※本記事は、株式会社富士ソフト の有価証券報告書(第55期、自 2024年1月1日 至 2024年12月31日、2025年3月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 富士ソフトってどんな会社?
独立系SIerとして、組込系・制御系ソフトウェア開発に強みを持つ企業です。
■(1) 会社概要
1970年に株式会社富士ソフトウエア研究所として設立。1992年に株式を店頭登録し、1998年に東証一部へ指定替えしました。2006年に現社名へ変更。2024年には上場子会社であったサイバネットシステム、ヴィンクス、富士ソフトサービスビューロ、サイバーコムの4社を完全子会社化し、グループ経営を強化しています。
2024年12月31日現在、連結従業員数は19,689名、単体では9,806名です。筆頭株主は公開買付けを実施したFKで33.98%を保有、次いで資産管理会社と思われる有限会社エヌエフシーが9.61%を保有しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| FK | 33.98% |
| 有限会社エヌエフシー | 9.61% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.36% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性3名(比率20.0%)で構成され、代表取締役社長執行役員は坂下 智保氏です。社外取締役比率は約58.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 坂下 智保 | 代表取締役社長執行役員 | 2004年入社。IT事業本部副本部長、常務執行役員などを経て、2012年6月より現職。 |
| 大迫 館行 | 取締役専務執行役員 | 1999年入社。ソリューション事業本部長などを歴任し、2025年1月より経営補佐、ネットソリューション事業本部担当。 |
| 筒井 正 | 取締役常務執行役員 | 1988年入社。管理部門改革統括部長などを経て、2022年3月より管理部門・ファシリティ事業担当。 |
| 森本 真里 | 取締役常務執行役員 | 1996年入社。営業本部長などを経て、2025年1月よりグループ会社シナジー担当、Lキャリア推進室担当。 |
| 梅津 雅史 | 取締役常務執行役員 | 1997年入社。経営企画部長、財務・広報担当などを経て、2025年1月より経営企画・財務担当。 |
社外取締役は、大石 健樹(元カシオ日立モバイルコミュニケーションズ社長)、荒牧 知子(公認会計士)、辻 孝夫(元JVCケンウッド会長)、仁科 秀隆(弁護士)、今井 光(元レコフ社長)、清水 雄也(Hibiki Path Advisors代表)、石丸 慎太郎(元伊藤忠商事CIO)です。
2. 事業内容
同社グループは、「SI事業」および「ファシリティ事業」、「その他」事業を展開しています。
**(1) SI(システムインテグレーション)事業**
機械制御系や自動車関連の組込系ソフトウェア開発、業務系ソフトウェア開発、プロダクト・サービスの構築・保守・運用などを提供しています。主な顧客は製造業、流通・サービス業、金融業など多岐にわたります。
収益は、顧客からの受託開発費用、システムの保守・運用サービス料、プロダクトのライセンス販売料などから得ています。運営は主に同社が行い、特定の専門分野についてはサイバネットシステムやヴィンクスなどのグループ会社が担っています。
**(2) ファシリティ事業**
同社グループが所有するオフィスビルの賃貸事業を行っています。保有不動産の有効活用を図り、安定的な収益源としています。
収益は、テナントからの賃貸料収入です。運営は同社および一部の連結子会社が行っています。
**(3) その他**
報告セグメントに含まれない事業として、データエントリー事業やコンタクトセンター事業などを展開しています。
収益は、BPOサービスやコンタクトセンター業務の受託料です。運営は主に富士ソフトサービスビューロなどの子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は毎期着実に増加しており、成長基調を維持しています。利益面でも、経常利益は安定して増加傾向にあり、当期純利益も増加しています。特に当期は親会社株主に帰属する当期純利益が大幅に伸長しました。
| 項目 | 2020年12月期 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,410億円 | 2,579億円 | 2,788億円 | 2,989億円 | 3,175億円 |
| 経常利益 | 163億円 | 180億円 | 192億円 | 197億円 | 218億円 |
| 利益率(%) | 6.8% | 7.0% | 6.9% | 6.6% | 6.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 69億円 | 94億円 | 98億円 | 108億円 | 155億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益も増加しています。原価率や販管費率に大きな変動はなく、安定した収益構造を維持しています。営業利益率も前期と同水準を保っています。
| 項目 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,989億円 | 3,175億円 |
| 売上総利益 | 672億円 | 746億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.5% | 23.5% |
| 営業利益 | 207億円 | 220億円 |
| 営業利益率(%) | 6.9% | 6.9% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与が207億円(構成比39%)、事務委託費が47億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
SI事業は、自動車関連や業務系ソフトウェア開発が好調で増収増益となりました。ファシリティ事業は減収減益(営業損失)となりました。その他事業は増収増益でした。
| 区分 | 売上(2023年12月期) | 売上(2024年12月期) | 利益(2023年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| SI事業 | 2,824億円 | 3,001億円 | 189億円 | 213億円 | 7.1% |
| ファシリティ事業 | 29億円 | 29億円 | 10億円 | -0億円 | -1.3% |
| その他 | 135億円 | 145億円 | 8億円 | 8億円 | 5.6% |
| 調整額 | 15億円 | 15億円 | 0億円 | 0億円 | 0.0% |
| 連結(合計) | 2,989億円 | 3,175億円 | 207億円 | 220億円 | 6.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、投資活動によるキャッシュ・フローがプラス、財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであるため、改善型(営業利益+資産売却で借入返済を進める改善局面)に該当します。
| 項目 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 162億円 | 162億円 |
| 投資CF | -92億円 | 44億円 |
| 財務CF | -54億円 | -214億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、中期方針として「ICTの発展をお客様価値向上へ結びつけるイノベーション企業グループ」を目指し、付加価値向上を実現していくことを掲げています。また、基本方針として「もっと社会に役立つ もっとお客様に喜んでいただける もっと地球に優しい企業グループ そして『ゆとりとやりがい』」を定めています。
■(2) 企業文化
「挑戦と創造」を社是とし、「企業は人なり」の精神のもと、人材を最大の財産と位置づけています。バックグラウンドに関わらず人の可能性を信じ、志を持って努力する人に挑戦する機会を与える風土があります。また、「ゆとりとやりがい」の実現に向け、多様な働き方を支援する環境づくりにも取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
2028年度を最終年度とする「中期経営計画 2028」を策定しており、売上高、営業利益、当期純利益、ROE、1株当たり営業キャッシュ・フローを経営目標としています。また、単体においては「社員1人当たり営業利益額」を最重要KPIに設定し、企業価値向上と将来ビジョンの実現を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
将来ビジョン「IT×OT分野のシステム/ソフト&サービスを提供するリーディングカンパニー」を目指し、成長継続と収益力強化の両輪を推進します。既存受託分野の成長に加え、プロダクト・サービス分野の強化、新規事業への挑戦、技術力の強化に取り組みます。また、グループシナジーの最大化やグローバル展開の強化も進めていきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材力は競争力を決定づける最も重要な経営資源であると考え、積極的な採用活動とともに、教育・研修・学びの機会による多様な人材の育成を強化しています。また、社員の処遇改善や多様な働き方を支える環境・制度の構築に努め、人材レベルの向上に伴うシステム開発力の強化を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2024年12月期 | 35.6歳 | 10.0年 | 6,400,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.2% |
| 男性育児休業取得率 | 45.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 87.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 87.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 80.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、指導的地位に就く社員(役職者以上)の女性比率(15.8%)、在宅中心勤務比率(40.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) マーケット環境及び技術動向
情報サービス業界は技術革新が速く、激しい競争環境にあります。顧客の投資ニーズの変化や技術の陳腐化に対応できなければ、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、経済動向や金利・為替変動により顧客の投資時期や規模が変動することもリスク要因です。
■(2) 人材の確保及び育成
事業継続には優秀な人材の確保・育成が不可欠です。少子高齢化による労働人口減少の中で人材獲得競争が激化しており、計画通りに人材を確保できない場合や人件費が高騰した場合、業績に影響が出る可能性があります。また、労務コンプライアンス違反が生じた場合、社会的信用の低下等を招く恐れがあります。
■(3) 受託ソフトウェア開発の品質管理
受託開発において、品質や納期のトラブルが発生した場合、追加コストの発生や損害賠償請求により、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。開発の高度化・複雑化が進む中、プロジェクトマネジメントの徹底や品質管理体制の強化を図っていますが、不採算案件の発生リスクは常に存在します。
■(4) ビジネスパートナーの確保
開発業務の一部を国内外のビジネスパートナーに委託しています。特定の技術への需要集中などにより十分なパートナーを確保できない場合や、コストが増加した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、パートナーとの関係強化や最適な確保に努めています。



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