木徳神糧 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

木徳神糧 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

木徳神糧は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、米穀事業を主力に、飼料事業、鶏卵事業、食品事業を展開しています。直近の業績では、令和6年産米の需給ひっ迫下において政府備蓄米を活用した安定供給等により販売単価が上昇し、大幅な増収増益を達成しました。コメ食のインフラ企業として食文化を守ります。


※本記事は、木徳神糧株式会社の有価証券報告書(第78期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 木徳神糧ってどんな会社?


木徳神糧は、米穀事業を主力として生産者と消費者の架け橋となり、日本の食文化を支える企業です。

(1) 会社概要


1882年に米穀商木村徳兵衛商店として開業し、1950年に木村徳兵衛商店を設立しました。1964年に木徳へ商号変更し、2000年に神糧物産と合併して現在の木徳神糧となりました。2001年にJASDAQ市場へ銘柄登録を行い、2004年に株式上場を果たしました。

従業員数は連結で385名、単体で283名です。筆頭株主は創業家である木村良氏で、第2位は濱田精麦、第3位は神明ホールディングスとなっており、事業会社や農業協同組合連合会などの安定株主が名を連ねています。

氏名 持株比率
木村良 6.12%
濱田精麦 5.03%
神明ホールディングス 4.89%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長営業本部長は鎌田慶彦氏です。社外取締役比率は9.1%です。

氏名 役職 主な経歴
鎌田慶彦 代表取締役社長営業本部長 1983年4月同社入社。2007年4月専任執行役員、2016年3月取締役常務執行役員等を経て、2025年3月より現職。
竹内伸夫 取締役会長営業本部米穀事業本部長 1977年4月備前食糧入社。2013年3月同社取締役執行役員、2022年3月代表取締役社長執行役員COO等を経て、2025年3月より現職。
稲垣英樹 取締役常務執行役員管理部門統括 1992年3月神糧物産入社。2009年4月同社執行役員、2014年3月取締役執行役員管理部門長等を経て、2016年3月より現職。
管益成 取締役常務執行役員社長室長 2000年4月同社入社。2012年1月社長室長、2020年3月取締役執行役員社長室長等を経て、2025年3月より現職。
山田智基 取締役執行役員営業本部海外事業統括 1997年4月同社入社。2009年2月アンジメックス・キトク取締役副社長等を経て、2020年3月より現職。
今野稔 取締役執行役員営業本部米穀事業本部副本部長東日本地区統括 1993年4月神糧物産入社。2021年3月同社執行役員、2024年3月上席執行役員等を経て、2026年1月より現職。
鈴木平 取締役執行役員営業本部飼料事業統括開発事業統括 2000年4月神糧物産入社。2022年3月同社執行役員、2025年3月取締役執行役員等を経て、2026年1月より現職。


社外取締役は、柏原幸代(サンファイブ取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「米穀事業」「飼料事業」「鶏卵事業」「食品事業」を展開しています。

米穀事業


同事業では、量販店等で一般家庭向けに販売される家庭用精米や、外食・中食産業で使用される業務用精米、玄米、ミニマム・アクセス米などの販売を行っています。家庭用精米には自社ブランドとして「純づくり」や「とがずに炊ける無洗米」などを展開しています。
主に木徳神糧が運営を担い、海外においてはアンジメックス・キトク、木徳(大連)貿易、キトク・タイランドなどの子会社を通じて、精米の製造販売・玄米の販売により収益を得ています。

飼料事業


同事業では、配合飼料メーカー向けの配合飼料原料(糟糠類など)や、飼料販売店および企業畜産向け単体飼料(牧草など)の販売を行っています。
運営は主に木徳神糧が行っており、飼料原料等の販売を通じて収益を得ています。

鶏卵事業


同事業では、家庭用および業務用の鶏卵ならびに鶏卵加工品の販売を行っています。栄養素を多く含んだ鶏卵をブランド卵と称し、「カロチンE卵α」などのブランド名で展開しています。
運営は主に木徳神糧が行っており、鶏卵の商品販売を通じて収益を得ています。

食品事業


同事業では、製菓および加工食品用米粉の製造・販売、たんぱく質調整米「真粒米」の製造・販売、小麦粉などの製造・販売を行っています。
運営は木徳神糧および関連会社の東日本産業が担っており、米粉や加工食品の製造・販売を通じて収益を得ています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、売上高が1,000億円台前半で安定推移した後、最新期に1,762億円へと急拡大しています。経常利益も年々増加傾向にあり、特に最新期は前年比で約3倍の82億円に達し、収益性が大幅に向上しました。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 1,078億円 1,047億円 1,148億円 1,190億円 1,762億円
経常利益 6億円 14億円 22億円 25億円 82億円
利益率(%) 0.6% 1.3% 1.9% 2.1% 4.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 10億円 15億円 17億円 55億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も前年から約1.7倍に拡大しました。原価の上昇分を販売価格へ適時・適切に反映させたことにより、売上総利益率および営業利益率がともに大きく改善しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 1,190億円 1,762億円
売上総利益 90億円 157億円
売上総利益率(%) 7.6% 8.9%
営業利益 24億円 80億円
営業利益率(%) 2.0% 4.6%


販売費及び一般管理費のうち、運賃荷役料が35億円(構成比46%)、給料及び手当が17億円(同22%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力である米穀事業が、米の需給ひっ迫下において安定供給を最優先に取り組み、適正な価格形成に注力した結果、売上・利益ともに大幅に伸長し全社の業績を牽引しました。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
米穀事業 966億円 1,513億円
飼料事業 103億円 106億円
鶏卵事業 87億円 109億円
食品事業 34億円 34億円
連結(合計) 1,190億円 1,762億円


本業は赤字だが、将来成長のため借入で投資を継続する勝負型の傾向が見られます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF -9億円 -12億円
投資CF -10億円 -7億円
財務CF 29億円 34億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は31.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「当社の存在意義は、生産者と消費者の架け橋となることです。米の安定調達/供給を実現し、食のインフラを支え、日本の食文化を守ります。」という経営理念を掲げています。消費者と生産者双方にとって持続可能な価格形成を目指し、社会的役割を果たしていく姿勢を明確にしています。

(2) 企業文化


同社は、「誠意と感謝の気持ちを持つ企業であり続けます。」「より高いクオリティを追求する企業であり続けます。」「新しい価値を創造する企業であり続けます。」という3つの企業理念のもと、あらゆるステークホルダーとの信頼関係を大切にしながら、お客さまのニーズに応え、社業の発展を通じて社会に貢献する文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、最重点戦略分野への資本投下に対して会社の経営状態(投資状態)を判断する客観的な指標として自己資本当期純利益率(ROE)を活用しています。当面の目標として、資本コストを意識した経営と資本効率の向上を推進しています。

* ROE10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社グループは、長期ビジョンとして2040年に「コメ食のインフラ企業」への進化を目指し、2026年〜2028年の新中期経営計画において「ステージチェンジ」を見据えた「ステップアップ」を掲げています。具体的には、調達先の開拓等を通じた調達力の確保、自社ブランド強化によるコメ消費の拡大、飼料や鶏卵など環境に左右されにくいコメ関連事業の規模拡大、およびDXやガバナンスを通じた経営基盤の強化に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、「個人と組織の相乗効果を高めるため、一人ひとりが自ら考え行動し、果敢に挑戦する人材を育成します。」という人材育成方針を掲げています。また、従業員の安全と心身の健康を第一に、多様な人材が安心して活躍できるよう、個人と組織が共に成長できる社内環境の整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 42.3歳 15.7年 7,796,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.7%
男性育児休業取得率 66.6%
男女賃金差異(全労働者) 75.3%
男女賃金差異(正規雇用) 79.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 61.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ストレスチェック受検率(98.9%)、リーダークラスに占める女性割合(19.3%)、正社員離職率(2.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 農業政策等の影響による原料調達リスク


同社グループの米穀事業は、原料調達の大部分を国内産で行っています。現在、減反による生産調整の廃止や担い手の育成、飼料用米への転作など農業生産・流通に多くの課題を抱えており、政府方針の変更による原料調達価格の変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は契約手法の多様化や海外収益基盤の拡充でリスク低減を図っています。

(2) 天候や災害等による作況動向の影響


国内外の天候や災害等に影響される作況動向、各国政府の備蓄方針、消費動向などにより、仕入・販売価格が変動するリスクがあります。これに対応するため、同社グループでは気候変動に対応した特性を持つ品種(高温耐性や耐倒伏性など)の普及を推進し、原料調達エリアの広域化とルートの複線化による安定的な調達を図っています。

(3) 特定の得意先および仕入先への依存


同社グループの売上高の約37%は上位5社の得意先への販売で占められており、取引の縮小などが業績に影響する可能性があります。また、仕入高の約32%は全国農業協同組合連合会からの米穀仕入に依存しており、販売方針の変更が影響を及ぼす懸念があります。同社は新規開拓に注力するとともに、機動的な調達が可能な体制の構築を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。