日本和装ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本和装ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本和装ホールディングスは、東京証券取引所スタンダード市場に上場し、和服や和装品の販売仲介を行うきもの関連事業を主力とする企業です。無料きもの着付け教室を通じて需要を創出し、生産者と消費者をつなぐ仲介モデルを展開しています。直近の業績は、春教室の参加者数伸び悩み等により前年比で減収減益となりました。


※本記事は、日本和装ホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第40期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本和装ホールディングスってどんな会社?


無料きもの着付け教室を通じた和服・和装品の販売仲介事業を展開する、和装業界の仲介ビジネス創造企業です。

(1) 会社概要


1984年に個人で創業し、1986年に有限会社デリコを設立しました。2003年に着付け教室事業や和装縫製業を営業譲受し、現在の事業基盤を構築しました。2006年に日本和装ホールディングスへ商号変更するとともに株式を上場し、現在は東京証券取引所スタンダード市場に上場しています。

従業員数は連結で154名、単体で101名です。筆頭株主は創業者の吉田重久氏で過半数の株式を保有しています。第2位は個人株主の中川昴氏、第3位は自社の加盟店による持株会である日本和装加盟店持株会となっており、経営陣や関係者による安定した資本構成となっています。

氏名 持株比率
吉田 重久 53.88%
中川 昴 4.74%
日本和装加盟店持株会 3.47%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長は鶴野尚史氏が務めており、社外取締役比率は33%となっています。

氏名 役職 主な経歴
鶴野 尚史 代表取締役社長 ダンザス、ワコム等を経て、2019年同社入社。取締役管理本部長、専務取締役を経て、2025年3月より現職。
井上 誠司 取締役 三和シヤッター工業を経て、2003年同社入社。北日本営業部長、執行役員東日本営業統括本部長を経て、2025年3月より現職。
近藤 美知子 取締役 第三銀行等を経て、2005年同社きもの講師。2018年に同社取締役へ就任。一度退任後、2024年3月より再び現職。


社外取締役は、渡辺弘(元日本テレビ放送網専務取締役)、松葉重樹(zengo代表取締役)、菅原洋二(元福岡放送代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、きもの関連事業の単一セグメントで事業を展開しています。

同社グループは、和服や和装品の販売仲介を中心としたきもの関連事業を展開しています。「無料きもの着付け教室」を運営してきものを着る機会や物の価値を伝え、和装文化の普及啓発を行うとともに、新規顧客や卒業生に対して契約企業が和装品を販売する機会を提供しています。

収益源は、販売業務委託契約を結んだメーカーや卸売業者などの契約企業から受け取る販売仲介手数料です。運営は親会社である日本和装ホールディングスが行い、製造ははかた匠工芸、縫製加工はベトナムの子会社、割賦販売斡旋業はニチクレが担当し、グループ内で完結するビジネスモデルを構築しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期の売上高は44億円から51億円の範囲で安定的に推移しています。独自の仲介ビジネスモデルによって継続的に利益を確保しており、直近の2025年12月期は売上高45億円、経常利益3.2億円となりました。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 51億円 48億円 45億円 47億円 45億円
経常利益 4.5億円 3.9億円 3.5億円 4.3億円 3.2億円
利益率(%) 8.9% 8.2% 7.8% 9.2% 7.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.8億円 1.0億円 1.3億円 2.0億円 1.3億円

(2) 損益計算書


2025年12月期は春期の着付け教室における新規顧客数が計画を下回ったことなどが影響し、売上高および売上総利益が減少しました。その結果、営業利益も前年を下回って推移しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 47億円 45億円
売上総利益 43億円 41億円
売上総利益率(%) 91.3% 91.1%
営業利益 4.8億円 3.8億円
営業利益率(%) 10.2% 8.4%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が8.4億円(構成比23%)、広告宣伝費が5.9億円(同16%)、地代家賃が5.3億円(同14%)を占めています。支払手数料も3.3億円(同9%)計上されており、事業運営における人件費やプロモーション費用、着付け教室等の賃借料が主なコストとなっています。

(3) セグメント収益


同社はきもの関連事業の単一セグメントであるため、事業区分別の売上内訳を分析します。主力の販売仲介手数料や縫製加工が減少した一方で、和服及び和装品販売は前年を上回って推移しました。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
販売仲介手数料 27億円 24億円
和服及び和装品販売 12億円 13億円
縫製加工 7.3億円 6.4億円
その他 0.3億円 0.3億円
連結(合計) 47億円 45億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

日本和装ホールディングスは、営業活動を通じて安定的に資金を獲得しており、事業活動の基盤を支えています。投資活動では、将来の事業展開を見据えた資金の投下が行われています。財務活動においては、借入金の返済や配当金の支払いなど、株主への還元と財務基盤の安定化に向けた動きが見られます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 3.4億円 3.9億円
投資CF -0.5億円 -0.9億円
財務CF -2.5億円 -6.2億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「人の喜ぶところに栄えあり」という企業理念を掲げています。和装という日本の伝統文化を守り、次世代へ繋げていくために、きものを自分で着られる人を増やしたいという想いから、設立当初より変わらない「教えて・伝えて・流通を促す」というビジネスモデルを通じて、和装市場の活性化を図ることを使命としています。

(2) 企業文化


消費者良し、生産者良し、御取引先様良し、株主様良し、社員良しという「五方良し」の価値観を大切にしています。事業活動を通じて関わるすべての人々から「出会えてよかった」と心から思ってもらえるようなサービス向上に努め、喜びを共有できる企業風土を重んじており、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、今後の継続的な成長に向けて、和装業界に関わるあらゆるシェアの拡大に取り組み、和装業界における売上シェアナンバーワンを目指すことを中長期的な目標として掲げています。不透明な外部環境の中でも安定した成果を上げるため、グループ企業間のシナジー効果を最大限に発揮することを目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


日本和装事業を幹とし、製造から縫製、流通、販促、アフターケアまで自社内で完結する「ワンストップ・ソリューション」によるシナジー強化を戦略の柱としています。人材育成による全社的な生産性向上や、WEBプロモーションの強化による新規受講者の獲得、卒業生への継続的なアプローチによる顧客満足度の向上に注力していく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人の喜ぶところに栄えあり」という企業理念を実現できる人材の育成を基本方針としています。定期研修や階層別研修、eラーニングなどを通じて中長期的な人材育成に努めるほか、過重労働の削減や有給休暇の取得促進、ハイブリッドワークの導入など、柔軟な働き方ができる職場環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 50.6歳 9.6年 5,198,568円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」および「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 「日本和装」事業への高い依存度


同社の主力事業は着付け教室を起点とした販売仲介であり、収益の大部分は契約企業からの各種手数料に依存しています。社会情勢や文化の劇的な変化によってこのビジネスモデルが展開できなくなった場合、グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) クレジット等の法的規制による影響


事業における代金回収の大部分はショッピングクレジットを利用しており、割賦販売斡旋業を行う子会社も存在します。割賦販売法をはじめとする法令の将来的な改正や解釈の変更、規制の厳格化などが行われた場合、業務遂行や業績に影響が出るリスクがあります。

(3) 契約企業への精算と代金回収の遅延


同社は消費者が購入した着物などの代金回収を代行し、販売日から10日後に契約企業へ精算を行っています。何らかの事由により消費者からの代金回収が遅延した場合でも期日通りに精算を行うため、多額の回収遅延が発生すると資金繰りや財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。