GMOインターネットグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

GMOインターネットグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するGMOインターネットグループは、ドメインやホスティングなどのインターネットインフラ事業を中核とし、セキュリティ、広告メディア、金融、暗号資産事業などを総合的に展開しています。直近の業績はインフラ事業が牽引して増収増益を達成するなど、堅調に推移しています。


※本記事は、GMOインターネットグループの有価証券報告書(第35期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. GMOインターネットグループってどんな会社?


インターネットインフラ事業を中核に、総合的なインターネットサービスを展開する企業グループです。

(1) 会社概要


1991年に設立され、1995年にインターネット接続事業、1997年にホスティング事業を開始しました。1999年に上場を果たし、同年ドメイン事業を開始しました。その後、決済事業や証券事業、暗号資産事業などへM&Aや新規参入を通じて事業領域を拡大し、2025年には持株会社体制へ移行しています。

従業員数は連結で6,484名、単体で197名です。筆頭株主は創業者の熊谷正寿事務所で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は創業者の熊谷正寿氏となっています。

氏名 持株比率
熊谷正寿事務所 35.66%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 13.15%
熊谷 正寿 8.98%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役グループ代表会長兼社長執行役員・CEOは熊谷正寿氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
熊谷正寿 代表取締役グループ代表会長兼社長執行役員・CEO 1991年同社代表取締役に就任。グループ各社の役員を歴任し、2022年3月より現職。
安田昌史 取締役グループ副社長執行役員・CFO グループ代表補佐 2000年同社入社、2002年取締役に就任。グループ各社の役員を歴任し、2026年1月より現職。
西山裕之 取締役グループ副社長執行役員・COOグループ代表補佐セキュリティ事業担当 1999年まぐクリック(現GMOインターネット)入社。2001年同社取締役。2026年1月より現職。
相浦一成 取締役グループ副社長執行役員グループ決済部門統括 1986年日本アイ・ビー・エム入社。2006年同社取締役。2022年3月より現職。
伊藤正 取締役グループ副社長執行役員グループ代表補佐グループインフラ部門統括 1997年同社入社、2004年取締役に就任。グループ各社の役員を歴任し、2025年3月より現職。
松井秀行 取締役(監査等委員) 1989年大和銀行入行。2012年同社入社。グループ各社の役員を歴任し、2023年3月より現職。


社外取締役は、郡司掛孝(税理士)、増田要(弁護士)、小武守純子(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「インターネットインフラ事業」「インターネットセキュリティ事業」「インターネット広告・メディア事業」「インターネット金融事業」「暗号資産事業」「インキュベーション事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) インターネットインフラ事業


ドメインの管理・販売、クラウド・レンタルサーバーの提供、ECプラットフォームの構築支援、各種決済サービスやインターネット接続サービスなどを個人・法人向けに幅広く提供しています。

顧客からドメイン登録料、サーバー利用料、EC店舗の利用料、決済手数料などの各種サービス利用料を継続的に受け取るストック型の収益モデルです。運営はGMOインターネットやGMOペパボ、GMOペイメントゲートウェイなどが担っています。

(2) インターネットセキュリティ事業


電子証明書発行や電子契約サービスなどの暗号セキュリティ、WEBやアプリの脆弱性診断などのサイバーセキュリティ、模倣品検知などのブランドセキュリティサービスを提供しています。

顧客からSSLサーバー証明書の発行手数料、電子契約サービスのシステム利用料、脆弱性診断のコンサルティング費用などを受け取ります。運営はGMOグローバルサイン・ホールディングスやGMOサイバーセキュリティbyイエラエなどが行っています。

(3) インターネット広告・メディア事業


広告主向けの総合的なインターネット広告サービスや、自社運営のインターネットメディアでの広告配信、店舗向け集客支援の検索エンジン最適化サービスなどを提供しています。

広告主からインターネット広告の出稿料や運用代行手数料、自社メディアへの広告掲載料などを受け取ります。運営はGMOインターネットやGMOメディア、GMO TECHなどが担っています。

(4) インターネット金融事業


個人投資家を対象としたオンライン証券取引、外国為替証拠金取引(FX)、CFD取引などの各種金融サービスを提供しています。

顧客から証券取引に伴う委託手数料や、FX取引などのスプレッド(売値と買値の差額)、信用取引にかかる金利などを受け取ります。運営は主にGMOフィナンシャルホールディングス傘下のGMOクリック証券が行っています。

(5) 暗号資産事業


個人投資家を対象とした暗号資産の現物取引やレバレッジ取引の提供、マイニングセンターの運営、ステーブルコインの発行・提供などを行っています。

暗号資産取引におけるスプレッド収益や手数料などを主な収益源としています。運営はGMOコインや米国のGMO-Z.com Trust Companyなどが担っています。

(6) インキュベーション事業


インターネット関連企業を中心とした国内外の未上場企業への投資事業を展開し、出資先企業の事業拡大や企業価値向上の支援を行っています。

投資先企業の企業価値向上に伴うキャピタルゲイン(株式売却益)や、投資先からの配当金などを主な収益としています。運営はGMO VenturePartnersが運用する各種投資事業有限責任組合などが担っています。

(7) その他


不動産賃貸・管理事業として、賃貸用不動産をはじめとする事業用不動産の保有・運用などを行っています。

テナント等の顧客から事業用不動産の賃貸料や管理費などを受け取ります。運営は主に同社が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


表示期間において、売上収益と税引前利益はともに増加傾向にあり、増収増益を達成しています。利益率も改善を見せており、安定した成長と収益性の向上がうかがえます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 2760億円 2853億円
税引前利益 477億円 529億円
利益率(%) 17.3% 18.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 148億円 167億円

(2) 損益計算書


売上収益が伸びる中で、売上総利益と営業利益も順調に増加しています。営業利益率も上昇しており、本業における高い収益力とコスト管理の適切さが確認できます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 2760億円 2853億円
売上総利益 228億円 265億円
売上総利益率(%) 8.3% 9.3%
営業利益 495億円 591億円
営業利益率(%) 17.9% 20.7%

(3) セグメント収益


インターネットインフラ事業が好調に推移して全体を牽引したほか、インターネット金融事業も大幅な増益を記録しました。一方で、暗号資産事業やインキュベーション事業は減収減益または赤字となるなど、事業ごとの業績にばらつきが見られます。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
インターネットインフラ事業 1644億円 1757億円 343億円 417億円 23.7%
インターネットセキュリティ事業 199億円 220億円 19億円 14億円 6.2%
インターネット広告・メディア事業 354億円 350億円 38億円 28億円 8.0%
インターネット金融事業 437億円 394億円 52億円 132億円 33.6%
暗号資産事業 96億円 83億円 38億円 24億円 28.8%
インキュベーション事業 1億円 - 27億円 -4億円 -
その他 77億円 114億円 3億円 1億円 0.9%
調整額 -48億円 -66億円 5億円 1億円 -
連結(合計) 2760億円 2853億円 525億円 613億円 21.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは積極型に分類されます。本業の営業活動で安定的に資金を生み出しつつ、外部からの資金調達も活用して設備投資や事業拡大に向けた積極的な投資活動を行っている状況がうかがえます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 867億円 555億円
投資CF -715億円 -99億円
財務CF 569億円 375億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は4.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「すべての人にインターネット」というコーポレートキャッチを掲げています。インターネットのインフラおよびサービスインフラというインターネットの「場」の提供に経営資源を集中し、「日本を代表する総合インターネットグループ」として新たなインターネットの文化や産業、お客様の「笑顔」と「感動」を創造し、社会と人々に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社グループでは、創業の精神である「スピリットベンチャー宣言」を含む「GMOイズム」の共有と徹底を図っています。すべてのパートナー(従業員)がその価値観を共有する組織を目指し、やりたい人が自ら手を挙げる「立候補」の仕組みや、報酬の透明性を高める「ガラス張り」など、ベンチャー精神を大切にしながら挑戦を続け、ともに成長できる文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、2051年までを見据えた定量的目標である「55カ年計画」を掲げています。インターネット産業において圧倒的なNo.1サービスを継続的に創り出すことを重要な経営課題と捉え、技術優位性とコスト競争力のあるサービスの開発に注力しています。また、技術力の源泉となるエンジニアやクリエイター、ディレクターの比率について、グループ全体での目標値を60.0%に設定しています。

(4) 成長戦略と重点施策


持株会社体制への移行に伴い「権限の分散」によるスピード経営とグループシナジーの追求を一層強化します。「AIで未来を創るNo.1企業グループ」の実現に向け、業務効率化や既存サービスの質向上にAIを活用するほか、海外市場での事業基盤確立のため統一ブランド「Z.com」を活用したグローバル展開を推進します。さらに、アドテクノロジーの強化や暗号資産事業の拡大など、各事業での成長戦略も加速させます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、サービスを創り出すエンジニア・クリエイター・ディレクターを「グループの宝」であり「人財」として尊重し、その採用と育成に注力しています。人事制度では「四半期評価」「360度ヒヤリング」「立候補」「報酬の見える化」の4大基本方針を導入し、パートナーのモチベーション向上を図っています。さらに、AIツール利用費用の支援や育成プログラムを通じた「AI人財」のリスキリングも推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 39.0歳 6.4年 8,412,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 18.8%
男性育児休業取得率 60.0%
男女賃金差異(全労働者) 82.0%
男女賃金差異(正規雇用) 70.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 141.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンジニア・クリエイター等の比率を示すつくる人比率(50.8%)、AIブースト支援金のパートナー一人当たり利用額(7,234円)、グループ定期公募制度の決定実数(22名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) リスクマネジメントの有効性に関するリスク


新規事業分野への急速な進出や事業の拡大に伴い、予測が困難なリスクが発生するなどして、既存のリスクマネジメント方針や手続きが有効に機能しない可能性があります。これにより、同社グループの事業運営や経営成績、財務状況に悪影響を及ぼすリスクが存在します。

(2) 情報セキュリティに関するリスク


顧客の個人情報や機密情報の管理において、悪意のある第三者による不正アクセスやサイバー攻撃、内部での不適切な取り扱いによる情報漏えいなどが発生する可能性があります。情報流出が起きた場合、信用毀損や多額の損害賠償請求が生じ、業績に重大な影響を与えるリスクがあります。

(3) AI技術への依存と外部サービスリスク


AI技術の活用において競合他社に後れを取るリスクや、同社グループのサービス品質が外部のAI基盤およびLLMプロバイダーに依存することで、外部サービスの品質劣化や仕様変更が直接影響を及ぼす可能性があります。また、AIに起因する脆弱性や誤動作による信頼性の低下も懸念されます。

(4) 優秀な人財の確保・育成に関するリスク


圧倒的No.1のサービスを開発・提供し続けるためには、優秀なエンジニアやクリエイターの確保が不可欠です。しかし、人財獲得競争の激化により優秀な人財の採用が困難になったり、既存の人財が社外へ流出したりした場合、事業成長やAI技術の適切な運用に支障を来すリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。