全保連 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

全保連 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。主な事業は家賃債務保証サービスの提供。2025年3月期の業績は、契約件数の増加やDX推進による効率化が寄与し、売上高が前期比4.7%増の257億円、経常利益が同16.0%増の25億円と増収増益を達成しました。2025年4月より三菱UFJフィナンシャル・グループの一員となり、信用力と基盤を活かした成長を目指しています。


※本記事は、全保連株式会社 の有価証券報告書(第24期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 全保連ってどんな会社?


家賃債務保証業界のリーディングカンパニーとして、沖縄と東京の2本社体制で全国展開する企業です。

(1) 会社概要


2001年に沖縄県那覇市で設立され、家賃債務保証業を開始しました。2010年には東京本社を開設し、2本社制へ移行しています。2020年の民法改正に対応し、連帯保証人不要サービスの提供を強化しました。2023年に東証スタンダード市場へ上場し、2025年4月には三菱UFJニコスによる公開買付けを経て同グループ入りしました。

2025年3月末時点の従業員数は単体で595名です。同時点での筆頭株主は投資事業組合、第2位は創業者の迫幸治氏、第3位も投資事業組合となっています。なお、2025年4月の公開買付け成立により、三菱UFJニコスが親会社となっています。

氏名 持株比率
AZ-Star3号投資事業有限責任組合 25.17%
迫 幸治 11.12%
インベストメントZ1号投資事業有限責任組合 8.74%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名、計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役会長には迫幸治氏、代表取締役社長執行役員には茨木英彦氏が就任しています。社外取締役比率は27.3%です。

氏名 役職 主な経歴
迫 幸治 代表取締役会長 2001年同社設立とともに代表取締役社長執行役員に就任。2025年4月より現職。
茨木 英彦 代表取締役社長執行役員 1981年三和銀行入行。モルガン・スタンレー証券を経て2010年同社入社。2025年4月より現職。
村上 宏太郎 取締役専務執行役員オペレーション本部長 1988年三菱銀行入行。三菱UFJニコス専務執行役員などを経て、2025年6月より現職。
林 憲司 取締役専務執行役員コーポレート本部長 兼 経営企画部長 1992年三菱銀行入行。2022年同社入社。クレジット本部審査部長等を経て2025年6月より現職。
村上 時弘 取締役 1991年三和銀行入行。三菱UFJニコス常務執行役員等を経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、菅隆志(元沖縄セルラー電話代表取締役社長)、平野義之(元三菱UFJ信託銀行専務取締役)、松本拓生(弁護士・元TMI総合法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社は、「家賃債務保証事業」および「その他」事業を展開しています。

家賃債務保証事業


同社は、賃貸物件における賃借人の家賃等の支払いを賃貸人に保証するサービスを提供しています。近年の家族関係の希薄化や民法改正等の社会的背景を受け、連帯保証人の確保が困難な賃借人に代わって家賃債務を保証し、賃貸マーケットの円滑な発展を支援しています。主な顧客は、賃貸住宅の入居者(賃借人)および家主(賃貸人)です。

収益は、賃貸借契約時に賃借人から受け取る「初回保証委託料」や、契約更新時等の「年間保証委託料」、毎月の「月額保証委託料」などが主な柱です。また、これらに付随する事務手数料や収納代行手数料も収益源となります。本事業の運営は全保連が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は着実な増加傾向にあり、直近5期間で見ると事業規模は順調に拡大しています。利益面では、一時的な赤字期間を経てV字回復を果たしており、直近では高い利益率を維持しながら増益基調を続けています。特に当期は売上高、経常利益ともに過去最高を更新するなど、収益力の向上が顕著です。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 109億円 217億円 238億円 245億円 257億円
経常利益 -64億円 16億円 18億円 22億円 25億円
利益率(%) -58.7% 7.5% 7.7% 8.9% 9.9%
当期利益(親会社所有者帰属) -72億円 14億円 8億円 15億円 16億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も安定して推移しています。営業利益および営業利益率は前期から上昇しており、収益性が高まっています。コストコントロールや業務効率化の効果が表れており、本業の儲けを示す営業利益の伸びが売上高の伸びを上回る結果となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 245億円 257億円
売上総利益 173億円 172億円
売上総利益率(%) 70.7% 66.9%
営業利益 22億円 25億円
営業利益率(%) 9.1% 9.9%


販売費及び一般管理費のうち、支払手数料が47億円(構成比31.9%)、給料手当が32億円(同21.9%)を占めています。売上原価では、事務手数料が31億円(構成比36.9%)、貸倒引当金繰入額が31億円(同36.0%)となっています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントですが、契約件数・単価の増加やDX推進による業務効率化が進み、増収増益となりました。AI審査の活用による審査・回収の高度化が奏功し、代位弁済率の低下など信用コストの抑制にも繋がっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
連結(合計) 245億円 257億円 22億円 25億円 9.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

全保連は、家賃債務保証事業を単一セグメントとして展開しており、そのキャッシュ・フローの状況は、事業活動、投資活動、財務活動の各項目で構成されています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税引前当期純利益や減価償却費の計上により、前事業年度から増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の預入や無形固定資産の取得による支出が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、株式発行による収入があったものの、配当金の支払い等により支出となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 33億円 31億円
投資CF -6億円 -7億円
財務CF -12億円 -3億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「QUALITY FOR THE FUTURE 新たな価値へ、新たな未来へ」を企業理念として掲げています。先進性を追求し、変革する未来を乗り越え続けるリーディングカンパニーであり続けることを目指しています。快適な住まいと安定した暮らしを支える事業を通じて社会への貢献を果たしていく方針です。

(2) 企業文化


企業理念を実現するための行動規範として、「誠実・信頼」「品質・価値」「変化・進化」「挑戦・成長」「チームワーク」の5つを定めています。社会規範に則り誠実に行動することや、変化を恐れずスピーディーに行動すること、チームとして高い目標に向かうことなどを重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


新たに策定した長期経営計画(2026年3月期-2030年3月期)において、2030年3月期の数値目標として以下の指標を掲げています。MUFGグループ入りによる信用力向上を背景に、持続的な企業価値向上を目指します。
* 売上高:345億円
* 営業利益:53億円
* ROE:25%

(4) 成長戦略と重点施策


MUFGグループとの連携による新商品開発や販路拡大を成長の柱としています。地方銀行との提携によるシェア拡大、電力データを活用した高齢者向け見守りサービスの展開、事業用保証や学費保証といった新市場の開拓に注力します。また、AI審査の高度化による信用コスト低減や、データ・デジタルを活用したDX戦略も推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的成長のため、人材の多様性を確保しつつ、能力や目標達成度に応じた公平公正な評価を行う方針です。女性管理職比率の向上(2030年3月末までに15%)や外国人技術者の採用など、ダイバーシティ推進に注力しています。また、教育研修や社内環境整備を通じて、社員が自らチャレンジし成長できる体制づくりを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.5歳 10.2年 6,241,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.5%
男性育児休業取得率 58.8%
男女賃金差異(全労働者) 67.6%
男女賃金差異(正規雇用) 68.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 70.6%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) システムリスク


家賃債務保証契約の管理等にシステムを活用しており、障害や不正アクセス等により安定稼働が困難となった場合、事業活動に支障が生じ、財政状態及び経営成績に多大な影響を与える可能性があります。

(2) 人事・労務リスク


事業拡大に必要な人材の確保が計画通り進まなかった場合や、既存人材の流出が生じた場合、事業拡大が制約を受け、財政状態及び経営成績に相応の影響を与える可能性があります。

(3) 市場動向の影響


国内人口減少や経済状況の悪化に伴い賃貸不動産市場が低迷した場合、家賃債務保証事業に悪影響を及ぼす可能性があります。ただし、単身世帯の増加等は追い風要因と認識しています。

(4) 競合の激化


家賃債務保証業には業法規制がなく参入障壁が低いため、他業種からの新規参入やクレジットカード会社の台頭により競争が激化し、シェアを失う可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。