SM ENTERTAINMENT JAPAN 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SM ENTERTAINMENT JAPAN 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SM ENTERTAINMENT JAPANは東京証券取引所グロース市場に上場しており、有名韓国アーティストの日本におけるマネジメントやコンサート企画運営を行うエンターテインメント事業と、韓国コンテンツの有料放送や配信等を行うライツ&メディア事業を展開しています。直近の業績は増収減益となっています。


※本記事は、株式会社SM ENTERTAINMENT JAPANの有価証券報告書(第55期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. SM ENTERTAINMENT JAPANってどんな会社?


同社は、有名韓国アーティストの日本マネジメント事業と、韓国コンテンツの放送・配信事業を展開しています。

(1) 会社概要


1998年にデジタルアドベンチャーとして発足し、2000年に株式を上場しました。2009年には自社テレビ局を開局して放送事業へ進出しています。2020年にSMEJと合併してアーティストの国内マネジメントを開始し、2025年6月に現在のSM ENTERTAINMENT JAPANへ商号を変更しました。

同社の従業員数は連結で104名、単体で104名となっています。筆頭株主は親会社であるSMEJ Holdingsであり、第2位は金融機関のKOREA SECURITIES DEPOSITORY-SAMSUNGです。

氏名 持株比率
SMEJ Holdings 66.07%
KOREA SECURITIES DEPOSITORY-SAMSUNG 7.51%
KSD-MIRAE ASSET SECURITIES(CLIENT) 7.22%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は金東佑氏が務めています。社外取締役比率は14.3%です。

氏名 役職 主な経歴
金東佑 取締役社長(代表取締役) 2004年にエスエム・エンタテインメントに入社。その後、関連会社の代表取締役などを経て、2022年より現職。
許星振 取締役ライツ&メディア部門長 2010年にアクロス営業部長に就任。2014年に同社商品事業本部長に就き、2022年より現職。
金亨柱 取締役財務管理部門長 2004年に韓国で公認会計士登録。PwCあらた有限責任監査法人などを経て、2024年より現職。


社外取締役は、金紀彦(弁護士法人オルビス東京事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「エンターテインメント事業」および「ライツ&メディア事業」を展開しています。

エンターテインメント事業


韓国有名アーティストの日本における独占マネジメントを担い、ドームやアリーナでのコンサート開催、音楽活動、各種メディア出演等の企画運営を行っています。また、CDやDVD、グッズの販売を一気通貫して行うことで、ロイヤリティの高いファンコミュニティを形成しています。

主な収益源は、コンサートやイベントのチケット販売収入、アーティストの楽曲利用等に伴う印税収入、およびグッズや商品の販売収入です。事業の運営は主にSM ENTERTAINMENT JAPANが担当し、一部事業は子会社のエブリシングジャパンも担っています。

ライツ&メディア事業


自社テレビ局での有料放送サービスを中心に、韓国の地上波大型ドラマ、ニュース、K-POP、バラエティ等のコンテンツを放送・配信しています。また、テレビCMの制作や日本語字幕の制作、オンラインでの各種コンテンツ配信も展開しています。

主な収益源は、CS放送やCATV等での有料放送を通じた視聴料収入と、韓国ドラマなどの放映権や配信権、商品化権を他の事業者へライセンス供与することで得られるロイヤリティ収入です。事業の運営はSM ENTERTAINMENT JAPANが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一貫して増加傾向にあり、直近5年間で順調に事業規模を拡大しています。経常利益は一時マイナスとなっていましたが、黒字転換を果たしたのち、直近の期では増収ながら減益となっています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 56億円 71億円 89億円 97億円 102億円
経常利益 -6億円 -4億円 2億円 4億円 2億円
利益率(%) -11.2% -5.2% 2.1% 3.9% 1.9%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.3億円 -3億円 3億円 5億円 4億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高は増加しているものの、売上総利益および営業利益は減少しています。これに伴い、売上総利益率と営業利益率も低下する結果となりました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 97億円 102億円
売上総利益 21億円 20億円
売上総利益率(%) 21.2% 19.8%
営業利益 4億円 2億円
営業利益率(%) 3.7% 1.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が5億円(構成比27%)、支払手数料が5億円(同25%)を占めています。

(3) セグメント収益


エンターテインメント事業では、主力アーティストによる国内ツアーや大型イベントの開催により動員数が堅調に推移し、増収となりました。一方でライツ&メディア事業は、多チャンネル市場の縮小傾向などにより減収となっています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
エンターテインメント事業 73億円 78億円
ライツ&メディア事業 25億円 24億円
連結(合計) 97億円 102億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、事業活動の維持拡大に必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

営業活動によるキャッシュ・フローは、エンターテインメント事業やライツ&メディア事業における収益変動に対応しつつ、既存事業の業績改善や内製化による費用削減を進めております。投資活動によるキャッシュ・フローは、新規IP育成やデジタル技術活用への先行投資、旅行事業における内製化推進などに充当しております。財務活動によるキャッシュ・フローは、必要に応じて銀行借入を選択し、機動的な資金調達を行っております。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF -6億円 14億円
投資CF 6億円 -0.5億円
財務CF -0.0億円 -1億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「韓流ビジネスを主軸としたメディアコンテンツ企業として、人々の生活をより楽しく、より豊かにし、社会貢献すること」を経営理念に掲げています。常に利用者・顧客の視点に立ったサービスを提供し、中長期的な観点からステークホルダーに利益を還元できるよう、企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


経営の基本方針において、「社員をはじめとした構成員の自主性を尊重し、その資質を充分に発揮できる企業文化の育成に努める」ことを重視しています。変化の激しい市場環境下で迅速な意思決定を行い、特定のアーティストに依存しない持続的な成長を実現するための能動的な組織体制の構築を推進しています。

(3) 経営計画・目標


同社の事業はアーティストの活動や版権の市場価格などにより年度ごとの業績変動が大きくなる傾向があるため、各事業の収益をプロジェクト単位で管理しています。具体的な数値目標は設定されていませんが、全体での営業利益および営業利益率の向上を目標とし、資本効率を意識した戦略的資源配分を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


従来のブランド力に依存した受動的な運営から脱却し、デジタル施策を駆使した戦略的な国内マーケティングを通じて集客を大型会場へ集約させ、興行効率と利益率の最大化を図ります。また、音楽制作による熱狂をグッズ販売や旅行事業などへ波及させるほか、バーチャルアーティストなどオリジナルIPの育成へ経営資源を重点的に配分する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、「人」を付加価値の源泉として最も価値ある資本と捉え、人的資本の強化を経営上の最重要課題に位置づけています。年齢や性別、国籍を問わず多様性を尊重し、リファラル採用や外部の専門人材の登用を推進しています。また、OJTと外部経験者の知見を融合させた実践的な研修プログラムを導入し、個々の能力開発と自律性を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 38.5歳 5.5年 6,067,000円

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 42.9%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用労働者) -
男女賃金差異(パート・有期労働者) -


※同社は公表義務の対象ではないため、有報には男女賃金差異の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) アーティストの活動休止・離脱リスク


同社の事業は韓流コンテンツを中心としているため、主要なアーティストが兵役やその他の理由で芸能活動を休止し、グループ活動が制限されることでファン離れが生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、アーティスト自身による法令違反や信用失墜行為等のトラブルが報道された場合には、レピュテーションリスクが生じるおそれがあります。

(2) 海外取引に伴う為替・法的リスク


ドラマ等の映像作品をはじめとする収益源のコンテンツを主に韓国から調達しているため、外貨建取引による為替レートの変動リスクを負っています。支払時期の調整等でリスク軽減に努めているものの、著作権に関する法的規制や税法上の問題のほか、国際関係の変化が事業展開に影響を与える可能性があります。

(3) コンテンツの買付と著作権管理のリスク


映像作品の買付・製作では過剰な先行投資を避けるよう制限を設けていますが、視聴率の低迷などで投資額の回収が見込めなくなった場合には損失が生じる可能性があります。また、インターネット上での著作権や肖像権の権利侵害に対して法的な保護が十分に受けられず、収益機会の損失につながるリスクも存在します。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。