※本記事は、株式会社白洋舍の有価証券報告書(第133期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 白洋舍ってどんな会社?
個人向けクリーニングと法人向けレンタル事業を全国規模で展開する業界のリーディングカンパニーです。
■(1) 会社概要
1906年に五十嵐健治が東京日本橋で洋式洗濯業を創業しました。1920年に会社を設立し、1927年に白洋舍へ商号変更しています。1949年に東京証券取引所へ上場し、1962年に共同リネンサプライを設立して法人向け事業を拡大しました。2008年にはスターリースを吸収合併して体制を強化しています。
同社グループの従業員数は連結で1,722名、単体で1,328名です。筆頭株主は外資系金融機関のGOLDMAN SACHS INTERNATIONALで、第2位は事業会社のきょくとう、第3位は持分法適用関連会社で毛皮・皮革等のクリーニングを外注している東京ホールセールとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| GOLDMAN SACHS INTERNATIONAL | 7.39% |
| きょくとう | 5.18% |
| 東京ホールセール | 4.59% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長執行役員は五十嵐瑛一氏が務めています。取締役7名のうち、社外取締役は3名です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 五十嵐瑛一 | 代表取締役社長執行役員 | 2009年野村総合研究所入社。2020年同社経営企画部部長、2022年執行役員を経て2024年より現職。 |
| 小林正明 | 代表取締役専務執行役員本社管理部門統括 | 1983年第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。2012年同社経営企画部長、2014年常務取締役等を経て2020年より現職。 |
| 伊藤真次 | 取締役常務執行役員事業統括本部長 | 1984年同社入社。2014年執行役員、2019年共同リネンサプライ代表取締役社長等を経て2025年より現職。 |
| 荻野仁 | 取締役執行役員工場部門統括兼工場部長 | 1985年同社入社。2016年工場部長、2017年執行役員、2018年取締役執行役員を経て2024年より現職。 |
社外取締役は、土井全一(元大丸松坂屋百貨店取締役)、井口泰広(インフォテクノ朝日代表取締役社長)、高橋千恵子(元第一生命保険常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「クリーニング」「レンタル」「不動産」および「その他」事業を展開しています。
■(1) クリーニング
主に個人を対象とし、衣服やふとん・じゅうたん等の家庭用アイテムのクリーニングサービスを提供しています。直営・フランチャイズ店舗のほか、専門スタッフによる集配サービスや宅配便を用いたサービスも展開しています。
個人顧客からのクリーニング料金が主な収益源です。事業の運営は同社および子会社の静岡白洋舍、東日本ホールセールなどが行っています。
■(2) レンタル
主に法人を対象とし、ホテルやレストラン向けのリネンサプライや、食品工場、外食産業向けのユニフォームレンタルを提供しています。保有するリネン品やユニフォームを、クリーニング付きのレンタルサービスとして総合的に提供しています。
法人顧客からのレンタル料金およびクリーニング料金が主な収益源です。運営は同社や共同リネンサプライ、白洋舍栄リネンサプライ、白洋舍北海道リネンサプライ等が行っています。
■(3) 不動産
オフィスビル等の不動産の賃貸および管理サービスを提供しています。
不動産の賃借人からの賃貸収益が主な収益源です。運営は主に同社が行っています。
■(4) その他
クリーニング業務用の機械や資材等の物品販売などを展開しています。
顧客企業からの物品販売代金が主な収益源です。運営は子会社の双立などが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、売上高は継続的な増加傾向にあり、経常利益も赤字から黒字へ転換後、順調に拡大しています。しかし、直近では利益水準がわずかに低下する動きも見られます。全体として収益性の改善が進んでいることがうかがえます。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 351億円 | 392億円 | 433億円 | 436億円 | 446億円 |
| 経常利益 | -22億円 | 14億円 | 21億円 | 25億円 | 26億円 |
| 利益率(%) | -6.2% | 3.5% | 5.0% | 5.7% | 5.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -1億円 | 13億円 | 16億円 | 18億円 | 17億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高の拡大に伴い売上総利益および営業利益も着実に増加しています。売上総利益率および営業利益率ともに微増しており、コスト構造の改善や収益力の向上が進んでいることが分かります。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 436億円 | 446億円 |
| 売上総利益 | 67億円 | 69億円 |
| 売上総利益率(%) | 15.3% | 15.5% |
| 営業利益 | 23億円 | 24億円 |
| 営業利益率(%) | 5.3% | 5.4% |
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上推移を見ると、主力のレンタル事業が堅調に推移し、全体の成長を牽引しています。クリーニング事業や不動産事業はほぼ横ばいで推移していますが、その他事業は売上が減少傾向にあります。事業ポートフォリオの中心はレンタル事業へとシフトしていることがうかがえます。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| クリーニング | 166億円 | 167億円 |
| レンタル | 259億円 | 271億円 |
| 不動産 | 5億円 | 5億円 |
| その他 | 6億円 | 4億円 |
| 連結(合計) | 436億円 | 446億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
白洋舍は、営業活動により潤沢な資金を生み出し、事業運営の基盤を強化しています。投資活動では、将来の成長を見据えた設備投資や資産取得を進めています。財務活動では、借入金の返済や調達を適切に行い、健全な財務体質を維持しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 29億円 | 30億円 |
| 投資CF | -1億円 | -10億円 |
| 財務CF | -29億円 | -17億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「人々の清潔で、快適な生活空間づくりのために、たゆまぬ技術革新と感動を与えるサービスを提供し、社会に貢献する」ことを経営理念として掲げています。1906年の創業から業界のリーディングカンパニーとして、新しいサービスや技術に挑戦し、人々の清潔で快適な生活空間づくりに関連する事業を総合的に展開しています。
■(2) 企業文化
創業からの基本精神である「奉仕の徹底」(お客さまの立場に立ち、お客さまが本当に望むことは何かを常に考え、行動すること)や、「一人代表」、「開拓者精神」(前例にとらわれず、変化を恐れず挑戦すること)を重視し、多様なステークホルダーの期待に応える文化が醸成されています。
■(3) 経営計画・目標
新たなビジョン「世界の人々の清潔で快適な空間づくりに貢献し、感動を与え続ける企業集団」の実現に向け、2024年から2026年までの中期経営計画を策定しています。中長期的な企業価値の向上を図るため、以下の数値目標を設定しています。
* 連結ROE(自己資本利益率):12%以上
* ROIC(投下資本利益率):8%以上(2026年12月期 単体事業部門)
* PBR(株価純資産倍率):1.25倍以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「構造改革の完遂とオペレーションの磨き上げ」「マーケティングによる収益力向上」「事業ポートフォリオの最適化」を基本方針とし、筋肉質な事業体への変革を図ります。クリーニング事業では拠点の集約やデジタルマーケティングによるサービス向上を進め、レンタル事業では付加価値向上による差別化戦略等を通じ高収益体制を確立します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「白洋舍の基本精神を体現できる人財」「多様性を尊重した自律的な人財」「プロフェッショナル人財」の育成を目指し、階層別育成やキャリア支援などの人財育成プログラムを強化しています。「能力開発機会の提供」や「ダイバーシティ推進」等を通じた社内環境整備を進め、従業員一人ひとりがイキイキと働く魅力ある職場づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 42.2歳 | 14.6年 | 4,708,742円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.2% |
| 男性育児休業取得率 | 66.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 69.4% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 87.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、手挙げ社員率(23.3%)、工場技術者上級資格保有率(25.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業環境の変動に関するリスク
クリーニング事業では服装のカジュアル化や在宅勤務の普及などにより市場規模が縮小する懸念があり、レンタル事業では大手法人顧客への依存度が高く、市場環境の悪化による稼働率低下や契約終了が業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 中期経営計画の進捗に関するリスク
同社は構造改革やオペレーションの磨き上げ、マーケティングによる収益力向上などを掲げた中期経営計画を推進しています。しかし、構造改革の遅れ等により計画の進捗に遅延が生じた場合、期待される成果が得られず財務状況に悪影響を与える可能性があります。
■(3) 工場機械・設備に関するリスク
ドライクリーニング工場には石油系の洗浄・乾燥設備が設置されており、万一火災が発生した場合には、人身事故や近隣への延焼、クリーニング品の焼失、工場設備の焼損など多大な損害につながるリスクを内包しています。
■(4) 人財の確保に関するリスク
同社の事業は従業員の接客や作業技術などの人的資本が競争力の源泉ですが、少子高齢化による労働人口の減少や採用競争の激化により、必要な人財の確保が困難になるリスクがあります。技術継承の遅れや定着率の低下はサービス品質の低下を招く恐れがあります。



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