フィスコ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フィスコ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フィスコは東証グロース市場に上場し、法人・個人向けの金融・経済情報配信やIR支援を行う情報サービス事業を主力に、広告代理業や暗号資産関連事業を展開しています。直近の業績は売上高が微減となったものの、抜本的なコスト削減の推進により収益体質が強化され、営業利益は黒字転換を果たしています。


※本記事は、フィスコの有価証券報告書(第32期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フィスコってどんな会社?


同社は、金融・経済情報の配信や上場企業向けのIR支援を中核に展開する情報サービス企業です。

(1) 会社概要


同社は1995年に設立され、金融情報の配信サービスを開始しました。2006年には大阪証券取引所ヘラクレス市場(現東京証券取引所グロース市場)へ上場を果たしています。その後、金融商品取引業者の登録を受け、子会社の吸収合併などを経てIRコンサルティング事業を新設し、2023年に単体会社へ移行しました。

現在の従業員数は単体で24名です。株主構成としては、IoT関連事業等を手掛けるJNグループが筆頭株主となっており、第2位にはCAICA DIGITALが名を連ねるなど、複数の事業会社と資本関係を有しています。

氏名 持株比率
JNグループ 31.52%
CAICA DIGITAL 8.52%
CAICAテクノロジーズ 6.29%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役CEOは渕木幹男氏が務めています。取締役6名のうち、社外取締役は1名です。

氏名 役職 主な経歴
渕木幹男 代表取締役CEO 1995年バンカーストラストアジア証券会社入社。合同会社PMAD代表社員、カイカフィナンシャルホールディングス代表取締役等を経て、2026年3月より現職。
岡本純子 代表取締役CFO情報配信サービス事業本部長兼営業開発部長管理本部長 2001年ソフトウェアマネジメント入社。実業之日本総合研究所等を経て2023年同社取締役就任。フィスコ経済研究所代表取締役等を歴任し、2026年3月より現職。
深見修 取締役経営戦略本部長 2011年同社経営戦略本部長就任。JNグループやピアズの取締役等を歴任。現在はカイカフィナンシャルホールディングスや実業之日本デジタル等の取締役も兼務し現職。
石原直樹 取締役 2012年JNグループ入社、代表取締役副社長等に就任。ネクスソフト代表取締役社長、CAICA DIGITAL取締役、JNグループ代表取締役社長等を経て2026年3月より現職。
山本泰三 取締役情報配信部長 2021年4月に同社へ入社。2024年4月に同社情報配信部長に就任し情報配信部門を牽引。その後、2026年3月に同社取締役に就任し、現職。


社外取締役は、小西達也氏(小西達也税理士事務所代表税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「情報サービス事業」「広告代理業」「暗号資産・ブロックチェーン事業」および「その他」事業を展開しています。

情報サービス事業


法人および個人向けに企業情報、金融情報、暗号資産情報の提供を行っています。リアルタイム配信やインターネット配信を通じた投資情報の提供のほか、上場企業向けにスポンサー型アナリストレポートやアニュアルレポート等のIR制作物を提供するコンサルティングサービスを展開しています。

法人向けのリアルタイムサービスでは端末を通じた情報配信による利用料を、上場企業向けIR支援では企業調査レポート等の制作・納品時の対価を収益源としています。個人向けにも有料課金サイト等を展開し、これらの事業は同社が主体となって運営しています。

広告代理業


広告代理業務として、新聞や雑誌などのビジネス媒体による企業広告の定期出稿のほか、オンラインを活用したデジタル広告・プロモーションの提案を行っています。また、ウェブサイトのコンテンツ作成やイベントでのディレクション業務、各種ツールの制作も手掛けています。

メディアへの広告出稿手配やウェブコンテンツの制作、納品に伴う手数料および制作代金を顧客企業から受け取ることで収益を上げています。顧客の需要に応じたスポット案件や継続案件などを獲得しており、同社がサービスの運営を行っています。

暗号資産・ブロックチェーン事業


暗号資産市場における投資業およびブロックチェーン関連事業を展開しています。ビットコインやイーサリアムをはじめとする暗号資産の運用を通じたトレーディングを行っており、収益基盤の強化を優先しつつ安定的な運営を重視した慎重な方針を維持しています。

暗号資産取引所などを通じた暗号資産の売買により、市場での売却益および評価益等を収益として計上しています。当面は新たな取り組みを予定しておらず、ガバナンス体制とリスク管理の強化を継続しながら同社が事業を運営しています。

その他


報告セグメントに含まれない事業として、資本政策、財務戦略、事業戦略支援などの各種コンサルティング業務を行っています。また、ファンドの組成および管理業務、M&Aアドバイザリー業務、IPOや人的資本経営支援等の投資銀行事業に付随する新規事業を展開しています。

クライアント企業に対するコンサルティングを通じた支援報酬や、ファンド管理業務、M&A成立時のアドバイザリー手数料などを収益源としています。これらの専門的な企業支援サービスは、同社が主体となって運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は減少傾向にあります。当期利益についても2022年12月期以降は損失が続いていますが、直近ではコスト構造改革や情報サービス事業への資源集中が奏功し、損失幅は年々大幅に縮小しています。

2025年12月期には経常利益が黒字転換を果たしており、抜本的な見直しによる収益体質の改善が着実に進展している状況がうかがえます。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 13.3億円 11.8億円 9.6億円 8.7億円 8.4億円
経常利益 3.2億円 2.3億円 △7.7億円 △0.9億円 0.1億円
利益率(%) 24.3% 19.4% △80.8% △10.7% 0.7%
当期利益 31.3億円 △27.6億円 △18.3億円 △3.0億円 △0.1億円

(2) 損益計算書


売上高は減少したものの売上原価が大幅に改善したことで、売上総利益は前期比で増加し、売上総利益率も順調な改善を見せています。営業利益については前期は0.9億円のマイナスでしたが、当期はコストの最適化が進んだことで黒字化を果たしました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 8.7億円 8.4億円
売上総利益 4.4億円 4.9億円
売上総利益率(%) 50.7% 58.7%
営業利益 △0.9億円 4百万円
営業利益率(%) △10.9% 0.5%



販売費及び一般管理費(約4.9億円)のうち、業務委託費が2.7億円(構成比56%)、給与及び手当が0.7億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力である情報サービス事業は、法人向けサービスの調整局面により売上が微減したものの、コスト効率化が進展したことでセグメント利益は増加し、利益率36.1%という極めて高い収益性を実現しています。

一方、広告代理業はデジタル広告の提案強化やスポット案件の獲得が進み増収となったほか、利益面でも前期の赤字から黒字転換を果たしました。

区分 前期売上高 当期売上高 前期利益 当期利益 当期利益率
情報サービス事業 8.1億円 7.9億円 2.1億円 2.8億円 36.1%
広告代理業 0.4億円 0.5億円 △0.1億円 0.1億円 12.8%
暗号資産・ブロックチェーン事業 2.8百万円 3.5百万円 △36.4百万円 3.4百万円 98.2%
その他 0.2億円 0.1億円
合計 8.7億円 8.4億円 1.7億円 2.9億円 35.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、情報サービス事業を中核とした事業ポートフォリオの最適化を進め、持続的な黒字化の定着と企業価値の向上に取り組んでいます。

営業活動によるキャッシュ・フローは増加に転じました。これは、税引前当期純損失を計上したものの、売上債権の減少や暗号資産の減少がプラスに寄与したためです。投資活動によるキャッシュ・フローは減少しました。投資有価証券の取得による支出があった一方で、短期貸付金の回収による収入もありました。財務活動によるキャッシュ・フローは、前事業年度とは異なり、使用した資金はありませんでした。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF △0.4億円 0.3億円
投資CF 0.9億円 △0.1億円
財務CF △1.0億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「金融サービス業におけるベストカンパニーを目指すこと」「中立な姿勢と公正な思考に徹すること」「個の価値を尊び、和の精神を重んじること」を経営の基本理念としています。社会的資産の最適な配分を実現するため、専門性と中立公正な思考に徹し、成熟社会の一翼を担うことを使命として掲げています。

(2) 企業文化


同社は、基本理念にも掲げている「和の精神」を重んじつつ、優れた「個」の力が十分に発揮される社内環境の維持を重視しています。また、様々な人材が多様な働き方で能力を最大限に発揮できるよう、柔軟な勤務体制を整備するなど、個人の価値を尊重する文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、高付加価値による収益性の高い企業を目指し、資本効率を意識した経営に取り組んでいます。長期的な成長目標として既存事業をベースにした事業規模拡大を掲げ、KPIおよび最終的な目標(KGI)として以下の数値を設定しています。

* 売上高前期比15%増
* 売上高営業利益率および売上高経常利益率15%以上
* 自己資本比率60%以上
* 2026年12月期KGI:売上高8億円、営業利益率2.4%、経常利益率2.6%、IR支援会社数575社

(4) 成長戦略と重点施策


持続的な成長拡大に向けて、情報サービス事業を中心にコンテンツの品質を高めるため、オペレーションの最適化と専門性の向上を進めています。また、IRコンサルティング事業本部を中核とした営業展開を強化し、YouTube動画配信や統合報告書配信など新しいプロダクトの拡大を図ることで、高付加価値サービスの拡充を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、様々な人材が多様な働き方で能力を最大限に発揮できるように、リモートワークや時短勤務などの社内環境の体制整備を進めています。人材育成の面では、新規事業を新たに展開して活躍できる場を拡げることにより、成長と流動性の向上に努める方針を掲げています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 48.0歳 7.3年 5,489,000円

※平均年間給与は基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は従業員規模が300人以下のため、法定開示義務の対象ではなく、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定取引先への依存


情報サービス事業および広告代理業において、特定の取引先に対する売上が高い割合を占めています。同社は取引先の開拓に努め依存度を低減する施策を実施していますが、特定取引先との関係に何らかの支障が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 情報の漏洩等のリスク


各種事業において顧客のプライバシーや信用に関する情報を取り扱っているため、これらが誤ってまたは不正により外部に流出する可能性があります。情報漏洩が発生した場合、「中立且つ公正」を方針とする同社のブランド価値が毀損し、社会的信用に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(3) システムトラブルの影響


当社の業務上重要な基幹システムにおいて、自然災害や事故、外部からの不正侵入などにより障害が発生した場合、情報配信などの事業機能が停止する恐れがあります。予期せぬ配信障害は、同社の情報配信体制に対する顧客からの評価や今後の事業戦略に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。