京葉瓦斯 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

京葉瓦斯 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

京葉瓦斯はスタンダード市場に上場し、千葉県北西部を地盤に都市ガスの製造、供給、販売を主力とするエネルギー企業です。直近の業績では、電力小売の販売量増加やガス原料価格の下落などにより、売上高、経常利益ともに前期を上回る増収増益を達成しています。地域に根ざしたライフサービスや不動産開発にも注力しています。


※本記事は、京葉瓦斯の有価証券報告書(第141期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 京葉瓦斯ってどんな会社?


同社は千葉県北西部を主な供給区域とし、都市ガスの安定供給や電力販売などを手がけるエネルギー企業です。

(1) 会社概要


同社は1927年に葛飾瓦斯として設立され、翌年にガス供給を開始しました。1958年に現在の京葉瓦斯に商号を変更し、1962年には東京証券取引所に株式を上場しました。長年にわたり供給エリアの拡大と熱量変更を進め、2019年にはグループ全体で都市ガスのお客さま件数が100万件を突破しています。

現在の従業員数は連結で1,275名、単体で730名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主は同社に原料等を販売する関連会社の南悠商社で、第2位は設備工事等を手がける事業会社のケイハイ、第3位は投資ファンドである光通信KK投資事業有限責任組合となっています。

氏名 持株比率
南悠商社 30.30%
ケイハイ 8.89%
光通信KK投資事業有限責任組合 6.50%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は江口孝が務めており、社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
江口 孝 代表取締役社長社長執行役員 1983年同社入社。経理部長、常務取締役などを経て、2019年常務執行役員就任。2023年より現職。
菊池 節 代表取締役会長 1976年南悠商社入社。高萩炭礦副社長などを経て、2003年同社取締役就任。2016年より現職。
久能 剛一 取締役常務執行役員 1989年同社入社。お客さまサービス部長、企画部長などを経て、2022年より現職。
大石 昇 取締役常務執行役員 1987年同社入社。エネルギー開発部長などを経て、京葉ガスリキッド社長を歴任。2024年より現職。
三浦 一棋 取締役常務執行役員 1990年同社入社。総務部長などを経て、2020年執行役員就任。2024年より現職。


社外取締役は、前川渡(ファイ法律事務所弁護士)、森隆男(公認会計士森隆男事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「エネルギー」、「ライフサービス」、「リアルエステート」の3つの報告セグメントを展開しています。

エネルギー

千葉県北西部(市川市、松戸市等)を主な供給区域とし、都市ガスの製造、供給、販売を行っています。また、主に都市ガスを利用する顧客向けに電力の小売販売も展開しており、再生可能エネルギー関連事業やインフラ構築も推進しています。

収益源は顧客からのガス・電気料金やガス内管工事代金などです。事業運営は主に京葉瓦斯が担うほか、連結子会社の京和ガスが卸供給を受けてガスの供給・販売を行い、京葉ガスカスタマーサービスが検針や料金収納業務を受託しています。

ライフサービス

顧客の暮らしを支えるため、ガス機器の販売や住宅リフォーム事業、くらしサポートサービスの提供を行っています。また、地域社会への貢献として「道の駅しょうなん」の維持・管理や運営なども手がけています。

収益源はガス機器の販売代金やリフォーム工事の請負代金、施設運営に伴う収入などです。事業運営は京葉瓦斯のほか、連結子会社の京和住設や道の駅しょうなん、持分法適用関連会社の京葉住設などが共同で展開しています。

リアルエステート

地域の活性化と収益基盤の多角化を目指し、所有する不動産の有効活用や賃貸住宅、物流倉庫などの不動産賃貸事業を展開しています。特に自社工場跡地の開発など、大規模な不動産開発プロジェクトを推進しています。

主な収益源は入居するテナントや個人顧客からの不動産賃貸収入です。事業の運営は京葉瓦斯が行うほか、連結子会社である京葉ガス不動産が主体となって賃貸物件の取得や管理、賃貸業務を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は概ね1,100億円から1,200億円台で安定して推移しています。経常利益については原料価格の変動等による影響を受け一時的に落ち込む時期もありましたが、直近の2025年12月期では電力小売収支の改善やガス事業の増益寄与などにより、大幅な増益を達成しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 897億円 1,188億円 1,229億円 1,157億円 1,177億円
経常利益 26億円 7億円 24億円 23億円 46億円
利益率(%) 2.9% 0.6% 2.0% 2.0% 3.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 -3億円 8億円 12億円 27億円

(2) 損益計算書


売上高は電力販売量の増加や不動産賃貸収入の拡大により前期比で微増となりました。一方、売上原価はガス原料価格の下落により減少したため、売上総利益は拡大し、営業利益は前期比で大幅な増益となっています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 1,157億円 1,177億円
売上総利益 350億円 376億円
売上総利益率(%) 30.2% 32.0%
営業利益 14億円 38億円
営業利益率(%) 1.2% 3.3%


販売費及び一般管理費(338億円)のうち、減価償却費が88億円(構成比26%)、委託作業費が60億円(同18%)、給料が52億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


エネルギー事業は電力小売の販売量増加に伴い増収となりました。ライフサービス事業はガス機器販売の減少により減収となった一方、リアルエステート事業は新規賃貸物件の稼働などにより大幅な増収となっています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
エネルギー 1,071億円 1,091億円
ライフサービス 71億円 67億円
リアルエステート 15億円 19億円
連結(合計) 1,157億円 1,177億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはプラスの「積極型」です。本業で安定して現金を稼ぎ出しながらも、将来の成長を見据えた設備投資などのために借入等の資金調達を積極的に行っている状態を示しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 100億円 137億円
投資CF -97億円 -131億円
財務CF -10億円 23億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「私たちはお客さまの視点に立った企業活動を通じ、より快適な生活と豊かな社会の実現に貢献いたします。」を経営理念として掲げています。エネルギーの安定供給と保安の確保を通じた快適と安心の提供や、環境に配慮した地域社会に共感される企業活動の実践により、顧客から選ばれる企業を目指しています。

(2) 企業文化


同社は顧客満足の向上を第一に考え、常に変革と創造に挑戦する姿勢を重視しています。また、ビジネスパートナーとのフェアな関係構築を重んじるとともに、社員一人ひとりの意欲と創造性を尊重し、活気ある企業風土の醸成に努めています。安全と安心を最優先とし、地域社会に共感される活動を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


「中期経営計画2025-2027」において、同社は事業活動に伴うCO2排出量ゼロや、お客さまアカウント数の獲得、資本収益性の向上などの具体的な数値目標を設定して経営を進めています。

* カーボンオフセット都市ガスの導入:2%
* 再生可能エネルギー電源の開発:80地点
* お客さまアカウント数の獲得:145万件
* 不動産事業の拡大:10%以上の利益成長
* 資本収益性の向上:ROE4.5%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は3つの事業領域の成長と経営基盤の強化を推進しています。「エネルギー領域」ではガス・電力の収支改善と脱炭素化の推進、「ライフサービス領域」では対面接点とデジタルの活用による顧客サービスの多様化、「リアルエステート領域」では自社工場跡地の開発などによる収益最大化に取り組んでいます。

* レジリエンスへの投資:100億円
* ガス事業における生産性の向上
* ペーパーレス化:100%削減

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人」に対する投資が企業価値を高めるという人的資本経営の考えに基づき「人財戦略2025」を推進しています。「変化を恐れず、成長とチャレンジを続ける」人材の育成を目指し、個の能力の最大化や自律的なキャリア形成の支援、多様性を尊重した働き方の推進など、従業員の働きがいを高める施策を展開しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 44.1歳 20.1年 6,390,241円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.9%
男性育児休業取得率 87.0%
男女賃金差異(全労働者) 73.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 74.7%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 82.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性役職者の割合(6.3%)、新卒採用における女性の採用割合(38.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) コンプライアンスに関するリスク

法令や企業倫理に反する不適切な行為が発生した場合、社会的信頼を喪失し業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社はコンプライアンス委員会を設置し、定期的な教育研修等を通じて意識の浸透を図り、リスクの未然防止に努めています。

(2) 自然災害のリスク

事業基盤が千葉県北西部に集中しているため、大規模な地震等の災害が発生した場合、導管などの供給設備に甚大な被害が生じ、ガスの安定供給に支障をきたす恐れがあります。同社は導管の耐震化や災害対応訓練を実施し、設備の強靭化と早期復旧体制の強化を進めています。

(3) 競争の激化によるリスク

ガス・電力の小売自由化などに伴う競争の激化により、顧客の流出や販売価格の値下げ圧力が強まるリスクがあります。同社は暮らしを支える付加価値の高いサービスの拡販や、環境性・経済性に優れた提案を行うことで、新規顧客の獲得と流出防止に取り組んでいます。

(4) 原料価格の変動と調達リスク

都市ガスの原料であるLNG等の価格は、原油価格や為替相場の影響を強く受けます。原料費調整制度による価格転嫁のタイムラグや、国際情勢の変動による調達先の供給不安が生じた場合、収益や安定供給に悪影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。