6億円 |
| 連結(合計) | 119億円 | 134億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
当期のキャッシュ・フローは、本業で安定して資金を獲得しつつ、資金調達を行って事業転換などのための投資に充てる「再建・転換型」の状況となっています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -2億円 | 8億円 |
| 投資CF | -0.0億円 | 1億円 |
| 財務CF | -8億円 | 16億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.7%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は46.5%で、いずれも市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
創業以来「産業の西と東を結ぶ橋」として、国内外の生産設備を顧客へ提供し、利潤をあげてもらうことで発展してきました。機械設備の総合プランナーとして、「信頼と感動を与える商品・サービスを提供すること」を基本方針に掲げています。
■(2) 企業文化
人的資本経営を基本とし、人材育成や教育制度の充実、職場環境の整備などにより社員のエンゲージメント向上に努める文化があります。100年を超える経験と実績をもとに、顧客に寄り添い「時間という経営資源」を提供する存在を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
中長期ビジョン「YKT Vision2034」および「第13次中期経営計画」において、以下の目標を掲げています。
・売上高は2027年度に130億円、2034年度に200億円
・自己資本利益率(ROE)は2027年度に5.0%以上、2034年度に12.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
モノ売りに留まらない、付加価値型ビジネスへのシフトを目指しています。顧客の課題に向き合い、システム提案や技術支援も含めた総合的な視点から付加価値を提供するビジネスへ転換します。また、為替や特定商品の需要動向に影響されにくい商品群を充実させ、生産現場の自動化・省力化に寄与する提案を進めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
国籍・年齢・性別にとらわれず、視野の拡大や能力の伸長につながる機会を平等に提供し、社員一人一人の成長を後押しする方針です。伝統的にOJTを重視しつつ、中長期的には部門間共通のスキルや知識を体系立てて継承する体制の確立を目指しています。個人ごとに異なる価値観を尊重し、柔軟な働き方を支援する環境整備に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 42.5歳 | 15.0年 | 6,933,010円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.3% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 88.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 89.2% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 113.5% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(5.9%)、行動規範アンケート回答率(65.5%)、法規制違反件数(0件)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 設備投資需要の変動
主要販売先である電機・機械・自動車などの製造業における設備投資の動向は、景気に大きく左右されます。市況の低迷や地政学リスクなどにより顧客の設備投資需要が減少した場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 海外需要の変動
電子機器の輸出販売先は主に台湾や中国などの東アジアのユーザーであり、世界的な景気動向によって設備投資が大きく変動することがあります。需要の急減や販売の低迷が起きた場合、経営成績に影響を与える可能性があります。
■(3) 為替変動が収益に与える影響
工作機械などの輸入商品は海外メーカーからの外貨による仕入れであるため、為替変動リスクが存在します。急激な円安の進行などにより販売価格や利益率に悪影響が及び、収益が低下するリスクがあります。
■(4) 特定取引先への依存状況
電子機器の販売において、パナソニックコネクトの製品販売比率が売上高の過半数を占めています。仕入先との代理店契約が解除された場合や、メーカーの事業計画変更があった場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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