※本記事は、株式会社アゴーラ ホスピタリティー グループの有価証券報告書(第88期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月31日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. アゴーラ ホスピタリティー グループってどんな会社?
同社は宿泊事業およびその他投資事業を展開し、インバウンド需要を捉えたホテル運営を強みとしています。
■(1) 会社概要
1948年にさくら観光として創立して宿泊事業を開業し、1949年に東京証券取引所へ上場しました。1997年以降は海外での不動産開発や霊園事業等に着手し、2011年からは宿泊事業の拡充を本格化しています。2012年に現在の社名へと変更し、ホテル事業の承継や不動産信託受益権の取得などを通じて事業規模を拡大してきました。
現在の従業員数は連結で529名、単体で13名です。筆頭株主はバンク ジユリウス ベア アンド カンパニ- リミテツド ホンコン クライアント アカウント(常任代理人三菱UFJ銀行)で、第2位はバンク ジユリウス ベア アンド カンパニ- リミテツド シンガポ-ル クライアンツ(常任代理人三菱UFJ銀行)です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| バンク ジユリウス ベア アンド カンパニ- リミテツド ホンコン クライアント アカウント(常任代理人三菱UFJ銀行) | 31.16% |
| バンク ジユリウス ベア アンド カンパニ- リミテツド シンガポ-ル クライアンツ(常任代理人三菱UFJ銀行) | 11.25% |
| ゴールドマン・サックス・インターナショナル(常任代理人ゴールドマン・サックス証券) | 3.04% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役会長チェアパーソンはウィニー・チュウウィン・クワン、代表取締役社長兼CEOはシャン・チューピンが務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| ウィニー・チュウウィン・クワン | 代表取締役会長チェアパーソン | 2011年ドーセット・ホスピタリティー・インターナショナル社長、2015年同社社外取締役等を経て2024年より現職。 |
| シャン・チューピン | 代表取締役社長兼CEO | 1990年山一證券入社。大和証券グループ本社シニア・マネージング・ディレクター等を経て2024年より現職。 |
| シ・フェイティン | 取締役CFO | 2016年ドーセットホスピタリティインターナショナル入社。同社ファイナンスマネジャー等を経て2026年より現職。 |
| 浅生浩 | 取締役 | 1993年伊藤忠商事入社。新華通信ネットジャパン代表取締役社長、アゴーラホスピタリティーズ取締役等を経て2017年より現職。 |
社外取締役は、北村隆則(元駐ギリシャ大使)、アンジェリーニ・ジョバンニ(元シャングリ・ラ・ホテル・アンド・リゾーツCEO)です。
2. 事業内容
同社グループは、「宿泊事業」および「その他投資事業」を展開しています。
■(1) 宿泊事業
同事業では、国内外の旅行客をターゲットに、ホテルや旅館などの宿泊施設の経営および運営受託を行っています。大阪や東京、京都といった主要な観光拠点において、フルサービスホテルやリミテッドサービスホテルを展開し、地域の歴史や文化と連携した独自の宿泊体験を提供しています。
収益は主に、宿泊客からの宿泊料金、料飲や宴会などの付帯サービス料金から得ています。事業の運営はアゴーラホテルマネジメント大阪やアゴーラホテルマネジメント堺などの子会社を通じて行われており、インバウンド需要を最大限に取り込むことで高い稼働と単価水準を実現しています。
■(2) その他投資事業
同事業では、海外における不動産開発や霊園の経営、および国内外の金融商品への投資などを行っています。主にマレーシアにおける「ラワン・メモリアル・パーク」での霊園開発や墓地販売、オーストラリアでの不動産事業、ならびに株式や債券の運用を通じて多角的な事業展開を図っています。
収益は、霊園利用を目的とする顧客からの墓地販売代金や、金融商品の運用益および売却益などから構成されています。霊園事業の運営はマレーシアのビューティー・スプリング・インターナショナル社やスプリーム・ティーム社が行っており、証券投資事業は同社自身が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の業績推移を見ると、インバウンド需要の拡大とともに売上高は継続して成長しています。経常利益も赤字から黒字へと転換を果たし、直近では利益率も着実に改善する傾向にあります。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 34億円 | 50億円 | 73億円 | 84億円 | 99億円 |
| 経常利益 | -14億円 | -11億円 | -2億円 | 2億円 | 9億円 |
| 利益率(%) | -40.3% | -22.3% | -2.7% | 3.0% | 8.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -8億円 | -6億円 | -0.6億円 | -6億円 | -5億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益がともに拡大しています。稼働率の向上と客室単価の上昇により収益性が大幅に改善し、営業利益率は2桁台へと成長しました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 84億円 | 99億円 |
| 売上総利益 | 28億円 | 35億円 |
| 売上総利益率(%) | 33.2% | 35.6% |
| 営業利益 | 5億円 | 11億円 |
| 営業利益率(%) | 6.0% | 10.7% |
販売費及び一般管理費のうち、水道光熱費が3億円(構成比13%)、給料及び手当が3億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力である宿泊事業は、継続的な円安基調を背景としたインバウンド需要の拡大により、大阪エリアを中心とする各施設で稼働率および客室単価が上昇し、大幅な増収となりました。一方、その他投資事業はマレーシアでの霊園事業が堅調に推移したものの、為替や市場動向の影響を受けた証券事業の減収などにより微減となっています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 宿泊事業 | 73億円 | 90億円 |
| その他投資事業 | 10億円 | 9億円 |
| 連結(合計) | 84億円 | 99億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社グループの資金調達は、営業活動によるキャッシュ・フローに加え、金融機関からの借入金等を基本としています。
営業活動では、債務免除益や未払金の増減、税金等調整前当期純利益、未収消費税等の増減が主な要因となり、資金を獲得しました。投資活動では、有形固定資産や繰延資産の取得による支出があり、資金を使用しました。財務活動では、長期借入れや新株予約権の行使による収入、長期借入金の返済による支出があり、資金を獲得しました。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、世界共通の目標であるSDGsと、日本の伝統文化や「美しい自然、美しい四季、美しい景色、美しい日本」という理念を融合させることを掲げています。旅行や観光業を通じてすべてのステークホルダーとともにイノベーションを創出し、未来社会へ貢献することを目指しています。また「美しい日本のコレクション」をお客様に届けるというビジョンをもち、持続可能な社会の実現に取り組んでいます。
■(2) 企業文化
同社グループは人材を最大の経営資源と捉え、従業員一人ひとりが他者の視点に立つ心としての「おもてなし」を体現する文化を重視しています。プロフェッショナルとして自律的に行動できる組織文化を醸成することで、サービス品質の向上と高い定着率の実現を図っています。また、地域社会との連携を深め、独自の付加価値を提供する共生の精神を根付かせています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、新たな中期目標として「5年で30ホテル」という指針を掲げ、多角的な事業展開とリスク管理の強化を推進しています。既存施設の老朽化等の課題に対しても、ポートフォリオの見直しや資産の入れ替えを適宜行い、運営委託型(MC)ホテルの比率を高めることで、資本効率を重視した強固なネットワークの構築を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、資本効率を重視して機動的な成長を実現する「アセットライト戦略」を成長の軸に据えています。特定の国や地域に依存しないプロモーションの徹底で地政学リスクを分散するほか、SNSやリファラル採用の拡充を通じた多様な人材獲得を進めています。また、地域連携の深化とデジタルトランスフォーメーション(DX)の活用による業務効率化を推進し、高度な接客サービスへの時間創出に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、業務プロセスの劇的な効率化と高品質化を追求する「卓越性(オペレーショナル・エクセレンス)」の実現に向けて、人材への投資を経営の最優先事項としています。キャリアビジョンの設定や専門知識向上のための研修制度、資格取得支援などを通じて個人の成長を支援し、グローバルな視野と温かい心を兼ね備えたプロフェッショナルの育成と配置に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 44.3歳 | 5.1年 | 8,382,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 25.0% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 44.9% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 44.9% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | - |
※臨時従業員(パート・有期労働者)は男性1名のため、男女賃金の割合が計算できないため計算から除外しています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、子会社における男性従業員の勤続年数(6年9カ月)、女性従業員の勤続年数(4年10カ月)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経営環境の変化によるリスク
同社の主力である宿泊事業は、国内外の政治・経済情勢の変化や訪日外国人旅行者の動向、民泊事業者などの新規参入によって影響を受ける可能性があります。また、雇用・労働法制の変化が施設運営に影響を及ぼすリスクや、その他投資事業における市場の需給バランスの変動がグループの業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 不動産の資産価値変動リスク
同社グループは、事業用および販売用の不動産を保有しています。地価の動向や対象となる不動産の収益状況の悪化によって資産価値が低下し、評価減を行う必要が生じた場合、同社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 海外投資と為替相場の変動リスク
同社はマレーシアやオーストラリアなど海外で事業を展開しており、現地通貨建てで取引を行っています。大幅な為替相場の変動が生じた場合、業績に影響を及ぼすリスクがあります。また、海外各国における政治・経済・法制度の予期せぬ変化や社会的混乱などにより、投下資本が回収できなくなるおそれがあります。
■(4) 地政学的および感染症拡大リスク
近隣諸国との外交関係の悪化や周辺地域での有事の発生など、地政学的な要因によって訪日外国人客数が急減するリスクがあります。特定の国や地域に依存した集客構造を持つ場合、稼働率や収益性に深刻な影響を与える可能性があります。また、新たな感染症の拡大が事業運営に一定の影響を及ぼすリスクも存在します。



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