応用地質 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

応用地質 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

応用地質は、東京証券取引所プライム市場に上場し、防災・インフラ、環境・エネルギー、国際事業を展開する地質調査のリーディングカンパニーです。直近の業績は、社会インフラの老朽化対策や国土強靱化施策を背景とした需要増により増収となった一方、販売費及び一般管理費の増加等により営業減益となっています。


※本記事は、応用地質株式会社の有価証券報告書(第69期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 応用地質ってどんな会社?


自然災害への強靭化支援や環境保全、海外インフラ整備の調査・ソリューションを提供する企業です。

(1) 会社概要


同社は1957年に設立され、1988年に店頭登録、1991年に東京証券取引所市場第二部に上場後、1995年に同市場第一部銘柄に指定されました。その後、国内外で積極的なM&Aや子会社設立を行い、地盤・環境・防災・インフラ分野で専門技術を活かした事業を拡大し、独自のポジションを確立してきました。

従業員数は連結で2,718名、単体で1,280名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は公益財団法人深田地質研究所、第3位は投資ファンドのTHE SFP VALUE REALIZATION MASTER FUND LTD.となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.20%
公益財団法人深田地質研究所 11.10%
THE SFP VALUE REALIZATION MASTER FUND LTD.(常任代理人 立花証券) 9.60%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は天野洋文氏が務めています。社外取締役の比率は55.6%です。

氏名 役職 主な経歴
天野洋文 代表取締役社長社長執行役員 1990年玉野総合コンサルタント(現 日本工営都市空間)入社。ケー・シー・エス代表取締役等を経て、2023年3月より現職。
平嶋優一 代表取締役副社長副社長執行役員 1983年富士銀行(現 みずほ銀行)入行。みずほ銀行の米州審査部長や同社事務本部長等を経て、2020年3月より現職。
五十嵐崇博 取締役副社長副社長執行役員 1985年建設省(現 国土交通省)入省。水管理・国土保全局水資源部長などを経て、2023年3月より現職。
香川眞一 取締役 常勤監査等委員 1980年同社入社。エヌエス環境常勤監査役や同社コンプライアンス室長などを経て、2025年3月より現職。


社外取締役は、尾﨑聖治(元サッポロビール執行役員東海北陸本部長)、池田陽子(明大昭平・法律事務所弁護士)、関谷恵美(日本グリーン電力開発代表取締役会長)、内藤潤(J&N法律事務所代表弁護士)、折原隆夫(元野村不動産ホールディングス取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「防災・インフラ事業」、「環境・エネルギー事業」、「国際事業」を展開しています。

防災・インフラ事業


自然災害に対する社会の強靭化を支援するソリューションサービスや、社会インフラの維持管理を支援するサービスを提供しています。主に国や地方公共団体、民間企業などを顧客とし、被害予測や防災計画の立案、自然災害による被災箇所の調査から復旧設計まで幅広い領域をカバーしています。

収益は、調査・設計・計測サービスやモニタリングシステムの構築・設置などの対価として受け取ります。事業の運営は、主に応用地質や応用リソースマネージメント、東北ボーリング、ケー・シー・エスなどの国内グループ会社が担っています。

環境・エネルギー事業


地球環境の保全や資源・エネルギーの開発・有効活用を支援するソリューションサービスを提供しています。民間企業や官公庁を中心に、環境アセスメントや土壌・地下水汚染対策、再生可能エネルギーの事業化支援、海底三次元資源探査サービスなどを手掛けています。

収益は、各種調査・コンサルティング料や、環境モニタリングシステムの設置費用などとして受け取ります。事業の運営は、主に応用地質やエヌエス環境、三洋テクノマリンなどの国内グループ会社が行っています。

国際事業


海外におけるインフラ整備や防災、資源開発に関わる製品やソリューションサービスを提供しています。北米や東南アジアなどのインフラ・建設需要を取り込み、各国の経済・社会基盤の強化に寄与しています。

収益は、インフラの長寿命化を支える非破壊検査機器や地震観測システムなどの開発・製造・販売、および現地での調査・設計・施工管理サービスの対価として受け取ります。運営は主にOYO CORPORATION U.S.A.などの海外子会社が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に拡大傾向にあり、517億円から763億円へと成長しています。一方で、経常利益や親会社株主に帰属する当期純利益は、事業環境の変動や投資負担の影響などを受け、増減を繰り返しながら推移しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 517億円 590億円 656億円 741億円 763億円
経常利益 42億円 30億円 36億円 53億円 50億円
利益率(%) 8.1% 5.0% 5.5% 7.2% 6.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 19億円 13億円 15億円 45億円 43億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も着実に積み上がっていますが、人件費等の増加により販売費及び一般管理費が膨らみ、営業利益は減少しました。売上総利益率は維持されているものの、営業利益率に低下が見られます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 741億円 763億円
売上総利益 230億円 236億円
売上総利益率(%) 31.0% 31.0%
営業利益 44億円 41億円
営業利益率(%) 5.9% 5.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が68億円(構成比35%)、研究開発費が24億円(同12%)を占めています。また、売上原価のうち、外注費が157億円(同30%)、労務費が72億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


防災・インフラ事業および環境・エネルギー事業は、国内の強靭化施策や再生可能エネルギー関連の需要が堅調に推移し増収増益となりました。一方で国際事業は、米国でのインフレや欧米の洋上風力市場の縮小などの影響を受け、減収および営業赤字となっています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
防災・インフラ事業 269億円 300億円 11億円 15億円 5.0%
環境・エネルギー事業 287億円 298億円 29億円 31億円 10.3%
国際事業 185億円 165億円 4億円 -5億円 -3.1%
調整額 - - - 0.4億円 -
連結(合計) 741億円 763億円 44億円 41億円 5.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


改善型のキャッシュ・フロー状況です。営業利益+資産売却で借入返済を進める改善局面を示しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 13億円 79億円
投資CF -27億円 21億円
財務CF -53億円 -46億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「人と自然の調和を図るとともに、安全と安心を技術で支え、社業の発展を通じて社会に貢献する」を経営理念として掲げています。事業活動を通じて顧客にソリューションを提供することが、持続可能な社会の形成に貢献し、社会・環境価値を高めることにつながると位置づけています。

(2) 企業文化


ダイバーシティはイノベーションの源泉であると考え、多様な人材を受け入れ、社員一人ひとりが持つ個性を活かしながら事業活動を行っていくことを重視しています。すべてのステークホルダーの人権を尊重し、「働きやすさ」と「働きがい」を目指した人的資本経営に取り組む文化を育てています。

(3) 経営計画・目標


2030年を見据えた長期ビジョン「OYOサステナビリティビジョン2030」のアクションプランとして、「OYO中期経営計画2026」を策定しています。2026年度に向けた目標は以下の通りです。

・連結売上高:780億円
・連結営業利益率:8.0%
・自己資本利益率(ROE):6.0%

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画のもと、セグメント戦略の推進、バランスシートの最適化、サステナブル経営の強化を基本方針としています。市場特性に即した組織再編やグループシナジーの最大化により収益性を高めるとともに、未来創造や成長投資を通じたイノベーション開発を推進し、持続的な企業価値の向上を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


ESGの取り組みにおいて、人的資本、すなわち人こそが価値向上の源泉であると考えています。ダイバーシティ&インクルージョンを推進し、性別や国籍、障がいの有無によらない採用活動を続けるとともに、多様性を有する社員がさまざまな分野や職位で活躍できるよう職場環境づくりを推し進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 45.4歳 17.1年 7,234,218円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.2%
男性育児休業取得率 95.7%
男女賃金差異(全労働者) 69.7%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 74.3%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 34.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(56.9%)、ワークエンゲージメントスコア(65pt)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 公共事業への依存リスク


国や地方公共団体等からの受注構成比が高く、財政状況の悪化や事業量の縮小に伴う発注量の減少、調達方式の変更等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は公共事業に依存した従来型のビジネスモデルからの脱却を進めています。

(2) 成果品の瑕疵責任リスク


各種調査業務等の実施や計測機器等の製造・販売において瑕疵(契約不適合)が発生し、多額の損害賠償請求を受けた場合には業績等に影響を及ぼす可能性があります。品質マネジメントシステムの導入等により品質確保と向上に努めています。

(3) 気候変動・自然災害リスク


地震や台風、豪雨等の自然災害に見舞われた場合、生産設備やデータの損傷、人的リソースの喪失等による事業活動の縮退が生じる可能性があります。事業継続計画の作成とその定期的な点検・訓練を実施し、リスク抑制に努めています。

(4) 人材の確保・育成リスク


高度な専門性を有する優秀な人材の確保・育成が進まない場合、業務遂行や業績等に影響を及ぼす可能性があります。健康経営の取り組みや働きやすい職場の形成、教育制度の充実等を推進し、リスク低減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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