※本記事は、サイオスの有価証券報告書(第29期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. サイオスってどんな会社?
オープンソースソフトウェアを軸にITシステムの開発やクラウドサービスを展開するIT企業です。
■(1) 会社概要
同社は1997年5月にテンアートニとして設立され、2004年8月に東証マザーズへ上場しました。2006年11月にサイオステクノロジーへ社名変更後、2017年10月に持株会社体制へ移行して現在のサイオスへ社名を変更しました。M&A等により事業領域を拡大し、2024年12月には金融機関向け事業を譲渡してSaaSや生成AI領域への投資を強化しています。
従業員数は連結で493名、単体で41名です。筆頭株主は大塚商会で、第2位はパーソルテンプスタッフ、第3位は創業者の資産管理会社である喜多エンタープライズです。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 大塚商会 | 17.96% |
| パーソルテンプスタッフ | 16.91% |
| 喜多エンタープライズ | 10.37% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は喜多伸夫氏が務めており、社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 喜多伸夫 | 代表取締役社長 | 稲畑産業入社後、ノーザンライツコンピュータ代表取締役社長等を経て、2002年に同社代表取締役社長に就任。米国子会社の取締役兼CEO等も歴任し、2006年より現職。 |
| 森田昇 | 取締役 | フィオシス・コンサルティング代表取締役社長等を経て、2015年に同社専務執行役員として入社。サイオステクノロジーやセシオスの取締役も歴任し、2016年より現職。 |
| 小林徳太郎 | 取締役 | コナミ等を経て、2006年に同社入社。執行役員や常務執行役員、米国子会社の取締役等を歴任し、2021年より現職。 |
| 山﨑靖之 | 取締役 | 日本アイ・ビー・エムを経て、2003年に同社入社。執行役員を務めた後、サイオステクノロジー取締役等を歴任し、2021年より現職。 |
| 平松祐樹 | 取締役(常勤監査等委員) | 日本警備保障や日興ベンチャーキャピタル等を経て、2004年に同社入社。執行役員や常勤監査役を経て、2017年より現職。 |
社外取締役は、小野未貴(渥美坂井法律事務所・外国法共同事業パートナー)、古畑克巳(公認会計士古畑克巳事務所代表)、長谷川紘之(片岡総合法律事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「プロダクト&サービス」「コンサルティング&インテグレーション」「ソフトウェアセールス&ソリューション」事業を展開しています。
■プロダクト&サービス
ITシステムの障害時にシステムダウンを回避できるソフトウェア「LifeKeeper」や、複合機向けソフトウェア製品、クラウド型ワークフローやID管理を行うクラウドサービスなどの自社製品およびSaaSの開発と販売、サポート等を提供しています。
収益源は、製品のライセンス販売のほか、サブスクリプション型のサービス利用料、継続的な保守・サポート料金などです。事業の運営は、主にサイオステクノロジーおよび米国子会社などが担っています。
■コンサルティング&インテグレーション
オープンソースソフトウェアに関する問い合わせ対応サービス「サイオスOSSよろず相談室」をはじめ、企業情報システムの受託開発、生成AIの導入支援、各種情報システム向けのコンサルティングサービスなどを提供しています。
収益源は、受託開発における開発成果物への対価や、コンサルティングサービスおよび保守・サポートサービスの提供期間に応じた継続的なサービス料金などです。事業の運営は主にサイオステクノロジーが行っています。
■ソフトウェアセールス&ソリューション
米国レッドハット関連商品やエラスティック関連商品をはじめとする、国内外の先進的なオープンソースソフトウェア関連商品の販売と、これに付随するテクニカルサポートやコンサルティングサービスを提供しています。
収益源は、ソフトウェア商品の販売による一時的な収益のほか、保守・サポートサービスの提供期間に応じた継続的なサービス料金などです。事業の運営は主にサイオステクノロジーが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績推移を見ると、売上高は一時的に落ち込んだもののその後拡大傾向にあり、直近期は前年から減収となりました。経常利益についてもマイナスを計上する期がありましたが、直近期は大きく改善して増益を達成しており、利益率も回復傾向を示しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 157億円 | 144億円 | 159億円 | 206億円 | 191億円 |
| 経常利益 | 4.0億円 | -5.0億円 | -0.2億円 | 1.9億円 | 5.0億円 |
| 利益率(%) | 2.5% | -3.5% | -0.1% | 0.9% | 2.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3.1億円 | 2.9億円 | 1.3億円 | -5.7億円 | 0.6億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前年から減少した一方で、売上総利益率は上昇しています。また、販売費及び一般管理費等の減少により、営業利益および営業利益率ともに大きく改善し、収益性の向上がうかがえます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 206億円 | 191億円 |
| 売上総利益 | 53億円 | 53億円 |
| 売上総利益率(%) | 25.9% | 27.8% |
| 営業利益 | 0.4億円 | 4.0億円 |
| 営業利益率(%) | 0.2% | 2.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が18億円(構成比37%)、研究開発費が5.4億円(同11%)、販売支援費が2.1億円(同4%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントの増減要因を見ると、プロダクト&サービス事業は金融機関向け事業の譲渡により減収でしたが主力製品が好調でした。コンサルティング&インテグレーション事業は堅調なIT投資需要を背景に増収となり、ソフトウェアセールス&ソリューション事業は大型案件の反動で減収となりました。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| プロダクト&サービス | 62億円 | 58億円 |
| コンサルティング&インテグレーション | 30億円 | 34億円 |
| ソフトウェアセールス&ソリューション | 113億円 | 99億円 |
| 調整額 | - | - |
| 連結(合計) | 206億円 | 191億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
サイオスは、ソフトウェアセールス&ソリューション事業において、大型案件の反動減があったものの、新たな提携による増益でセグメント利益を伸ばしました。
営業活動による資金獲得は前年同期比で減少しましたが、これは税金等調整前当期純利益の変動等によるものです。投資活動では、無形固定資産の取得により資金を使用しました。財務活動では、長期借入金の返済により資金を使用しました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 8.7億円 | 2.0億円 |
| 投資CF | 3.0億円 | -2.1億円 |
| 財務CF | -1.3億円 | -0.7億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「世界中の人々のために、不可能を可能に。」というミッションを掲げています。イノベーションを通じて人々の抱える様々な課題を解決に導き、より良い社会の実現に貢献することを経営の基本方針として定めています。情報技術産業における変化に柔軟かつ俊敏に対応し、持続的な企業価値の向上と社会への貢献を目指して事業を展開しています。
■(2) 企業文化
同社グループには、「人がやらないことをやる」という既成概念への挑戦を重視する創業以来のカルチャーが根付いています。これがイノベーションを生み出す源泉であると考え、行動規範として「SIOS Values 2.0」(創造、情熱、コミットメント、誠実、チームワーク)を策定しています。また、多様な働き方が選択できる制度の充実や社内外のコミュニケーション活性化を通じて、イノベーションを創出する企業風土の醸成に努めています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、継続的なキャッシュ・フローの創出を重視し、EBITDA(営業利益+減価償却費+のれん償却額)およびROIC(投下資本利益率)を重要な経営指標として位置づけています。2026年度を最終年度とする中期経営計画において、以下の数値目標を掲げています。
* EBITDA:5.4億円
* ROIC:13.4%
■(4) 成長戦略と重点施策
同社グループは、外部環境の変化に耐えうる強い収益基盤の確立に向け、ストック型ビジネスモデルの強化・拡大による収益安定化を図っています。また、非連続的な成長の実現を目指し、生成AIを活用した事業強化やAPIソリューション事業の拡大など、新たな領域への挑戦を推し進めています。加えて、競争力のある新製品やサービスを継続的に生み出すため、クラウド関連やAI技術を中心とした研究開発投資に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、次世代の技術開発に向けた優秀な人材の確保と育成を重要課題と位置づけています。キャリア採用や新卒採用に加え、グローバル人材の採用や障がい者雇用の拡大を進め、多様かつ包摂的な職場環境の構築に取り組んでいます。また、社員一人ひとりの個性や能力を最大限に発揮できるよう、在宅勤務などの柔軟な働き方の推進や健康経営に注力し、働きがいを持ってパフォーマンスを最大化できる環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 43.6歳 | 7.6年 | 6,524,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 41.7% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 75.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 76.0% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 59.1% |
※男性労働者の育児休業取得率については、同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(71.4%)、離職率(7.0%)、障がい者雇用率(2.91%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) ソフトウェアの知的財産権の侵害リスク
同社グループが開発・販売するソフトウェアや活用するオープンソースソフトウェアについて、第三者の特許権や著作権等の知的財産権を侵害していると主張された場合、損害賠償や使用差止の請求を受ける可能性があり、業績に影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) オープンソースソフトウェア等の市場における競争激化
IT産業は厳しい競争環境にあり、大小のシステムインテグレーターやソフトウェアベンダーが事業を展開しています。既存企業との競争激化や新規参入企業による優位性の低下が生じた場合、同社グループの財政状態および業績に影響を与える可能性があります。
■(3) IT技術者等の専門人材の確保と育成
AIなどの技術革新が急速に進む中、高度な開発技術者やプロジェクトマネージャーの確保・育成が不可欠です。人材採用や育成が計画通りに進まず適正な人員体制を維持できなくなった場合、事業展開や競争力の維持に支障をきたす恐れがあります。
■(4) サイバー攻撃等によるシステム障害や情報漏洩
同社グループの事業はクラウドサービスや通信ネットワークに依存しています。セキュリティ対策を講じていますが、サイバー攻撃や不正アクセス、マルウェア等により重大なシステム障害やデータ流出が発生した場合、社会的信用の失墜や業績への悪影響が生じる可能性があります。



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