デルソーレ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

デルソーレ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する同社は、食品事業(ピザ・パン類の製造販売)および外食事業を展開しています。直近の決算では、食品事業における主要顧客との取引減少や千葉工場火災による一部製品の休売等の影響を受け、売上高は減少しました。利益面でも火災関連損失等を計上し、最終赤字となっています。


※本記事は、株式会社デルソーレ の有価証券報告書(第61期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. デルソーレってどんな会社?


日本におけるピザのパイオニアとして創業し、現在はピザ等の製造販売を行う食品事業と、外食事業を展開しています。

(1) 会社概要


1964年に設立し、米国より冷凍ピザの輸入販売を開始しました。1985年にはピザ宅配チェーンへの食材供給を開始し、チーズ加工の合弁会社を設立するなど事業を拡大。2004年にジャスダック証券取引所へ上場しました。2020年には商号を現在の名称に変更し、2023年には北海道に「八雲ピザ工房」を新設しています。

同社(単体)の従業員数は250名です。筆頭株主は創業家の大河原愛子氏で、第2位は代表取締役CEOの大河原毅氏です。第3位には、同社と資本提携関係にあるインドネシアの食品大手PT INDOFOOD CBP SUKSES MAKMUR TBKが名を連ねています。

氏名 持株比率
大河原 愛子 25.51%
大河原 毅 17.23%
PT INDOFOOD CBP SUKSES MAKMUR TBK 10.11%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性0名の計12名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は大河原泰氏です。社外取締役比率は16.7%です。

氏名 役職 主な経歴
大河原 毅 代表取締役CEO 日本ケンタッキー・フライド・チキン社長等を経て、2002年同社入社。2007年より現職。
大河原 泰 代表取締役社長 三菱商事、TOYO TIREグローバルサプライ推進室長等を経て、2019年同社入社。2023年より現職。
アーネストM.比嘉 取締役 ヒガ・インダストリーズ社長、ウェンディーズ・ジャパン会長等を歴任。2010年より現職。
森山 敏治 取締役営業ユニット管掌 1984年同社入社。執行役員常務、食品事業ユニット営業統括等を経て、2023年より現職。
印部 修一 取締役管理ユニット管掌 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)ビジネスローン部長等を経て、2019年同社入社。2022年より戦略企画室長を委嘱。
三枝 広幸 取締役管理ユニット担当 東洋火災海上保険(現セコム損害保険)等を経て、2006年同社入社。2022年より総務・人事チーム長を委嘱。
武長 栄治 取締役製造・開発ユニット管掌 スターバックスコーヒージャパン等を経て、2009年同社入社。2022年より千葉工場長を委嘱。


社外取締役は、遠藤貢(元キユーピー常務)、近藤正樹(元日本KFCホールディングス社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「食品事業」「外食事業」の2つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 食品事業


当セグメントでは、ピザ、ナン、ピタ、トルティーヤなどの「世界のパン」およびエスニックブレッド製品等の製造、販売を行っています。外食業界や食品スーパー、生協などを主要な取引先としており、業務用および家庭用製品を提供しています。

収益は、製品および商品の販売対価として顧客から受け取る売上が主な源泉です。また、関連当事者であるヒガ・インダストリーズから商品および原材料の仕入を行っています。運営は主に同社が行っています。

(2) 外食事業


当セグメントでは、テイクアウト業態として「おめで鯛焼き本舗」、焼き鳥・鶏惣菜の「京鳥」などを展開するほか、外食店舗の運営や宅配事業も手掛けています。

収益は、直営店における飲食代金や商品販売代金のほか、フランチャイズ加盟店からのロイヤリティ収入などで構成されています。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は150億円から180億円の間で推移していますが、当期は前期比で減少しました。利益面では、経常利益が数億円から十数億円の黒字を維持していましたが、当期は大幅に減少し、最終損益は赤字に転落しています。これは工場火災等の特別損失計上が大きく影響しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 166億円 155億円 169億円 178億円 154億円
経常利益 6億円 10億円 5億円 13億円 5億円
利益率(%) 3.7% 6.5% 3.1% 7.1% 3.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 6億円 3億円 6億円 -4億円

(2) 損益計算書


当期は前期と比較して減収減益となりました。売上高の減少に伴い売上総利益も縮小しましたが、売上総利益率は概ね横ばいを維持しています。一方、営業利益は半減しました。コスト面での負担増に加え、売上減少の影響を受けた形です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 178億円 154億円
売上総利益 68億円 57億円
売上総利益率(%) 38.3% 37.0%
営業利益 12億円 6億円
営業利益率(%) 6.9% 3.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が17億円(構成比33%)、荷造運搬費が10億円(同20%)を占めています。

(3) セグメント収益


食品事業は主要顧客との取引減少や工場火災による製品供給制限の影響で減収となり、特別損失等の計上もありセグメント損失となりました。一方、外食事業はテイクアウト業態の出店やコストコントロールが奏功し、増収増益を達成しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
食品事業 148億円 123億円 15億円 -2億円 -1.6%
外食事業 30億円 31億円 0.7億円 3億円 8.2%
連結(合計) 178億円 154億円 9億円 -6億円 -3.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、本業の営業活動で資金を獲得しつつ、投資活動や財務活動(借入返済や配当支払)に資金を充当する「健全型」のパターンを示しています。営業CFは前期より減少しましたが、プラスを維持しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 11億円 9億円
投資CF -2億円 -3億円
財務CF -3億円 -2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-6.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「食と食の文化を通じてお客様に満足と幸せを提供する」ことを経営理念として掲げています。「食の安全・安心」を第一とし、「“おいしい”で世界をつなぐ」をミッションに、トータルフードサービス企業として業績向上と財務体質の改善、経営基盤の強化に取り組んでいます。

(2) 企業文化


事業やセグメントの枠を超えた全体最適を図るため、「デルソーレというひとつの組織=ONE DELSOLE」を行動指針としています。顧客をよりどころとし、収益を軸とした経営資源の最適配分を目指すとともに、従業員の多様性を活かすダイバーシティの確保や柔軟なキャリア形成の環境整備を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2023年度から2026年度までの「中期経営計画2026」を策定し、事業運営を進めています。具体的な数値目標についての記載はありませんが、業績の向上と財務体質の改善、経営基盤の強化に取り組む姿勢を示しています。

(4) 成長戦略と重点施策


食品事業では、収益重視型への販路・商品見直しを行い、高付加価値製品の提案強化や「デルソーレ」ブランドの浸透を図ります。また、海外事業を成長軌道に乗せ、今後の柱とすることを目指します。外食事業では、「おめで鯛焼き本舗」を成長ドライバーと位置づけ、テイクアウト業態への集中出店を進めます。全社的には、千葉工場火災からの早期復旧と生産体制の再構築、DXによる業務効率化を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「ONE DELSOLE」を軸に、経営資源の最適配分と人的資本の活性化を目指しています。事業環境の変化に対応し持続的成長を支えるため、従業員の特性やスキルを最大限に活かせるよう、ダイバーシティの確保、柔軟なキャリア形成に向けた環境整備、業態を超えた人材育成と活用に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.7歳 13.4年 5,266,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 33.3%
男女賃金差異(全労働者) 66.5%
男女賃金差異(正規雇用) 77.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 93.8%


※女性管理職比率については、HTML原文の法定開示箇所に記載がありませんでした。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、基幹社員における女性の在籍比率(20.5%)、全従業員の一月当たり平均残業時間(6.5時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 食の安全・品質管理


「食の安全・安心」を最優先事項として品質・衛生管理を徹底していますが、異物混入や食中毒などの衛生問題が発生した場合、あるいは食の安全性に対する社会的な関心が高まった際に、同社の想定を超える事態となれば、業績に重大な影響を与える可能性があります。

(2) 災害、事故、疾病等の影響


国内に生産拠点(工場)を有しているため、地震や台風等の自然災害、事故等により甚大な被害を受けた場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。実際に2024年10月には千葉工場で火災が発生し、一部製造ラインの停止や製品の休売といった影響が出ています。

(3) 原材料価格の変動


製品の主原料であるチーズや小麦粉などの価格は、国際的な需給バランスや気候変動、地政学リスク等の影響を受けやすく、価格が乱高下することがあります。調達先の分散等の対策を講じていますが、想定以上の価格変動が生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 人材確保、労務関連


各事業における有能な人材の確保と育成は持続的成長に不可欠ですが、雇用環境の変化や採用競争の激化により、必要な人材を計画通りに確保できない場合、事業活動に支障をきたし、業績に影響を与える可能性があります。特に慢性的な人手不足は経営環境を厳しくさせる要因となっています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。