静岡ガス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

静岡ガス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する静岡ガスは、都市ガスやLNGの供給・販売、LPG・電力事業などを幅広く展開する総合エネルギー企業です。直近の2025年12月期の連結業績は売上高2012億円と微減収でしたが、LNG調達の最適化などが寄与し、営業利益は141億円と増益を達成しています。


※本記事は、静岡ガス株式会社の有価証券報告書(第178期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 静岡ガスってどんな会社?


静岡ガスは、都市ガスやLPG、電力などのエネルギー供給を通じて地域社会に貢献する総合エネルギー企業です。

(1) 会社概要


1910年に設立された同社は、地域に根ざした都市ガス事業を中核として発展してきました。1996年にはマレーシアからのLNG導入を開始し、2001年に東京証券取引所市場第二部へ上場、2003年に同市場第一部への指定を受けました。2014年には静岡ガス&パワーを設立し電力事業に本格参入したほか、直近の2025年にはSHIZUOKA GAS AMERICA CO.を設立して米国でのシェールガス開発事業に参入するなど、新たな事業領域への展開を加速させています。

同社グループは、連結従業員数1,586名、単体従業員数657名の体制で事業を運営しています。大株主の状況を見ると、筆頭株主である鈴与商事をはじめ、鈴与建設や東京瓦斯といった事業会社や提携パートナーが上位に名を連ねており、強固な事業関係と資本関係を構築しています。

氏名 持株比率
鈴与商事 18.11%
鈴与建設 14.07%
東京瓦斯 6.63%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役取締役会長は岸田裕之氏、代表取締役社長執行役員は松本尚武氏です。社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
岸田裕之 代表取締役取締役会長 1981年同社入社。企画部や営業統括部などで要職を歴任し、代表取締役社長執行役員を経て、2024年1月より現職。
松本尚武 代表取締役社長執行役員 1993年同社入社。経営戦略本部長などを経て、静岡ガス&パワー代表取締役社長等を歴任し、2024年3月より現職。
杉山武靖 取締役常務執行役員コーポレートサービス本部長 1989年同社入社。くらしデザイン部長などを経て、2018年静岡ガスリビング代表取締役社長を務め、2025年3月より現職。


社外取締役は、中西勝則(しずおかフィナンシャルグループ代表取締役会長)、平野肇(元三菱商事常務執行役員)、丸野孝一(元第一生命保険専務執行役員)、平川理恵(アカデミア・ネクサス代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ガス」「LPG・その他エネルギー」および「その他」の事業を展開しています。

(1) ガス


都市ガスの製造・供給・販売、およびLNGの販売を行っています。家庭用から業務用、工業用まで幅広い顧客に対して天然ガスを安定供給しており、海外においても東南アジアやインドでのエネルギー事業開拓、米国でのシェールガス開発事業などを展開しています。

顧客からのガス利用料金やLNGの販売代金が主な収益源です。都市ガスの製造は主に清水エル・エヌ・ジーが行い、同社が仕入れて供給・販売するほか、吉田ガスや島田ガスなどの連結子会社も各地域におけるガスの供給・販売を担っています。

(2) LPG・その他エネルギー


LPGの卸・小売販売やこれに付随する機器販売、配管工事のほか、電力の販売、顧客事業所に設備を設置するオンサイト・エネルギーサービス事業、太陽光発電などの再生可能エネルギー事業を展開しています。

顧客からのLPG販売代金や電力販売料金、エネルギーサービス利用料が収益源です。LPGの販売は主に静岡ガスエネルギーが担い、電力販売は静岡ガス&パワーが行うなど、グループ各社がそれぞれの事業領域を運営しています。

(3) その他


ガス配管工事の施工やガス機器の販売、住宅設備の販売・リフォーム事業、注文住宅等の設計・施工・販売のほか、リース業務、保険代理業、情報処理システム開発、人材派遣業など、多岐にわたるくらし関連サービスを提供しています。

顧客からの工事代金や機器販売代金、リース料などが収益源です。リフォーム事業は静岡ガスリビングやエネリア各社が、住宅関連はグッドリビングが担い、リース業務は静岡ガスクレジットが運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は2022年12月期以降2000億円規模で推移しており、直近は資源価格の変動等を背景に微減傾向にありますが、安定した事業基盤を維持しています。経常利益率は年度により4%台から9%台と変動がありますが、直近の2025年12月期はLNG調達の最適化などにより利益率が改善し、大幅な増益を達成しました。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 1330億円 2073億円 2140億円 2022億円 2012億円
経常利益 65億円 95億円 201億円 131億円 148億円
利益率(%) 4.9% 4.6% 9.4% 6.5% 7.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 41億円 60億円 141億円 88億円 100億円

(2) 損益計算書


売上高が微減となった一方で、売上総利益は増加し、売上総利益率および営業利益率ともに前年から堅調な改善を見せています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 2022億円 2012億円
売上総利益 397億円 451億円
売上総利益率(%) 19.6% 22.4%
営業利益 103億円 141億円
営業利益率(%) 5.1% 7.0%


販売費及び一般管理費のうち、減価償却費が75億円(構成比24%)、給料が65億円(同21%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のガス事業は、原料費調整制度によるガス販売単価の下方調整などにより微減収となりました。一方、その他事業は、グッドリビングの連結子会社化や設備工事の売上増加などにより、前年比で大幅な増収を記録し、事業領域の拡大が進んでいます。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
ガス 1585億円 1552億円
LPG・その他エネルギー 306億円 298億円
その他 131億円 162億円
連結(合計) 2022億円 2012億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 110億円 346億円
投資CF -87億円 -330億円
財務CF -19億円 -5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


企業理念として「エネルギーを中心としたグループ総合力で、豊かで持続可能な未来を追い求めます」と掲げています。この理念のもと、「グループ2030年ビジョン」に定めた地域共創の実現を目指し、持続可能なくらしやすい地域づくりに貢献していく姿勢を明確にしています。

(2) 企業文化


新ブランドスローガン「湧く想い、沸かせる未来。」を策定し、社員全員が新たな事業領域や成長分野に前向きに挑戦する意思と情熱を示しています。「安全・安心」を最優先に掲げ、地域課題の解決や地域貢献活動への積極的な参加を通じて、地域社会とともに持続可能な社会の実現に貢献する文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


資本コストと株価を意識した経営を推進し、事業の成長と資本の効率運用を両立させることで、収益力の強化を図っています。財務的な目標として、早期にROE(株主資本利益率)を8%以上に引き上げることを目指しています。

* 早期にROE 8%以上
* 2030年に連結経常利益130億円

(4) 成長戦略と重点施策


基盤事業である都市ガス・LPG事業の継続的成長を図るとともに、電力・再エネ事業、くらし・エンジニアリングサービス事業、海外事業を成長の軸として拡大する戦略を掲げています。DX推進による業務の高度化や積極的な投資、M&Aの活用により事業領域を広げ、カーボンニュートラル化への対応も強化しています。

* 2030年までにCO2削減貢献量200万t
* 2030年までに再生可能エネルギー電源20万kW開発

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


グループの成長を支える「人」の育成に向けて、人材育成プログラムの高度化やリスキリング教育の強化により、社員の自律的な成長を後押しする方針です。また、キャリア採用やジョブローテーションにより多様性を持つボトムアップ型組織を構築し、基盤事業と成長事業を牽引する人材の育成と採用に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 44.3歳 20.9年 7,740,918円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 15.9%
男性育児休業取得率 86.7%
男女賃金差異(全労働者) 69.9%
男女賃金差異(正規雇用) 68.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 79.4%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 海外事業の展開リスク


成長戦略の一環として米国等で海外事業を展開していますが、進出先の国における政策変更や法規制の強化、経済・社会情勢の悪化、政治・治安リスクなどにより、事業の遅延や中断、採算性の低下が生じる可能性があります。対策として、複数地域への分散や現地法人設立によるガバナンス強化を進めています。

(2) LNG調達価格の変動リスク


都市ガスの原料であるLNGを全量海外から調達しており、契約更改時の条件変更や価格体系の改定により調達コストが変動するリスクがあります。また、原料費調整制度におけるスライドタイムラグにより期間損益に影響を及ぼす可能性があるため、調達先の多様化や柔軟な配船計画、価格ヘッジ等の対策に取り組んでいます。

(3) カーボンニュートラル対応の負担増加リスク


カーボンニュートラル移行の進展に伴い、新たな環境規制や制度が導入された場合、追加的な対応コストが発生し、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、制度変更に関する情報収集を行うとともに、再生可能エネルギー電源の開発やカーボンオフセット都市ガスの供給など、新たな需要への対応を強化しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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