東海汽船 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東海汽船 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東海汽船は東証スタンダード市場に上場し、東京諸島と本土を結ぶ海運事業を主力とする企業です。商事料飲、ホテル、旅客自動車運送事業も展開しています。直近の業績は乗船客数の減少等により減収、営業減益となりましたが、特別修繕引当金の取崩等により最終増益を確保し、公共的使命を果たしつつ収益安定に努めています。


※本記事は、東海汽船株式会社 の有価証券報告書(第201期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東海汽船ってどんな会社?


東海汽船は、東京と伊豆諸島などを結ぶ海運事業を中心に、地域のインフラと観光を支える総合企業です。

(1) 会社概要


1889年に有限責任東京湾汽船会社として設立され、東京湾内や伊豆諸島への定期航路を開始しました。1942年に東海汽船へ商号変更し、1949年に株式を上場しています。その後、大島での旅客自動車運送事業やホテル事業へ進出しました。2002年には高速船ジェットフォイルを就航させています。

現在の従業員数は連結で377名、単体で195名です。筆頭株主は事業会社の藤田観光で、第2位も事業会社のDOWAホールディングスが名を連ねています。その他、同業の東京汽船も大株主となっており、事業上の結びつきや地域振興に向けた協力関係を背景とした資本構成が特徴です。

氏名 持株比率
藤田観光 18.04%
DOWAホールディングス 6.83%
東京汽船 3.45%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10%です。代表取締役社長 営業本部長は山﨑潤一氏が務めています。取締役7名のうち4名が社外取締役であり、社外取締役比率は57%です。

氏名 役職 主な経歴
山﨑潤一 代表取締役社長 営業本部長 同社取締役総務部長、子会社代表取締役等を経て2009年より代表取締役社長。2025年より現職。
倉﨑嘉典 常務取締役執行役員管理本部長 2015年同社入社。総務部長、内部統制部長、執行役員管理本部長等を経て、2025年より現職。
竹崎啓介 取締役執行役員企画本部長 藤田観光にて人事総務本部等の要職を歴任。2022年同社常勤社外監査役を経て、2025年より現職。


社外取締役は、若林英一(DOWAホールディングス執行役員)、櫻井和秀(京浜急行電鉄取締役)、沼井秀男(東京汽船取締役)、武市玲子(はとバス代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「海運関連事業」「商事料飲事業」「ホテル事業」「旅客自動車運送事業」を展開しています。

(1) 海運関連事業


同社グループの中核として、東京諸島と本土を結ぶ旅客・貨物の定期航路事業や東京湾内での周遊事業を行っています。公共的性格を有する離島・生活航路としての機能と、快適性を提供するリゾート航路としての側面を併せ持ち、安全・安心な輸送サービスを提供しています。

旅客および貨物の運賃を主な収益源としています。定期航路の運営は同社が主体となり、小笠原諸島航路は小笠原海運、貨物運送は伊豆七島海運が担うなど、複数のグループ会社が連携して海運代理店業や船舶修理、船内サービス業務を分担し、事業を運営しています。

(2) 商事料飲事業


海運事業に付帯する事業として、船内や船客待合所内での料飲販売や食堂の経営を行っています。また、東京諸島での生活必需品や建設資材、船舶燃料の供給、島の特産品やオリジナルグッズの販売などの商事活動も展開しています。

商品の販売代金や飲食サービスの提供による代金を収益源としており、自動販売機ビジネスやECサイト事業による収益基盤の多角化を進めています。この事業は主に同社が運営を行っており、海運事業に続く第三の収益の柱としての成長を目指しています。

(3) ホテル事業


大島において、島の自然資源や源泉掛け流し温泉、地元の食材を活かした料理などの魅力を前面に打ち出したホテル経営を行っています。観光客やビジネス客に対し、快適な宿泊環境を提供しています。

宿泊料金やレストラン、宴会利用料などを主な収益源としています。平日の需要取り込みや旅客部門との連携による送客強化などにより稼働率の向上を図っています。この事業の運営は、同社の完全子会社である東汽観光が行っています。

(4) 旅客自動車運送事業


大島島内における路線バスや観光客向けの貸切バスの運行を行っています。あわせて、バスの車両整備など自動車整備業も手がけており、島内の重要な交通インフラとして安全運行と良質なサービスの提供に努めています。

旅客からの乗合バス運賃や貸切バスの利用料金、および自動車整備料金を主な収益源としています。路線バスにおいては自治体からの支援も受けています。バスの運行は大島旅客自動車が、自動車整備業は東海自動車サービスがそれぞれ運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の連結業績を見ると、売上高は一時の落ち込みから回復傾向にありますが、直近期は乗船客数の減少等によりやや減収となりました。利益面では燃料費の高騰等により厳しい時期もありましたが、運賃改定の効果や特別利益の計上などにより、直近では最終黒字を確保しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 108億円 139億円 132億円 146億円 143億円
経常利益 2億円 3億円 -6億円 6億円 4億円
利益率(%) 2.2% 2.1% -4.4% 3.8% 3.1%
当期利益(親会社所有者帰属) -1億円 2億円 -6億円 3億円 4億円

(2) 損益計算書


直近の損益状況を見ると、売上高は前期比で微減の143億円となりました。売上総利益は20億円で横ばいを維持しており、効率的な船隊運用や減便等のコスト適正化が寄与しています。営業利益は5億円を確保し、厳しい事業環境の中でも一定の収益力を保っています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 146億円 143億円
売上総利益 20億円 20億円
売上総利益率(%) 13.8% 14.0%
営業利益 6億円 5億円
営業利益率(%) 4.0% 3.7%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び従業員給与が8億円(構成比53%)と最大のウェイトを占めており、退職給付費用が0.3億円(同2%)となっています。人件費などの固定費圧縮を進め、収益体質の強化に努めています。

(3) セグメント収益


主力の海運関連事業は、夏の多客期における減便運航等の影響で減収減益となりました。一方、商事料飲事業はセメント等の取扱いが好調で増収増益となり、ホテル事業や旅客自動車運送事業も単価改善やイベント需要の取り込みにより増収増益を達成しました。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
海運関連事業 128億円 125億円 10億円 9億円 7.0%
商事料飲事業 12億円 12億円 1億円 1億円 9.9%
ホテル事業 3億円 3億円 0.1億円 0.1億円 4.3%
旅客自動車運送事業 3億円 3億円 0.1億円 0.2億円 7.0%
連結(合計) 146億円 143億円 6億円 5億円 3.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況です。安定した本業からのキャッシュ創出を基盤に、財務の健全化を進めています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 22億円 7億円
投資CF -6億円 -2億円
財務CF -9億円 -17億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は25.4%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、東京諸島と本土間を結ぶ公共的性格を有する離島・生活航路としての側面と、快適性を提供するリゾート航路としての側面を持っています。また、貨物航路においても生活物資を安全・確実に輸送する責務を有し、これらの使命を果たすことを通じて地域社会に貢献することを経営の基本方針としています。

(2) 企業文化


安全運航と良質のサービスの提供を基盤とし、全社一丸となって課題に取り組む姿勢を重視しています。毎年のスローガン策定を通じ、お客様、地域社会、株主からの信頼回復と向上を最優先とする価値観を共有しており、法令遵守体制の強化とともに総合力の高い社会貢献企業を目指しています。

(3) 経営計画・目標


長期的な戦略として、コストの弾力化や固定費の圧縮等により、収入の変動に左右されないローコストの経営体質を作ることを目指しています。同社の航路には不採算でありながら維持を図らざるを得ない公共航路も含まれているため、一般的な経営指標の向上のみに専念するのではなく、多角的な視点から収益確保を図る方針です。

(4) 成長戦略と重点施策


既存の営業方法にとらわれない柔軟な発想で営業活動を強化する方針です。旅客部門では自然環境型観光や体験型商品の開発による需要喚起を進め、商事料飲事業ではECサイトの本格展開や新規分野への参入で第三の収益の柱への成長を図ります。また、ホテル・バス事業においても地域資源を活かした商品開発で収益拡大を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、企業価値の向上を図るためには人的資本への投資が重要であると考えています。従業員の能力向上のために資格取得奨励制度の整備や定期的な社内研修を実施しています。また、働きやすい職場環境の整備を通じて、性別や年齢等を問わず多様な人材の活躍を促進し、持続的な成長を支える組織づくりを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 42.5歳 15.7年 8,748,246円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は人材の育成及び社内環境整備方針に関する具体的な指標及び目標は設定していないため、有報には本稿の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 利益の下期偏重に関するリスク


同社グループの主力である旅客部門においては、乗船客が夏季の多客期に集中する傾向があります。そのため、業績が特定の季節要因に大きく依存し、利益が下期に偏る収益構造となっており、需要の変動が通期の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 燃料油価格の変動リスク


船舶の運航に不可欠な燃料油の価格上昇は、同社グループの収益に大きな負担となります。このリスクを軽減するため、旅客・貨物運賃とは別に燃料油価格変動調整金を設定していますが、急激な価格高騰や環境規制への対応コスト増が業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 気象海象や自然災害に関するリスク


台風や低気圧などの気象海象状況の悪化により就航率が低下することがあります。また、就航航路および使用港湾は地震や噴火の多発地帯に位置しており、大規模な自然災害が発生した場合には定期航路の維持が困難となり、事業運営に甚大な支障を来すリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。