KeyHolder 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

KeyHolder 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

KeyHolderは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、総合エンターテインメント、映像制作、広告代理店、物流の4事業を展開する企業グループです。直近の業績は、物流会社の通期寄与などにより売上収益が拡大して増収となった一方で、前期の特殊要因の反動や先行投資の影響などにより減益となっています。


※本記事は、株式会社KeyHolder の有価証券報告書(第59期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. KeyHolderってどんな会社?


総合エンターテインメント事業を中核に、映像制作や広告代理店、物流事業を多角的に展開する企業です。

(1) 会社概要


1967年にゲーム機設置営業を目的にシグマとして設立されました。その後アドアーズへの社名変更を経て、2017年に現社名に変更しています。近年はM&Aを積極的に推進しており、2018年に乃木坂46やSKE48などの運営管理・映像制作関連会社を相次ぎ子会社化し、総合エンターテインメント企業へ転換しました。

従業員数は連結で1,053名、単体で22名体制です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は金融事業を展開するJトラストで、第2位は音楽プロデューサーの秋元康氏、第3位は表参道キャピタルとなっています。

氏名 持株比率
Jトラスト 30.06%
秋元 康 7.65%
表参道キャピタル 7.29%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は大出悠史氏が務めています。社外取締役比率は11.1%です。

氏名 役職 主な経歴
大出 悠史 代表取締役社長 三井住友銀行を経て、2017年同社に入社。経営企画部長、各関連会社役員を歴任し、2022年3月より現職。
藤澤 信義 取締役会長 パルティール債権回収代表取締役会長等を経て、2008年Jトラスト代表取締役会長に就任。2019年6月より現職。
森田  篤 取締役副社長 丸紅等を経て、2016年ワイゼンラージ代表取締役社長に就任。同社取締役等を経て、2023年3月より現職。
北川 謙二 取締役副社長 東通、ノース・リバー代表取締役社長等を経て、2020年同社取締役に就任。2023年3月より現職。
金谷  晃 取締役 日本システム技術等を経て、1997年イッコー(現Jトラスト)入社。2017年同社に入社し、2022年3月より現職。


社外取締役は、鷲尾誠(銀座第一法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「総合エンターテインメント事業」「映像制作事業」「広告代理店事業」「物流事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 総合エンターテインメント事業


タレントやアイドルなどの芸能プロダクションの運営・管理、ライブやイベントの企画から運営、さらにはゲームアプリの開発・運営を展開しています。乃木坂46関連のグッズ販売や、所属アーティストのイベント開催、テレビ番組出演などを幅広く行っています。

主にチケット収入やグッズ販売、メディア出演料、アプリ内課金が収益源です。運営はゼスト、ノース・リバー、10ANTZなどの各グループ会社が行っています。

(2) 映像制作事業


テレビのバラエティ番組や音楽ビデオ、ドラマ、映画などの各種映像コンテンツの企画から制作を手掛けています。また、映像制作に係る機材のレンタルやポスプロ業務、制作スタッフの養成や派遣も行っています。

放送局からの番組制作費や映像制作会社からの人材派遣料などが主な収益源です。運営はUNITED PRODUCTIONSやTechCarryなどの各グループ会社が行っています。

(3) 広告代理店事業


タレントやアーティストなどのキャスティング業務に加え、デジタル広告やプロモーションの企画開発、インターネットメディア事業を展開しています。各種SNSプラットフォーム向けの動画広告制作なども手掛けています。

企業などの広告主からの広告出稿費やコンテンツ制作料が主な収益源です。運営はallfuzやFA Projectなどの各グループ会社が行っています。

(4) 物流事業


関東および関西を中心とした全国各地への運送事業と、アミューズメント機器や一般貨物の保管、倉庫事業を展開しています。パチンコホール向けの精密機器なども厳格な管理のもとで取り扱っています。

顧客からの運送料や倉庫における保管料、入出庫作業料などが主な収益源です。運営はトポスエンタープライズが行っています。

(5) その他事業


報告セグメントに含まれない事業として、不動産賃貸事業やアミューズメント向け景品等の卸売事業、ホテル事業、コンビニエンスストアの運営、およびステーキハウスの飲食事業などを展開しています。

不動産の賃料収入やホテル宿泊料、飲食店での飲食代金、商品の販売代金などが主な収益源です。運営は同社のほか、トポスエンタープライズ、Red Listなどの各グループ会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益は直近5期間を通じて右肩上がりの成長を継続しており、M&Aなどの事業規模拡大が大きく寄与しています。一方、利益面では年度によって変動が見られ、直近では先行投資や特殊要因の剥落により一時的に減益となっています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 168億円 221億円 275億円 311億円 356億円
税引前利益 7億円 22億円 19億円 26億円 11億円
利益率(%) 4.1% 9.9% 6.9% 8.5% 3.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 19億円 21億円 25億円 9億円

(2) 損益計算書


売上収益の拡大に伴い売上総利益も増加していますが、営業利益は前期に計上された負ののれん発生益の反動などにより大幅な減益となっています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 311億円 356億円
売上総利益 51億円 63億円
売上総利益率(%) 16.5% 17.8%
営業利益 28億円 16億円
営業利益率(%) 9.0% 4.4%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が24億円(構成比42%)、支払手数料が12億円(同22%)を占めています。売上原価では、外注費が156億円(構成比53%)、人件費が47億円(同16%)となっています。

(3) セグメント収益


総合エンターテインメント事業は関連グッズの販売好調やコスト削減により大幅な増益となりました。一方で、映像制作事業は先行費用の計上で減益となり、広告代理店事業は広告出稿の減少と体制強化コストにより営業赤字となっています。物流事業は新規子会社の通期寄与で売上が拡大しました。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
総合エンターテインメント事業 145億円 147億円 6億円 18億円 12.3%
映像制作事業 68億円 65億円 2億円 0.9億円 1.5%
広告代理店事業 80億円 66億円 2億円 -0.3億円 -0.4%
物流事業 13億円 56億円 27億円 4億円 7.5%
その他 8億円 25億円 1億円 1億円 4.6%
調整額 -2億円 -2億円 -9億円 -8億円 -
連結(合計) 311億円 356億円 28億円 16億円 4.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益と資産売却等で借入返済を進める改善局面となっています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 23億円 32億円
投資CF -39億円 3億円
財務CF 6億円 -24億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.9%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も41.2%といずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「世の中の常識にとらわれない独創性と誠実さを通じて幸せで豊かな未来をつくります」というグループ企業理念のもと、グループ間の連携とシナジーを発揮し、グループ全体として発展していくことを通じて社会への貢献を目指しています。また、上場企業として社会的責任も重視し、継続的な企業価値の向上を図っています。

(2) 企業文化


コンプライアンス(法令遵守)や内部統制の徹底を重視し、地域に密着した事業グループとして地域社会への貢献活動などの社会的責任を果たす文化を根底に据えています。「グループ行動理念」および「コンプライアンス基本方針」を定め、全社一丸となった法令遵守の徹底を図り、企業としての健全性の向上に努めています。

(3) 経営計画・目標


次期の連結業績見通しとして具体的な目標数値を設定し、その達成に向けた経営を行っています。また、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた取り組みとして、高ROEの水準維持やPBR1倍割れの解消などを重要な目標として推進しています。

* 売上収益:360億円
* 営業利益:16億円
* 親会社の所有者に帰属する当期利益:10億円

(4) 成長戦略と重点施策


積極的なM&Aの実施により現在のグループ体制を構築してきましたが、今後を見据えた課題として「新たなIPコンテンツの創出」「キャッシュポジションの有効活用」「不採算事業の整理による収益体質の強化」を掲げています。それぞれの課題へ注力し、国内外の動向に配慮しながら継続的成長投資を推進することで、持続的な事業領域と規模の拡大を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最も重要な経営資源であると位置づけ、従業員一人ひとりの多様な個性や志向を尊重し、最大限の能力を発揮できる職場環境や企業風土の醸成に取り組んでいます。年齢や性別等を区別することなく、意欲と能力のある従業員に平等に管理職登用の機会を提供する人事制度の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 40.4歳 8.5年 6,037,000円


※平均年間給与は基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 24.0%
男性労働者の育児休業取得率 50.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 83.8%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 83.8%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) -


パート・有期労働者の男女賃金差異は該当者がいないため記載がありません。また、提出会社は公表義務の対象ではないため、一部指標は連結子会社の数値を掲載しています。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、男性の従業員割合(58.2%)、女性の従業員割合(41.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) アーティストやタレント等のマネジメントリスク

所属アーティスト等との専属契約の不更新やトラブル、人気低迷、不祥事などによる活動休止が発生した場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、第三者の知的財産権等の権利侵害による損害賠償等の訴訟リスクも存在します。

(2) 広告やテレビ番組制作における市場環境の変動

映像制作や広告代理店事業は、広告主である企業の業績や国内景気の影響を受けやすい構造にあります。メディアの多様化によるテレビ放送の媒体価値低下や、技術革新に伴う広告媒体の構造変化に適切に対応できない場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。

(3) 物流事業における人材不足とコスト高騰

「2024年問題」による労働力不足が深刻化する中、ドライバー確保や輸送効率向上への対応が遅れた場合、事業環境が悪化するリスクがあります。また、燃料費や人件費の高騰分を適切なタイミングで価格転嫁できない場合、収益性が圧迫される可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。