船井総研ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

船井総研ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

船井総研ホールディングスは東京証券取引所プライム市場に上場し、経営コンサルティングを中心に物流やデジタル分野の支援も手がけています。直近の業績は売上高333億円、営業利益88億円と増収増益を達成し、過去最高の業績を記録するなど、中堅・中小企業向けの経営支援で順調な成長を続けています。


※本記事は、船井総研ホールディングスの有価証券報告書(第56期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 船井総研ホールディングスってどんな会社?


経営コンサルティングを中心に物流やデジタル支援も手がける総合コンサルティンググループです。

(1) 会社概要


1970年に日本マーケティングセンターとして設立され、1985年に船井総合研究所へ商号変更しました。1988年に大阪証券取引所市場第二部へ上場し、2005年に東京証券取引所市場第一部へ指定されました。2014年に持株会社体制へ移行し現在の商号となり、近年はM&Aを積極的に行い事業領域を拡大しています。

従業員数は連結で1,651名、単体で146名です。筆頭株主は船井本社で、第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は日本カストディ銀行となっています。

氏名 持株比率
船井本社 10.86%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.50%
日本カストディ銀行(信託口) 5.16%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.3%です。
代表取締役社長グループCEOは中谷貴之氏です。社外取締役比率は66.7%です。

氏名 役職 主な経歴
中谷貴之 代表取締役社長グループCEO 1991年入社。2016年船井総合研究所代表取締役社長、2021年代表取締役社長社長執行役員を経て、2023年より現職。
小野達郎 取締役専務執行役員 1987年入社。2019年取締役専務執行役員事業統括本部本部長、2023年コーポレートマネジメント本部本部長等を経て、2025年より現職。
春田基樹 取締役執行役員マネジメント本部本部長 2008年入社。経理部部長、財務部部長、コーポレートビジネス本部本部長等を経て、2026年より現職。


社外取締役は、砂川伸幸(京都大学経営管理大学院教授)、山本多絵子(ヤンマーホールディングス取締役CMO)、村上智美(ボードアドバイザーズシニアマネージャー)、中嶋乃扶子(玉山法律事務所代表)、中尾篤史(CSアカウンティング代表取締役社長)、小林章博(弁護士法人中央総合法律事務所京都事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「経営コンサルティング事業」「ロジスティクス事業」「デジタルソリューション事業」を展開しています。

経営コンサルティング事業


中堅・中小企業向けに業種やテーマ別の経営コンサルティング、経営研究会、セミナー等を提供しています。住宅・不動産、医療・介護・福祉など幅広い業種へ展開しています。
収益は顧客企業からの月次支援のコンサルティングフィーやプロジェクト報酬、経営研究会会費から得ています。運営は主に船井総合研究所が行っています。

ロジスティクス事業


物流企業や荷主企業に対し、業績向上や物流コスト削減を目的とした物流コンサルティングや、物流業務の設計から運用までを担う物流BPOサービスを提供しています。
収益は顧客からのコンサルティングフィーやBPO業務の委託料から得ています。運営は主に船井総研サプライチェーンコンサルティングが行っています。

デジタルソリューション事業


顧客のバックオフィスのDX化を支援するITコンサルティングや、WEB広告運用代行、クラウド開発、AI採用クラウドサービスの提供などを行っています。
収益はコンサルティング報酬や広告運用代行の手数料、システム開発の受託料から得ています。運営は船井総合研究所や船井総研ヒューマンキャピタルコンサルティング、アパレルウェブ等が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、売上高および経常利益ともに右肩上がりで推移しており、順調な成長を続けています。中核である経営コンサルティング事業の好調が全社の業績を牽引しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 228億円 256億円 282億円 306億円 333億円
経常利益 64億円 72億円 73億円 84億円 88億円
利益率(%) 28.3% 28.1% 26.0% 27.4% 26.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 25億円 34億円 39億円 40億円 62億円

(2) 損益計算書


売上高は着実に増加し、売上総利益や営業利益も拡大しています。コンサルティングサービスの単価上昇などが寄与し、高い利益率を維持しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 306億円 333億円
売上総利益 119億円 130億円
売上総利益率(%) 38.7% 39.1%
営業利益 83億円 88億円
営業利益率(%) 27.2% 26.4%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料が14億円(構成比34%)、役員報酬が5億円(同12%)、支払手数料が5億円(同12%)を占めています。積極的な人材投資による人件費の増加が主な要因です。

(3) セグメント収益


経営コンサルティング事業は月次支援の単価上昇や経営研究会の会員数増加により増収となりました。ロジスティクス事業やデジタルソリューション事業も順調に推移し、全セグメントで売上を伸ばしています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
経営コンサルティング事業 224億円 245億円
ロジスティクス事業 43億円 44億円
デジタルソリューション事業 40億円 45億円
連結(合計) 306億円 333億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益と資産売却等によって獲得した資金で、借入金の返済や株主還元を進める改善型のキャッシュ・フローとなっています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 70億円 79億円
投資CF -26億円 20億円
財務CF -70億円 -68億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は26.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も72.4%で市場平均を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「サステナグロースカンパニーをもっと。」をグループパーパスとして掲げています。変化が激しい不確実性の時代においても、力強く持続的に成長し続けられる企業をサステナグロースカンパニーと定義し、そのような企業を数多く輩出すること、また自らもそのような企業になることを目指しています。

(2) 企業文化


同社はサステナブルな社会を実現するための重要な価値創造の源泉として、人材に対する重要性を認識しています。グループ共通のコアバリューをベースに、より多様な人材がその長所を存分に発揮できる環境をデザインし、採用・育成・活躍の好循環により、グループの持続的成長を実現する文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2026年から2028年の中期経営計画において、中堅・中小企業を中心としたトランスフォーメーションコンサルティングを強力に推進し、持続的な成長を目指しています。2028年12月期における具体的な数値目標は以下の通りです。

・売上高:460億円
・営業利益:115億円

(4) 成長戦略と重点施策


国策を追い風に市場拡大が予想される中堅企業向けのコンサルティング領域へターゲットを拡大し、AIやM&A、人的資本経営などのトランスフォーメーションコンサルティングを推進します。また、採用の強化と定着支援による人的資本基盤の拡充を図り、資本効率の向上と株主還元の強化を通じて企業価値の向上に努めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、多様な人材の活躍こそが持続的成長につながると考え、「コンサルタント人数の拡大」と「従業員生涯価値の拡大」を掛け合わせた人的資本経営を推進しています。若手の早期育成やAI活用の推進による生産性向上、持続的な年収アップや戦略的兼務を通じた期待在籍年数の拡大に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 40.1歳 9.8年 7,390,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 55.3%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 62.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 62.9%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 52.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、期待在籍年数(7.0年)、退職率(14.2%)、従業員満足度(80以上)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経営コンサルティング事業への依存


同社グループの収益は経営コンサルティング事業に大きく依存しています。顧客開拓手法が有効に機能しなくなる事態や、市場の競争激化、顧客ニーズとの乖離が生じた場合、グループ全体の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 優秀なコンサルタントの確保と定着


事業拡大には優秀なコンサルタントの増員が不可欠です。求める人材の採用や育成が計画通りに進まない場合や、能力の高い重要な人材が離職した場合には、サービスの質が低下し、業績に一時的な影響を与える可能性があります。

(3) 情報セキュリティの確保


コンサルティング業務の性質上、顧客の機密情報や個人情報を多数保有しています。社内規程の整備やシステム面での対策を強化していますが、不測の事態により情報の流出やシステム停止が生じた場合、信用の低下や損害賠償等に発展するリスクがあります。

(4) ブランド価値の維持


創業者から受け継いだブランドは事業展開において極めて重要です。提供するサービスの質が低下し顧客の信頼を損なう事態や、コンプライアンス上の問題が発生した場合、ブランド価値が毀損し事業基盤に悪影響を及ぼす恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。