全保連 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

全保連 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する全保連は、家賃債務保証サービスを主力事業として展開しています。協定会社ネットワークを活用した事業基盤を強みに、直近の業績では売上高、利益ともに過去最高を更新する堅調な増収増益を達成しており、三菱UFJフィナンシャル・グループの一員としてさらなる成長を目指しています。


※本記事は、全保連株式会社の有価証券報告書(第25期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 全保連ってどんな会社?


全保連は、賃貸物件における賃借人の家賃等の支払いを賃貸人に保証する家賃債務保証サービスを提供する企業です。

(1) 会社概要


同社は2001年11月に家賃債務保証業を主目的に沖縄県那覇市で設立されました。2010年に東京本社を開設して2本社制へ移行し、2015年に「概算払方式」の提供を開始しました。2020年には民法改正に対応して連帯保証人を不要とするサービスを開始し、2023年10月に東証スタンダード市場への上場を果たしています。

現在、同社の単体従業員数は575名です。筆頭株主はクレジットカード事業等を行う三菱UFJニコスで、第2位は創業者の迫幸治氏、第3位は代表取締役会長兼社長執行役員の茨木英彦氏です。2025年4月に三菱UFJニコスの公開買付けにより、三菱UFJフィナンシャル・グループの連結子会社となりました。

氏名 持株比率
三菱UFJニコス 51.13%
迫 幸治 11.08%
茨木 英彦 4.72%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役会長兼社長執行役員は茨木英彦氏が務めており、社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
茨木 英彦 代表取締役会長兼社長執行役員 1981年三和銀行入行。モルガン・スタンレー証券エグゼクティブ・ディレクターなどを経て、2010年同社顧問。2026年より現職。
村上 宏太郎 取締役専務執行役員オペレーション本部長 1988年三菱銀行入行。三菱UFJニコス取締役兼経営企画本部長などを経て、2025年より現職。
林 憲司 取締役専務執行役員コーポレート本部長兼審査本部長兼経営企画部長 1992年三菱銀行入行。融資部副部長などを経て、2022年同社クレジット本部審査部長。2026年より現職。
生島 志朗 取締役常務執行役員コーポレート本部本部長兼コーポレートサービス部長兼経営企画部部長 1986年三和銀行入行。日本電産秘書室長兼広報宣伝部長などを経て、2023年同社経営企画部部長。2026年より現職。
村上 時弘 取締役 1991年三和銀行入行。三菱UFJニコス常務執行役員営業第2本部副本部長などを経て、2025年より現職。


社外取締役は、平野 義之(元三菱UFJ信託銀行専務取締役)、松本 拓生(恵比寿松本法律事務所代表弁護士)、菅 隆志(元沖縄セルラー電話代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社は、「家賃債務保証事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

保証料・手数料収入モデル


同社は、賃貸物件における賃借人の家賃支払いを賃貸人に保証する家賃債務保証サービスを提供しています。不動産管理会社や仲介会社などの協定会社とネットワークを構築し、家賃の支払いが滞った際に代位弁済を行うことで、連帯保証人の確保が困難な社会的課題を解決し、賃貸マーケットの円滑な発展を支援しています。

主な収益源は、賃借人から受け取る初回保証委託料、継続保証委託料、月額保証委託料などの保証料収入と、保証事務や収納代行にかかる手数料収入です。家賃の代位弁済分は後日賃借人へ求償し回収するモデルとなっており、これら一連の事業運営は全保連単体で行われています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


同社の業績は過去4期にわたり着実な成長を続けています。売上高は安定して拡大しており、直近の期では262億円に達しました。利益面でも収益力の向上が顕著に表れており、経常利益は毎期増加を続け、利益率も7.7%から12.1%へと大きく改善しています。これにより最終的な当期利益も順調に伸長しています。

項目 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 238億円 245億円 257億円 262億円
経常利益 18億円 22億円 25億円 32億円
利益率(%) 7.7% 8.9% 9.9% 12.1%
当期利益 8億円 15億円 16億円 17億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益がともに大きく伸長しています。AI審査の活用による信用コストの低減などが奏功し、売上総利益率と営業利益率の双方が前年度から改善しており、高収益化が進んでいることが確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 257億円 262億円
売上総利益 172億円 182億円
売上総利益率(%) 66.9% 69.5%
営業利益 25億円 32億円
営業利益率(%) 9.9% 12.1%


販売費及び一般管理費のうち、支払手数料が49億円(構成比32%)、給料手当が33億円(同22%)を占めています。また、売上原価については、事務手数料が33億円(構成比41%)、貸倒引当金繰入額が29億円(同36%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は家賃債務保証事業の単一セグメントですが、収益区分ごとの動向を見ると、契約単価や累積保証契約件数の増加に伴い保証料収入が堅調に推移しています。また、保証事務手数料や収納代行手数料などの手数料収入も順調に増加しており、収益基盤の多角化が進んでいます。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
保証料収入 213億円 217億円
手数料収入 43億円 45億円
連結(合計) 257億円 262億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状況にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 31億円 51億円
投資CF -7億円 -11億円
財務CF -3億円 -19億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は22.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は32.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「QUALITY FOR THE FUTURE 新たな価値へ、新たな未来へ」という企業理念を掲げています。この理念のもと、豊かな生活の基盤である快適な住まいと安定した暮らしを支える家賃債務保証事業を通じて社会へ貢献し、先進性を追求して変革する未来を乗り越え続けるリーディングカンパニーであり続けることを使命としています。

(2) 企業文化


同社は理念実現のための行動規範として、社会規範に則り誠実に行動する「誠実・信頼」、持続可能な未来標準となる価値の創造を目指す「品質・価値」、変化を恐れず進化を遂げる好機ととらえる「変化・進化」、これまでの価値観にとらわれず業界をリードする「挑戦・成長」、互いを尊重し一つのチームとして高い目標に向かう「チームワーク」を定めています。

(3) 経営計画・目標


同社は長期経営計画(2027年3月期から2030年3月期)において、収益力の向上と財務内容の改善を両立させた健全経営を推進し、企業価値の向上を図る目標を掲げています。

* 売上高:360億円
* 営業利益:63億円
* 時価総額:669億円
* ROE:27.2%
* PBR:4.2倍

(4) 成長戦略と重点施策


同社は三菱UFJフィナンシャル・グループの圧倒的な信用力を背景に、AI審査等を活用した審査および回収の高度化により信用コストの低減に努めています。また、家賃のカード払いが可能な新商品の投入による戦略や、地方銀行との協働によるシェア拡大、高齢者市場での提携戦略などを推進し、デジタルサービスを通じたDX戦略により顧客接点の拡大を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、持続的成長の実現には人材の確保と育成が不可欠であると考え、継続的な採用活動と公正な人事評価、人材育成体系の充実を進めています。マネジメント研修等の階層別研修をはじめ、デジタルトランスフォーメーション研修等を充実させて社員が自ら成長できる体制を整えるとともに、有給休暇の取得推奨など働きやすい環境の整備にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.1歳 10.8年 6,594,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.9%
男性育児休業取得率 80.0%
男女賃金差異(全従業員) 66.5%
男女賃金差異(正規社員) 66.7%
男女賃金差異(非正規社員) 74.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の育児休業取得率(100.0%)、離職率(8.0%)、女性管理職比率目標(15.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) システム障害による影響


同社は家賃債務保証契約の管理など多くの業務にシステムを活用しています。ソフトウェアの不具合や不正アクセス等の外的要因によりシステムの安定稼働が困難となった場合、事業活動に支障が生じ、業績に多大な影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 信用リスクと引当金の増加


経済状況や雇用環境の悪化により賃借人の支払能力が低下した場合、代位弁済額の増加や求償債権の回収不能が生じるリスクがあります。これに伴い貸倒引当金や保証履行損失引当金の追加計上が必要となり、財務状態に影響を与える可能性があります。

(3) 個人情報の漏洩リスク


同社は契約者の個人情報を含む多くの機密情報を保有しています。万が一情報漏洩が発生した場合、損害賠償債務の発生や同社の信用に対する重大な懸念が生じ、事業運営や業績に多大な影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。