**※本記事は、ワールドホールディングス の有価証券報告書(第33期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。**
1. ワールドホールディングスってどんな会社?
人材教育事業を中核とし、不動産や情報通信など複数事業のポートフォリオ経営を行う企業です。
■(1) 会社概要
1993年に製造分野の請負業を目的としてワールドインテックを設立したのが始まりです。2005年の株式上場後、2010年にワールドレジデンシャルを設立して不動産事業に進出しました。2014年に持株会社体制へ移行し現在の社名に変更後、2017年には農業公園事業へも進出するなど多角化を進めています。
同社グループの従業員数は連結で60,880名、単体で49名です。筆頭株主は事業会社のみらい総研で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は創業者の伊井田栄吉氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| みらい総研 | 44.50% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.14% |
| 伊井田 栄吉 | 4.45% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性16名、女性2名の計18名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役会長兼社長最高経営責任者は伊井田栄吉氏が務めています。取締役15名のうち8名が社外取締役であり、社外取締役比率は53.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 伊井田 栄吉 | 代表取締役会長兼社長最高経営責任者 | 1981年三晋産業代表取締役。1997年同社取締役、代表取締役会長を経て1999年代表取締役社長。2011年より現職。 |
| 中野 繁 | 取締役経営企画管理統括本部長 兼経営管理本部長 | 1976年富士銀行入行。2004年同社入社。2010年取締役執行役員等を経て、2025年5月より現職。 |
| 本多 信二 | 取締役人材教育事業(サービスHR)担当 | 1996年タイアップ入社。2002年同社入社、取締役。常務、専務等を経て、2014年より現職。 |
| 栗山 勝宏 | 取締役人材教育事業(プロダクツHR)担当 | 1994年アクティス入社。クリスタル米国社長等を経て2014年ワールドインテック執行役員。2022年より現職。 |
| 塩見 政明 | 取締役経営企画管理統括本部副本部長兼経営開発本部長 | 1988年三井銀行入行。リサ・パートナーズ等を経て2015年同社入社。2020年取締役経営開発本部長。2025年5月より現職。 |
| 桑原 伸一郎 | 取締役不動産事業担当 | 1984年リクルート入社。コスモスイニシア取締役等を経て2022年ワールドレジデンシャル代表取締役。2024年より現職。 |
| 濱地 知治 | 取締役財務経理企画本部長 | 1985年福岡銀行入行。同行特別審査室長等を経て2020年ワールドインテック入社。2021年同社執行役員。2025年5月より現職。 |
社外取締役は、白川祐治(元ふくおかフィナンシャルグループ代表取締役副社長)、川本惣一(元西日本シティ銀行取締役副頭取)、磯俣克平(元有限責任監査法人トーマツ執行役)、木村一義(元コジマ代表取締役会長兼社長)、荻野浩三(元SMBC信託銀行代表取締役社長)、小野和美(元電通九州コミュニケーションデザイン局長)、星野裕志(元九州大学経済学研究院教授)、久保欣(元アクセンチュアマネジング・ディレクター)です。
2. 事業内容
同社グループは、「プロダクツHR事業」「サービスHR事業」「不動産事業」「情報通信事業」「農業公園事業」を展開しています。
■プロダクツHR事業
半導体、電気電子、自動車、機械等の製造メーカーを主な顧客とし、「ものづくり領域」の生産工程全般(研究開発、設計、製造、リペア等)に関わる人材ビジネスを行っています。
業務請負、人材派遣、人材コンサルティングの対価として顧客から料金を受け取ります。運営は主にワールドインテックが担い、各専門分野に特化した子会社群とともに事業を展開しています。
■サービスHR事業
ロジスティクス、ツーリズム、接客販売分野を中心とした「サービス領域」に関わる人材ビジネスを展開しており、大手Eコマース事業者の物流倉庫一括請負等を手掛けています。
業務請負や人材派遣の対価として顧客企業から料金を受け取ります。運営は主にワールドスタッフィングが行うほか、接客販売等はディンプル、ツーリズム領域はJWソリューションが展開しています。
■不動産事業
首都圏や各地方都市において中規模ファミリータイプのマンションを開発・販売するほか、リノベーション、不動産仲介、賃貸管理、ユニットハウスの製造・販売・レンタル等を提供しています。
不動産の販売代金や仲介手数料、賃貸・レンタル料等を顧客から受け取ります。運営はワールドレジデンシャルなどの各地域のデベロッパー子会社や、リノベーションを担うリノベミクニ等が行っています。
■情報通信事業
福岡を中心とした北部九州エリアにおいて、携帯電話販売代理店として各キャリアのショップを運営するほか、法人向けにコスト削減ソリューションやコールセンター事業を提供しています。
携帯電話の端末販売代金や通信サービスの契約取次等による手数料を顧客および通信キャリアから受け取ります。ショップ運営はネットワークソリューションやワールドスタイルが担っています。
■農業公園事業
広大な自然あふれる直営の農業公園施設の運営に加え、そのノウハウを活かして全国で都市公園等の公共施設の指定管理・運営事業を展開しています。
施設内のアトラクション利用料、商品や飲食の販売代金、指定管理料などを顧客や自治体から受け取ります。運営はワールドインテック(農業公園ビジネス)や、堺ファーム等の各施設運営子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の業績を見ると、売上高は一貫して右肩上がりで成長を続けており、2025年12月期には2,844億円に達しています。経常利益も概ね拡大傾向にあり、一時的な踊り場はあったものの直近では過去最高水準を記録するなど、着実な成長軌道を描いています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,547億円 | 1,836億円 | 2,137億円 | 2,422億円 | 2,844億円 |
| 経常利益 | 77億円 | 89億円 | 103億円 | 86億円 | 109億円 |
| 利益率(%) | 5.0% | 4.9% | 4.8% | 3.5% | 3.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 16億円 | 22億円 | 28億円 | 30億円 | 26億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で大きく伸長し、売上総利益も同水準の利益率を維持しながら拡大しています。営業利益も大きく増加しており、トップラインの成長がそのまま利益の押し上げに貢献している安定した収益構造が確認できます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,422億円 | 2,844億円 |
| 売上総利益 | 388億円 | 454億円 |
| 売上総利益率(%) | 16.0% | 16.0% |
| 営業利益 | 86億円 | 108億円 |
| 営業利益率(%) | 3.6% | 3.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が124億円(構成比36%)、福利厚生費が26億円(同8%)と、人材教育事業を中核とする特性上、人件費関連が高い割合を占めています。
■(3) セグメント収益
全セグメントにおいて売上高が前期を上回る結果となりました。特にプロダクツHR事業は半導体分野での堅調な需要を背景に伸長し、不動産事業も大型物件の寄与や価格上昇により大幅な増収を達成するなど、複数事業のポートフォリオが効果的に機能しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| プロダクツHR事業 | 1,103億円 | 1,212億円 |
| サービスHR事業 | 789億円 | 906億円 |
| 不動産事業 | 389億円 | 571億円 |
| 情報通信事業 | 87億円 | 98億円 |
| 農業公園事業 | 55億円 | 57億円 |
| 連結(合計) | 2,422億円 | 2,844億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなる「健全型」です。営業で生み出した資金を元に設備投資等を行いつつ、借入金の返済も進めている安定した状態を示しています。
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.1%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も26.6%で市場平均(非製造業)を上回っています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -14億円 | 148億円 |
| 投資CF | -30億円 | -168億円 |
| 財務CF | 60億円 | -18億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「世界中にあらゆる『人が活きるカタチ』を創造することで、人々の幸せと社会の持続的発展を実現する」というパーパスを掲げています。最重要資産である人的資本への投資を進め、その価値を高めることで、さらなる社会への貢献と高い成長を目指しています。
■(2) 企業文化
「人として心の通った精神的な結びつきを持った企業」「ビジネスを人材育成・教育の場として道徳的感覚を持った有為な人材を世に送り出す企業」「社員が働き甲斐のある企業」などを目指す企業理念を持っています。社会問題に真摯に向き合い、ESGやSDGsの取り組みを深化させながら事業を通じた課題解決を図る文化を有しています。
■(3) 経営計画・目標
2026年度の目標として以下の数値を掲げ、その達成に向けた経営を推進しています。
* 売上高 3,003億円
* 営業利益 125億円
■(4) 成長戦略と重点施策
人材教育、不動産、情報通信、農業公園など複数事業によるポートフォリオ経営を推し進め、経済環境の変化に柔軟に対応できる強い経営基盤を構築しています。人材教育事業では「受託力」を活かした独自ポジションの確立やリスキリングを通じた人的資本の価値向上、不動産事業では事業用地創出ノウハウの活用による安定的成長を図るなど、各事業での優位性発揮に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
ジェンダーや国籍、年齢を問わず多様な人材を分け隔てなく採用・育成し、部門や事業会社の垣根を越えて人材を流動させる「ジョブローテーション」を積極的に推進しています。これにより、最適な人材ポートフォリオの構築と個人の能力向上を促し、組織横断的に活躍する市場価値の高い人材の創出を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 46.0歳 | 11.0年 | 5,998,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.7% |
| 男性育児休業取得率 | 49.6% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 88.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 89.7% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 92.4% |
※数値は連結子会社であるワールドインテックのデータです。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、研修受講者数(20,598人)、従業員エンゲージメント(66.4%)、重要なポジションの充足率(51%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 顧客企業の人材需要の減少・変化
海外情勢の変化や地政学的リスクに伴い、顧客企業における生産計画の低減等があった場合、人材需要が減少し業績に影響を及ぼす可能性があります。また、ICTやロボット導入等による産業構造の転換が進む中、これに伴う人材需要の変化に対応できない場合も、事業運営に支障をきたすおそれがあります。
■(2) 人材確保・人材育成の困難化
少子高齢化に伴う社会的な人手不足が進行する中で、円滑な人材確保が困難になった場合、売上機会の損失や原価率の上昇を招くおそれがあります。さらに、働くことに対する志向の多様化への対応が遅れた場合、就業場所として選ばれず、同社の競争優位性の確保や業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 不動産事業における市況変動
不動産事業は景気動向の影響を受けやすく、大きな市況変動が生じた場合は業績に影響を及ぼします。物件価格下落による評価損の発生、原材料価格や人件費上昇による建築コストの高騰、競争激化による用地取得コストの上昇、金利上昇による消費者購買意欲の低減等のリスクが存在します。
■(4) 情報通信事業の規制及び競争激化
携帯電話販売代理店事業は、関連当局の指導による通信キャリアの料金規制等の影響を直接的に受ける可能性があります。また、オンライン専用プランの普及による実店舗の役割変化や業界再編の加速等が生じており、競争優位性が確保できない場合は業績に影響を及ぼす可能性があります。



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