デジタルホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

デジタルホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

デジタルホールディングスは東京証券取引所プライム市場に上場しており、デジタル広告・マーケティング支援やDX開発、広告費後払いサービス、投資事業を展開しています。2024年12月期は収益が前期比で微減となったものの、営業利益、経常利益、当期純利益はいずれも大幅な増益を達成しました。


※本記事は、株式会社デジタルホールディングス の有価証券報告書(第31期、自 2024年1月1日 至 2024年12月31日、2025年3月31日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. デジタルホールディングスってどんな会社?


デジタル広告代理店事業を祖業とし、現在はDX支援や広告費後払いサービス、投資事業を通じて産業変革を目指す企業グループです。

(1) 会社概要


1994年に有限会社デカレッグスとして設立され、翌年株式会社オプトへ商号変更しました。2004年にJASDAQへ上場し、2013年には東証一部へ市場変更を果たしています。2020年には持株会社体制への移行に伴い、現社名のデジタルホールディングスへ商号変更しました。以降、デジタルシフト事業への転換を推進しています。

同社グループの従業員数は連結で970名、単体で75名です。大株主は、筆頭株主が創業者の鉢嶺登氏(資産管理会社含む)で、第2位は代表取締役会長の野内敦氏(資産管理会社含む)、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。経営陣による持株比率が高く、オーナーシップの強い資本構成となっています。

氏名 持株比率
鉢嶺 登 25.90%
野内 敦 7.36%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 7.44%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は金澤大輔氏です。社外取締役比率は70.0%です。

氏名 役職 主な経歴
野内 敦 代表取締役会長 森ビルを経て1996年オプト入社。オプトベンチャーズ(現Bonds Investment Group)代表取締役等を歴任。2020年同社社長CEO就任。2025年3月より現職。
金澤 大輔 代表取締役社長 2005年オプト入社。執行役員、オプト代表取締役社長CEO等を歴任。2021年同社取締役グループCOOを経て、2025年3月より現職。
鉢嶺 登 取締役ファウンダー 森ビルを経て1994年に同社(旧デカレックス)を設立し社長就任。2020年会長就任。ソウルドアウト取締役等を兼任し、2025年3月より現職。


社外取締役は、水谷智之(元リクルートキャリア社長)、栁澤孝旨(ZOZO取締役副社長兼CFO)、荻野泰弘(元ミクシィ取締役)、時岡真理子(East Meet East, Inc. CEO)、岡部友紀(公認会計士)、鍵﨑亮一(弁護士)、山内一英(元三菱HCキャピタル監査役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「Marketing事業」「Financial Services事業」「Investment事業」を展開しています。

Marketing事業


デジタル広告の代理店業務を中心に、デジタルマーケティング支援やDX(デジタルトランスフォーメーション)開発・販売等を行っています。長年培った広告運用のノウハウを活かし、顧客企業のマーケティング課題解決や事業成長を支援しています。

主な収益源は、広告主からの広告運用代行手数料や、DXソリューションの利用料、開発費等です。運営は主にグループの中核企業である株式会社オプトが行っています。

Financial Services事業


広告業界における資金繰りの課題解決を目指し、広告費の分割・後払いサービス「AD YELL(アドエール)」等を提供しています。Marketing事業の顧客基盤やノウハウを活用し、新たな金融サービスの構築に取り組んでいます。

サービス利用者からの手数料収入等が主な収益源です。運営は主に株式会社バンカブルが行っています。

Investment事業


ベンチャーキャピタルとして、インターネット関連ベンチャー企業への投資や投資先支援、ファンド運用を行っています。また、米国における情報収集等も行い、グループ全体のイノベーション創出を支援しています。

投資先企業の株式売却によるキャピタルゲインや、ファンドの管理・運用益が主な収益源です。運営はデジタルホールディングスやBonds Investment Group株式会社等が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2020年12月期から2024年12月期までの業績推移です。2022年12月期より収益認識に関する会計基準が適用され、売上高が純額表示となったため収益規模が見かけ上大きく縮小しています。直近の2024年12月期は収益が微減となりましたが、経常利益や当期純利益は大幅な増益となり、利益率も改善傾向にあります。

項目 2020年12月期 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期
売上収益(または売上高) 888億円 985億円 169億円 163億円 162億円
経常利益 44億円 147億円 -4億円 4億円 17億円
利益率(%) 4.9% 14.9% -2.6% 2.3% 10.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 38億円 102億円 57億円 2億円 13億円

(2) 損益計算書


2023年12月期と2024年12月期の比較です。収益はほぼ横ばいですが、売上総利益率は低下しました。一方で、販売費及び一般管理費の削減効果などにより営業利益は増加し、営業利益率は大きく改善しています。

項目 2023年12月期 2024年12月期
売上高 163億円 162億円
売上総利益 109億円 100億円
売上総利益率(%) 67.3% 62.0%
営業利益 6億円 10億円
営業利益率(%) 3.8% 6.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が44億円(構成比49%)、業務委託費が8億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


Marketing事業は減収となりましたが、営業利益は増益を確保しました。Investment事業は外部収益が増加しましたが、営業利益は減少しました。Financial Services事業は増収となったものの、営業赤字が継続しています。

区分 売上(2023年12月期) 売上(2024年12月期) 利益(2023年12月期) 利益(2024年12月期) 利益率
Marketing事業 124億円 120億円 17億円 22億円 18.3%
Financial Services事業 4億円 5億円 -4億円 -4億円 -74.3%
Investment事業 35億円 37億円 19億円 12億円 31.8%
連結(合計) 163億円 162億円 6億円 10億円 6.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFと投資CFがプラスで財務CFがマイナスであるため、本業の利益と資産売却等で得た資金を使って借入返済や株主還元を進めている「改善型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2023年12月期 2024年12月期
営業CF -34億円 69億円
投資CF -13億円 4億円
財務CF -31億円 -47億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「新しい価値創造を通じて産業変革を起こし、社会課題を解決する」というパーパスを掲げています。デジタルシフトによる産業変革(IX)を起こし、成長志向企業の発展に直結する「独自の仕組み」を提供することで、新しい価値創造に挑戦し、持続的な社会の実現を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、既存事業の持続的な成長に加え、事業の変革に挑戦する文化を持っています。「新しい価値創造に挑戦し、持続的な社会の実現を目指す」という姿勢のもと、デジタルシフトによる産業変革(IX)の実現に向け、事業ポートフォリオの再整理や組織基盤の強化に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、収益力、資本効率等の改善を図るため、投資効率を重視した意思決定を行い、恒常的にROE(自己資本利益率)10%を達成することを重要項目として掲げています。

* ROE 10%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、Marketing事業における広告とDXの統合提案の加速、Financial Services事業での債権の小口分散化とポートフォリオ最適化、資本の最適配分、そして自立人材の育成等の人材基盤構築を重点施策としています。特にMarketing事業では、既存顧客への広告以外の領域も含めた継続的な取引拡大を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、自立人材の育成と長期的に活躍できる仕組みの整備を重視しています。従業員のスキル向上研修や次世代経営人材育成プログラムを実施するとともに、柔軟な働き方制度を設計し、一人ひとりが能力を最大限発揮できる環境を提供することで、多様なキャリア形成や自立を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2024年12月期 40.7歳 9.3年 6,878,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 15.8%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 79.5%
男女賃金差異(正規) 79.3%
男女賃金差異(非正規) 110.6%


※「男性育児休業取得率」は、HTML原文に基づき提出会社およびすべての国内連結子会社の数値を記載しています。その他の項目は連結子会社(株式会社オプト)の数値です。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(自己都合)(16.2%)、エンゲージメント指標「挑戦を促す」(3.54)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) Marketing事業の競争環境と依存リスク


インターネット広告市場は拡大していますが、景気動向や広告主の戦略に左右されやすく、業績変動の可能性があります。また、特定の媒体運営会社からの仕入れ比率が高く、取引条件の変更や個人情報保護規制(Cookie規制等)の影響を受ける可能性があります。さらに、競合他社との激しい競争下において、優位性確立のための施策が必ずしも奏功するとは限りません。

(2) Financial Services事業の信用リスク


広告費の分割・後払いサービス等の金融サービス事業を展開していますが、最善の与信管理を行っていても、想定外の貸倒れが発生する可能性があります。貸倒引当金や貸倒損失の発生により事業計画が未達となった場合、グループの事業展開や業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) Investment事業の市場変動リスク


有価証券や投資ファンドへの投資を行っており、株式市場や為替の変動の影響を受けます。金融市場の動向によっては業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。市場動向を勘案しつつ売却を行う方針ですが、リスクを完全に回避できるものではありません。

(4) 人材の確保と特定経営者への依存


事業拡大には高度な専門性を持つ人材の確保が不可欠ですが、人材獲得競争や事業構造改革の影響で想定通りに進まない可能性があります。また、代表取締役である鉢嶺登氏、野内敦氏は創業以来重要な役割を果たしており、これら役員の業務執行が困難になった場合、グループの事業や業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。