※本記事は、Jトラストの有価証券報告書(第50期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月24日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はIFRSです。
1. Jトラストってどんな会社?
国内外で銀行業、債権回収、信用保証などの金融サービスと不動産事業を多角的に展開する企業グループです。
■(1) 会社概要
1977年に大阪市で貸金業として創業し、1998年に株式上場しました。2009年にJトラストへ商号変更後、2010年に事業を子会社へ承継しホールディング体制へ移行しました。近年は2014年のインドネシアや2015年の韓国での銀行買収など、アジア圏を中心としたグローバルな金融事業の拡大を積極的に推進しています。
現在の従業員数は連結3,100名、単体47名です。筆頭株主は代表取締役社長の藤澤信義氏が100%出資するNLHDで、第3位にも同氏が個人で名を連ねており、上位株主に経営トップと関連法人が入っています。第2位は韓国の金融機関が所有しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| NLHD | 30.43% |
| KOREA SECURITIES DEPOSITORY-SHINHAN SECURITIES | 6.07% |
| 藤澤信義 | 4.71% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性15名、女性0名の計15名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は藤澤信義氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 藤澤信義 | 取締役社長(代表取締役)最高執行役員 | 2008年同社代表取締役会長。2011年代表取締役社長。グループ各社の役員を歴任し、2020年7月に代表取締役会長CEO、同年10月より現職。 |
| 千葉信育 | 取締役副社長(代表取締役)執行役員 | 2008年同社取締役副社長、2010年代表取締役社長を歴任。韓国および東南アジアの金融事業を担当し、グループ海外法人の理事等を兼任。2020年3月より現職。 |
| 熱田龍一 | 専務取締役執行役員 | 1987年日本興業銀行入行。バンク・オブ・アメリカ等を経て2015年同社入社。財務部長を歴任後、2020年日本保証代表取締役社長。2025年6月より現職。 |
| 足立伸 | 常務取締役執行役員 | 1980年大蔵省入省。財務省関連の要職やジャスダック証券取引所執行役等を経て、2013年同社顧問。東南アジア事業や海外法務を担当し、2024年3月より現職。 |
| 小田克幸 | 取締役執行役員経理部長 | 光洋精工、あずさ監査法人等を経て2008年スタンダードチャータード銀行入行。2015年同社入社。経理部長を歴任し、2024年3月より現職。 |
| 畑谷剛 | 取締役執行役員経営戦略部長 | 1989年西京銀行入行。同行で市場金融部長などを歴任。2021年に同社社外取締役を務め、西京銀行常務取締役等を経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、名取俊也(元東京地方検察庁刑事部副部長・検事)、福田進(元国税庁長官)、干場謹二(元近畿管区警察局長)、山下禎治(西京銀行取締役監査等委員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本金融事業」「韓国金融事業」「東南アジア金融事業」「不動産事業」「投資事業」および「その他」事業を展開しています。
■日本金融事業
国内において、中小企業や個人向けの信用保証、ノンバンク等からの債権回収、クレジットカードや割賦販売などのクレジット・信販業務、証券業務を展開しています。
信用保証事業では金融機関から保証料を、債権回収事業では債権回収による収益を受け取ります。運営は日本保証、パルティール債権回収、Jトラストグローバル証券、Nexus Cardなどが担っています。
■韓国金融事業
韓国市場において、現地の中小企業や個人事業主、個人顧客に対して預金や貸出などの貯蓄銀行業務を提供しています。
貸出金に対する利息収入を主な収益源とし、調達金利とのスプレッド等で利益を確保するモデルです。事業の運営は、現地法人のJT貯蓄銀行およびJT親愛貯蓄銀行の2社が行っています。
■東南アジア金融事業
インドネシアおよびカンボジアの現地顧客向けに、預金・貸出などの銀行業務と貸付債権の回収業務を提供しています。
銀行業務における貸出金利息や金融業務手数料、および買取債権からの回収益を主な収益源としています。運営はBank JTrust Indonesia、J Trust Royal Bankのほか、現地の債権回収子会社が担っています。
■不動産事業
国内外で分譲マンションや戸建などの不動産開発、販売、仲介、賃貸、管理、および不動産特定共同事業法に基づくクラウドファンディング事業を展開しています。
販売用不動産の売却収益や、保有不動産からの賃料収入などを収益源としています。主な運営主体は、Jグランド、グローベルス、ライブレントなどのグループ企業です。
■投資事業
日本国内外における企業や事業への投資業務を展開し、M&Aや事業拡大のための資金投下を行っています。
投資先からの収益確保や、保有する投資資金の回収を通じて利益を獲得するモデルです。シンガポールに拠点を置くJTRUST ASIA PTE.LTD.などが中心となって事業を運営しています。
■その他
同社グループの事業基盤を支えるため、コンピュータの運用・管理業務やソフトウェアの受託開発などのシステム事業を展開しています。
グループ各社の業務効率化に向けたシステムインフラの提供や運用指導による受託収益等を計上しています。運営はJ Syncが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
営業収益はM&Aや事業拡大の効果により拡大基調にありましたが、直近は為替変動等の影響で微減となりました。一方、利益面では、韓国や東南アジアでの利息費用抑制や貸倒費用の管理強化が奏功し、税引前利益や当期利益は前期比で大きく回復しています。事業のポートフォリオ見直しと収益構造の改善が進み、安定的な利益創出に向けた転換期にあります。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 423億円 | 820億円 | 1143億円 | 1274億円 | 1243億円 |
| 税引前利益 | 59億円 | 172億円 | 98億円 | 86億円 | 116億円 |
| 利益率(%) | 13.9% | 21.0% | 8.5% | 6.8% | 9.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 11億円 | 126億円 | 163億円 | 60億円 | 79億円 |
■(2) 損益計算書
直近の業績では、営業収益がわずかに減少した一方で、営業利益は前期比で70%以上の大幅な増益を達成しました。各国の金利政策変動に伴う利息費用の減少や、無形資産の償却終了などによる経費削減効果が表れており、利益率も大きく改善しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1274億円 | 1243億円 |
| 営業利益 | 64億円 | 109億円 |
| 営業利益率(%) | 5.0% | 8.8% |
販売費及び一般管理費は369億円で、そのうち「給料及び手当」が123億円(構成比33%)、「支払手数料」が81億円(同22%)、「減価償却費及び償却費」が38億円(同10%)を占めています。営業費用は793億円で、支払利息などが含まれています。
■(3) セグメント収益
日本金融事業は信用保証や債権回収が好調で増収増益を牽引しました。韓国および東南アジアの金融事業は為替影響等で減収となりましたが、韓国では調達金利の低下により大幅な増益を達成しました。投資事業では訴訟に係る受取損害賠償金などの計上で黒字化し、全体業績に貢献しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益(2025年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本金融事業 | 166億円 | 190億円 | 70億円 | 79億円 | 41.5% |
| 韓国金融事業 | 455億円 | 435億円 | 10億円 | 24億円 | 5.6% |
| 東南アジア金融事業 | 477億円 | 458億円 | 15億円 | 10億円 | 2.3% |
| 不動産事業 | 174億円 | 157億円 | 4億円 | 6億円 | 3.8% |
| 投資事業 | 0.1億円 | 2億円 | -16億円 | 8億円 | 417.9% |
| 連結(合計) | 1274億円 | 1243億円 | 64億円 | 109億円 | 8.8% |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「既成概念にとらわれないファイナンシャルサービスを提供する企業体を目指す」というビジョンを掲げています。「お客様のため、株主様のため、私たち自身のため、いかなるときも迅速に、誠実にチャレンジし続け、皆様とともに世界の未来を創造します」という企業理念のもと、地域と共存共栄で発展する総合金融サービスを目指しています。
■(2) 企業文化
行動理念として『J・T・R・U・S・T』を制定しています。「Justice(公正な企業経営)」「Teamwork(個性を活かす組織)」「Revolution(革新志向で価値創造)」「Uniqueness(独自性を大切に)」「Safety(安心への努め)」「Thankfulness(感謝の気持ち)」という6つの価値観を重視し、お客様第一や高い倫理観をもった迅速な課題解決を風土として根付かせています。
■(3) 経営計画・目標
具体的な経営目標への言及として、証券業務において預り資産「1兆円プロジェクト」を軸とするKPI管理の高度化を推進しています。また、次期TOPIX構成銘柄の選定基準をクリアすることを目標に掲げ、資本効率の向上や自己株式の取得・消却を通じた株主価値の最大化に注力しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
景気動向に左右されない銀行業や債権買取回収事業を中核に、聖域なき事業ポートフォリオの見直しと収益構造の改善を進めています。日本国内ではアパートローン保証や富裕層向けウェルスマネジメントを強化し、海外ではインドネシア・韓国の銀行業における優良貸付の拡大や調達コストの抑制により持続的な利益成長を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人の個性を活かした組織を作る」という行動理念のもと、国籍や性別、年齢にとらわれない多様な人材の確保と育成に取り組んでいます。定年再雇用制度を通じた熟練人材のノウハウ継承や、階層別・職能別の教育研修、自己啓発支援を実施するほか、育児・介護休業の利用推進や時間外労働の削減により、心身ともに健康で長期的なキャリア形成が可能な職場環境の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 45.8歳 | 4.1年 | 9,916,660円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率(パルティール債権回収) | 4.2% |
| 女性管理職比率(Jトラストグローバル証券) | 17.6% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | - |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | - |
※男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異については、公表義務の対象ではないため有報には記載がありません。提出会社の各種指標についても同様の理由により記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職に占める女性労働者の割合(21.7%)、女性社員比率(31.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 各種法令や規制変更への対応
国内外の銀行業務、貸金業法、債権管理回収業、不動産関連法制など、幅広い法的規制を受けています。金融当局による資本規制の強化や上限金利の引き下げなど、各種法令の解釈変更や新設が行われた場合、新たな規制への対応コスト増加や業務の一部停止処分等の制裁を受ける可能性があり、業績に影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) 信用リスクと資金調達環境の悪化
国内外の経済・金融情勢の変化により、貸付先や保証先の信用状況が悪化し、貸倒引当金が増加するリスクがあります。また、事業資金の多くを金融機関からの借入で調達しているため、金利上昇等による調達コストの増加や、返済期日の延長が困難となるなど資金繰りが悪化した場合、事業計画の変更を余儀なくされる可能性があります。
■(3) 異業種参入等による競争激化
金融業界再編に伴う合併や異業種からの新規参入、インターネット証券を中心とした手数料の価格競争などが激化しています。付加価値の高いサービスの提供や独自のプライベートバンキングの展開により差別化を図っていますが、競争優位性を確保できず顧客獲得が想定通りに進まない場合、収益機会が減少しグループ全体の業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) システム障害や情報セキュリティ問題
証券業務などにおいて、インターネット取引やデータ処理を支える基幹システムに依存しています。自然災害、サイバー攻撃、テロ、人為的過誤によってシステムがダウンした場合や、不正アクセス等により顧客の個人情報が漏洩した場合、損害賠償責任の発生や社会的信用の失墜を招き、業務運営に重大な支障をきたすリスクがあります。



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