MonotaRO 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

MonotaRO 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

MonotaROは東京証券取引所プライム市場に上場し、主に事業者向けに工場用間接資材のインターネット通信販売を展開しています。約2,885万点の取扱商品と独自のデータ分析によるマーケティングを強みとし、国内外で顧客基盤を拡大しています。直近の業績は売上高、利益ともに順調に推移し、増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社MonotaROの有価証券報告書(第26期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. MonotaROってどんな会社?


事業者向け工場用間接資材のeコマース事業を主力とし、国内外で急成長を続ける通信販売企業です。

(1) 会社概要


2000年に住友商事と米国グレンジャー社の共同出資により住商グレンジャーとして設立されました。2001年にインターネットによる工場用間接資材の通信販売を開始し、2006年に現社名へ変更するとともに東証マザーズへ上場を果たしました。その後、韓国やインドネシア、インドなど海外にも子会社を設立し事業を拡大しています。

従業員数は連結で1,525名、単体で931名です。筆頭株主は親会社であり事業会社の米国グレンジャー・グローバル・ホールディングスで、第2位および第3位は資産管理業務などを行う信託銀行や預託銀行となっています。

氏名 持株比率
GRAINGER GLOBAL HOLDINGS, INC. 50.33%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.75%
CITIBANK, N.A.-NY, AS DEPOSITARY BANK FOR DEPOSITARY SHARE HOLDERS 2.25%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性3名の計15名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表執行役社長は田村咲耶氏が務めています。取締役における社外取締役比率は66.7%です。

氏名 役職 主な経歴
田村 咲耶 取締役代表執行役社長 2007年ボストン・コンサルティング・グループ入社。GEヘルスケア・ジャパンを経て2020年MonotaRO入社。2024年より現職。
鈴木 雅哉 取締役会長代表執行役 1998年住友商事入社。楽天を経て2007年MonotaRO入社。2012年社長就任。2025年より現職。
Barry Greenhouse 取締役 1996年Heinz Pet Products入社。2004年W.W.Grainger,Inc.入社。2020年より現職。


社外取締役は、岸田雅裕(合同会社INTEGRITY代表社員・指名委員長)、伊勢智子(TMI総合法律事務所パートナー・監査委員長)、鷺谷万里(みずほリース社外取締役・報酬委員長)、三浦洋(公認会計士三浦洋国際マネジメント事務所所長)、中島潔(マクニカホールディングス特別相談役)、Peter Kenevan(ローム取締役上席執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、単一セグメントとして「工場用間接資材販売事業」を展開しています。

(1) 工場用間接資材の通信販売


同社グループは、国内外のエンドユーザー(事業者を中心とする顧客)に対し、工場内で日常的に使用される消耗品や補修用品などの間接資材をインターネットを通じた通信販売により提供しています。約2,885万点に及ぶ幅広い品揃えと高い検索性、迅速な配送網を備え、自社のプライベートブランド商品も展開しています。

商品の仕入販売については店舗を持たず、国内外の卸業者やメーカーから仕入れた商品を自社ウェブサイトやカタログに掲載して直接販売しています。売上の大部分は顧客からの商品代金により構成されており、これらのeコマース事業の運営は主にMonotaROおよび韓国やインドネシア等の海外子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、顧客基盤の順調な拡大と取扱商品・在庫商品の拡充により、売上高および利益ともに継続的な成長を遂げています。特に当期は売上高が3,000億円を突破し、利益率も改善傾向にあります。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 1,897億円 2,260億円 2,543億円 2,881億円 3,339億円
経常利益 243億円 264億円 315億円 373億円 461億円
利益率(%) 12.8% 11.7% 12.4% 13.0% 13.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 177億円 190億円 221億円 260億円 327億円

(2) 損益計算書


売上高の成長に伴い売上総利益も着実に増加しており、売上総利益率は約30%弱で安定的に推移しています。営業利益率も12.9%から13.8%へと改善しており、本業の収益力の高さが伺えます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 2,881億円 3,339億円
売上総利益 844億円 996億円
売上総利益率(%) 29.3% 29.8%
営業利益 371億円 462億円
営業利益率(%) 12.9% 13.8%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当・賞与が116億円(構成比22%)、広告宣伝費が111億円(同21%)を占めています。売上原価の大部分は商品の仕入コストですが、商品送料が185億円(売上原価全体の約8%)含まれています。

(3) セグメント収益


同社は工場用間接資材販売事業の単一セグメントであるため、セグメント別の収益記載は省略します。

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、事業規模拡大に伴う設備投資資金を自己資金または金融機関からの借入により調達する方針です。
営業活動では、税金等調整前当期純利益や仕入債務の増加等により資金が増加しました。
投資活動では、有形固定資産や無形固定資産の取得による支出により資金が減少しました。
財務活動では、長期借入金の増加により資金が増加した一方、配当金の支払いにより資金が減少しました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 287億円 337億円
投資CF -36億円 -171億円
財務CF -133億円 0.3億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「資材調達ネットワークを変革する」という企業理念を掲げています。事業者を取り巻く資材調達環境をデータドリブン経営により変革し、生産性を向上させることで、顧客が本業に集中できる「時間価値」を提供することを存在意義としています。このビジネスモデルを世界規模に応用していく方針です。

(2) 企業文化


同社は、新しいアイデアや技術を絶えず生み出せる組織を目指し、「他者への敬意」と「挑戦」の風土を重視しています。多様性を経営資産と捉えるダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を推進し、「お互いを認め合う文化(MonotaRO Recognizes Each Other's differences)」を強みとしています。

(3) 経営計画・目標


企業規模の拡大と利益の極大化、株主価値の拡大を目指し、「売上高」「売上高営業利益率」「株主資本当期純利益率(ROE)」を重視する経営指標として設定しています。具体的な数値目標として以下を掲げています。

* 中長期的な売上成長率:15%超
* 株主資本当期純利益率(ROE):30%以上

(4) 成長戦略と重点施策


短期的ではなく継続的に好業績を得るため、一物一価の市場を目指してシンプルな流通体制への変革を加速させます。国内外での事業拡大に向けて、以下の重点施策に投資を行っていく方針です。

* 新規顧客の獲得と顧客生涯価値の向上
* エンタープライズ事業の戦略的拡大とサービス向上
* 顧客需要充足と利益率の双方を意識した商品マネジメント
* より精度の高いデータベースマーケティングと商品検索性の提供
* 成長の基盤となる物流インフラの強化

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


中長期的な企業価値向上には従業員一人ひとりの貢献が重要であると考え、公正で透明性のある人事評価・報酬制度を運用しています。仕事力(自走する力、プロジェクト牽引力など)を日々の業務と研修で高める体系的な人材育成を行い、対話を通じて個人の成長を支援する「1on1」や「成長計画制度」などの環境整備も進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 37.0歳 5.5年 7,193,389円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 20.9%
男性育児休業取得率 83.0%
男女賃金差異(全労働者) 58.0%
男女賃金差異(正規雇用) 72.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 93.6%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員割合(60.5%)、女性リーダー割合(24.7%)、1人あたり平均研修時間(5.7時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 価格競争の激化


インターネットを通じた商品の販売は、価格比較サイトの発展などにより事業者間の価格比較が容易となるため、価格競争が激化しやすい傾向にあります。同社の取扱商品は他社との競合が少ないものの、他社がインターネット上で販売する割合が増加した場合、価格競争に陥り収益力が低下する可能性があります。

(2) 新たなビジネスモデルによる脅威


技術発展により、他社の商品価格や需給バランスを見ながら柔軟に価格を変化させるプライシング機能を持つビジネスモデルが登場した場合、同社にとって脅威となります。顧客別に個別価格を設定しない同社のモデルでは価格設定で後手に回り、競争力が相対的に低下するおそれがあります。

(3) 既存および新規事業者との競合


工場用間接資材の販売や通信販売事業の分野には多数の競合会社が存在します。既存の通信販売事業者が間接資材に領域を広げたり、既存の間接資材販売事業者が通信販売に拡大したりするなど、他に優れたビジネスモデルを持つ競合会社が現れた場合、競争激化により業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 登録会員数の獲得状況


同社の売上高は登録会員数や利用率、平均購入額に依存しており、事業成長は新規顧客の獲得や既存顧客への追加販売等のマーケティング施策にかかっています。社会情勢による顧客ニーズの変化や競合の激化、施策の効果低下などにより会員数の伸びが鈍化した場合、売上高の増加ペースが低下するリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。