※本記事は、東海汽船株式会社の有価証券報告書(第201期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年5月15日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東海汽船ってどんな会社?
東京諸島と本土を結ぶ定期航路や東京湾内周遊船を運航し、島しょ地域の生活や観光を支える企業です。
■(1) 会社概要
同社は1889年に東京湾汽船会社として設立され、1942年に現在の東海汽船へと社名を変更しました。1949年に東京証券取引所へ上場し、2002年には東京と大島などを結ぶ航路に高速船ジェットフォイルを就航させて所要時間を大幅に短縮しています。2020年には3代目となる貨客船さるびあ丸が就航しました。
現在の従業員数はグループ全体で377名、単体で195名です。大株主の構成をみると、筆頭株主はホテル事業等で連携関係にある藤田観光で、第2位はDOWAホールディングス、第3位は港湾関連サービスで連携を図る東京汽船となっています。各社とは営業拡大や安全運航において関係の維持と強化を図っています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 藤田観光 | 18.04% |
| DOWAホールディングス | 6.83% |
| 東京汽船 | 3.45% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は山﨑潤一氏が務めており、社外取締役比率は40.0%(10名中4名)となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山﨑潤一 | 代表取締役社長 営業本部長 | 2004年同社取締役総務部長、伊豆諸島開発代表取締役社長などを経て2009年より現職。 |
| 倉﨑嘉典 | 常務取締役執行役員 管理本部長 | 2015年同社入社、総務部長、内部統制部長などを経て2025年より現職。 |
| 竹崎啓介 | 取締役執行役員 企画本部長 | 藤田観光経営企画担当責任者や人事担当責任者、同社常勤社外監査役などを経て2025年より現職。 |
社外取締役は、若林英一氏(DOWAホールディングス執行役員)、櫻井和秀氏(京浜急行電鉄生活事業創造本部長)、沼井秀男氏(東京汽船取締役常務執行役員)、武市玲子氏(はとバス代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「海運関連事業」「商事料飲事業」「ホテル事業」「旅客自動車運送事業」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 海運関連事業
東京諸島と本土間を結ぶ旅客および貨物の定期航路事業を中心に、東京湾内の周遊事業や海運代理店業、船舶修理業などを展開しています。離島の生活を支える物資輸送から、快適性を提供するリゾート需要の取り込みまで、幅広い顧客に対して海上輸送サービスを提供しています。
収益は主に乗客からの運賃や荷主からの貨物運賃などによって構成されています。事業の運営は同社が主体となり、貨物運送を行う伊豆七島海運、小笠原航路を担う小笠原海運のほか、海運代理店業や船舶修理を担う東海技術サービスなど複数の子会社と連携してサービスを提供しています。
■(2) 商事料飲事業
船内や船客待合所内での料飲販売、食堂の経営を行うほか、東京諸島での生活必需品や建設資材の供給、島の特産品やオリジナルグッズの販売を行っています。海運事業に付帯するサービスとして乗船客の利便性を高めつつ、島しょ地域のインフラと生活を支えています。
収益は乗船客からの飲食代金や自動販売機の売上、島しょ向けセメントや建築資材などの販売代金から得ています。海運事業に続く収益の柱としてECサイトでの販売等も強化しており、これらの事業の運営は同社が行っています。
■(3) ホテル事業
伊豆大島において、島の自然資源や源泉掛け流し温泉、地元の食材を活かした料理などを提供するホテル経営を行っています。観光客や団体客に対して宿泊サービスを提供し、海運関連事業の旅客部門とも連携した商品開発を通じて集客力の向上を図っています。
収益は宿泊客からの宿泊代金や宴会、レストランでの飲食代金などによって構成されています。事業の運営は同社の子会社である東汽観光が担い、大島温泉ホテルなどの施設を通じてサービスを提供しています。
■(4) 旅客自動車運送事業
伊豆大島において路線バスや貸切バスの運行サービスを提供するほか、自動車整備業を展開しています。地域住民の生活の足として、また観光客の島内移動手段として、安全運行を基本とした公共交通サービスを提供しています。
収益は路線バスの乗客からの運賃や貸切バスの利用料金、自動車整備の役務提供に対する対価から得ています。事業の運営は大島におけるバス運行を大島旅客自動車が担い、自動車整備業を東海自動車サービスが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
同社の売上高は新型コロナウイルス感染症の影響から徐々に回復し増加傾向にありましたが、直近の2025年12月期は乗船客数などの減少により減収となりました。経常利益は燃料油価格の上昇や気象海象リスクの影響を受けやすく増減を繰り返しており、当期は減便等による費用改善を進めたものの前年を下回りました。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 108億円 | 139億円 | 132億円 | 146億円 | 143億円 |
| 経常利益 | 2億円 | 3億円 | -6億円 | 6億円 | 4億円 |
| 利益率(%) | 2.2% | 2.1% | -4.4% | 3.8% | 3.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -2億円 | 2億円 | -6億円 | 3億円 | 4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前年比で減少したものの、売上総利益はほぼ横ばいを維持し、売上総利益率はわずかに改善しました。一方で、販売費及び一般管理費が増加したことなどにより、営業利益および営業利益率は前年を下回る結果となりました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 146億円 | 143億円 |
| 売上総利益 | 20億円 | 20億円 |
| 売上総利益率(%) | 13.8% | 14.0% |
| 営業利益 | 6億円 | 5億円 |
| 営業利益率(%) | 4.0% | 3.7% |
販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び従業員給与が8億円(構成比53%)、退職給付費用が0.3億円(同2%)を占めています。売上原価の内訳については具体的な記載がありません。
■(3) セグメント収益
主力の海運関連事業は、運賃改定の効果があったものの乗船客数および貨物取扱量の減少により減収となりました。商事料飲事業はセメント等の販売が好調で増収となり、ホテル事業は宿泊稼働率の改善等により増収、旅客自動車運送事業も貸切バスの利用増などにより増収を確保しました。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 海運関連事業 | 128億円 | 125億円 |
| 商事料飲事業 | 12億円 | 12億円 |
| ホテル事業 | 3億円 | 3億円 |
| 旅客自動車運送事業 | 3億円 | 3億円 |
| 連結(合計) | 146億円 | 143億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は25.4%で市場平均を下回っています。営業CFはプラス、投資CFおよび財務CFはマイナスとなっており、営業活動で得た資金を用いて設備投資を行い、同時に借入金の返済を進める健全型のキャッシュ・フロー状況を示しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 22億円 | 7億円 |
| 投資CF | -6億円 | -2億円 |
| 財務CF | -9億円 | -17億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、東京諸島と本土を結ぶ旅客定期航路において、公共的性格を有する離島・生活航路としての側面と、快適性を提供するリゾート航路としての側面を有しています。貨物航路においても離島の生活物資を安全かつ確実に輸送する責務を担っており、これらの使命を果たすことを通じて地域社会に貢献することを経営の基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は海運関連事業を基軸としながら、グループ間の連携をより一層強めることを重視しています。安全の徹底を最優先とし、「安全運航」と「良質のサービスの提供」を行う総合力の高い社会貢献企業を目指す文化が根付いています。全社一丸となって持続可能な経営体制の構築に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は一般的な経営指標の向上のみに専念するのではなく、不採算航路であっても公共性の観点から航路維持を図る使命を重視しています。長期的な戦略として、コストの弾力化や固定費の圧縮等を通じて「収入の変動に左右されないローコストの経営体質を作る」ことを方針としています。また、2026年のスローガンとして「Building Trust2026」を掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
環境の変化にしなやかに対応するため、新たな商品開発や島への誘客を展望したECサイト事業の本格展開など、既存の枠にとらわれない柔軟な発想での営業活動を強化します。商事料飲事業では自動販売機ビジネスの拡大等を推進し「第三の収益の柱」への成長を目指すほか、ホテル事業では地域の魅力を活かした商品開発を行い、収益基盤の強化に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、企業価値の向上を図るためには人的資本への投資が重要であると認識しています。従業員の能力向上のために資格取得奨励制度の整備や定期的な社内研修を実施しており、働きやすい職場環境の整備を通じて、性別や年齢等を問わず多様な人材の活用に努める方針を掲げています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 42.5歳 | 15.7年 | 8,748,246円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本稿の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 利益の下期偏重と離島航路維持の負担
同社の旅客部門において乗船客が夏季の多客期に集中するため、利益が下期に偏る傾向にあります。また、不採算航路でありながら公共性の観点から維持を図らざるを得ない航路(離島航路整備法の対象航路)が存在し、事業運営上の負担となるリスクがあります。
■(2) 燃料油価格の変動
船舶燃料油価格の上昇は、同社グループにとって大きなコスト負担となります。燃料油価格変動調整金を設定して損失軽減に努めていますが、価格の大幅な上昇や環境規制(SOx規制)への対応に伴うコスト増が業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 自然災害や気象海象状況の影響
就航航路および使用港湾は地震や噴火の多発地帯にあり、災害発生時には定期航路を維持できない可能性があります。また、台風や低気圧などの気象海象状況の悪化により就航率が低下し、旅客および貨物の輸送に支障をきたして経営成績に悪影響を与えるリスクが存在します。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。