応用技術 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

応用技術 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

応用技術は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、製造・建設業向けのソリューションや環境・防災系のエンジニアリングサービスを展開しています。直近の業績は、ソフトウェア販売の契約形態変更等により減収となったものの、利益面では大幅な増益と利益率の改善を達成しています。


※本記事は、応用技術株式会社の有価証券報告書(第43期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 応用技術ってどんな会社?


同社は、製造業や建設業向けのシステム開発と、環境・防災分野の解析技術に強みを持つエンジニアリング企業です。

(1) 会社概要


同社は1984年にエンジニアリングソリューション業務を目的に設立されました。2002年に日本証券業協会(現・東京証券取引所スタンダード市場)へ店頭登録を行っています。2004年には情報サービス大手のトランス・コスモスに対して第三者割当増資を実施し、資本提携を結びました。

現在の従業員数は単体で270名です。筆頭株主は親会社であり情報処理サービス事業を展開するトランス・コスモスで、第2位および第3位には投資事業有限責任組合が名を連ねています。

氏名 持株比率
トランス・コスモス 60.22%
光通信KK投資事業有限責任組合 6.50%
UH Partners 2投資事業有限責任組合 3.06%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は船橋俊郎氏が務めています。また、役員9名のうち3名が社外取締役であり、社外取締役比率は33.3%となっています。

氏名 役職 主な経歴
船橋 俊郎 代表取締役社長 1985年入社。産業システム事業部長などを経て、2010年取締役就任。2016年より現職。
小西 貴裕 代表取締役専務DX事業統括統括責任者 2002年入社。ソリューション本部事業企画室長等を経て、2020年取締役就任。2024年より現職。
岩越 弘行 取締役DX事業統括統括副責任者 1988年入社。産業事業部長、ソリューション本部本部長等を経て、2021年取締役就任。2024年より現職。
門松 美枝 取締役(非常勤) 1985年トランス・コスモス入社。同社BPOサービス統括の要職等を歴任し、2020年より現職。
古原 広行 取締役(非常勤) 1989年トランス・コスモス入社。同社管理本部長等の要職を歴任し、2025年より現職。
梶浦 正人 取締役(非常勤) 1992年トランス・コスモス入社。同社BPOサービス統括等の要職を歴任し、2025年より現職。


社外取締役は、竹中宣雄(元ミサワホーム社長)、中尾敏明(元スミセイ損害保険執行役員大阪営業部長)、恩田学(GTM税理士法人代表社員)の3名です。

2. 事業内容


同社グループは、「ソリューションサービス事業」および「エンジニアリングサービス事業」を展開しています。

(1) ソリューションサービス事業


製造業や建設業向けに、生産性と品質の向上に役立つソリューションや、営業活動・アフターサービスを支援する独自開発のシステム等を提供しています。近年は建設業界のBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)化推進に伴うサービスにも注力しています。

収益は、独自開発したソフトウェアの販売やサブスクリプションサービスの提供、および受託開発などから得ています。運営は主に応用技術が行っています。

(2) エンジニアリングサービス事業


データ解析や数値シミュレーション技術をベースに、主に環境分野や防災分野を対象とした計算および解析サービスを提供しています。気候変動に伴う洪水対策支援や都市型浸水対策、スマートシティ等のまちづくり支援業務を扱っています。

収益は、国や地方自治体、ゼネコン等の顧客からの環境アセスメントや防災系エンジニアリング業務の受託から得ています。運営は応用技術が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は第42期まで増加傾向が続きましたが、当期はソフトウェア販売の契約形態が仲介契約へ移行した影響等により減収となりました。一方、経常利益および当期利益は着実に成長しており、利益率も17%台まで上昇するなど、収益性の向上が見られます。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 64.5億円 70.8億円 74.2億円 78.4億円 74.5億円
経常利益 10.2億円 10.3億円 10.5億円 10.0億円 12.8億円
利益率(%) 15.9% 14.5% 14.1% 12.8% 17.2%
当期利益 7.1億円 7.4億円 7.2億円 7.3億円 9.1億円

(2) 損益計算書


売上高の減少にもかかわらず、売上総利益は増加しており、売上総利益率が大きく改善しています。また、営業利益も二桁成長を達成し、高収益体質への転換が進んでいることが伺えます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 78.4億円 74.5億円
売上総利益 20.1億円 22.9億円
売上総利益率(%) 25.6% 30.8%
営業利益 9.4億円 12.0億円
営業利益率(%) 12.0% 16.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3.8億円(構成比35%)、賞与が1.3億円(同12%)、保守料が1.2億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


ソリューションサービス事業は売上減少となったものの、受託開発が堅調に推移し増益となりました。エンジニアリングサービス事業は、水防災やまちづくり支援業務の伸長により増収増益を達成しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
ソリューションサービス事業 57.5億円 53.5億円 9.5億円 10.8億円 20.3%
エンジニアリングサービス事業 20.9億円 21.1億円 5.3億円 6.4億円 30.6%
調整額 - - -5.4億円 -5.3億円 -
連結(合計) 78.4億円 74.5億円 9.4億円 12.0億円 16.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 7.5億円 13.6億円
投資CF -0.4億円 -0.4億円
財務CF -1.7億円 -1.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.6%で市場平均を上回っており、財務の安定性を測る自己資本比率も76.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「課題を価値に変えるイノベーション・カンパニー~未来技術ですべての人を幸せにする~」を企業理念に掲げています。ITおよび解析技術を用いて、自然や住環境の安全・安心、製造業の効率化、建設・土木業界の生産性向上など、社会の根幹を支える課題解決に取り組むことを使命としています。

(2) 企業文化


国内のエンドユーザーに絞り込み、ユーザーの本質的な欲求をつかんで最適なソリューションを提供する「エンドユーザ指向」を重視しています。また、「守りに入った瞬間から衰退が始まる」との意識を経営幹部で徹底し、重点分野や新規事業分野へのパワーシフトを絶えず行う「攻めの経営姿勢」を企業文化として根付かせています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「OGI GrowUp2028」を推進しています。最大の経営指標として「営業利益の絶対額」を掲げ、これを最大化するために売上高営業利益率の向上を目指しています。また、株主重視の観点から1株当たり当期純利益や、ソリューションを提供する顧客数も重要な経営指標として認識しています。

(4) 成長戦略と重点施策


カーボンニュートラルを起点とした「脱炭素社会に向けた技術サービスの構築・提供」や、製造・建設業のDX化推進といった「マーケット環境変化への対応」を重点課題としています。さらに、SaaSやサブスクリプションサービスによる「ストックビジネスの拡大」や、海外のスタートアップとの連携を含む「海外企業との技術提携」により、安定した成長基盤の確立を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業推進において最も重要な課題は「人材の確保・育成」であると位置づけています。即戦力キャリアの採用や新卒採用の強化、多国籍人材の採用に注力しています。また、従業員が能力を最大限に発揮できるよう、カジュアルワークや在宅勤務の導入、資格取得奨励などを行うとともに、風通しの良い企業風土の醸成に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 44.1歳 12.0年 7,397,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は公表義務の対象ではないため、有報には本稿の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途採用比率(74.2%)、中途採用者の管理職への登用比率(56.0%)、年次有給休暇取得日数(11.7日)、従業員の女性比率(19.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) IT関連市場の技術革新

技術革新のスピードが加速しており、業界標準や市場ニーズが急速に変化しています。市場ニーズや先端技術の調査・研究に努めていますが、予想を超える急速な変化への対応が遅れた場合、提供する製品やサービスの競争力が低下するリスクがあります。

(2) 不採算プロジェクトの発生

ソリューションサービス事業は請負契約の比率が高く、受注案件の大規模化も進んでいます。プロジェクト管理の不備によって作業工数の増大や納品遅延、品質低下が発生した場合、大幅な採算悪化や顧客への損害賠償が生じるリスクがあります。

(3) 人材の確保と育成

専門性を持つ人材に対する需要が高まり、獲得競争が激化しています。労働環境の整備や資格奨励金制度などの支援を行っていますが、人材の確保や育成が想定どおりに進まなかった場合、事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 情報セキュリティ

事業上の機密情報や顧客情報を保有しているため、情報セキュリティ委員会のもとで管理を徹底しています。しかし、想定を超える事態によって重要データの破壊、改ざん、流出やシステム停止が引き起こされた場合、業績に影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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